パブリック・コメント  厚生労働省ホームページ

「遺伝子組換え食品の安全性審査の手続を経た旨の公表について」
に対して寄せられたご意見等について

平成14年4月
厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課

 遺伝子組換え食品安全性審査の手続を経た旨の公表については、平成13年12月21日から平成14年1月21日まで、ホームページ等を通じてご意見等を募集したところ、3件のご意見、ご要望をいただきました。
 お寄せいただいたご意見等についての当省の考え方につきまして、以下のとおり取りまとめました。
 なお、取りまとめの便宜上、案件ごとに適宜集約しております。


とうもろこし(鞘翅目害虫抵抗性トウモロコシMON863系統)について

なぜ米国において販売されているBt蛋白質との相同性を比較したのか。

 本トウモロコシ中で新たに発現する、Bt蛋白質のひとつであるCry3Bb1蛋白質を含む微生物農薬は、米国やヨーロッパを中心に使用されていますが、日本には対象害虫がいないため、販売・使用がされていません。このため、95年から米国で販売されている微生物農薬に含まれるCry3Bb1蛋白質と相同性を比較したものです。アミノ酸レベルで99%以上の相同性を示す結果となっていますが、これだけをもって安全性を結論付けるものではありません。

宿主のとうもろこしのアレルギー誘発性について確認したのか。

 とうもろこしのアレルギー誘発性については、1996年のHelfeらの報告がありますが、事例は数件しかありません。

Cry3Bb1蛋白質のアレルギー誘発性は、アミノ酸配列が数世代安定して存在するので問題ないとしたのはなぜか。

 平成13年12月17日の食品衛生バイオテクノロジー部会の議事録を確認したところ、「Cry3Bb1蛋白質のアレルギー誘発性は、アミノ酸配列が数世代安定して存在するので問題ない」との発言はなく、「発現蛋白質にアレルギー性があるか、あるいは既知のアレルゲンや蛋白質毒素との構造相同性があるかチェックを行ったところ、問題がなかった」旨の発言が確認されました。
 なお、この議事録は、既に厚生労働省のホームページ上で公開しています。


プルラナーゼ(SP962)について

抗生物質耐性マーカー遺伝子が発現する蛋白質の安全性を確認しないのか。

 発現ベクターを構築する過程で、目的とする遺伝子が組み込まれたベクターを選択するために、3種類の抗生物質耐性マーカー遺伝子として、cat遺伝子(クロラムフェニコール耐性)、neo遺伝子(ネオマイシン耐性)、及びamp遺伝子(アンピシリン耐性)が組み込まれています。しかし、cat遺伝子以外は生産菌への導入時に除去されており、cat遺伝子についても、導入後に欠失させています。このため、生産菌では、これらの蛋白質は発現されておらず、その安全性を確認する必要はありません。

Bacillus thuringiensis由来cryIIIA遺伝子が挿入されているのはなぜか。

 発現ベクターを安定させるため、Bacillus thuringiensis由来の「cryIIIA mRNA stabilization配列を含むDNA断片」が挿入されていますが、これはcryIIIA遺伝子そのものではなく、CryIIIA蛋白質が発現することはありません。

毒性学的に意義のある所見や、有意な増加は認められないということで、問題ないといえるのか。

 一般的に、動物を用いた毒性試験においては、投与された動物に所見が認められるか否かなどを確認し、所見が認められた場合には、これが投与による影響かどうかを評価することとなります。
 今回の場合は、一定数のラットにSP962を投与したランダムな結果について(例えば体重や尿検査の結果、臨床生化学検査の結果など)、統計学的な処理を行った結果、問題がないと評価されています。


プルラナーゼ(SP962)及びα−アミラーゼ(SP961)について

添加物に組換え体は混入しないのか。

 組換え体(生産菌)が精製工程において除去され、最終生産物であるプルラナーゼ又はα−アミラーゼに混入していないことについては、検査によって確認されています。


その他

食品衛生バイオテクノロジー部会における審議時間が短く、十分審議されていない。

 とうもろこし(MON863系統)、プルラナーゼ(SP962)、及びα−アミラーゼ(SP961)については、食品衛生バイオテクノロジー部会の下に設置されている「組換えDNA技術応用食品安全評価調査会」において、申請資料に基づき十分な審議がなされており、その結果が食品衛生バイオテクノロジー部会に報告され、審議されたものです。
 とうもろこし(MON863系統)については、H13.6.26及び10.26の2回、プルラナーゼ(SP962)は、H13.3.2、6.26、7.23及び10.26の4回、α−アミラーゼ(SP961)は、H13.4.27、7.23、10.26及び12.7の4回、「組換えDNA技術応用食品安全評価調査会」において審議されました。


安全性審査全般についていただいたご意見等

抗生物質耐性マーカー遺伝子を使用しないでほしい。

 遺伝子組換え作物に導入された抗生物質耐性マーカー遺伝子及びその遺伝子産物については、遺伝子の構造や機能をはじめ、その遺伝子産物の加熱処理や人工消化液に対する感受性、アレルギー誘発性、予想される摂取量等に関する事項について審査を行い、問題がないことを確認しています。
 抗生物質耐性マーカーが腸内細菌の抗生物質耐性を広める可能性については、植物から微生物へ(機能)遺伝子が移行するという知見は得られていないこと、通常、このようなマーカー遺伝子により産生されたたんぱく質は消化管において短時間で分解されること等から、腸内細菌に影響を与えるとは考えられていません。
 また、プルラナーゼ等の添加物については、組換え体そのものを摂食しないため、抗生物質耐性等の遺伝子が体内(腸管内)に取り込まれることはありません。

遺伝子組換え食品の長期的な安全性について試験(慢性毒性試験等)をしてほしい。

 遺伝子組換え食品の安全性審査においては、一律に毒性試験を不要としているものではなく、慢性毒性試験等は必要に応じて実施されるべきとされています。これまでに安全性審査のなされた遺伝子組換え食品は、急性毒性に関する試験を実施しているものもありますが、慢性毒性等に関する試験を実施しなくても安全性に問題はないと、個別に判断されたものです。
 しかしながら、消費者等の不安もあることから、これに応えるため、現在、厚生科学研究事業において毒性試験の実施に関する研究を行っているところです。

遺伝子の挿入により、予期せぬ影響が起きる可能性はないか。

 遺伝子を挿入する際に、場合によっては別の形質の獲得、既存の形質の欠失や改変が起きる可能性が考えられています。このような非意図的な影響の可能性についても、挿入遺伝子の塩基配列や、オープンリーディングフレームの有無等のデータに基づき、確認を行っています。


トップへ
パブリック・コメント  厚生労働省ホームページ