パブリック・コメント  厚生労働省ホームページ

「腸炎ビブリオ食中毒防止のための水産食品に係る規格基準の設定について」
に対して寄せられたご意見等について

平成13年5月
厚生労働省医薬局
食品保健部基準課

 食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)及び表示の基準(昭和23年厚生省令第23号)に係る水産食品の基準設定について(腸炎ビブリオ食中毒防止のための水産食品に係る規格基準の設定について)は、平成13年1月26日から2月25日まで、ホームページ等を通じてご意見を募集したところ、のべ105件のご意見、ご要望をいただき、ありがとうございました。
 お寄せいただいたご意見等とそれらに対する事務局の考え方について次のとおりとりまとめました。
 お寄せいただきましたご意見等につきましては、とりまとめの便宜上、案件ごとに適宜集約させていただいております。
 今回、ご意見をお寄せいただきました方々のご協力に厚く御礼申し上げます。



「腸炎ビブリオ食中毒防止のための水産食品に係る規格基準の設定について」
に対して寄せられたご意見等の募集結果について

1 成分規格について

(1) 腸炎ビブリオ最確数100以下は、流通チャネルの縮減、生産者側への負担が強いられることから、実態を一層踏まえた上で実施する必要がある。

 近年の腸炎ビブリオによる食中毒は、細菌性食中毒の大半(患者数で約半数)を占め(平成10年で約12,000人の患者)、また、被害者は幅広い年齢層にまたがり、高齢者で死者が出るなど、健康被害のうえでも重大な問題となっています。
 この食中毒の原因は、刺身等、生で喫食する鮮魚貝類によるものが大半であることから、今般、切り身又はむき身にした生食用鮮魚貝類等について、製品1gあたり腸炎ビブリオ最確数100以下等の成分規格や使用する海水の基準等を設定することとしたところです。
 また、規格基準の検討に際しては、業界の意見を聴取すると共に、全国の実態を踏まえるための調査を実施しており、平成12年夏期に厚生省と都道府県が行った調査結果では、腸炎ビブリオ最確数が100を超える生食用魚介類加工品は1%未満となっています。

(2)腸炎ビブリオの検査は個人経営では設備的、知識的に対応困難である。

 腸炎ビブリオの検査は、民間の検査機関等において有償で検査可能です。また、腸炎ビブリオの特性等に関する知識の普及について取り組んでまいりたいと考えます。

2 加工基準について

(1)魚屋で加工時に使用器具を毎回消毒することは不可能である。

 腸炎ビブリオ食中毒の主な発生要因である原材料や器具、手指等を介した二次汚染防止の観点から、加工時に使用する器具の洗浄・消毒は必要不可欠であると考えます。なお、アルコールスプレーの噴霧等、簡便な消毒方法もあるので参考としてください。

(2) 生食用鮮魚類に使用する調理器具は、原料用と加工用に区別した方が食中毒予防として良いのではないか。
(3) 製造室内に生け簀を持つ施設は、生け簀からの汚染防止対策をとる必要がある。

 原料用の鮮魚介類等からの二次汚染を防止するため、使用する調理器具等は区別することが望まれます。また、生け簀からの汚染防止対策も大切です。今回の改正案では「原料用鮮魚介類は、飲用適の水で十分に洗浄し、製品を汚染するおそれのあるものを除去しなければならないこと。」とされていますが、ご指摘の内容についても、必要に応じ、都道府県等による指導が行われることとなります。

(4) 加工に海水を使用する場合、腸炎ビブリオ陰性ではなく殺菌海水または人工海水を使用する規定の方が現場サイドに分かりやすい。

 ご指摘のとおり、「海水を使用する場合は、殺菌海水又は人工海水を使用すること。」としています。

(5) 個人経営で滅菌海水装置等は金銭的に対応不可能。
(6) 産地市場で海水を使用しないためには、施設整備に相当な猶予期間が必要。
(7) 生食用魚介類の洗浄に外海の海水を使用を可能とすること。
(8) 生け簀中で魚を保管する場合の保存基準として、殺菌海水(人工海水)を使用し、必要に応じて換水する旨を定めること。
(9) 小売店による販売以前の流通過程による保存については、どのような規制が行われるのか。

 使用水は、殺菌海水のみに限定するものではなく、飲用適の水を使用した人工塩水等でも問題ありません。
 また、加工基準に定められている使用水の規定は、切り身又はむき身にした生食用鮮魚介類や煮かに(ゆでかに)等それぞれの食品を製造・加工する場合に適応され、丸のままの魚介類に対しての規制ではありません。
 但し、水産食品の衛生対策を確保する観点から、漁獲後の魚介類を海水で洗浄する場合や生け簀中で魚を保管する場合は殺菌海水、人工塩水等(腸炎ビブリオ陰性であれば外海の海水でも問題ありません。)を使用するように努めてください。

(10) 殺菌海水や人工塩水について水質基準を設定すべきである。(一般生菌数:100個/ml以下、大腸菌群:陰性、腸炎ビブリオ:陰性) なお、検査にあたっての採水は、給水栓(人工海水の場合は調整時)とすべきである。

 今回の規格基準の改正は、腸炎ビブリオによる食中毒を防止するためのもので、製造・加工時の殺菌海水や人工海水の使用は、腸炎ビブリオによる二次汚染防止のためのものです。このような観点から殺菌海水や人工海水に対しては、基本的に腸炎ビブリオが陰性であることが求められます。

3 保存基準について

(1) 流通、販売時の10℃保存には流通チャネルの縮減、生産者側への負担が強いられることから、実態を一層踏まえた上で実施する必要がある。
(2) 夏期にオープンケースで10℃保存は困難である。
(3) 10℃以下ではなく4℃以下とすることが望ましい。
(4) 生食用鮮魚貝類加工品の保存温度は10℃以下に努めること。
(5) 「カニ・タコ」の店頭販売では、通常は売台に敷氷した上に並べて販売しているが、食品衛生管理上、冷凍ショーケースを設備する必要がある。

 腸炎ビブリオの増殖速度は他の細菌と比較してとても速く、この菌の増殖を防止するためには、4℃以下が最も最適であるとされ(増殖しないだけでなく、減少傾向になる。)、10℃を超えると数時間で食中毒を起こす菌量まで増殖するといわれています。
 厚生省と都道府県の調査結果でも、1〜2割程度の生食用魚介類が10℃以上で保管されていました。腸炎ビブリオ食中毒の予防のためには、10℃以下で保存することが極めて重要です。10℃以下の保存は、氷詰め等でも対応が可能であるため、実体上、不可能ではないと理解しています。
 また、消費者の方々へも生食用の鮮魚介類を購入した場合、速やかに冷蔵庫に入れ、冷蔵保存下を出てから、できる限り速やかな消費に心がけるよう啓発することとしています。

(6)煮かに(ゆでかに)を容器包装に入れて販売することは、現実的に不可能ではないか。

 これまでの煮かに(ゆでかに)を原因食品とした大規模な食中毒の発生原因は、加熱後の二次汚染であり、販売時等において二次汚染防止策を講じていれば、容器包装に入れて販売する必要はないこととします。

4 表示基準について

(1) 対面販売の場合は、必要な情報は直接消費者に情報提供可能であるので、表示基準の適応を免除されたい。(昭和45年8月1日環食330号参照)
(2) 客の求めに応じ魚介類を切り身、むき身にする場合、保存基準、表示基準の適応を免除されたい。

一般の加工食品を含め、表示義務が免除される場合の取扱いは従前のとおりです。

(3) 立て札等による一括表示は認められるか。

 食品衛生法に基づく表示は、衛生上の観点から定められているものであり、個別の容器包装に、開かないでも容易に見ることができるように見やすい場所に記載することが必要です。

(4)加工用の魚介類についても「加工用」の表示を義務付けるのか。

 現在の表示基準の改正案においては「加工用」の表示は義務付けていません。

(5) 消費期限は、鮮度を基準として経験的に設定して良いか。

 客観的な判断による必要があるため、経験的に設定するのではなく、食品の特性等に応じた科学的根拠に基づき設定しなければなりません。
 なお、期限の設定に関する指導・助言は、都道府県等で実施しているのでご相談ください。

5 施行時期について

(1) 十分な猶予期間を設けること。

 猶予期間を設けなければ実行不可能なものについては、十分な猶予期間を設けることを考えています。

6 その他

(1)保健所、厚生省からマニュアル本を出して欲しい。
(2)規制の内容が分からないので、具体的対応を分かりやすく説明して欲しい。
(3)実際に鮮魚小売業にどのような対応が必要か保健所等を通じて説明して欲しい。
(4) 魚介類が腸炎ビブリオに汚染されている等の風評被害対策も含め、国民へ普及啓発すること。

 今回の規制改正時には、通知等によりその内容を詳細に解説することとしているほか、必要に応じ、説明会も実施したいと考えています。今後とも、消費者を含め、腸炎ビブリオ食中毒防止対策について普及啓発を行っていきたいと考えています。

(5)設備の導入にあたり国が助成を行うこと。

 厚生労働省として、今回の規格基準設定にあたっての、助成措置を講ずる予定はありません。

(6)煮えびの基準を設定すべき。(腸炎ビブリオ陰性)

 今回の規格基準の改正は、過去において、腸炎ビブリオによる大規模な食中毒の原因となった広域に流通する水産加工品について整備したもので、煮えびについては設定をしていません。

(7) 腸炎ビブリオ食中毒は規格基準の設定ではなく水揚日及び水温の表示で対応可能であり、水揚げ港の漁業組合または荷受け商社にて検査し、その結果をホタテガイの安全証紙の様な方法で各流通段階への周知を図るべき。
(8) 規格基準を設定するのではなく、流通関係団体等に腸炎ビブリオの特性等を分かりやすく周知する方が良い。

 腸炎ビブリオは、他の食中毒細菌と比較して非常に増殖速度が速いため、食中毒を防止するためには各流通段階で対策が必要であると考えます。今後とも規格基準の整備、指導の徹底等、各流通段階への周知を図り、食中毒の発生を防止していきたいと考えます。

(9) 輸入水産物についても国内対策と同様の対応が必要である。

 今回の規格基準の改正は、国内品のみならず、輸入水産物にも同じように適用されます。

(10) 食品衛生研究1月号掲載の検査法では要する時間が長く、迅速な検査法でなければ、消費期限が短い切り身、むきみの生食用鮮魚介類に適切な措置を講ずることができない。
(11) 分析法の設定には、指定検査機関、地方自治体の衛生検査所協議会等に情報を提供し、事前に協議する必要がある。
(12) 設定されている最確数測定法は、成分規格を超えるものを流通させる可能性があり、操作も煩雑なため、別途簡便な方法を提案する。

 腸炎ビブリオのように海水に由来する菌は、類縁菌が多く、規格基準として整備できる検査方法としては、現在の方法があげられます。今後とも迅速な検査方法について検討していきたいと考えます。

(13) 腸炎ビブリオの最確数検査法は、試料を0.1gもしくは0.01g3本からの3段階法とする方が検査精度が高い。

 汚染菌量を考慮し、対応可能な検査方法を設定したいと考えています。


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