今後の男女雇用機会均等対策に関する意見募集
受付意見の概要


 本年8月1日に、労働政策審議会雇用均等分科会における審議状況について中間的な取りまとめを公表し、8月末までの間、意見募集を行ったところ(参考1)、651通の意見が寄せられた(参考2(PDF:57KB))。その概要は以下のとおりである。

I 意見の概要

 男女雇用機会均等の確保について
(1) 男女双方に対する差別の禁止
(1) 男女双方に対する差別の禁止とすべきとの意見が多かったが、女性差別是正が進んでいない中にあって双方差別禁止規定を設けるべきではない等の意見も少数ながら見られた。
(2) 「仕事と生活の調和」を均等法の理念・目的として規定すべき、男女が仕事と家庭を両立できるための法律として位置づけるべきとの意見が多かったが、「仕事と生活の調和」は男女の性差の問題ではない、働き方の自由を奪うことになりかねない、労働法全体の中で実現すべき等の意見も見られた。
(3) 現行均等法第9条に規定する特例については、女性差別の現状があるので今のまま維持すべきとの意見のほか、男性についても同様の規定を設けるべきとの意見も見られた。
(4) 以上の他、労働時間短縮のための措置をとるべき、男性の働き方を規制すべき、同一価値労働同一賃金の理念を生かすべき、すべての職種で男女比率が同数となるようにすべき、年齢や性同一障害等の差別の禁止規定を盛り込むべき等の意見も見られた。

(2) 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止
(1) 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止を明記すべきであるとの意見が多かったが、不利益取扱いを一律に禁止すべきでないとの意見も少数ながら見られた。
(2) 不利益取扱いの内容については、産休後は原職又は原職相当職復帰とすべき、採用面接での妊娠・出産の有無の質問を禁止すべき、有期契約の更新拒否や更新時の労働条件の不利益変更を禁止すべきとの意見が多かったほか、妊娠・出産した女性を退職に追いやる言動を禁止すべきとの意見も見られた。
(3) また、昇進・昇格における査定について、休業や能率低下がなかったものとして取り扱うべきとの意見が多かったほか、産休取得や能率低下以前の本人の働き方の実態から検討することとすべきとの意見があったが、不利益取扱いの禁止は必要であるが能率低下などに伴う評価の面においては他の社員との間で差が生じるのは当然であるとの意見も見られた。
(4) 産休取得や能率低下による賃金、一時金、退職金の取扱いについて、年次有給休暇と同様に出勤したものとみなすべきとの意見が多かったが、ノーワーク・ノーペイの原則どおり、不就労期間のない者と同様に扱うことはできないとの意見や、能力低下・不就労を理由とする賃金カットは私傷病等他の理由による処遇を下回ることは許容すべきでないとの意見も見られた。
(5) その他、出産手当金を引き上げILO第183号母性保護条約を批准すべきとの意見が多かったほか、非正規労働者にも正規労働者と同等の保障をすべき、有期契約中の妊娠・出産に伴う休暇日数分の契約期間延長の権利を保障すべき、産休・育休中に周りの労働者にしわ寄せが行かないシステムを作るべき、労働者の産休取得により企業が被る不利益をカバーするため国が助成金を出すべき、等の意見も見られた。

(3) 間接差別の禁止
(1) 間接差別の禁止を均等法に明記すべきであるとの意見が多かったが、間接差別については合理性の有無の判断に幅があり、また、対象が無限定に広がりかねず実務上混乱を招くおそれが強いため禁止には反対である、判例がない段階での法制化は時期尚早であるとの意見も少数ながら見られた。
(2) 間接差別の内容については、パートの処遇、コース別雇用管理制度、家族手当の世帯主要件、残業・転勤要件を含めて禁止すべき、間接差別禁止の対象は限定しないこととすべきとの意見が多かったが、限定的でもよいので法律に禁止規定を置くべきとの意見も見られた。
(3) 間接差別の判断については、間接差別に当たらないことの立証責任を使用者側に課すべき、合理性・正当性の判断基準として使用者の経済的理由の抗弁を認めないこととすべきとの意見が多かった。
(4) その他、間接差別の問題は、ポジティブ・アクションの促進により格差解消に努めるべき問題であるとの意見も見られた。

(4) 差別禁止の内容等
(1) 募集・採用について性別による差別的取扱いを禁止すべき、との意見が多かったが、募集・採用については、機会の均等を保障することで十分との意見も少数ながら見られた。
(2) 仕事の与え方及びその他一切の労働条件における差別を禁止すべきとの意見が多かったが、仕事の与え方は個人の資質に応じて決定されるもので性差の問題ではないことから、差別禁止の内容に含めるべきではないとの意見もあった。
(3) また、現行の指針上の「雇用管理区分」を削除すべき、労働基準法第3条の差別禁止規定に性別を追加すべき、労働基準法第4条に「同一価値労働同一賃金の原則」を入れるべきとの意見が多かったほか、均等法で賃金差別禁止を規定すべき、採用において応募の男女比に沿った採用を義務づけるべき、コース別雇用の多くは差別の固定化につながっている、あらゆる形態の差別を禁止するために差別禁止の内容は細かく規定すべき、合理的理由のない有期雇用は禁止すべき等の意見も見られた。

(5) ポジティブ・アクションの効果的推進方策
(1) ポジティブ・アクションを企業に義務化し、強制力のあるものとすべきとの意見が多かったが、義務化は時期尚早、規制強化は女性の採用の抑止力につながるとの意見もあり最善の措置ではないとの意見もあった。
(2) ポジティブ・アクションの義務化の内容について、とりわけ100人以上の企業に義務付けるべき、公共入札において行動計画の作成の有無を考慮要素の一つとすべきとの意見が見られたことのほか、事業主自らが実態を把握し、改善に向けて自覚的に取り組むための規定が必要との意見も見られた。
(3) その他、資金援助・表彰・認定マークなどの優遇策・奨励策を行うべき、学校教育や職場研修での徹底を図るべき、中小企業ほど行動計画が必要、企業ごとにSRI(社会的責任投資)指標で公表・表彰すると良い等の意見も見られた。

(6) セクシュアルハラスメント対策
(1) セクシュアルハラスメントについて使用者に事前防止と事後の適正な対処を義務付けるべきという意見が多かったが、紛争の予防、解決責任を企業がすべて負うことは現実問題としては極めて困難である、事後対応の義務化については事実把握や加害者の責任追及への踏み込みには限界があり慎重に対応すべき、一律な義務化はすべきでない、と反対する意見も少数ながら見られた。
(2) また、救済や予防・対処の申出を理由とする不利益取り扱いを禁止すべき、プライバシーの保護を明記すべきとの意見も多かったが、会社が問題に関与する場合、事実関係を確認する必要があるためプライバシーについて完全に保護等されるのは難しいため政府系の相談機関の一層の周知が賢明であるとの意見もあった。
(3) セクシュアルハラスメントの定義にジェンダーハラスメントを加えるべきという意見も多かったが、現場の混乱を招くこと等からこれに反対する意見もあった。
(4) その他、職場外・時間外の行為も含むことを明確化すべき、人権侵害・犯罪であることを徹底すべき、被害者が働き続けられるような仕組みを作るべき、職場外の救済機関が必要、男性もセクシュアルハラスメントの保護の対象とすべき、セクシュアルハラスメントによる精神的被害を労災と認定すべき等の意見も見られた。

(7) 男女雇用機会均等の実効性の確保
(1) 立証責任が使用者側にあることを明記すべき、政府から独立した公正な性差別救済委員会を設置すべきとの意見が多かったが、労働紛争に関する解決手段は、労働審判制度が新たに創設されるなど現行救済制度で十分との意見も少数ながら見られた。
(2) また、罰則を設け、是正命令を出すべき、立入調査権限を入れるべきとの意見も見られた。
(3) その他、差別についての推定規定を明文化すべき、行政による救済制度(労働局・雇用均等室)の権限強化をすべき、救済申立てを理由とする不利益取扱いの禁止を徹底させるべき等の意見も見られた。

 女性保護、母性保護について
(1) 女性の坑内労働禁止
(1) 原則解禁すべき、女性技術者が坑内工事の管理・監督業務に従事できるようにすべきとの意見と、禁止のままであるべきとの意見の双方が見られた。また、ILO条約との整合性を担保すべき、本人同意を要件とすべき、男女問わず身体的状態を理由とした申出による禁止とすべき、安全対策をきちんとした上で解禁すべき、妊産婦については原則禁止すべき等の意見が見られた。
(2) その他、イギリスのリスクアセスメントのような方法も検討すべき、その職業に従事する人の意見を生かすべき等の意見も見られた。

(2) 母性保護
(1) 母性保護制度の義務づけの規定をおくべき、妊娠出産・産前産後の保護を手厚くすべき、産婦の申出がある場合に危険場所での作業を禁止すべき、ILO母性保護条約を批准すべき等の意見が見られた。
(2) その他、産前産後休業中の健康保険からの給付率や出産手当金の給付率を引き上げるべき、出産費用を社会保険制度の適用とすべき、有給通院休暇・有給生理休暇・更年期障害休暇を整備すべき等の意見も見られた。

 その他
 公務員を含めたすべての労働者に均等法を適用すべき、罰則を盛り込んだ実効性のあるものへと改正すべき、非正規労働者に対して実効ある制度が必要である等の意見が見られた。
 その他、外国の事例を紹介するもの、企業経営や経済活動の実態を十分に踏まえた議論を求めるものや、中小企業でも均等法が推進できる方策を求めるもの、少子化問題・次世代育成の観点から均等法に期待するもの等が見られた。

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