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雇用保険率に関する弾力条項の発動について(回答)

平成14年8月26日
厚生労働省職業安定局雇用保険課

概要  いわゆる弾力条項の発動により、雇用保険率を平成14年10月1日から1,000分の2引き上げ、1,000分の17.5(農林水産業及び清酒製造業については1,000分の19.5、建設業については1,000分の20.5)とすること。
(別紙 雇用保険率に関する弾力条項の発動について 参照)
根拠法令  労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)第12条第5項
趣旨・目的・背景  雇用保険制度の在り方については、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(部会長 諏訪康雄法政大学教授)において議論を重ねてきたところであるが、今般、その結果を「雇用保険制度の見直しについて(中間報告)」(参考 参照)としてとりまとめたところである。
 当該中間報告においては、厳しい雇用失業情勢を受けや雇用保険財政の状況にかんがみ、当面の措置として、「制度上予定されている収支改善措置である弾力条項については、可能な限り早急に(本年10月を目途)、制度上可能な2/1000の引上げを発動することはやむを得ないものと認める。」とされている。
国民に与える影響・
範囲等
 雇用保険率の1,000分の2の引上げにより、事業主、労働者それぞれ1,000分の1ずつ負担額が増えることになるが、雇用保険制度の安定的な運営に必要な措置は早急に実施する必要があり、この結果、雇用保険制度が雇用のセーフティネットとしてその機能を発揮することになる。


御意見等の内容 件数 御意見等に対する考え方
 弾力条項発動の要件は満たされているので、制度の安定的運営のため、その発動についてはやむを得ない。 1件  雇用保険部会中間報告(平成14年7月19日)においては、厳しい雇用失業情勢や雇用保険財政の状況にかんがみ、当面の措置として、「制度上予定されている収支改善措置である弾力条項については、可能な限り早急に(本年10月を目途)、制度上可能な2/1000の引上げを発動することはやむを得ないものと認める。」とされている。これを受けて、厚生労働省では、弾力条項の発動につき、検討しているところである。
 労働保険料は年度ごとに処理されることが前提となって各種手続きが定められており、年度途中での引上げは事務手続きが煩雑となること、周知が不十分となることから、来年度施行とするべきである。 1件  現在、雇用保険財政は極めて厳しい財政状況に直面しており、平成6年度以降は積立金の取崩しにより収支差に対応してきた結果、平成5年度末に4.7兆円にのぼった積立金残高は平成13年度末には約5,000億円にまで減少しているが、依然として積立金の取崩しが続いており、平成14年度予算における年度末の積立金残高は約1,400億円となる見込みである。
 この結果、平成15年度中には積立金が完全に枯渇し、資金不足を生ずることがほぼ確実となっているほか、平成15年度当初の資金繰りに困難を来たすことなどが見込まれる。したがって給付の支払い不足を生ずることがないよう、可能な限り早急に弾力条項を発動し、労働保険徴収法の予定するとおり、年度内に追加徴収を実施する必要がある。
 雇用保険制度は平成13年度に保険料の引上げを行ったばかりであり、再度の引上げについては、労働者の負担増、個人消費への悪影響、投資意欲の減退及び社会保険料負担増の不安感の助長等から反対である。 2件  雇用保険制度については、平成13年度に給付・負担両面にわたる制度の抜本的な再構築が行われ、安定的運営が期されたところであるが、制度改正において見込んでいた雇用失業情勢よりも実際の雇用失業情勢が悪化したことや労働市場の構造変化により、収支均衡には至らず、依然として積立金の取崩しが続いている。こうした状況を受け、雇用保険制度の在り方については、現在、労働者及び事業主の代表と公益の代表の三者からなる労働政策審議会の雇用保険部会において議論を重ねているところである。 雇用保険部会中間報告(平成14年7月19日)においては、厳しい雇用失業情勢や雇用保険財政の状況にかんがみ、当面の措置として、「制度上予定されている収支改善措置である弾力条項については、可能な限り早急に(本年10月を目途)、制度上可能な2/1000の引上げを発動することはやむを得ないものと認める。」とされている。これを受けて、厚生労働省では、弾力条項の発動につき、検討しているところである。
 経済状況の変動に伴う一時的な収支の不足に対しては、国庫負担率の引上げにより対応するべきである。 2件  財源の問題については、そもそも雇用保険制度が労使の共同連帯によって支えられている保険制度であることを十分認識して対応する必要がある。また、我が国においては、諸外国に比べて、雇用保険制度における労使の保険料水準が低い一方で、国庫負担については、高水準であることにも留意する必要がある。
 このようなことから、失業等給付のさらなる財源について安易に国庫等に負担を転嫁することは適当ではないと考えている。
 弾力条項の発動を回避するために給付の内容の見直しを十分に行い、収支改善の青写真を出来るだけ具体的にかつ速やかに示すべきである。 1件  厳しい雇用失業情勢や雇用保険財政の状況にかんがみ、既定の弾力条項の発動はやむを得ないものと考えているが、引き続き行う制度の見直しにあたっては、まずは「給付のあり方」について十分に検討した上で「負担面の見直し」を行い、収支改善を図るべきものと考えている。
 雇用保険料率を引き上げる前に、未手続事業主に対する周知徹底、制裁措置の強化等により、適用促進を図るべきである。 1件  雇用保険制度は、雇用のセーフティネットとして、すべての雇用労働者に適用されるものである。厚生労働省では、従来から未手続事業主に対する指導等を行ってきたところであるが、今後とも雇用保険の適用を着実、かつ、速やかに進めてまいりたい。
 雇用継続給付は、雇用の維持の面で有効な制度であるので、存続するべきである。 1件  本件とは、直接関係のない事項である。
 教育訓練給付金の費用は雇用保険三事業で賄うべきである。 1件  本件とは、直接関係のない事項である。

(注) 同一の方から複数の御意見が提出された場合には、それぞれを一件として計上しています。

今回、御意見をお寄せいただきました方々のご協力に厚く御礼申し上げます。



<別紙>
雇用保険率に関する弾力条項の発動について


 現下の雇用失業情勢や雇用保険財政の状況にかんがみ、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)第12条第5項のいわゆる弾力条項の発動により、雇用保険率を平成14年10月1日から1,000分の2引き上げ、1,000分の17.5(農林水産業及び清酒製造業については1,000分の19.5、建設業については1,000分の20.5)とする。

〔参考〕
○ 労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)(抄)

(一般保険料に係る保険料率)
第12条 (第1項から第4項まで 略)
 厚生労働大臣は、毎会計年度において、徴収保険料額並びに雇用保険法第66条第1項、第2項及び第5項並びに第67条の規定による国庫の負担額の合計額と同法の規定による失業等給付の額(以下この項において「失業等給付額」という。)との差額を当該会計年度末における労働保険特別会計の雇用勘定の積立金に加減した額が、当該会計年度における失業等給付額の2倍に相当する額を超え、又は当該失業等給付額に相当する額を下るに至つた場合において、必要があると認めるときは、労働政策審議会の意見を聴いて、雇用保険率を1,000分の13.5から1,000分の17.5まで(前項ただし書に規定する事業(同項第3号に掲げる事業を除く。)については1,000分の15.5から1,000分の19.5まで、同号に掲げる事業については1,000分の16.5から1,000分の20.5まで)の範囲内において変更することができる。
(第6項から第8項まで 略)


雇用保険制度の見直しについて(中間報告)(抜粋)

第1 雇用保険制度の現状

3 雇用保険財政の現状

(1) 失業等給付の状況

厳しい雇用失業情勢を受けて受給者が急速に増加したこと等を受け、平成6年度以降、単年度での赤字が続き、平成6年度以降の累積赤字額は4兆円強に達している。
 
特に平成10年度から平成12年度にかけては3年続けて1兆円前後の赤字を記録し、平成13年度に給付体系の見直し、保険料率の引上げ、国庫負担の原則復帰等の制度改正を行ったが、平成13年度(補正後ベース)は、単年度の赤字幅は縮小したものの、予想を上回る雇用失業情勢の悪化(注)により、収入約2.4兆円、支出約2.7兆円、収支差▲約3,500億円(平成12年度は▲約10,400億円)となった。
注)平成13年度の制度改正時点において想定していた雇用失業情勢(「4%台半ば」の完全失業率、完全失業者数310万人程度)より、現在の雇用失業情勢は大幅に悪化しており、完全失業率は実際には平成12年度4.7%、平成13年度5.2%と急上昇した。
積立金は、(1)景気変動に対応し、好況期に資金を積み立て、不況期にこれを財源として使用することで収支を必要な積立金を維持しつつ中長期的にバランスさせる、(2)年度当初の保険料納期前の期間などにおける短期的な資金需要に対応する、という2つの機能を有しているが、現在は積立金残高が大幅に減少し、双方の機能が発揮できなくなりつつある。
・ 平成6年度以降の収支差を積立金の取崩しで対応してきた結果、平成5年度末に4.7兆円にのぼった積立金残高は平成13年度末には約5,000億円(補正後ベース)にまで減少した。これは同年度の失業等給付費の約20%程度である。
ちなみに、労働保険徴収法上、毎会計年度において積立金が失業等給付費の1〜2倍の範囲内にない場合、保険料の弾力的変更が可能とされており、補正後ベースで、現時点で弾力条項の発動要件を満たしている。(法律上弾力条項が発動できるようになった平成13年4月時点では既に発動要件を満たしていた。)
・ 平成14年度予算上、約3,600億円の積立金取崩しを見込んでおり、平成14年度末の積立金残高は約1,400億円に減少する見込みである。この金額は年間の失業等給付費の約6%、日数にして約半月分に相当する。
・ このままでは、平成15年度中には積立金が枯渇することがほぼ確実である。また、平成15年度当初の資金繰りが難しくなるなどのおそれもある。

第3 雇用保険制度の見直しに当たっての視点

1 基本認識

 雇用保険制度については、平成13年度に給付・負担両面にわたる制度の抜本的な再構築が行われ、安定的運営が期されたところであるが、制度改正において見込んでいた雇用失業情勢よりも実際の雇用失業情勢が悪化したことや労働市場の構造変化により、収支均衡には至らず、依然として積立金の取崩しが続いている。
 
 この結果、平成15年度中には積立金が完全に枯渇し、資金不足を生ずることがほぼ確実となっているほか、平成15年度当初の資金繰りが難しくなるなどのおそれもあり、引き続き総合雇用対策等に基づく雇用対策に万全を期すとともに、適切な収支改善措置を早急に実施することが不可欠な状況にある。
 
 雇用保険制度に係る収支改善措置としては、現行制度の下で採り得る措置と法律改正を要する措置とがあるが、特に前者については積立金の枯渇を回避するためにも早急に、また後者についても、雇用政策全体における雇用保険制度の役割に留意しつつできるだけ早期に実施に移す必要がある。なお、法律上、雇用保険制度に組み込まれている収支改善措置である弾力条項の発動要件は、現時点で満たされている。

4 当面の対応

 以上の運用改善を実施するほか、総合雇用対策等に基づく雇用対策を迅速かつ適切に実施することを前提として、雇用保険制度のおかれている現下の状況にかんがみ、制度上予定されている収支改善措置である弾力条項については、可能な限り早急に(本年10月を目途)、制度上可能な2/1000の引上げを発動することはやむを得ないものと認める。

雇用保険部会中間報告(平成14年7月19日)


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