パブリック・コメント  厚生労働省ホームページ

「医療用具の安全性に関する非臨床試験の実施の基準(案)」
に対して寄せられた御意見等について

平成14年9月19日
厚生労働省医薬局審査管理課

 医療用具の安全性に関する非臨床試験の実施の基準(GLP)を定めることについて、平成14年8月1日から平成14年8月30日までにインターネットのホームページ等を通じて御意見を募集したところ、のべ14通の御意見をいただきました。
 お寄せ頂いた御意見とそれらに対する当省の考え方につきまして以下のとおり御報告いたします。とりまとめの都合上、いただいた御意見は適宜集約しています。
 なお、パブリックコメントの対象でない事項に関する御意見も寄せられましたが、パブリックコメントの対象となる事項について考え方を示させて頂いております。
 今回、ご意見をお寄せいただきました方々のご協力に厚く御礼申し上げます。

いただいた御意見と当省の考え方(○:御意見 ●:当省の考え方)

第1 本基準の適用される範囲について

 ○現在、GLP国際基準はないが、GLPにより実施する非臨床試験に係わる国際基準ISO10993シリーズにおいて、「試験材料」すなわち「被験物質」は機器、機器部分あるいは構成要素及び原材料であって、抽出液(物)は「試験見本」として区別されている。欧米とのGLPハーモナイズの観点からも、「抽出液、抽出物」を「被験物質及び対照物質」の定義から外すべき。
 ●ISO10993シリーズでは、Part 10(Tests for irritation and sensitization)の「test material」又はPart 12(Sample preparation and reference materials)の「test sample」の定義に「医療用具からの抽出液又は抽出物」を含めています。
ISO10993シリーズでは、「医療用具からの抽出液又は抽出物」等を使用した生物学的安全性試験の実施方法を規定しており、これに従って実施した試験の信頼性を確保するため、被験物質・対照物質の範囲には「医療用具からの抽出液又は抽出物」を含めることが適当であると考えています。
なお、「欧米とのGLPのハーモナイズの観点」について、米国において「医療用具からの抽出液又は抽出物」を用いた試験のうち承認申請資料として提出されるものについては、原則としてGLP(CFR Part58)の対象とされており、米国のGLPの規定との整合は確保されています。また、欧州には医療用具GLPに相当する規定がありません。

 ○非臨床試験のなかで生物学的安全性試験が対象となるが、承認申請時に添付するデ−タのみとし、承認取得後の定期的確認試験の実施に際しては対象外であることを明確にすべき。
 ●定期的確認試験とは何を指すのか不明ですが、承認申請時に添付する資料と同様、再審査申請時又は再評価申請時に安全性に関する非臨床試験を行った場合は、その添付する資料についても、信頼性が十分に確保される必要があり、本基準の対象とすることが適当であると考えています。

 ○生物学的安全性試験のガイドラインに記載されている試験以外に、独自に安全性を検討するために実使用を考慮した試験を実施する場合などは本基準の対象外とすべき。
 ●生物学的安全性試験のガイドラインに規定されていない使用模擬試験等についても、試験の信頼性確保は必要であり、承認申請書等に添付される生物学的安全性に関する資料は、原則として本基準の対象とすることが適当であると考えています。しかしながら、高度な手技が要求され、実施機関が極めて限定されている試験等について、本基準に適合しない資料が提出された場合には、信頼性確保の観点からみた影響が許容し得るものであることを立証する資料等の提出に基づき、審査資料として受け入れることを検討することとします。

第2 本基準の円滑な導入について

 ○試験施設での試験関係資料の保管について期間を設定すべき。
 ●資料の保存期間は、承認申請資料、一部変更承認申請、再審査申請資料又は再評価申請資料と同様の保存期間とします。

 ○職員や管理者などの要件について、基準案では「教育を受けた者」や「これまで職務経験を有する、当該業務を遂行しうる能力を有する者」となっているが、これでは不明確であるのである程度具体化した要件を基準案以外で示すべき。
 ●職員や管理者の詳細な資格要件等については、既に定められている医薬品GLPにおいても規定していないことから、本基準においても一律に資格要件等を定めることとせず、試験施設がそれぞれ適切な資格等の基準を定める運用とすることが適切であると考えています。

 ○試験委託者の責務について、「試験受託者への事前通知」「委託者による試験の確認」「両件の文書による記録」およびメ−カ−による海外デ−タの信頼性に関する追跡調査などを見ると、海外デ−タの活用は非常に困難なものとなり、グローバル化に反するものとなる。したがって、試験委託者の責務を達成すべく各要件に対する具体的手順につき、基準案以外で明確にしていただきたい。
 ●承認申請資料の信頼性については、海外で行われた試験のデータであっても、承認申請者が責任を持つべきであると考えています。「試験受託者への事前通知」「委託者による試験の確認」「両件の文書による記録」については、十分に信頼性が確保されると認められる方法を、今後具体的に例示します。

 ○現在の生物学的安全性試験の試験方法は、海外の試験方法に合致していない。申請デ−タの相互乗り入れができるように、本基準の対象となる生物学的安全性試験の内容を国際的に整合させたものに見直すべき。
 ●生物学的安全性試験の内容については、本基準とは別途、より国際整合に配慮した「生物学的安全性評価の基本的考え方(案)」を定めることを予定しています。

 ○現在、承認申請書に添付されている生物学的安全性試験には、色々な機関で実施されたデ−タが使用されている。その中には大学のような機関も含まれており本基準案に対応できるような体制をすぐに整えることは困難なものと考える。よって、色々な機関、施設にて対応できるよう、GLP適合施設となるための公的指導機関を設立すべき。
 ●現時点で、公的指導機関の設立は考えておりませんが、各試験施設が、試験の信頼性を確保した上で本基準に対応できるよう、適切な猶予期間を設けてまいります。

 ○本基準案施行には十分な猶予期間を設定すべき。本基準案の施行にともない対応が間に合わない試験・研究施設が多数発生した場合、特定の試験機関への委託の集中による試験期間の長期化が考えられる。また、試験機関での基準案への対応にともなう試験実施料への費用転換による試験費の高騰が予想され、利益率の低い製品開発からの撤退等医療の発展を妨げることにつながりかねない。本基準案の目的である「試験デ−タの信頼性の確保を図る」ことを達成することはもちろんのこと現実的な背景事情を考慮した上での具体的な運用面の明確化を希望する。
 ○対応のため時間を要する内容であり、十分な猶予期間が必要。適用までの猶予期間として、通知発出後、1年以上の移行期間を設定すべき。
 ●本基準の施行時に試験施設が対応できるよう、適切な猶予期間を設けることが必要であると考えており、通知発出後、1年以上の猶予期間を設けてまいります。

第3 非臨床試験への倫理的配慮について

1 全般的な事項について

 ○非臨床試験(動物実験)で安全性を確認しても、実際に臨床試験を行わないと、本当に安全性は証明されないことは、過去の事例からみても明白である。動物を用いた非臨床試験は、全面廃止すべき。
 ○動物実験は倫理的に間違っている。あらゆる動物実験を廃止すべき。
 ○動物福祉的な項目を基準に取り入れるべき。
 ○できる限り動物達の死、苦しみを減らす方向にすべき。
 ○動物を用いた非臨床試験が科学的に適正に行われるのみならず、倫理的観点を重視し、使用数の削減、重複実験の回避、代替法の検討、動物福祉への配慮等が行われることを強く求める。
 ○「動物の愛護及び管理に関する法律」「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」を遵守することとし、適正な管理が行われてなかった場合の罰則を設けるべき。

2 査察について(第3条関係)

 ○3Rの原則に基づき、動物を用いる場合は、その動物を使わなければその実験ができないかどうか、施設のもの全てが3Rに関する教育をうけているか、その実施に先きだって,ヒトが亨受する利益に対し動物が受ける苦痛の程度を明らかにする、ということも厚生労働大臣による査察の対象とすべき。

3 試験委託者の責務について(第4条関係)

 ○試験委託者は、試験が本基準に従って実施されたことを確認したことを示す文書を国民に公表すべき。また、動物を使用する場合、「3R」を促進し,その成果と動物実験の長期計画に関する年次報告を作成し、国民に公表すべき。

4 職員について(第5条関係)

 ○動物を使う試験に従事する者は、動物の種類、生理、習性、生態に関する知識を習得し、使用される動物の種、生態、習性などに応じた適切な環境を整えるとともに福祉向上に配慮する措置を講じることとすべき。
 ○試験施設の全ての職員が「3R」についての教育を受けることとすべき。
 ○実験という非常に過酷な扱いを使役することの重大性を鑑み、すべての実験に関わる人が、動物の生理、習性、生態に関する基本的知識を習得し、さらに動物の愛護・福祉・権利論をはじめとする、動物に対するケアの知識を学ぶよう、義務づけるべき。

5 運営管理者について(第6条関係)

 ○運営管理者の業務のうち、信頼性保証部門責任者がその業務を適切に行っていることを確認することについて、動物を使う実験の場合は、動物保護団体にもその業務が適切に行われているかを追認させることができることとすべき。
 ○運営管理者は、獣医師等十分な知識と飼養経験を有する者の指導の下で、動物の適切な飼養保管が行なわれるようにすべき。

6 試験責任者について(第7条関係)

 ○試験責任者の業務として、動物を用いた試験の場合は、代替法の検討の有無、動物の福祉、及びその処分に関する記録を行うこととすべき。
 ○試験責任者は、国民への情報公開に関する業務も行うこととすべき。

7 試験施設について(第9条関係)

 ○動物を用いた試験を行う試験施設は、獣医師等十分な知識と飼養経験を有する者をおき、適切な動物の飼養保管およびその福祉に配慮しなければならないこととすべき。

8 標準操作手順書について(第11条関係)

 ○標準操作手順書に、動物の苦痛の軽減、安楽死の措置、および動物の死体の処分方法を記載すべき。
 ○標準操作手順書に、動物を使わなければどうしてもその実験ができないのかの検証を規定すべき。
 ○「標準操作手順書」は、「動物の愛護及び管理に関する法律」、「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」及び「動物の処分方法に関する指針」を遵守したものであるべきことを明記すべき。

9 動物の飼育管理について(第12条関係)

 ○動物の飼育管理について、試験に従事する者は、試験に使用される動物の種類、生理、習性、生態に応じた適切な飼育環境およびその福祉にかなう必要な措置を講じなければならないこととすべき。
 ○動物の飼育管理にあたり、試験に従事する者は、動物に、できるだけストレスを受けない環境を与えないように最大限の努力すべき。
 ○試験施設に搬入される前の動物の輸送に関しても配慮すべき。

10 試験計画書について(第15条関係)

 ○試験計画書に、動物を使用する場合は、動物を使用しない代替法の検討、動物に与える苦痛の判定、苦痛の軽減措置、および安楽死の方法、死体の処分方法について記載すべき。
 ○「実験計画書」は、「動物の愛護及び管理に関する法律」、「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」及び「動物の処分方法に関する指針」を遵守したものであるべきことを明記すべき。

11 最終報告書について(第17条関係)

 ○最終報告書の「試験の実施方法に関する事項」には試験に使用した実験動物の種類および頭数を含むこととすべき。
 ○最終報告書には、代替法の検討、その評価を誰がしたか、動物の種類、入手法、などに関する事項を記載すべき。

12 試験関係資料の保存について(第18条関係)

 ○試験関係資料は、情報開示を受けた際の提示を容易にするためにわかりやすく整理しておくこととすべき。

13 使用動物数の削減及び代替試験法の活用について

 ○動物を用いる場合は、代替法の検討をし、他の方法がない場合に限り認められることとし、ヒトが亨受する利益に対し動物が受ける苦痛の程度を公表すべき。
 ○動物を使う試験は、動物の福祉の観点から、最低限の使用数で行わなければならないこととすべき。
 ○海外の代替法をもっと積極的に取り入れるべき。
 ○実験動物の使用数の削減、重複実験の回避、代替法の検討、等、いわゆる3Rを徹底することが必要。実験予定の提出に際して、これらの事項の再検討を促すため代替法のある実験に対しては、動物を使用せずに行うよう、義務づけるべき。

14 倫理委員会の設置について

 ○実験動物の倫理的取り扱いに対する評価、および実験計画書の審査を行う機関として、倫理委員会の設置の義務付けるべき。倫理委員会は、第三者を含むものとし、代替法の検討、苦痛の段階の評価、及び苦痛の軽減、実験動物の使用数の抑制なども検討するものとすべき。
 ○実験動物に対し、虐待に値する、実験とは無関係の行為などの非倫理的行為がなされる可能性を完全に断ち切ることが必要。そのために、外部者を中心とする倫理委員会をすべての実験施設に設置すべき。

(1〜14の御意見に対する考え方)

 ●本基準は、非臨床試験の試験データの信頼性を確保することを目的としたものです。試験に用いられる動物に対する倫理的配慮は重要なものと考えており、本基準とは別途、定めることを予定している「生物学的安全性評価の基本的考え方(案)」において、必要な倫理規定を盛り込むことが適切であると考えています。なお、諸外国においても、動物に対する倫理的配慮はGLP(非臨床試験の実施の基準)に規定せず、別途、基準を定めています。

15 情報公開について

 ○試験関係資料は、公開すべき。
 ○公開した試験内容について何か指摘があれば、真剣に検討することのできる体制を整えておくこととすべき。
 ○施設の運営、実験の内容について第三者機関による監視を認めるべき。
 ○動物保護団体の試験施設への立ち入りを認めるべき。
 ○EUでは、新薬開発に失敗した化学物質に関しても、詳細な実験データの公開を義務付ける方針が今月打ち出された。 重複実験を回避させるためにも、医薬品実験データの公開、情報交換のしくみの確立が必要。情報公開を義務化すべき。
 ○市民団体等に対する、実験内容に関する、情報公開が不十分。動物問題への社会的な関心の高まりを踏まえ、徹底した情報公開を義務づけるべき。
 ●承認前の医療用具を用いて実施された試験の内容について公開を義務づけることは、知的財産権の侵害を助長するおそれがあり、困難であると考えています。承認された医療用具に関する生物学的安全性試験のデータについては、現在でも情報公開法に基づく行政文書の情報公開の対象となっています。

16 その他

 ○動物の入手法を限定し、野生生物由来、ペット由来等は禁止すべき。生産業者の選定についても適正であるべきこととすべき。
 ●承認申請等に用いられるデータの収集を目的とした試験資料については、信頼性確保の観点から、現在も適切な生産者により育成された動物のみが試験に使用されています。

 ○動物実験代替法の確立への予算の割り当てをすべき。
 ○単に知的好奇心から行われているとしか思えない動物実験の数々への補助金の停止、そのための大学医学部・医療業界内部の構造改革等、動物実験を削減させていく方針を打ち出すべき。
 ○疾病予防に関する施策(特に食事のあり方、医薬品乱用の防止)、有効な代替療法への健康保険適用、医薬品に頼らない疾病治療の知識普及等、医薬品開発に偏らない健康政策を、動物たちのためにも推進すべき。
 ●本パブリックコメントの対象外です。貴重な御意見をありがとうございました。

以上


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