パブリック・コメント  厚生労働省ホームページ

「残留動物用医薬品の安全性評価方法に関するガイドライン案」に対して寄せられたご意見等について

平成14年 3 月
厚生労働省医薬局
食品保健部基準課

 「残留動物用医薬品の安全性評価方法に関するガイドライン案」については、平成13年8月3日から8月31日まで、ホームページ等を通じてご意見を募集したところ、のべ8件のご意見、ご要望をいただき、ありがとうございました。 お寄せいただいたご意見等とそれらに対する事務局の考え方について次のとおりとりまとめました。
 お寄せいただきましたご意見等につきましては、とりまとめの便宜上、案件ごとに適宜集約させていただいております。 今回、ご意見をお寄せいただきました方々のご協力に厚く御礼申し上げます。



「残留動物用医薬品の安全性評価方法に関するガイドライン案」に対して寄せられたご意見等について

意見1
 提案されているガイドライン案について、より詳しい設定の背景の説明が必要である。

 現在、多くの国において、動物用医薬品の承認のための基準・ガイドラインが設定されていますが、国によりこれらの基準・ガイドラインの異なるものがあるため、複数の国で承認を受ける場合には膨大な量の毒性試験データが必要となります。
 この様な事態を避け合理的に安全性評価を行うことを目的として、平成8年から日本、EU及び米国の3極において、必要な試験の実施方法に関する基準・ガイドラインの調和を計るための国際協力(VICH; International Cooperation on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Veterinary Medicinal Products、動物用医薬品の承認審査資料の調和に関する国際協力)が行われています。
 VICHではこれまでに品質、安全性、臨床試験実施基準等について検討されており、合意されると3極においてガイドラインとして設定することとなっています。
 なお、VICHで検討されたガイドラインのうち、残留動物用医薬品の安全性評価に関するガイドライン以外のものについては、農林水産省で検討されています。

意見2
 提案されているガイドライン案は、残留動物医薬品の安全性評価方法の1項目である癌原性試験だけであるが、残留動物用医薬品の安全性評価に関する全体の考え方、実施する試験項目及び各試験項目の内容を示されたい。
 また、ガイドライン案と従来の厚生労働省「畜水産食品中の残留動物用医薬品等の安全性評価に関する指針」との相違点、共通点を提示すべきである。

 VICHでは、過去の安全性評価に使用された毒性試験データを広範囲に検討し、最小の資源の消費で充分な量の毒性学的データを得られるように、実施する毒性試験項目を設定しています。
 実施する毒性試験項目の選択方法、各試験の内容は、現在VICHにてガイドラインについて検討中であり、協議のためにガイドライン(案)が送付された段階で、別途、パブリックコメントを求めることとしています。
 なお、現在検討されている又は採択された残留動物用医薬品の安全性評価に関するガイドラインは、以下のとおりです。(*は採択されたもの)

(1)繁殖毒性試験ガイドライン(*)
(2)遺伝毒性試験ガイドライン(*)
(3)発癌性ガイドライン
(4)試験への一般的アプローチ
(5)発生毒性試験ガイドライン
(6)反復投与(90日)毒性試験
(7)反復投与慢性毒性試験
(8)微生物学的安全性試験ガイドライン

 また、「ガイドライン(案)」と「安全性評価に関する指針」の主な項目の比較を下表に示します。

 安全性評価に関する指針ガイドライン案
試験系2種以上の動物種ラット及びマウス(*1)
投与期間ラット:24〜30ヶ月
マウス,ハムスター:18〜24ヶ月
ラット:2年
マウス:18ヶ月
投与経路経口投与
投与量3用量以上(同時対照群を除く)

 *1:科学的妥当性があれば、げっ歯類1種(望ましくはラット)で実施しても良い。

意見3
 国際協力(VICH)の活動は平成8年から既に行われており、現時点まで何もパブリックコメントを求めなかった理由を示されたい。

 パブリックコメントは規制の設定又は改廃に伴い政省令等を策定する過程において広く国民から意見等を募集するものであり、VICHで検討されているガイドライン(案)については直接、規制の設定又は改廃には当たらないため、これまで実施してきませんでしたが、将来的にわが国の「安全性評価に関する指針」にも影響が出ることも考慮し、今回、幅広く意見を募集することとなったものです。

意見4
 農水省通知の中に動物用医薬品等取締規則に基づく『動物用医薬品のための毒性試験法等ガイドライン(農水省ガイドライン)』と、整合性を取る必要ある。

 VICHにて合意されたガイドラインは、厚生労働省及び農林水産省とも整合性を図ることとしています。

意見5
 2.2遺伝毒性化合物について、『明確に遺伝毒性が陰性である成績は、一般に遺伝毒性機序による癌原性の可能性がないという十分な証拠になる。』について、実施すべき遺伝毒性試験の項目について言及する必要がある。
 OECD遺伝毒性ガイドラインでは、(1)遺伝子突然変異誘発性を指標とする試験、(2)染色体異常誘発性を指標とする試験、(3)DNA傷害性を指標とする試験の中から、被験物質に適する試験を複数の組み合せで行うべきであるとしているように、標準的な試験項目の組み合わせ(in vitroおよびin vivo試験に区別して)を具体的に明示すべきである。
 また、明確に遺伝毒性が陰性である動物用医薬品とは親化合物並びに代謝物を含むと明記すべきであると考えます。

 遺伝毒性試験の標準的な試験項目の組み合わせは、既に合意されている「遺伝毒性試験ガイドライン」に、以下のとおり規定されています。

(1) 細菌の遺伝子突然変異試験
(2) ほ乳動物細胞の染色体傷害のin vitro試験
(3) げっ歯類造血細胞を用いる染色体傷害のin vivo試験
  (被験物質に応じた組み合せで行う。)

 また、「遺伝毒性試験ガイドライン」には、被験物質の代謝物についても試験を実施するべきであると規定されています。

意見6
 2.4In vivo癌原性試験(2.4.4.3その他の用量の選択)について、わかり易い表現に修正すべきであると考えます。

 これらの試験ガイドラインは、専門用語が多く、理解しにくい部分もあると思いますので、わかりやすい表現に修正したいと考えております。 

意見7
 2.5生存中観察と病理検査について、一般に投与終了後の生存例はと殺剖検し、全例について器官・組織の肉眼的観察と共に、血液を採取して、血液学的検査及び血液生化学的検査をおこなうものと理解しています。
 検査項目はできる限り多項目かつ測定にはそれぞれ国際的に汎用されている方法・測定単位を採用すべきです。臨床病理検査を不必要とする根拠について詳しい説明が必要である。

 VICHでは、過去の毒性試験データ等を検討した結果、臨床病理検査(血液検査、尿検査及び臨床化学検査)は腫瘍原性の評価に寄与しない観点から、被験動物の生存中観察及び病理検査で合理的に安全性を判断することとしています。

意見8
 遺伝毒性試験および癌原性試験結果の評価法、評価基準についてのガイドラインも必要です。

 VICHは、動物用医薬品の安全性評価のための試験方法を統一して、合理的な毒性試験を実施する目的でガイドラインを設定しているため、具体的な評価法や判断基準については示されていません。
 また、被験物質の安全性は、最新の知見に基づく多角的な視点からの評価が必要であり、画一的な評価方法を設定するには、今後更に検討を重ねる必要があります。


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