パブリック・コメント  厚生労働省ホームページ

確定拠出年金法の政省令案に寄せられた意見について

平成13年7月16日

厚生労働省年金局
企業年金国民年金基金課

 確定拠出年金法の政省令案について、平成13年7月4日から平成13年7月13日までインターネットのホームページ等を通じて御意見を募集したところ、25通の御意見をいただきました。
 お寄せいただいた御意見とそれらに対する当省の考え方につきまして以下の通り御報告致します。
 とりまとめの都合上、頂いた御意見は、適宜集約しております。
 なお、パブリックコメントの対象でない事項に関する御質問等も寄せられましたが、パブリックコメントの対象となる事項に限って考え方を示させていただいております。

頂いた御意見と当省の考え方

(1) 企業型年金に係る規約に定める事項について
 施行令案第3条中「第3号 法第22条の規定による措置の内容及び方法」は、政令から削除すべき。

 事業主が行うべき資産運用に関する情報提供の内容及び方法については、労使で十分に協議したうえで実施できるよう、規約に定める事項とすることが必要と考えます。

(2) 企業型年金の給付の額の算定方法の基準について
 受給開始後の選択一時金について、第1項第1号ホの「5年を経過した日以後」という規定を削除して欲しい。確定拠出年金は個人ごとに資産が分別されているため、任意に一時金支給を得られるよう認めて欲しい。

 「年金」として給付を受ける以上、5年以上で受給することが必要です。財形年金や適格退職年金でも、年金で受けるときは5年以上で受給することとなっています。

(3) 共同設立型規約について
 共同設立型規約への対応として、規約内容が同一(既に承認を受けている)で企業が追加されるのみの場合は、承認事項ではなく、届出事項のみとしていただきたい。また、同様に規約内容が変更されない場合の既企業の労使合意は事前に労使間で追加の合意が得られていれば不要とされたい。

 企業型年金に事業所を追加する場合には、当該追加された事業所において、確定拠出年金法に定める承認基準(たとえば、掛金の算定方法など)が法律に適合しているかどうか確認する必要があり、届出事項とすることは適当ではありません。また、既に実施している企業においても運営管理機関等の手数料負担の分担等各企業間にわたる問題があり、あらためて労使合意が必要であります。

(4) 事業主が行う通知について
 事業主の負荷を避ける観点からも、企業年金制度の実施状況の通知は行わないこととされたい。
 本通知の趣旨は、「事業主掛金の拠出限度額の確認」にあると思われる。ところが、確定拠出年金法では、記録関連運営管理機関に対し事業主掛金が拠出限度額内であるかどうかの確認義務は課されておらず、本通知の位置づけ、用途が不明である。
 なお、「事業主掛金の拠出限度額の確認」をしなければならないのであれば、石炭鉱業年金基金や私立学校教職員共済制度等の対象であるかどうかの通知も必要と思われる。

 運営管理機関は、事業主掛金の拠出限度額の確認義務を当然に負っており、事業主掛金の拠出限度額の確認のため、企業年金制度の実施状況の通知は必要です。
 また、石炭鉱業年金基金などの対象であるかどうかについても、事業主が記録関連運営管理機関に通知するよう規定しています。

(5)
 企業型年金加入者が他制度の加入資格を取得した旨の通知は、行わないこととされたい。
 本通知の趣旨は「退職所得控除の重複適用の排除」にあると思われるが、日本の納税制度は申告納税制であり、その原則に則れば、確定拠出年金からの一時金受給時に、受給権者が過去に他制度から退職手当等が支払われた事実やそのときの「退職所得控除額」「源泉徴収税額」等を申告すれば足りると思われる。

 退職所得課税のより適正な執行を図るため、記録関連運営管理機関等に対し、ご指摘の事項を通知する必要があると考えています。

(6)
 同上の理由から、他制度から企業型年金加入者に退職手当等が支払われたときの通知を行わないこととされたい。
 なお、通知をするにしても、他制度から支払われた退職手当等が退職所得控除に満たないこともあるので、「退職手当等の額」及び「源泉徴収税額」の通知も必要となる。(原案では満たない場合であっても、先に支払われた退職手当等に係る退職所得控除全額が確定拠出年金の退職所得控除から控除されてしまう)

 退職所得課税のより適正な執行を図るため、記録関連運営管理機関に対し、ご指摘の事項を通知する必要があると考えています。

(7) 運営管理業務の委託について
 運営管理機関は商品の提示行為のみを行い、個別商品の募集・勧誘行為は行えないと理解している。したがって、運営管理機関が金販法に基づく「勧誘方針」を策定する必要はないと考える。

 金融商品販売法は、確定拠出年金の運営管理機関と加入者の間には適用されないこととなっておりますが、運営管理機関が行う運用商品の選定及び提示は、金融商品販売法の対象となる金融商品の販売の代理や媒介に類するものであり、加入者保護を図る観点から、「勧誘方針」を策定することが必要であると考えます。

(8) 運用商品に関する要望について
 確定拠出年金用に新たに開発された運用商品が、確定拠出年金制度以外の制度でもそのまま採用できるようにすべき。

 確定拠出年金用の運用商品は、法律上は確定拠出年金以外の制度でもそのまま活用できるものと考えていますが、確定拠出年金制度以外の制度で活用されたときは、確定拠出年金に係る税制の適用は受けず、一般の金融商品と同じ取扱いになります。

(9)
 変額年金保険の複数の運用メニューである勘定(リスクリターン特性のある3以上の特別勘定を設定)は、施行規則第18条(運用の方法の選定基準)における相互に類似しない3以上の運用方法を満たしていると考えてよいか。

 貴見のとおりです。

(10) 元本確保の運用方法について
 元本確保の運用方法に規定するものとして、投資信託商品であるMRF、MMF、中期国債ファンド等を加えて戴きたい。

 元本確保の運用方法に規定するものは、預金保険法等の法律により資産が保護されていることが必要なものであり、こうした保護がないMRFなどをはじめとする御指摘の商品を元本確保商品とすることはできません。

(11) 運用の方法に係る情報の提供について
 情報提供にあたっては、運用面において電子媒体等による配布を認めていただきたい。また、個別運用商品の目論見書等を加入者に個別に配送するといったコスト増につながる仕組みは求めないようにして欲しい。

 情報の提供の方法については、紙媒体に限定したものではなく、電子媒体等様々な対応が可能です。また、目論見書等の内容については、加入者等がそのファンドの商品性を知る上で必要不可欠なものと考えていますので、目論見書等を加入者に個別に配送するか、又はそれに準じた方法により、目論見書等の内容を加入者に提供する必要があります。

(12)
・ 過去10年の実績が必要となっているが、過去の実績は預貯金であれば公定歩合、株式投信であれば日経平均等に左右される。かえって、運用指図を行う上でミスリードにならないでしょうか。直近1年とすべき。
・ 10年とした場合は、年ベースの数字としていただきたい。
・ 加入者等に提示した日の属する月の前月の末日から起算して10年間となっておりますが、資料作成が間に合わない場合が有りえるので、前々月としていただきたい。(例えば、10月1日に提示する場合、その前月の9月末日から起算した情報を盛り込んだ資料を作成することができないなど。)

・ 自己責任で運用することとなる確定拠出年金の加入者が、長期的な視点に立って資産運用ができるよう、運営管理機関に対し、過去10年間の実績に関する情報の提供を義務づけたものであります。
・ 有価証券などは、日々刻々と価値が変動することから、年ベースとしては意味がないものと考えます。確定拠出年金では、加入者は3ヶ月に1回以上の頻度で運用の指図の変更ができることから、少なくとも3ヶ月に1回のベースの数字とすべきと考えています。
・ 加入者にできる限り直近の情報を提供できるよう、前月の末日から起算した情報を提供する必要があると考えています。

(13) 企業年金等からの資産の移換について
 厚生年金基金や適格退職年金から資産を移換する場合に、積立不足がないことという条件があるが、責任準備金において積立不足がある場合であっても、制度移行時点で、会社都合退職金を支給する十分な積立がある場合、移換を認めるべきではないか。

 確定給付の企業年金から資産の移換を行う場合には、資産の移換に関与しない者にとって不利益とならないよう、積立不足がないことという要件を課しているところであります。

(14)
(1) 退職金制度からの移行の場合には、「翌年度から起算して3年度以上7年度以内の均等分割」払込移換とされているが、一括移換を認めるべきである。
(2) また、分割移換の場合には、利息相当額も考慮可能とすべきである。
(3) さらに、自己都合退職金に限定せず、会社都合退職金を基準とすることも可能とすべきである。

・ 現行の退職金制度から厚生年金基金等へ資産を移換する場合、厚生年金基金等の積立不足に充てる掛金の拠出や退職給与引当金の取り崩しのルールによって、3年以上7年以内で移換されることとなっており、これと同様の取り扱いとしたものです。
・ 分割移換の場合の利息相当額は移換できるよう手当てすることとしています。
・ また、現行の退職給与引当金は、自己都合の退職金に基づいて引き当てられているため、退職金制度から確定拠出年金に資産を移換する場合も同様に自己都合としたものです。

(15)
 厚生年金基金及び実施事業所から、他の制度からの移換限度額の計算、通知を求められたときに、企業型記録関連運営管理機関が拒否してはならないとされる根拠が不明である。
 誰が移換限度額を計算するかは、当事者間で決定すべきものであると思われる。

 確定拠出年金に資産を拠出する側である厚生年金基金等は、確定拠出年金への資産移換に係る限度額を算出するための個人情報等を有していない場合が多いと考えられるが、移換限度額を知らずに厚生年金基金等が移換額を算出することは適当でないことから、厚生年金基金等から移換限度額の計算等を求められた場合には、加入者の個人情報を記録保存し、移換限度額を容易に計算できる記録関連運営管理機関に対し、その求めに応じる義務を課すこととしたものである。

(16) 年1回の現況証明書について
 「毎年1回、加入者が次に掲げる資格の取得の有無を連合会に届け出る」とあるが、加入者ごとの届出では、届出を要する加入者および届出を受理する連合会双方においてコストが大変ではないか。事業主による作業とするなどの方法は考慮できないものか。また、第2項で証明書類の添付が定められているが、これも事業主からの届出とすることなどで簡略化は図れるのではないか。

 国民年金基金連合会が加入者の重複加入の防止や拠出限度額の確認を適切に行うことができるよう、加入者が毎年1回現況証明書を提出する必要があると考えています。

(17) 規約の変更の承認の申請について
 規則第三十四条により保険会社が法第六十一条第一項第一号、第二号及び第五号が行えることが明らかとなったが、法第六十一条第一項第三号の業務も行えることとして頂きたい。

 生命保険会社は、保険業法上、他の者の資産の管理を行うことができないことから、確定拠出年金法第61条第1項第3号の業務を行うことは困難です。

(18) 農業協同組合の登録の変更届出について
 出資の総額にかかる変更の届出は、農業協同組合法第77条第2項の規定により出資の総口数及び払込済出資の総額の変更登記を行う毎事業年度末現在の額を届け出ることとするよう要望する。

 貴見の通り対応して問題ないと考えています。

(19) 業務の引継ぎについて
 運営管理機関の業務引継事項として、「加入者等に提示した運用の方法に係る情報の内容」が規定されているが、以下の理由から、当該引継事項は削除して欲しい。

・ 本事項は、加入者等の保護の観点からも引継ぐ必要性が乏しい(同号に規定する「運用の方法の内容」で十分)と考えられるほか、このような情報を他の機関に提供するのは抵抗感がある。


 引継事項の内容については、加入者保護の観点からではなく、むしろ、引き継いだ運営管理機関がこれまでに加入者に提供された情報を踏まえて適切に業務を行うことができるようにするという観点から引継内容を定めており、運用の方法に係る情報の内容を引き継ぐことが必要と考えています。

(20) 個人情報の取扱いについて
 個人情報の取扱いについては、個人を特定し得る情報については、個人の同意がない限り情報開示はあってはならないと考えるが、個人を特定し得ない情報については、必要以上の制約を課してはならないと考えるがどうか。

 個人情報保護に係る規定の趣旨は個人の権利が損なわれることがないようにするという趣旨であり、個人を特定していない情報であれば、その限りではありません。

(21) 運営管理機関の禁止行為
 法第99条(確定拠出年金運営管理機関の行為準則)第2項(個人情報の取扱い)のただし書の規定と同様に、運用商品の販売等に係る事務を行う者が運営管理業務を併せて行うことを禁止するとの規定の中に、加入者等本人が「併せて行うこと」に同意する場合を除外する旨を定めて欲しい。

 確定拠出年金は自己責任で運用する制度であり、あくまでも加入者自らの判断で運用方法を選択できるよう、加入者の同意の有無によらず、厳格に適用されるべきものであると考えています。

(22)
 運営管理機関の禁止行為として「…運用の方法の販売若しくはその代理若しくは媒介又はそれらに係る勧誘に係る事務を行う者(役員、営業所の長その他これに類する者を除く。)が、運用関連業務に係る事務を併せて行うこと。」としているが、必ずしも組織の分離を求めている訳ではないと解釈してよいか。

 本禁止行為の趣旨は、金融機関が運営管理機関となった場合であっても、利益相反が生じないようにし、加入者保護ができる限り図られるようにするものであります。
 このため、必ず常に組織の分離を必要とするものではありませんが、こうした観点を踏まえて、その具体的な取扱いについては、別途通達等により明らかにすることとしております。

(23) 帳簿書類について
 加入者毎に帳簿書類を作成する必要はないと考えるが、どうか。

 確定拠出年金は個人単位の制度であり、加入者毎の記録を管理する必要性から帳簿書類の作成は必要です。


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