1.概要
遺伝子治療臨床研究に関する指針(案)については、以下の要領で意見募集を行いました。
(1)期間 平成13年12月13日〜平成14年1月17日
(2)告知方法:文部科学省及び厚生労働省のホームページ、記者発表等
(3)意見送付方法:電子メール又は郵送
このたび寄せられました御意見につきましては、取りまとめの便宜上、案件ごとに適宜集約させていただきました。今回、御意見をお寄せいただきました方々のご協力に厚く御礼申し上げます。
2.受付意見件数
(1)意見提出者数 | 9件 | (文部科学省受付分:大学4件(1件は厚労省と重複)、団体1件) (厚生労働省受付分:大学2件、企業1件、個人2件) |
(2)延べ意見数 | 29件 | (提出意見の中で複数の項目について意見が述べられているものがある。) |
3.受付意見の概要
別紙整理票のとおり。
照会先 | 厚生労働省大臣官房厚生科学課 (代表)03−5253−1111 (直通)03−3595−2171 中垣(内線 3803)原口(内線 3804) |
(別紙)
提出者・番号 | 対応項目 | 意見の概要 | 意見に対する考え方 | |||||||||||||||||||
大学A | 第1章 第6 |
遺伝的異常胚の遺伝子治療が、現在認められていない。 現在の技術では、ジャームラインの遺伝子治療による臨床応用が次世代にもたらす影響が不明であるため、禁止はやむを得ないが、遺伝子治療の基礎研究のため、ヒト配偶子や受精卵の遺伝子改変その他の体外培養における発生研究を認めるべきである。 |
ご意見については、今回ご意見を募集した遺伝子治療の臨床研究に関する指針案に対するものではありませんが、一つの意見として承ります。 | |||||||||||||||||||
大学B 1 |
全体 | 審査の一元化、審査の迅速化、治験との整理など、実施者として理解しやすくなった。 | −−−−−− | |||||||||||||||||||
大学B 2ー1 |
第1章 第3 |
「身体の機能を著しく損なう疾患」の概念が把握できるよう、補足説明を望む。 | 通知において例示するなど、なるべく具体化を図ります。 | |||||||||||||||||||
大学B 2ー2 |
第3章 第5の一 |
施設内審査委員会の役割、特に厚生科学審議会に意見を聞かない場合の役割がわかりにくい。 | 実施施設に設置される審査委員会の役割は、第3章第5の一に示すとおりです。 この役割は、厚生労働大臣が厚生科学審議会の意見を聞く必要がないと判断した場合においても、何ら変わることはありません。 |
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大学B 2ー3 |
第6章 第5 |
治験の場合の施設内審査委員会の役割がわかりにくい。倫理審査委員会でなく、臨床試験審査委員会が対応することとなるのか。 | 治験については、本指針の第1章のみが適用されるため、本指針に基づき審査委員会への付議が求められることはなく、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)第30条の規定に基づき治験審査委員会への付議が必要となります。 なお、治験審査委員会と別に審査委員会が設置されている場合に、実施施設の判断でこれにも付議することは、何ら差し支えありません。 |
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大学B 2ー4 |
第5章 第1の三 |
本指針上の新規性の意義を明確にするため、厚生科学審議会の意見を聞く必要がないと判断する場合の根拠を文書で示すことが望ましい。 | 厚生科学審議会の意見を聞く必要がないと判断する場合において、その判断に係る情報をなるべく公開する方向で運用したいと考えます。 | |||||||||||||||||||
大学C 1 |
第2章 第3 |
十分なインフォームド・コンセントを要するため、第2章第3を修文するなど、被験者の十分な理解の上で研究を実施するとの趣旨を記述した方がよい。 | ご意見の趣旨を踏まえ、第2章第3柱書について次のように修文します。 「可能な限り平易な用語を用いて説明するものとする」 ↓ 「十分な理解が得られるよう可能な限り平易な用語を用いて説 明するものとする」 |
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大学C 2 |
第3章 第5の二の1 |
審査委員の要件に関し、臨床薬理学は、基礎医学でなく臨床分野として位置づけてはどうか。 | ご意見を踏まえ、「基礎医学の」を削除します。 | |||||||||||||||||||
大学C 3 |
第6章 第1 |
確立していない研究分野であるため、記録の保存期間は、5年間では不十分ではないか。 | 各種の医療規制における記録の保存義務を参考に、最低限の期間として、少なくとも5年間の保存を義務づけており、これを超える期間にわたる保管の義務づけは困難と考えます。 | |||||||||||||||||||
大学C 4 |
第6章 第2 |
守秘義務の対象者について、研究者だけでなく研究に携わった者全てを含むべきではないか。 | ご意見を踏まえ、「研究者、審査委員会の委員及び実施施設の長」を「研究者、審査委員会の委員、実施施設の長その他研究に携わる関係者」と修文します。 | |||||||||||||||||||
大学C 5 |
第6章 第5 |
本指針は、厳しい内容であるため、治験にも適用した方がよい。 | 遺伝子治療臨床研究については、審査の迅速化が要請されているため、本指針案では、法律及び法律に基づく命令により規制が行われている治験については、基本的に当該規制に委ねることとし、このような規制がない分野について第2章から第6章までの規定を適用することとしています。 | |||||||||||||||||||
団体 1 |
全体 | 規制緩和推進3カ年計画で「十分な情報の下、自己責任で本人が、その治療法として選択する場合、それを制限する合理的な理由は見あたらない」とされているが、このようなインフォームド・コンセントの原則は、遺伝子治療のような有効性も安全性もはっきりしない技術にそのまま当てはめるべきではなく、規制緩和の根拠とはならない。 | 遺伝子治療が実施される場合の要件として、単に本人からインフォームド・コンセントを受けることだけでは十分でないことから、本指針案では、(1)対象疾患を限定し、(2)研究については有効かつ安全であることが十分な科学的知見から予測されるものに、(3)投与される物質については品質、有効性及び安全性が確認されているものに、それぞれ限定し、(4)公衆衛生上の安全が十分確保されて実施されることを求め、(5)実施施設及び厚生労働大臣が個々の研究計画を審査するものとするなどの要件を課しています。 なお、従前の指針と比べ規制を緩和した内容としては、重複審査の排除、及び新規性のない研究につき有識者の意見を聞いた上で審議会への付議を行わないこととするにとどめています。 |
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団体 2 |
第1章 第3 |
遺伝子治療の対象疾患は、当初、重篤な遺伝性疾患に限定されており、安易に拡大すべきではないが、指針案の「身体の機能を著しく損なう疾患」は、どのようにも解釈できる。 | 本指針案では、旧指針と比べ、「身体の機能を著しく損なう疾患」については、対象疾患を拡大していません。 なお、「身体の機能を著しく損なう疾患」の具体的内容については、通知において例示するなど、なるべく具体化を図ります。 |
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団体 3 |
第1章 第6 |
生殖細胞等の遺伝的改変を禁止するのはよいが、禁止する考え方について十分に議論すべきである。 | 生殖細胞等の遺伝的改変については、旧指針においても禁止されており、本指針案では、同じ取扱としました。 なお、旧指針については、平成3年から5年にかけて旧厚生科学会議の専門委員会で行われた検討を踏まえて制定されたものであり、生殖細胞の遺伝的改変を禁止する考え方については、指針の施行通知(平成6年2月8日厚科第54号厚生省大臣官房厚生科学課長通知)において次のように示されています。 「遺伝子治療には体細胞を対象とするものと生殖細胞を対象とするものとがあるが、生殖細胞に対するものは、現時点では、個体に与える影響について科学的に未解明の部分が多いこと、導入された遺伝子が次世代に受け継がれる可能性が高く、その影響が被験者だけにとどまらない恐れが大きいこと等から、更に慎重な取扱いが必要と考えられる。したがって、指針は体細胞を対象とする臨床研究に限ることとし、生殖細胞に影響を与える恐れのあるものは実施してはならないこととした。」 |
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団体 4 |
全体 | 遺伝子治療臨床研究に関する指針を大幅に緩和するのであれば、今までどのような遺伝子治療が行われ、どのような副作用があり、どの程度の治療効果が見られたのかなど、必要な情報を公開し説明して問うべきであり、今回の改訂を見送ることを求める。 | 今回の指針案において、従前の指針と比べ規制を緩和した内容としては、重複審査の排除、及び新規性のない研究につき有識者の意見を聞いた上で審議会への付議を行わないこととするにとどめています。 なお、今まで行われた遺伝子治療に関しては、平成13年7月30日の合同委員会において資料1により説明を行い、文科・厚労両省のホームページに掲載しています。 |
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大学D | 第1章 第5 |
臨床研究においてヒトに投与される物質の生産施設について、国際的なGMP基準に準拠するなどの基準を策定すべきである。 | 本指針案については、ご意見を踏まえ、第1章第5について、次のように修文します。 「人に投与される物質については、その品質、有効性及び安全性が確認されているものに限られるものとする。」 ↓
「人に投与される物質については、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)第17条において求められる水準に達している施設において製造され、その品質、有効性及び安全性が確認されているものに限られるものとする。」 なお、これまで国内で実施された遺伝子治療臨床研究でヒトに投与された物質については、1件は名古屋大学医学部付属病院遺伝子治療製剤調整室で、他は全て国外の製造施設で、いずれも国際的なGMP基準に準拠して製造されています。 |
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個人A | 全体 | 既に臨床研究で使用されたことがある遺伝子又はベクターであれば、実施施設でも審査されるのであるから、異なる疾病であっても、国の審査を簡素化して良いのではないか。 また、1回目の治療で安全性が確認されれば、希望者にはすぐに薬剤が使用できるようにして欲しい。 |
一般に、対象疾病が異なれば、遺伝子治療臨床研究の正当性の根拠となる有効性や安全性も異なるものとなります。また、ある人に薬剤の副作用が生じなかったことをもって、他の人にも当該薬剤を配付できるような安全性が確保されていると言うことはできません。 このため、異なる疾病について臨床研究を行う場合には、審議会の意見を聴く必要があると考えています。 |
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個人B | 全体 | 遺伝子治療臨床研究の実施に当たり、被験者の個人情報、特に誰の遺伝子であるかについては、匿名化して、研究者に誰のものであるか分からないようにして実施すべきである。 | 患者の診療においては、患者の取り違えのような事故が決して起こることのないよう、折々に患者に対して氏名を確認することが極めて重要であると考えられています。 したがって、研究であると同時に患者の診療でもある臨床研究については、匿名化して実施することができませんが、本指針では、個人情報の保護について規定を設け、徹底を求めています。 |
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民間企業 1 |
第6章 第5 |
薬事法及びこれに基づく命令については、
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遺伝子治療臨床研究について、審査の迅速化が要請されているため、本指針案では、法律及び法律に基づく命令により規制が行われている治験については、基本的に当該規制に委ねることとし、このような規制がない分野について第2章から第6章までの規定を適用することとしています。なお、
↓ 「第二章から第五章まで及び本章第二及び第四の規定は、」 |
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民間企業 2ー1 |
第1章 第1 |
「遺伝子治療」や「遺伝子治療臨床研究」の用語は、定義規定があるものの、一般の者にはわかりにくいので、「遺伝子組換えの臨床研究」又は「遺伝子治療法の臨床研究」と改めるべき。 | 「遺伝子治療」は、医学上定着した言葉であるため、引き続きこの用語を使用します。 | |||||||||||||||||||
民間企業 2−2 |
第1章 第1 |
倫理性は、医学的有用性を含む包括概念であり、遺伝子治療臨床研究は、医学的有用性が予測されるだけでなく、その他を総合判断し、全体として倫理性がある場合に実施されるべきである。このため、目的規定中を次のように改めるべき。 「遺伝子治療臨床研究の医療上の有用性及び倫理性を確保」 ↓ 「医療上の有用性のある遺伝子治療臨床研究の倫理性を確保」 |
本指針案では、自然科学に立脚した医学的有用性の確保と、生殖細胞等の遺伝子改変の禁止や被験者の同意の確保などの倫理性の確保を区別した上で、両方が満たされた場合に遺伝子治療臨床研究を実施できるものとしています。 ご指摘の趣旨を確保するためには、このように2つの要件を設け、両方を必要と定めることが適当と考えます。 |
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民間企業 2−3 |
第1章 第1 |
被験者個人の安全を含む人権の尊重・保護が科学的及び社会的利益に優越することなど、基本原則を目的規定に列記すべきである。 | 法令の冒頭には、その法令の目的を簡潔に表現した目的規定を置く場合と、その法令で規定する事項の内容そのものを要約した趣旨規定を置く場合とがありますが、前者が一般的であるため、本指針案でも同様とし、基本原則については、第1章の総則に列記しています。 また、被験者個人の安全を含む人権の尊重・保護が科学的及び社会的利益に優越することについては、第1章第三の一の2で、「治療効果が、現在可能な他の方法と比較して優れていることが十分予測される」こと、すなわち、本人にとっても優れた治療法であることを、また、同章第七でインフォームド・コンセントを確実に受けることを必須の要件としていることなどからも明らかであると考えます。 |
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民間企業 2−4 |
第1章 第7 第2章 第2の1 |
被験者の理解も要件にすべきである。 | 第1章第7の「被験者の同意(インフォームド・コンセント)」は、被験者の理解を含む概念です。 また、被験者の理解を文書で確認することは困難ですが、説明・同意の前提ですので、第2章第3柱書について次のように修文します。 「可能な限り平易な用語を用いて説明するものとする」 ↓ 「十分な理解が得られるよう可能な限り平易な用語を用いて説 明するものとする」 |
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民間企業 2−5 |
第1章 第6 第2章 第1 |
同意能力を欠く被験者は、原則として選定せず、同意能力を欠く者の参加がなければ研究が困難である、他に適切な治療方法がないなど例外的な場合のみ選定できることとすべきである。 また、胚及び胎児は、被験者とすべきでない。 |
患者本人が同意することができないものの、意思を表示できれば先進的な治療を受けることを希望するであろうと考えられる場合には、こうした治療を受けられるよう、ご意見より広く途を開いた上で、第2章第1により慎重に検討することが適当と考えています。胎児についても、出生後と同様の整理としています。 ただし、胚については、ご意見を踏まえ、第1章第6について次のように修文します。 「生殖細胞又は受精卵」→「生殖細胞又は胚(一の細胞は又は細胞群であって、そのまま人又は動物の胎内において発生の過程を経ることにより一の個体に成長する可能性のあるもののうち、胎盤の形成を開始する前のものをいう。)」 |
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民間企業 2−6 |
第2章 第2の二 |
代諾者の要件中「意思及び利益を代弁できる」を「意思及び利益を代弁する」に改める。 | 要件を定める規定であることから、原案が適当と考えます。 | |||||||||||||||||||
民間企業 2−7 |
第2章 第2の二 |
代諾者から同意を得た場合は、代諾者が本人の意思及び利益を代弁できると考えられる根拠を記録して保管することとすべきである。 | ご意見の趣旨から、同意者と当該被験者の関係を示す記録を残すこととしています。 | |||||||||||||||||||
民間企業 2−8 |
第2章 第3の一 |
被験者への説明事項のうち、「研究の目的及び方法」については、目的だけでは不明確なことが多いため、「研究の目的、意義及び方法」とすべきである。 | ご意見のとおり修文します。 | |||||||||||||||||||
民間企業 2−9 |
第2章 第3の三 |
被験者への説明事項のうち、「他の治療法」について、何もしないことが適当な場合もあることから、「他にとるべき方法」とする。 | 第2章第3の三に「他の治療法の有無」とあるように、ここでは、主に経過観察を行う方法も含めて規定しています。 | |||||||||||||||||||
大学D | 第5章 第1の三 |
厚生労働大臣が意見を徴する「複数の有識者」について、人数、欠格要件等を明らかにすべきではないか。 また、会議としてはどうか。 | この有識者については、厚生労働大臣が適切に選定すれば足りるため、指針ではこれ以上詳細に規定しないこととします。 なお、具体的には、厚生科学審議会で遺伝子治療臨床研究を担当する専門委員会の委員から選定することを予定しています。 |