P1 厚生労働省訓第45号 (部内一般)  厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を次のように定める。   平成27年11月27日 厚生労働大臣 塩崎 恭久 厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領 (目的) 第1条 この要領(以下「対応要領」という。)は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第9条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定。)に即して、法第7条に規定する事項に関し、厚生労働省職員(中央労働委員会事務局職員を除く。以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。 (不当な差別的取扱いの禁止) 第2条 職員は、法第7条第1項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障害(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。以下この対応要領において同じ。)を理由として、障害者(障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの。以下この対応要領において同じ。)でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。これに当たり、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。なお、別紙中、「望ましい」と記載している内容は、それを実施しない場合であっても、法に反すると判断されることはないが、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念及び法の目的を踏まえ、できるだけ取り組むことが望まれることを意味する(次条において同じ。)。 (合理的配慮の提供) 第3条 職員は、法第7条第2項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければならない。      これに当たり、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。 (監督者の責務) 第4条 職員のうち、課長相当職以上の地位にある者(以下「監督者」という。)は、前2条に掲げる事項に関し、障害を理由とする差別の解消を推進するため、次の各号に掲げる事項を実施しなければならない。 P2 一 日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、その監督する職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。 二 障害者等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申し出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。 三 合理的配慮の必要性が確認された場合、監督する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。 2 監督者は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。 (懲戒処分等) 第5条 職員が、障害者に対し不当な差別的取扱いをし、又は、過重な負担がないにも関わらず合理的配慮の不提供をした場合、その態様等によっては、職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合等に該当し、懲戒処分等に付されることがある。 (相談体制の整備) 第6条 厚生労働省に、その職員から障害を理由とする差別を受けた障害者及びその家族その他の関係者(以下「相談者」という。)からの相談等に的確に対応するための相談窓口を設置する。 2 前項に規定する相談窓口は、本省内部部局にあっては大臣官房人事課長が、施設等機関及び地方支分部局にあっては、それぞれの長が定める。 3 相談等を受ける場合は、性別、年齢、状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、ファックス、電子メールに加え、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。 4 相談窓口は、相談者から相談の内容となる事実の詳細その他必要な情報を聴取し、事実確認をしたうえで、相談対象事案があると認めるときは、速やかに是正措置及び再発防止策等を採るものとする。 5 第1項の相談窓口に寄せられた相談等は、大臣官房人事課に集約し、相談者のプライバシーに配慮しつつ関係者間で情報共有を図り、以後の相談等において活用することとする。 6 第1項の相談窓口は、必要に応じ、充実を図るよう努めるものとする。 (研修・啓発) 第7条 障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、必要な研修・啓発を行うものとする。 2 新たに職員となった者に対しては、障害を理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解させるために、また、新たに監督者となった職員に対しては、障害を理由とする差別の解消等に関し求められる役割について理解させるために、それぞれ、研修を実施する。 3 職員に対し、障害の特性を理解させるとともに、障害者へ適切に対応するために必要 P3 なマニュアル等により、意識の啓発を図る。 附 則 この訓令は、平成28年4月1日から施行する。 P4 別紙 厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る留意事項 第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方  法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。 ただし、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。 このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 第2 正当な理由の判断の視点  正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。厚生労働省においては、正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障害者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び厚生労働省の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。  職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。 第3 不当な差別的取扱いの具体例  不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は以下のとおりである。なお、第2で示したとおり、不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。また、以下に記載されている具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、さらに、それらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。 (不当な差別的取扱いに当たり得る具体例) P5 ○ 障害を理由に窓口対応を拒否する。 ○ 障害を理由に対応の順序を後回しにする。 ○ 障害を理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。 ○ 障害を理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。 ○ 事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害を理由に、来庁の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒んだりする。 ○ 障害を理由に、診療、入院等を拒否すること。 ○ 本人又はその家族等の意思(障害のある方の意思を確認することが困難な場合に限る。)に反したサービス(施設への入所など)を行うこと。 第4 合理的配慮の基本的な考え方 1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。 法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。  合理的配慮は、厚生労働省の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。 2 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。 なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮とは別に、後述する環境の整備を考慮に P6 入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。 3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。 また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。   なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。 4 合理的配慮は、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。 5 厚生労働省が、事務又は事業の全部又は一部を委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが望ましい。 第5 過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましい。 ○ 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容、機能を損なうか否か) ○ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) ○ 費用・負担の程度 第6 合理的配慮の具体例  第4で示したとおり、合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものがある。  なお、記載した具体例については、第5で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること、また、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。 P7 (合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例) ○ 段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡すなどする。 ○ 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。 ○ 目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞いたりする。 ○ 障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。 ○ 疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申し出があった際、別室の確保が困難であったことから、当該障害者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。 ○ 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。 ○ 災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、電光掲示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。 (合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例) ○ 筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字などのコミュニケーション手段を用いる。 ○ 会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なりうることに留意して使用する。 ○ 視覚障害のある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。 ○ 意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。 ○ 駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。 ○ 書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、わかりやすい記述で伝達したりする。本人の依頼がある場合には、代読といった配慮を行う。 ○ 比喩表現等が苦手な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。 ○ 障害者から申し出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。 ○ 会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚に障害のある委員や知的障害を持つ委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけるなどの配慮を行う。 ○ 会議の進行に当たっては、職員等が委員の障害の特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行う。 P8 (ルール・慣行の柔軟な変更の具体例) ○ 順番を待つことが苦手な障害者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続き順を入れ替える。 ○ 立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意する。 ○ スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。 ○ 車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。 ○ 厚生労働省の敷地内の駐車場等において、障害者の来庁が多数見込まれる場合、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更する。 ○ 入館時にICカードゲートを通過することが困難な場合、別ルートからの入館を認める。 ○ 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、当該障害者に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備する。 ○ 非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認める。 (障害特性に応じた留意点について) 障害特性に応じた対応の具体例に関しては、「障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン〜福祉分野における事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する指針〜」第3(3)に代表的な障害特性と対応時に配慮すべき事項について示されているので、別添に留意されたい。 P9 別添 障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン〜福祉分野における事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する指針〜 第3 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の例 (3)障害特性に応じた対応について 障害者と接する際には、それぞれの障害特性に応じた対応が求められます。以下に、代表的な障害特性と対応時に配慮すべき事項について簡単にまとめています。 このほか、障害児については、成人の障害者とは異なる支援の必要性があります。子どもは成長、発達の途上にあり、乳幼児期の段階から、個々の子どもの発達の段階に応じて一人ひとりの個性と能力に応じた丁寧に配慮された支援を行う発達支援が必要です。また、子どもを養育する家族を含めた丁寧かつ早い段階からの家族支援が必要です。特に、保護者が子どもの障害を知った時の気持ちを出発点とし、障害を理解する態度を持つようになるまでの過程においては、関係者の十分な配慮と支援が必要です。 また、医療的ケアを要する障害児については、配慮を要する程度に個人差があることに留意し、医療機関等と連携を図りながら、個々の状態や必要な支援を丁寧に確認し、適切な支援を行うことが必要です。   視覚障害(視力障害・視野障害)  〔主な特性〕 ・先天性で受障される方のほか、最近は糖尿病性網膜症などで受障される人も多く、高齢者では、緑内障や黄斑部変性症が多い ・視力障害:視覚的な情報を全く得られない又はほとんど得られない人と、文字の拡大や視覚補助具等を使用し保有する視力を活用できる人に大きく分けられる (全盲、弱視といわれることもある) *視力をほとんど活用できない人の場合、音声、触覚、嗅覚など、視覚以外の情報を手がかりに周囲の状況を把握している P10 *文字の読みとりは、点字に加えて最近では画面上の文字情報を読み上げるソフトを用いてパソコンで行うこともある(点字の読み書きができる人ばかりではない) *視力をある程度活用できる人の場合は、補助具を使用したり文字を拡大したり近づいて見るなどの様々な工夫をして情報を得ている P12 ・視野障害:目を動かさないで見ることのできる範囲が狭くなる 「求心性視野狭窄」見える部分が中心だけになって段々と周囲が見えなくなる。遠くは見えるが足元が見えず、つまづきやすくなる  「中心暗転」周囲はぼんやり見えるが真ん中が見えない。文字等、見ようとする部分が見えなくなる ・視力障害、視野障害の状況によって、明るさの変化への対応が困難なため、移動などに困難さを生じる場合も多い 〔主な対応〕 ・音声や点字表示など、視覚情報を代替する配慮 ・中途受障の人では白杖を用いた歩行や点字の触読が困難な人も多いため留意が必要 ・声をかける時には前から近づき「○○さん、こんにちは。△△です。」など自ら名乗る ・説明する時には「それ」「あれ」「こっち」「このくらいの」などと指差し表現や指示代名詞で表現せず、「あなたの正面」「○○くらいの大きさ」などと具体的に説明 ・普段から通路(点字ブロックの上等)に通行の妨げになるものを置かない、日頃視覚障害者が使用しているものの位置を変えないなど周囲の協力が不可欠 ・主に弱視の場合、室内における照明の状況に応じて、窓を背にして座ってもらうなどの配慮が必要   聴覚障害 〔主な特性〕 ・聴覚障害は外見上わかりにくい障害であり、その人が抱えている困難も他の人からは気づかれにくい側面がある ・聴覚障害者は補聴器や人工内耳を装用するほか、コミュニケーション方法には手話、筆談、口話など様々な方法があるが、どれか一つで十分ということではなく、多くの聴覚障害者は話す相手や場面によって複数の手段を組み合わせるなど使い分けている P14 ・補聴器や人工内耳を装用している場合、スピーカーを通じる等、残響や反響のある音は、聞き取りにあまり効果が得られにくい ・聴覚の活用による言葉の習得に課題があることにより、聴覚障害者の国語力は様々であるため、筆談の場合は、相手の状況にあわせる 〔主な対応〕 ・手話や文字表示、手話通訳や要約筆記者の配置など、目で見てわかる情報を提示したりコミュニケーションをとる配慮 ・補聴器や人工内耳を装用し、残響や反響のある音を聞き取ることが困難な場合には、代替する対応への配慮(磁気誘導ループの利用など) ・音声だけで話すことは極力避け、視覚的なより具体的な情報も併用 ・スマートフォンなどのアプリに音声を文字に変換できるものがあり、これらを使用すると筆談を補うことができる   盲ろう(視覚と聴覚の重複障害) 〔主な特性〕 ・視覚と聴覚の重複障害の人を「盲ろう」と呼んでいるが、障害の状態や程度によって様々なタイプに分けられる(視覚障害、聴覚障害の項も参照のこと) <見え方と聴こえ方の組み合わせによるもの> @全く見えず聴こえない状態の「全盲ろう」 A見えにくく聴こえない状態の「弱視ろう」 B全く見えず聴こえにくい状態の「盲難聴」 C見えにくく聴こえにくい状態の「弱視難聴」 <各障害の発症経緯によるもの> @盲(視覚障害)から聴覚障害を伴った「盲ベース盲ろう」 Aろう(聴覚障害)から視覚障害を伴った「ろうベース盲ろう」 B先天的、あるいは乳幼児期に視覚と聴覚の障害を発症する「先天性盲ろう」 C成人期以後に視覚と聴覚の障害が発症する「成人期盲ろう」 P16 ・盲ろう者がそれぞれ使用するコミュニケーション手段は、障害の状態や程度、盲ろうになるまでの経緯、あるいは生育歴、他の障害との重複の仕方によって異なり、介助方法も異なる ・テレビやラジオを楽しんだり本や雑誌を読むことなどもできず、家族といてもほとんど会話がないため、孤独な生活を強いられることが多い 〔主な対応〕 ・盲ろう者関係機関に相談し、対応に関する助言を受ける ・障害の状態や程度に応じ視覚障害や聴覚障害の人と同じ対応が可能な場合があるが、 同様な対応が困難な場合が多く、手書き文字や触手話、指点字などの代替する対応や移動の際にも配慮する ・言葉の通訳に加えて、視覚的・聴覚的情報についても意識的に伝える (例)状況説明として、人に関する情報(人数、性別等)や環境に関する情報(部屋の大きさや机の配置、その場の雰囲気等)など   肢体不自由   ○車椅子を使用されている場合 〔主な特性〕 ・脊髄損傷(対麻痺又は四肢麻痺、排泄障害、知覚障害、体温調節障害など) ・脳性麻痺(不随意運動、手足の緊張、言語障害、知的障害重複の場合もある) ・脳血管障害(片麻痺、運動失調) ・病気等による筋力低下や関節損傷などで歩行が困難な場合もある ・ベッドへの移乗、着替え、洗面、トイレ、入浴など、日常の様々な場面で援助が必要な人の割合が高い ・車椅子使用者にとっては、段差や坂道が移動の大きな妨げになる ・手動車椅子の使用が困難な場合は、電動車椅子を使用する場合もある ・障害が重複する場合には、呼吸器を使用する場合もある 〔主な対応〕  ・段差をなくす、車椅子移動時の幅・走行面の斜度、車椅子用トイレ、施設のドアを P18 引き戸や自動ドアにするなどの配慮 ・机アプローチ時に車椅子が入れる高さや作業を容易にする手の届く範囲の考慮 ・ドア、エレベータの中のスイッチなどの機器操作のための配慮 ・目線をあわせて会話する ・脊髄損傷者は体温調整障害を伴うことがあるため、部屋の温度管理に配慮   ○ 杖などを使用されている場合 〔主な特性〕 ・脳血管障害(歩行可能な片麻痺、運動失調) ・麻痺の程度が軽いため、杖や装具歩行が可能な場合や、切断者などで義足を使用して歩行可能な場合は、日常生活動作は自立している人が多い ・失語症や高次脳機能障害がある場合もある ・長距離の歩行が困難であったり、階段、段差、エスカレーターや人ごみでの移動が困難な場合もあり、配慮が必要 〔主な対応〕 ・上下階に移動するときのエレベータ−設置・手すりの設置 ・滑りやすい床など転びやすいので、雨天時などの対応 ・トイレでの杖おきの設置や靴の履き替えが必要な場合に椅子を用意するなどの配慮 ・上肢の障害があれば、片手や筋力低下した状態で作業ができる配慮   構音障害 〔主な特性〕 ・話す言葉自体を聞き取ることが困難な状態 ・話す運動機能の障害、聴覚障害、咽頭摘出などの原因がある 〔主な対応〕 ・しっかりと話を聞く ・会話補助装置などを使ってコミュニケーションをとることも考慮する P20   失語症 〔主な特性〕 ・聞くことの障害 音は聞こえるが「ことば」の理解に障害があり「話」の内容が分からない 単語や簡単な文なら分かる人でも早口や長い話になると分からなくなる ・話すことの障害 伝えたいことをうまく言葉や文章にできない 発話がぎこちない、いいよどみが多くなったり、誤った言葉で話したりする ・読むことの障害 文字を読んでも理解が難しい ・書くことの障害 書き間違いが多い、また「てにをは」などをうまく使えない、文を書くことが難しい 〔主な対応〕 ・表情がわかるよう、顔を見ながら、ゆっくりと短いことばや文章で、わかりやすく話しかける ・一度でうまく伝わらない時は、繰り返して言ったり、別のことばに言い換えたり、漢字や絵で書いたり、写真・実物・ジェスチャーで示したりすると理解しやすい ・「はい」「いいえ」で答えられるように問いかけると理解しやすい ・話し言葉以外の手段(カレンダー、地図、時計など身近にあるもの)を用いると、コミュニケーションの助けとなる *「失語症のある人の雇用支援のために」(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター)より一部引用 P22   高次脳機能障害 交通事故や脳血管障害などの病気により、脳にダメージを受けることで生じる認知  や行動に生じる障害。身体的には障害が残らないことも多く、外見ではわかりにくいため「見えない障害」とも言われている。 〔主な特性〕 ・以下の症状が現れる場合がある 記憶障害:すぐに忘れてしまったり、新しい出来事を覚えることが苦手なため、何度も同じことを繰り返したり質問したりする 注意障害:集中力が続かなかったり、ぼんやりしていてしまい、何かをするとミスが多く見られる。二つのことを同時にしようとすると混乱する。主に左側で、食べ物を残したり、障害物に気が付かないことがある 遂行機能障害:自分で計画を立てて物事を実行したり、効率よく順序立てられない 社会的行動障害:ささいなことでイライラしてしまい、興奮しやすい。こだわりが強く表れたり、欲しいものを我慢できない。思い通りにならないと大声を出したり、時に暴力をふるったりする 病識欠如:上記のような症状があることに気づかず、できるつもりで行動してトラブルになる ・失語症(失語症の項を参照)を伴う場合がある ・片麻痺や運動失調等の運動障害や眼や耳の損傷による感覚障害を持つ場合がある 〔主な対応〕 ・本障害に詳しいリハビリテーション専門医やリハ専門職、高次脳機能障害支援普及拠点機関、家族会等に相談する ・記憶障害 手がかりがあると思い出せるので、手帳やメモ、アラームを利用したり、ルートマップを持ち歩いてもらうなどする 自分でメモを取ってもらい、双方で確認する 残存する受傷前の知識や経験を活用する(例えば、過去に記憶している自宅周囲 P24 では迷わず行動できるなど) ・注意障害 短時間なら集中できる場合もあるので、こまめに休憩を取るなどする ひとつずつ順番にやる 左側に危険なものを置かない ・遂行機能障害 手順書を利用する 段取りを決めて目につくところに掲示する スケジュール表を見ながら行動したり、チェックリストで確認する ・社会的行動障害 感情をコントロールできない状態にあるときは、上手に話題や場所を変えてクールダウンを図る 予め行動のルールを決めておく   内部障害 〔主な特性〕 ・心臓機能、呼吸器機能、腎臓機能、膀胱・直腸機能、小腸機能、肝機能、HIVによる免疫機能のいずれかの障害により日常生活に支障がある ・疲れやすく長時間の立位や作業が困難な場合がある ・常に医療的対応を必要とすることが多い 〔主な対応〕 ・ペースメーカーは外部からの電気や磁力に影響をうけることがあるので注意すべき機器や場所などの知識をもつ ・排泄に関し、人工肛門の場合、パウチ洗浄等特殊な設備が必要となることへの配慮 ・人工透析が必要な人については、通院の配慮 ・呼吸器機能障害のある方は、慢性的な呼吸困難、息切れ、咳等の症状があることを理解し、息苦しくならないよう、楽な姿勢でゆっくり話をしてもらうよう配慮 ・常時酸素吸入が必要な方は、携帯用酸素ボンベが必要な場合があることを理解 P26   重症心身障害・その他医療的ケアが必要な者 〔主な特性〕 ・自分で体を動かすことができない重度の肢体不自由と、年齢に相応した知的発達が見られない重度の知的障害が重複している ・殆ど寝たままで自力では起き上がれない状態が多い ・移動、食事、着替え、洗面、トイレ、入浴などが自力ではできないため、日常の様々な場面で介助者による援助が必要 ・常に医学的管理下でなければ、呼吸することも栄養を摂ることも困難な人もいる ・重度の肢体不自由や重度の知的障害はないが、人工呼吸器を装着するなど医療的ケアが必要な人もいる 〔主な対応〕 ・人工呼吸器などを装着して専用の車椅子で移動する人もいるため、電車やバスの乗降時等において、周囲の人が手伝って車椅子を持ち上げるなどの配慮が必要 ・体温調整がうまくできないことも多いので、急な温度変化を避ける配慮が必要   知的障害 〔主な特性〕 ・概ね18歳頃までの心身の発達期に現れた知的機能の障害により、生活上の適応に困難が生じる ・「考えたり、理解したり、読んだり、書いたり、計算したり、話したり」する等の知的な機能に発達の遅れが生じる ・金銭管理、会話、買い物、家事などの社会生活への適応に状態に応じた援助が必要 ・主な原因として、ダウン症候群などの染色体異常、または先天性代謝異常によるものや、脳症や外傷性脳損傷などの脳の疾患があるが、原因が特定できない場合もある ・てんかんを合併する場合もある ・ダウン症候群の場合の特性として、筋肉の低緊張、多くの場合、知的な発達の遅れがみられること、また、心臓に疾患を伴う場合がある P28 〔主な対応〕 ・言葉による説明などを理解しにくいため、ゆっくり、ていねいに、わかりやすく話す ことが必要 ・文書は、漢字を少なくしてルビを振る、文書をわかりやすい表現に直すなどの配慮で理解しやすくなる場合があるが、一人ひとりの障害の特性により異なる ・写真、絵、ピクトグラムなどわかりやすい情報提供を工夫する ・説明が分からないときに提示するカードを用意したり、本人をよく知る支援者が同席するなど、理解しやすくなる環境を工夫をする   発達障害   ○自閉症、アスペルガー症候群を含む広汎性発達障害(自閉症スペクトラム) 〔主な特性〕 ・相手の表情や態度などよりも、文字や図形、物の方に関心が強い ・見通しの立たない状況では不安が強いが、見通しが立つ時はきっちりしている ・大勢の人がいる所や気温の変化などの感覚刺激への敏感さで苦労しているが、それが芸術的な才能につながることもある。 〔主な対応〕 ・本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く ・肯定的、具体的、視覚的な伝え方の工夫(「○○をしましょう」といったシンプルな伝え方、その人の興味関心に沿った内容や図・イラストなどを使って説明するなど) ・スモールステップによる支援(手順を示す、モデルを見せる、体験練習をする、新しく挑戦する部分は少しずつにするなど) ・感覚過敏がある場合は、音や肌触り、室温など感覚面の調整を行う(イヤーマフを活用する、大声で説明せずホワイトボードで内容を伝える、人とぶつからないように居場所を衝立などで区切る、クーラー等の設備のある部屋を利用できるように配慮するなど) P30   ○学習障害(限局性学習障害) 〔主な特性〕 ・「話す」「理解」は普通にできるのに、「読む」「書く」「計算する」ことが、努力しているのに極端に苦手 〔主な対応〕 ・本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く ・得意な部分を積極的に使って情報を理解し、表現できるようにする(ICTを活用する際は、文字を大きくしたり行間を空けるなど、読みやすくなるように工夫する) ・苦手な部分について、課題の量・質を適切に加減する、柔軟な評価をする   ○注意欠陥多動性障害(注意欠如・多動性障害) 〔主な特性〕 ・次々と周囲のものに関心を持ち、周囲のペースよりもエネルギッシュに様々なことに取り組むことが多い 〔主な対応〕 ・本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く ・短く、はっきりとした言い方で伝える ・気の散りにくい座席の位置の工夫、分かりやすいルール提示などの配慮 ・ストレスケア(傷つき体験への寄り添い、適応行動が出来たことへのこまめな評価)   ○その他の発達障害 〔主な特性〕 ・体の動かし方の不器用さ、我慢していても声が出たり体が動いてしまったりするチック、一般的に吃音と言われるような話し方なども、発達障害に含まれる 〔主な対応〕 ・本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く ・叱ったり拒否的な態度を取ったり、笑ったり、ひやかしたりしない ・日常的な行動の一つとして受け止め、時間をかけて待つ、苦手なことに無理に取組まず出来ることで活躍する環境を作るなど、楽に過ごせる方法を一緒に考える P32   精神障害 ・精神障害の原因となる精神疾患は様々であり、原因となる精神疾患によって、その障害特性や制限の度合いは異なる ・精神疾患の中には、長期にわたり、日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態が続くものがある ・代表的な精神疾患として、統合失調症や気分障害等がある ・障害の特性もさまざまであるため、積極的に医療機関と連携を図ったり、専門家の意見を聴くなど、関係機関と協力しながら対応する   ○統合失調症 〔主な特性〕 ・発症の原因はよく分かっていないが、100人に1人弱かかる、比較的一般的な病気である ・「幻覚」や「妄想」が特徴的な症状だが、その他にも様々な生活のしづらさが障害として表れることが知られている ・陽性症状 幻覚:実態がなく他人には認識できないが、本人には感じ取れる感覚のこと。なかでも、自分の悪口やうわさ、指図する声等が聞こえる幻聴が多い 妄想:明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのこと。誰かにいやがらせをされているという被害妄想、周囲のことが何でも自分に関係しているように思える関係妄想などがある ・陰性症状 意欲が低下し、以前からの趣味や楽しみにしていたことに興味を示さなくなる 疲れやすく集中力が保てず、人づきあいを避け引きこもりがちになる  入浴や着替えなど清潔を保つことが苦手となる  など ・認知や行動の障害: 考えがまとまりにくく何が言いたいのかわからなくなる  相手の話の内容がつかめず、周囲にうまく合わせることができない  など P34 〔主な対応〕 ・統合失調症は脳の病気であることを理解し、病気について正しい知識を学ぶ必要がある ・薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する ・社会との接点を保つことも治療となるため、本人が病気と付き合いながら、他人と交流したり、仕事に就くことを見守る ・一方で、ストレスや環境の変化に弱いことを理解し、配慮した対応を心掛ける ・一度に多くの情報が入ると混乱するので、伝える情報は紙に書くなどして整理してゆっくり具体的に伝えることを心掛ける ・症状が強い時には無理をさせず、しっかりと休養をとったり、速やかに主治医を受診することなどを促す ○気分障害 〔主な特性〕 ・気分の波が主な症状としてあらわれる病気。うつ状態のみを認める時はうつ病と呼び、うつ状態と躁状態を繰り返す場合には、双極性障害(躁うつ病)と呼ぶ ・うつ状態では気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えが働かない、自分が価値のない人間のように思える、死ぬことばかり考えてしまい実行に移そうとするなどの症状がでる ・躁状態では気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりする。その一方で、ちょっとした事にも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でも出来ると思い込んで人の話を聞かなくなったりする 〔主な対応〕 ・専門家の診察の上で、家族や本人、周囲の人が病気について理解する ・薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する ・うつ状態の時は無理をさせず、しっかりと休養をとれるよう配慮する ・躁状態の時は、金銭の管理、安全の管理などに気を付け、対応が難しい時には専門 P36 家に相談する ・自分を傷つけてしまったり、自殺に至ることもあるため、自殺などを疑わせるような言動があった場合には、本人の安全に配慮した上で、速やかに専門家に相談するよう本人や家族等に促す   ○依存症(アルコール) 〔主な特性〕 ・飲酒したいという強い欲求がコントロールができず、過剰に飲酒したり、昼夜問わず飲酒したりすることで身体的、社会生活上の様々な問題が生じる ・体がアルコールに慣れることで、アルコールが体から抜けると、発汗、頻脈、手の震え、不安、イライラなどの離脱症状が出る ・一念発起して断酒しようとしても、離脱症状の不快感や、日常生活での不安感から逃れるために、また飲んでしまう 〔主な対応〕 ・本人に病識がなく(場合によっては家族も)、アルコール依存症は治療を必要とする病気であるということを、本人・家族・周囲が理解する ・周囲の対応が結果的に本人の飲酒につながってしまう可能性があるため、家族も同伴の上で、アルコール依存症の専門家に相談する ・一度断酒しても、再度飲酒してしまうことが多いため、根気強く本人を見守る   ○てんかん 〔主な特性〕 ・何らかの原因で、一時的に脳の一部が過剰に興奮することにより、発作がおきる ・発作には、けいれんを伴うもの、突然意識を失うもの、意識はあるが認知の変化を伴うものなど、様々なタイプのものがある 〔主な対応〕 ・誰もがかかる可能性がある病気であり、専門家の指導の下に内服治療を行うことで、多くの者が一般的な生活が送れることを理解する P37 ・発作が起こっていないほとんどの時間は普通の生活が可能なので、発作がコントロールされている場合は、過剰に活動を制限しない ・内服を適切に続けることが重要である。また、発作が起こってしまった場合には、本人の安全を確保した上で専門機関に相談する   ○認知症 〔主な特性〕 ・認知症とは、単一の病名ではなく、種々の原因となる疾患により記憶障害など認知機能が低下し、生活に支障が出ている状態である ・原因となる主な疾患として、 アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(ピック病など)がある ・認知機能の障害の他に、行動・心理症状(BPSD)と呼ばれる症状(徘徊、不穏、興奮、幻覚、妄想など)がある 〔主な対応〕 ・高齢化社会を迎え、誰もが認知症とともに生きることになる可能性があり、また、誰もが介護者等として認知症に関わる可能性があるなど、認知症は皆にとって身近な病気であることを理解する ・各々の価値観や個性、想い、人生の歴史等を持つ主体として尊重し、できないことではなく、できることに目を向けて、本人が有する力を最大限に活かしながら、地域社会の中で本人のなじみの暮らし方やなじみの関係が継続できるよう、支援していく ・早期に気付いて適切に対応していくことができるよう、小さな異常を感じたときに速やかに適切な機関に相談できるようにする ・BPSDについては、BPSDには 、何らかの意味があり、その人からのメッセージとして聴くことが重要であり、BPSDの要因として、さまざまな身体症状、孤立・不安、不適切な環境・ケア、睡眠や生活リズムの乱れなどにも目を向ける ・症状が変化した等の場合には、速やかに主治医を受診し、必要に応じて専門機関に相談することなどを促す P38   難病 〔主な特性〕 ・神経筋疾病、骨関節疾病、感覚器疾病など様々な疾病により多彩な障害を生じる ・常に医療的対応を必要とすることが多い ・病態や障害が進行する場合が多い 〔主な対応〕 ・専門の医師に相談する ・それぞれの難病の特性が異なり、その特性に合わせた対応が必要 ・進行する場合、病態・障害の変化に対応が必要 ・排泄の問題、疲れやすさ、状態の変動などに留意が必要 ・体調がすぐれない時に休憩できる場所を確保する P11 (以降、参考ページ)   ■障害特性や特性ごとの配慮事項等 ※障害特性や特性ごとの配慮事項等を知るには、例えば、以下のようなホームページがあります。 【内閣府】公共サービス窓口における配慮マニュアル ‐障害のある方に対する心の身だしなみ- http://www8.cao.go.jp/shougai/manual.html 【厚生労働省】みんなのメンタルヘルス http://www.mhlw.go.jp/kokoro/ 【青森県】障害を知るためのガイドブック https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/syofuku/kyouseishakai.html 【群馬県障害者社会参加推進協議会】障害のある方へのマナーブック http://www.normanet.ne.jp/~gunmasin/pdf/syogai_mb.pdf 【千葉県】障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン https://www.pref.chiba.lg.jp/shoufuku/shougai-kurashi/jouhouhoshou/guideline.html 【東京都心身障害者福祉センター】改訂版「障害のある方への接遇マニュアル」 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/tosho/hakkou/index.html 【八王子市】みんなちがってみんないい(障害のある人を理解するためのガイドブック) http://www.city.hachioji.tokyo.jp/korei_shogai/36129/37422/index.html 【武蔵野市】心のバリアフリーハンドブック http://www.city.musashino.lg.jp/shogai/shogaishafukushi_c/015620.html 【厚木市】この街でともに…〜障害のある人を理解するためのガイドブック〜 http://www.city.atsugi.kanagawa.jp/shiminbenri/iryofukusi/fukushi/shougai/guide/d014788.html 【富山県】障害のある人もない人も共に暮らしやすいまちづくりのためのアドバイス事例集(障害のある人が「困った」事例から) http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1209/kj00011743.html 【大阪府】障がい者が必要とする社会的障壁の除去のための配慮や工夫の事例について http://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/go-hai/ 【島根県・鳥取県】障がいを知り、共に生きる〜まず、知ることからはじめましょう〜 http://www.pref.shimane.lg.jp/medical/fukushi/syougai/ippan/aisupport/supporter.data/H26panhu.pdf http://www.pref.tottori.lg.jp/aisupport/ 【熊本県】障害のある人もない人も共に生きる熊本づくりのために(パンフレット) http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_3020.html 【宮崎県】障がい理解のためのハンドブック http://www.pref.miyazaki.lg.jp/shogaifukushi/kenko/shogaisha/shougairikai.html 【沖縄県】こころのバリアフリー2(各種冊子) http://www.pref.okinawa.lg.jp/site/kodomo/shogaifukushi/keikaku/jorei/bf2.html 【名古屋市】こんなときどうする?‐障害のある人を理解し、配慮のある接し方をするためのガイドブック‐ http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/22-2-0-0-0-0-0-0-0-0.html 【福岡市】ユニバーサルデザインに配慮した印刷物作成の手引き http://www.city.fukuoka.lg.jp/shisei/kouhou-hodo/kankoubutsu-video/ud.html P13   ■障害特性に応じた具体的対応例(その1)   自分のタイミングで移動したい(視覚障害@) 全盲の視覚障害者Aさんは、地域の福祉センターを訪問する際、案内看板等が見えず単独で行くことができませんでした。しかしセンター入り口付近にガイドボランティアが配置され、手助けが必要な人に一声かけてくれるようになったことから、付き添いがなくても一人で通うことができるようになりました。 また併せて、エレベーターや階段の手すりにも点字シールを表示することになり、ガイドボランティアと離れていても、自分のタイミングで移動することが可能になり、御本人の気持ちもとても自由になりました。   アンケートも多様な方法で(視覚障害A) アンケートを取る際に、印刷物だけを配布していました。すると、視覚障害の方から、電子データでほしいと要望がありました。電子データであればパソコンの読み上げソフトを利用して回答できるからとのことでした。 紙媒体という画一的な方法ではなく、テキストデータでアンケートを送信し、メールで回答を受け取るという方法をとることで、視覚障害の方にもアンケートに答えてもらえるようになりました。 P15   ■障害特性に応じた具体的対応例(その2)   研修会等での配慮(聴覚障害@) 聴覚障害者(2級)のAさんは、ある研修会に参加することとなりました。事務局から研修担当者には、Aさんは聴覚障害があるので配慮するよう伝えていましたが、研修担当者はAさんは補聴器を付けていたので問題ないと思い、特段の配慮もなく研修が進められ第1日目が終わってしまいました。Aさんは、補聴器をつけていても、すべて聞き取れる訳ではないことを事務局に相談したところ、次回以降、手話通訳者か要約筆記者(ノートテイク)で対応してくれることとなりました。   呼び出し方法の改善(聴覚障害A) 聴覚障害者(発語可能・4級)のBさんは事務手続きのため、受付を済ませ呼び出しを待っていましたがなかなか呼ばれませんでした。受付に、呼ばれていないことを申し出ると、「名前を呼びましたが、返事がありませんでした」とのことでした。音声による通常の呼び出ししか行われなかったためです。 その後、事務局は対応を検討し、聴覚障害のある方には、文字情報などでも呼び出しを伝え、手続きに関するやりとりに関しても筆談等で対応することとしました。   盲ろう者とのコミュニケーション(盲ろう者) 盲ろう者であるAさんは、通訳・介助者を同伴し、パソコン訓練を実施する施設に相談に行きましたが、盲ろう者との特殊なコミュニケーション方法である「手書き文字」「点字筆記」「触手話」「指点字」ができる職員がいないとの理由で受け入れを断られてしまいました。 後日、Aさんは通訳・介助者を同伴して盲ろう者関係機関に相談したところ、「Aさんは点字ができること、また、手のひらに書く(手書き文字)ことでコミュニケーションがとれることを施設側に伝えたらよいのでは。」との助言を受け、あらためて、Aさんは点字ができること、また、手のひらに書く(手書き文字)ことでコミュニケーションがとれることを施設に説明した結果、施設側も理解を示し、前向きに受け入れる方向で話が進展しました。 P17   ■障害特性に応じた具体的対応例(その3)   建物の段差が障壁に(肢体不自由@) 車椅子を使用している身体障害者(1級)Aさんが、外出中、建物に入ろうとすると大きな段差があり立ち往生してしまいました。 スタッフに協力をお願いしてみると、段差を車椅子で乗り越える手伝いを申し出てくれました。介助のお陰で、無事に建物に入ることができました。   障害への理解が深まれば(肢体不自由A) 座骨部に褥瘡(床ずれ)発生を繰り返している脊髄損傷者Bさん。褥瘡は、長時間座位を保持していることが原因で発生していました。褥瘡悪化による手術で数ヶ月単位の入院を繰り返していました。 納期がせまっており長時間作業をしなければならない場面でも、時間調整や褥瘡予防できる姿勢を確保するため途中で休憩をとることなど周囲の理解と協力を得ることで、褥瘡の発生をおさえ、入退院を繰り返すことなく生活することが可能になりました。 P19   ■障害特性に応じた具体的対応例(その4)   施設での電動車椅子による自立移動(肢体不自由B) 重度の脳性麻痺であるCさんは、介助用車椅子を使用し、施設職員や家族の介助による移動が主でした。リハビリテーションセンターにおいて、施設での電動車椅子による自立移動が可能か検討したところ、座位保持装置や特殊スイッチを装備・使用した電動車椅子で安全に施設内を移動できることがわかりました。 当初、施設側が電動車椅子移動による安全性の確保について懸念していましたが、リハビリテーションセンター担当職員による実地確認や使い方の指導により安全な移動が可能であることが理解され、その結果、施設内で本人の意思により自由に移動することが可能となりました。   脳卒中の後遺症があるが、働くことを希望する方への支援(肢体不自由C) 50歳代で脳梗塞(脳卒中の種類の1つ)を発症し、入浴、更衣、屋外の外出などに介助が必要であることから、日中自宅に閉じこもりがちであるが、今後、働くことを希望しているDさん。本人の残存能力を踏まえ、更衣や外出練習などを提供する通所リハビリテーションに通うことになりました。訓練により、就労に向けて活動するための機能が向上し、地域の就労継続支援事業所に通うことで社会参加できるようになりました。 P21   ■障害特性に応じた具体的対応例(その5)   話すことの障害(失語症) 失語症(発語がうまくできない)のAさんが、買い物に行きましたが、自分の欲しいものを探すことができませんでした。店員にどこにあるのか尋ねようとしましたが、欲しいものをうまく伝えられず、時間が経過するばかりでした。 店員は、Aさんが言葉をうまく話せないことがわかったため、「食べ物」、「飲み物」、「日用品」等と的を徐々に絞って確認していく方法をとったところ、Aさんの欲しいものが判明し購入することができました。 P23   ■障害特性に応じた具体的対応例(その6)   メモを活用して行き違いを防止(高次脳機能障害) 高次脳機能障害のAさんに、先ほど伝えたことを忘れて勝手な行動をしていると注意したところ、聞いていなかった、知らないと逆に怒り出してしまいました。Aさんは普段、難しい言葉を使ったり、以前のことをよく覚えている方なので、高次脳機能障害の特性を知らない周囲の人は、Aさんはいい加減な人だと腹を立てて、人間関係が悪化してしまいました。 高次脳機能障害者は受傷前の知識や経験を覚えている場合が多いのですが、直近のことを忘れてしまいがちであるという説明を受け、周囲の人は、障害の特性であることを理解することができました。また、口頭で伝えたことは言った、言わないとトラブルのもとになりやすいので、メモに書いてもらい、双方で確認するようにしたら、トラブルがおきなくなりました。   ■介護予防・日常生活支援総合事業における共生の場 介護保険制度では、市町村の事業として、住民等の多様な主体が参画し、地域の支え合い体制を推進することで要支援者等の自立支援や介護予防につなげる介護予防・日常生活支援総合事業が平成27年度から順次施行されています。 介護予防・日常生活支援総合事業は、市町村が地域の実情に応じて独自のサービスを設定していくこととなりますが、市町村がこの事業を円滑に実施できるよう、設定されるであろうサービス内容の例などを記載したガイドラインをお示ししています。 その中で、高齢者のみならず障害者や児童など分け隔てなく自主的に集まり互いに支え合う場を作り出すことに対して、補助などを行い促進することができる共生型の通いの場を紹介しています。 障害者差別解消法は共生社会の実現を目的としており、共生型の通いの場は、同目的にも資するものであると考えられます。    P27   ■障害特性に応じた具体的対応例(その7)   作業能力を発揮するための一工夫(知的障害@) Aさんは、作業能力はあるけれど、不安が強くなると本来の作業能力が発揮できなくなってしまいます。Aさんの担当は清掃作業。1フロアーを一人で担当するように任されていましたが、広い範囲を一人で任されることに不安を感じ、本来の作業能力を発揮できずミスが増えていました。 作業量は変えずに2フロアーを2人で担当する様にしたところ、Aさんの不安が減少し、本来の能力を発揮できるようになり、ミスも減りました。   対人コミュニケーションに困難を抱える若者の就労支援(知的障害A) Bさんは、高校を中退後、一時アルバイトを経験したものの、すぐに辞めてしまってからは就労から遠ざかった生活を続けていました。軽度の知的障害が疑われ、対人コミュニケーションに課題を抱えるBさんは、以前、アルバイト先の上司から強く叱責を受けたことで、すっかり自信と意欲を失っていたのです。 生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関は、すべての書類にルビを振り、また、Bさんが理解するまで繰り返し丁寧な説明を行うなど、Bさんの社会参加に向けて粘り強い支援を行いました。並行して、就労支援員がBさんの特性に理解のある職場の開拓をすすめました。その結果、アルバイト経験があり、本人の関心の高い飲食業界において、就労訓練事業として週3日、3時間程度の就労から始めることになりました。現在も、自立相談支援機関がBさん本人と就労先双方へのフォローを行いながら就労の継続を支援しています。   一人暮らしの金銭管理をサポート(知的障害B) 一人暮らしをしながら地域の作業所に通うCさんは、身の回りのことはほとんど自分でできますが、お金の計算、特に何を買うのにいくらかかるのかを考えて使うのが苦手なため、日常の金銭管理をしてくれる福祉サービス(日常生活自立支援事業)を利用することになりました。 生活支援員と必要なお金について1週間単位で相談し、一緒に銀行に行ってお金を下ろし、生活することになりました。買い物のレシートをノートに貼ることもアドバイスをうけ、お金を遣い過ぎることがなくなりました。また、お金がどれくらいあるのか心配なときは、支援員さんに聞けば分かるので安心とCさんは話しています。 P29   ■障害特性に応じた具体的対応例(その8)   コミュニケーション支援機器を用いた就労訓練(発達障害@) 発達障害のAさんは、就労訓練サービスを利用しています。挨拶、作業の終了時、作業中に必要と思われる会話(「おはようございます」「さようなら」「仕事が終わりました」「袋を持ってきてください」「紐を取ってください」「トイレへ行ってきます」「いらっしゃいませ」「100円です」等)をVOCA(会話補助装置)に録音し、伝えたいメッセージのシンボル(絵・写真・文字)を押してコミュニケーションをとるようにしたことで作業に集中することができ、休みなく事業所へ通う事ができるようになりました。   個別の対応で理解が容易に(発達障害A) 発達障害のBさんは、利用者全体に向けた説明を聞いても、理解できないことがしばしばある方です。そのため、ルールや変更事項等が伝わらないことでトラブルになってしまうことも多々ありました。 そこで、Bさんには、全体での説明の他に個別に時間を取り、正面に座り文字やイラストにして直接伝えるようにしたら、様々な説明が理解できるようになり、トラブルが減るようになりました。   本人が安心して過ごすための事前説明(発達障害B) 発達障害のCさんは、就労継続支援事業を利用していますが、広い作業室の中で職員を見つけることが出来ない方でした。職員に連絡したくても連絡できず、作業の中で解らないことや聞きたいことがあってもそれが聞けず、不安や混乱が高まっていました。 そこで、来所時にあらかじめCさんに職員の場所を図で示したり、現地を確認する、ユニフォームの違いを伝えるなど、職員をみつけるための手がかりを知らせておくようにしたら、Cさんは安心して作業に集中できるようになりました。   苦手なことに対しては、事前のサポート(発達障害C) 発達障害のDさんは文字の読み書きが苦手であり、様々な手続きの際、書類の記入欄を間違えたり、誤字を書いてしまったりして、何回も書き直さなければなりませんでした。 そこで、Dさんの相談を受けている職員は、「記入欄に鉛筆で丸をつけたり付箋を貼って示す」「書類のモデルを作成して示す」「職員が鉛筆で下書きする」などを試したところ、書類作成を失敗する回数が少なくなりました。 P31   ■障害特性に応じた具体的対応例(その9)   自己コントロール力をつけるために (障害児@) 自閉症スペクトラム(発達障害)のAさんは知的にはかなり高い児童ですが、ちょっとした思い込みや刺激が元で、トイレや空室に長時間(長い場合は10時間近く)急に籠もってしまうことが多くありました。 そこで、不適応を起こしそうになった場合(「起こす前」がポイント)に、事前に決めておいたルールに基づいて(例えば何色かのカードを用意し、イエローカードを見せたら事務室でクールダウンする、レッドカードであったら個別対応の部屋に行きたい等)自らがサインを出して対応方法を選択する経験を繰り返し積むことで、徐々にカードを使用せずに感情の自己コントロールができるようになってきました。約半年ほどで不適応を示すことが殆どなくなり、生活が安定しました。   日常生活動作を身につけるために(障害児A) 保育所に通う発達障害児のBちゃんは、靴をそろえる、トイレにしっかり座るといった日常生活の動作の一部が十分に身についていません。言葉による説明よりも、視覚情報による説明の方が伝わりやすいため、これらの動作の順番を具体化した絵を作成し、必要に応じて見せるようにしています。また、話しかける際にも、顔を見ながら、穏やかに静かな声で話しかけるようにしています。 P33   ■障害特性に応じた具体的対応例(その10)   薬が効くまでの時間をもらえると(精神障害) Aさんは、精神障害当事者としての経験を活かして、福祉サービス事業所でピアサポーターとして活動しています。しかし、月に一度位は幻聴が出現することがあり、Aさんは活動に支障が出ることをとても心配していました。職員に相談すると、「普段はどうしているのですか?」と質問され、Aさんは頓服薬を飲んで1時間位静養すると治まってくると説明しました。すると、「ご自分で対処できるならそうして下さい」「症状があっても、工夫をしながら活動を続けられるといいですね」「他の利用者の励みになるのだから気にする必要はないと思います」と言われて、幻聴が出た時は頓服が効くまで静養できることになりました。その後、Aさんは、ピアサポーターとして自信を持ちながら、安心して活動を続けています。 P35   ■障害特性に応じた具体的対応例(その11)   介護老人保健施設での対応(高齢者@)   様々な障害があっても生活がしやすいように、点字ブロック、車いす用のトイレ、入所者用の居室階へ行くためのエレベーターの設置などを行いました。また、聴覚障害のある入所者とコミュニケーションを図れるよう部屋に筆談用の用具を置くなどの配慮を行っています。   特別養護老人ホームにおける対応(高齢者A)  特別養護老人ホームにおいて地域交流活動を行う際、ボランティアのAさん(視覚障害者)が資料や小道具を作ろうとしましたが、パソコンでの作業に手間取ってしまいました。そこで、施設は、職員や他のボランティアの人が共同して作成することに加え、施設で導入していた音声認識ソフトや点字付きキーボードを利用してもらうことによって、Aさんが作業しやすい環境を作るように働きかけました。   デイサービスを利用する前の交流(高齢者B)   Bさん(精神障害者)は、要介護認定を受け、介護保険のデイサービスを利用することとなりました。しかし、家族から、Bさんは、知らない人と接することが苦手でありデイサービスのような人が集まる場に行くことは、精神的な負担が大きいのではないか、と心配の声が寄せられていました。 そこで、デイサービスの職員は、いきなりデイサービスを利用するのではなく、まずはBさんの自宅で交流を重ね、Bさんと親しくなることにしました。その後、Bさんは親しい職員がいることで、安心してデイサービスの場に通うことができるようになりました。 P39   ■障害特性に応じた具体的対応例(その12)   色素性乾皮症(XP)児の保育所における対応(難病) 遮光対策が必要な疾病である色素性乾皮症患児のAちゃんは、紫外線対策がなされていない保育所に入所することは困難です。 入所を希望する保育所と話し合った結果、UVカットシートを保育室等の窓ガラスに貼ること、紫外線を遮断するため窓は常時閉鎖しておくのでエアコンをとりつけること、日光に当たってしまった際の対応策などを保育所側に十分把握してもらったうえで、他の保育園児・保護者への説明も十分行うことで疾病に対する理解を得て、安心して保育所に通うことができるようになりました。   ■障害者総合支援法の対象となる疾病について 平成25年4月より、難病等が障害者総合支援法の対象となり130疾病を対象としていましたが、指定難病(医療費助成の対象となる難病)の検討を踏まえ、平成27年1月より、障害者総合支援法の対象疾病が151疾病に拡大されました(第1次検討)。 また、第2次検討の結果、平成27年7月から332疾病に拡大されました。 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hani/index.html 対象となる方は、障害者手帳(※1)をお持ちでなくても、必要と認められた障害福祉サービス等(※2)が受けられます。 ※1身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳 ※2障害者・児は、障害福祉サービス・相談支援・補装具及び地域生活支援事業(障害児は、障害児通所支援と障害児入所支援も含む) *難病の特徴(症状の変化や進行、福祉ニーズ等)については、「難病患者等に対する認定マニュアル(平成27年9月)」を参照ください http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/1_13.pdf P25   ■障害者差別解消支援地域協議会とは 障害者差別解消法では、国及び地方公共団体の機関であって、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事する者(以下「関係機関」)は、社会生活を円滑に営む上での困難を有する障害者に対する支援が効果的かつ円滑に実施されるよう、関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会(以下「地域協議会」)を組織できるとされています。(法第17条第1項) 1 地域協議会とは <地域協議会の事務> 障害者差別に関する相談等に係る協議や地域における障害者差別を解消するための取組に関する提案に係る協議を行う ※個別事案ごとに差別か否かの判断を行うことまでは想定されていない ・事案の情報共有や構成機関への提言 ・地域における障害者差別解消の推進のための取組に関する協議・提案 ・事案の解決を後押しするための協議 など <対象となる障害者差別に係る事案> 一般私人による事案は地域協議会における情報共有の対象としないが、環境の整備に関する相談、制度等の運用に関する相談については情報共有の対象とする 2 地域協議会の組織 都道府県、市町村、特別区など地方公共団体が主導して組織する   詳細については、内閣府ホームページに掲載されています。  http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html