平成15年2月13日
厚生労働省医薬局審査管理課
「生物学的安全性評価の基本的考え方(案)」(以下「本改正案」という。)について、平成14年9月1日から平成14年9月30日までにインターネットのホームページを通じて御意見を募集したところ、のべ19通の御意見をいただきました。
お寄せ頂いた御意見とそれらに対する当省の考え方につきまして以下のとおり御報告いたします。とりまとめの都合上、いただいた御意見は適宜集約しています。
今回、ご意見をお寄せいただきました方々のご協力に厚く御礼申し上げます。
「2.定義」について |
【コメント】 歯科材料は多種多様であり、中間製品の形態で出荷され、歯科医が臨床の使用目的に合わせて用時に加工して使用する製品が少なくない。そのため「歯科材料の製造(輸入)承認申請に必要な物理的・化学的及び生物学的試験のガイドラインについて」(薬機第419号:平成8年10月28日)では、これらの製品は「最終産物」で試験することとされ、「最終製品」とは明確に区別されている。従って、新しいガイドラインにおいては「最終産物」を明確に位置づけ、定義、試験試料等の各欄において「最終産物」を明記していただきたい。 |
【意見に対する考え方】 |
【コメント】 原材料として、低分子の無機化合物や低分子の有機化合物も存在するため、原材料の定義にこれらを追加していただきたい。 |
【意見に対する考え方】 |
「4.生物学的安全性評価の原則」について |
【コメント】 「4.生物学的安全性評価の原則」の4)のア)(原材料の供給元又は規格が変更された場合)とイ)(原材料の種類又は配合量、製造工程、最終製品の滅菌方法又は一次包装形態が変更された場合)について、現行ガイドラインに記載のある"ただし、変更前との同等性が説明できる場合はこの限りではない。"の一文を残すべきと考えます。 【理由】 製造業者において製造コストの削減は大きな課題であり、現在使用している原材料と化学的に同等であることが確認された安価の原材料を、異なる供給元から購入することは今後も頻繁に行われるものと考えられます。上記但し書が削除されると、変更前との同等性が確認されている原材料への変更であっても生物学的安全性評価を改めて行う必要が生じることとなり、製造業者/輸入販売業者の負担になるばかりでなく、不要な試験の実施という意味では動物福祉の観点からも問題があると考えます。 【コメント】 平成7年6月27日薬機第99号「医療用具及び医用材料の基礎的な生物学的安全性試験のガイドライン」の3.生物学的試験実施に関する基本的考え方について2)にある次の記載が今回の「生物学的安全性評価の基本的考え方(案)」の4「生物学的安全性評価の原則」4)から省略されています。
承認前例のある原材料およびそれを用いた最終産物については、基本的に生物学的安全性は担保され、何より製品として臨床の場で使用されており安全性が評価されているものと考えますので、それらを用いた新規承認申請品に改めて生物学的安全性試験を実施することを省いていきたいと考えます。就きましては、今回の改正におかれましても現ガイドライン同様に上記 ア)、イ)の項目を追加していただきたくお願い申し上げます。 【コメント】 「4.生物学的安全性評価の原則」の4)のア)~オ)に、生物学的安全性評価を改めて行う必要がある場合が列挙されているが、より具体的に例示し明確化していただきたい。「4.生物学的安全性の評価の原則」の4)のア)~オ)を以下に変更する。
【コメント】 生物学的安全性評価を改めて行う場合について (1)一次包装形態を変更された場合 包装形態が変更された場合に、製品の生物学的な有害作用に影響を及ぼすのか疑問。もし、何か想定される事項がある場合、例示してほしい。 (2)原材料の配合量に変更があった場合 以前は±5%以上の規定があったが、今回、それをなくした理由。考え方によっては、1%未満でも再評価が必要と解釈できる。 また、製造の現場では、数%の配合の変化はあると考えられます。ということは、申請内容に幅記載が許されるということでしょうか? 【コメント】 「4.生物学的安全性評価の原則」について4)項において、ア)からオ)に列記された項目に該当する場合には生物学的安全性評価を改めて行う旨が規定されているが、このうち、ア)「原材料の供給元又は規格が変された場合」、及びイ)「原材料の種類又は配合量、製造工程、最終製品の滅菌方法又は一次包装形態が変更された場合」といった、製品の変更に関わる項目での解釈では、各原材料規格内の変更であって全体としては配合処方が変更された場合、又は原材料規格範囲を超えた変更の場合であっても、製品の構成成分が著しく原承認品と変わり、かつ、毒性学的見地から無視できないと判断される場合以外は、生物学的安全性試験を再度実施する必要はないものと判断されたい。 |
【意見に対する考え方】 |
【コメント】 ISO 10993-1「医療用具の生物学的評価、第1部:評価と試験」に、医療用具の生物学的評価に関する手順が詳細に記載されています。医療用具の市販前生物学的評価は、ISO 14971:2000、「医療機器-リスクマネジメントの医療機器への適用」に記載されている、医療用具へのリスクマネジメントの適用に関する要求事項の1つの要素でもあります。貴省の指針案の第4条にてISO 14971を引用していることは、ISO 14971に準拠して医療用具の生物学的安全性評価を実施することを暗示しており、読者が誤解しやすく、また、混乱を招く可能性があり、事実に反する内容であると考えられます。従いまして、指針文書ISO 10993-1を、生物学的評価の枠組みとして引用するよう強く推奨いたします。同書の参考資料付録Bに、医療用具の生物学的評価に対する体系的アプローチを説明するのに役立つフローチャートが掲載されており、貴省の指針文書内にこのフローチャートを取り入れることが最適であると考えます。 |
【意見に対する考え方】 |
【コメント】 直接的もしくは間接的に人体に接触するこれらの用具に関しては、ISO 10993-1の付録Bに明確に規定されているとおり、生物学的評価の第1ステップは、用具の製造に使用されている原材料を特徴づけすることです。つまり、原材料、原材料への添加物(製造工程および滅菌工程から発生する物質を含む)、原材料の潜在的分解生成物、それらの間の相互作用および最終製品からの溶出物の存在などについても配慮する必要があります。 |
【意見に対する考え方】 |
【コメント】 医療用具の原材料の化学的特徴づけは、製品の模擬使用を通じて用具の種類を確認 (identified) し、患者に対する潜在的曝露量を推定することに加えて、同定された化学種に関する文献情報を精査することにより、潜在的毒性ハザードを評価することが可能になります。 原材料および生体系に対する抽出溶媒の影響が既知であることを前提として、最新のISO 10993-12改訂版の第10.3.4項に対する注釈に記載されているような物質で有機溶媒抽出を用いた毒性試験が必要となるかもしれない新規原材料(医療用具の製造にとって)がありうることを明らかに認識しています。このような抽出物を用いて実施する生物学的試験はハザードを特定するための手段として活用することができると思われます。どのような原材料を使用して用具が製造されているのかが既知の場合、その多くの場合において、ハザード評価を目的に用具の溶剤抽出物を用いた特定の生物学的試験を採用することは適切とはいえないと考えます。 |
【意見に対する考え方】 |
「5.評価項目の選択」について |
【コメント】 5.評価項目の選択の1)の(1)医療用具の接触部位による分類において、歯に関する位置づけが不明確なため、ISO10993の表現を準用し明確化して頂きたい。 |
【意見に対する考え方】 |
○ | 組織/骨/歯質:組織、骨及び歯髄/歯質と接触する医療用具(下線部が修文箇所) |
【コメント】 これまで短・中期的接触期間は、24時間~29日とされていたが、今回30日に変更することは混乱を招くことになり、「歯科材料の製造(輸入)承認申請に必要な物理的・化学的及び生物学的試験のガイドラインについて」(薬機第419号:平成8年10月28日)とも相違することになる。従って、現行のガイドラインと同様に24時間~29日としていただきたい。 |
【意見に対する考え方】 |
【コメント】 上記「生物学的安全性評価の基本的考え方(案)」の「3.国際基準の活用」欄において、「個々の医療用具の接触部位と接触時間に応じて必要な評価項目を選定し、」と記載されている。この点に関し創傷被覆・保護材は、長期使用されることもあるが、臨床の場における実際の使用期間は3週間以内であるものが多く、また下記の理由により、イ)体表面接触用具中「損傷表面」に接触するもので、その接触時間については、「B:短・中期的接触(1~30日)」に分類されるよう判断されたい。 【理由】 平成11年7月9日付医薬発第827号「医療用具の申請について」によるリスクによるクラス分類の取り扱いによると、創傷被覆・保護材はクラスII及びIII(生物由来は除く)とされている。しかし、創傷被覆・保護材は「体内と体外を連結する用具」「体内埋め込み用具」ではなく患者の体表表面に貼付する「表面接触用具」で、創の保護、湿潤環境の維持、治癒の促進、疼痛の軽減を図るものであり、何らかの不具合が生じた場合には即時その不具合を患者の体外局所の観察で検知でき、かつ適用を即時中止し得る。また過去においても創傷被覆・保護材のみに起因する患者への重篤なる不具合は稀であり、かつ不可逆的な不具合の発生の危険性も少ない。 |
【意見に対する考え方】 |
「6.試験方法」について |
【コメント】 本案は、国際調和と基本的原則(国際基準の活用)を明確にすべき文書ですので、「6.試験方法 1)ア,イ」(p4 7行目「例えば」から20行目)の部分を、削除していただくことを希望します。 理由: 本案「3.国際基準の活用」に述べられています通り、「ISO10993を準拠して評価を行う」ことは、我国におきましても安全性評価基準の国際調和の点で、重要な考え方であると思われます。 特に医療用具を製造または販売する企業においては、 ・国際的に認知されている最新の試験評価技術で、臨床使用時の安全性及び機能性を評価し、予測すること, ・動物愛護の観点から、可能な限り最小限の動物を用いて、国内外の許認可申請目的の試験を遂行すること(無意味な繰り返しの試験を行なわないこと),が重要ですので、この原則を提示いただくことは、従来 企業が期待していたものです。本案にも書かれています通り、ISO10993シリーズは毒性の種類ごとに複数の評価方法を、並列的に提示しておりますので、臨床におけるリスクを評価する目的において、その中から試験者(または当該医療用具の責任を持つべき企業)が最適な試験方法や条件を選択し、実施する事が重要です。 企業の場合、臨床における安全性を確保するため、前臨床試験の際に毒性検出感度の高い試験法を選択して用いることは、当然のことですので、わざわざ「6.試験方法 1)ア,イ」を設けて、試験方法・条件の選択に制約を掛ける必要はないと思われます(p4 7行目「例えば」から20行目は不要という意味です)。 言い換えますと、本案において「ISO10993を準拠して評価を行う」という原則を掲げた以上、この原則は一貫すべきで、前述した箇所のように試験方法や条件を特定してしまいますと、多くの海外前臨床データが活用できない可能性があり、その原則(国際調和,国際基準の活用)に矛盾する結果を生むことになると考えます。 当該箇所は、必要に応じて、本案「基本的考え方」の下で、「医療用具及び医用材料の基礎的な生物学的試験のガイドライン」や その改訂ガイドライン案に組み込むべき内容ではないでしょうか? |
【意見に対する考え方】 |
【コメント】 ISO 10993規格シリーズの各部に記載されている特定の生物学的試験の多くに、複数の異なる手法が取り込まれているということに対する貴省の懸念についても注目しています。我々は、評価の対象となる特定の用具に最も適した試験法を選択するのは、指針を利用する側の責任であると考えています。用具のリスク評価において、市販前生物学的評価項目に必要な情報のひとつとして、特定の試験法を選択した正当な論拠および選択しなかった正当な論拠、またはそのいずれかを記録しなければなりません(ISO 10993-1、第6項)。万一、特定の用具(コンタクトレンズなど)にて、特定の生物学的評価試験のあるバージョン(例えば細胞毒性のコロニー形成試験など)を使用しなければならないという固有の要求事項が付帯する科学的論拠が存在する場合には、このような論拠をこの個別用具に関する個別規格(vertical standard)内に取り込まねばなりません。生物学的安全性評価に関する要求事項が満たされていることを保証するために、ある試験方法のうち、特定のバージョンを使用するよう要求しなければならないことが科学的証拠から明らかであるような用具に対して、その実施を促す提言については、当然のことながら我々も支援していきたいと考えています。 |
【意見に対する考え方】 |
【コメント】 6.試験方法 1)に対するコメント (1)抽出率の高い溶媒が投与溶媒としては不適当であり、かつ濃縮抽出物と他の投与に適した溶媒との溶解性が低ければ、結果として"感度の低い"試験となることも考えられることから、溶媒選択にはもう少し幅を持てるようにご考慮戴きたい。 (2)海外メーカーでは生物学的安全性評価に際し、ISO-10993に準拠し、"抽出率が高くない"抽出液を用いて実施していることが多く見受けられます。しかしながら、国際的ハーモナイゼーション等も勘案頂き、このような製品(海外における既承認医療用具の意)を輸入承認申請する場合であっても、評価のやり直しではなく、それらの安全性試験データがそのまま活用可能なようにして戴きたい。 |
【意見に対する考え方】 |
【コメント】 6.試験方法のイ)の最後の文章に「・・・感度が高く定量性のある方法(例えば、抽出液による試験法)を用いる必要がある。」との記載があります。本項を、本ガイドライン(案)のその他の項の方針と合致させる為に、この文章を「・・・評価する医療用具にとって適切な感度及びデザインをもった定量性のある方法を用いる必要がある。」とした方がより適切ではあると考えます。本ガイドライン(案)の中でも強調されていますように、試験方法の選択は、試験する医療用具のリスクと安全性を正確に評価する為に適切なものでなくてはなりません。我々はこの見解に完全に同意するものであります。不適切な試験方法はリスクを過小評価するばかりではなく、その医療用具の意図する使用や性質にとって感度が高すぎる場合においては、リスクを確実に過大評価することとなり得ます。感度の高い方法は全ての医療用具に適用できないかもしれません。そのような方法は、意図する使用において組織と接触する際には細胞毒性がない場合でも、潜在的に高い細胞毒性があることを示すかもしれません。例えば、非常に長い暴露時間を用いたin vitro試験は、短時間の限定した時間しか組織に接触しない医療用具にとっては不適切でありましょう。 |
【意見に対する考え方】 |
「8.動物福祉」について |
【コメント】 5ページの「8.動物福祉」は、「動物愛護法」と略さず、「動物の愛護及び福祉に関する法律」と書き下すべきだと思います。一般には、かならずしも「動物愛護法」とは略されず、むしろ「動管法」の略が正しいとする識者もいます。(実質上の愛護法ではなく、管理の面が強いためです) また、「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」、「動物の処分方法に関する指針」も関連ガイドラインだと思いますので含めるべきではないでしょうか。また、一言、動物の福祉に勤めることとする、代替法が可能なものは代替法を利用する、使用数は最低限とする、といったことは含められないのでしょうか。 これらのような試験が、同じような医療器具を製造するメーカーごとに一件一件なされているかと思うと、無駄にだぶっている試験がいくつもあるようにおもわれてなりません。器具ごとに材質を限定するなどして、その範囲であれば動物を使う安全性試験が必要ないなどの方法をとっていくべきではないでしょうか。とはいえ、動物実験で人間における安全性は本来測れるものではないと思います。また、動物実験が必要であるような医療器具が患者に優しいとはとても思えないという点からも、医学・医療の方向性の過ちを感じます。 【コメント】 「8.動物福祉」の項の2行目の「・・要求事項(1992)に従うこと。」の記述における「(1992)」は様式上不要と思われますので、削除していただきたい。 |
【意見に対する考え方】 |