「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」
中間取りまとめに対する御意見の募集の結果について


 厚生労働省におきましては、「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」中間取りまとめに対する御意見を募集しました。お寄せいただきました御意見の概要は、「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」に資料として提出されるとともに、今後の検討に生かしていくこととなりました。
 御意見の募集の結果は下記のとおりです。


 実施方法
(1) 御意見募集期間
平成17年5月20日から平成17年6月20日まで
(2) 告知方法
厚生労働省ホームページ
(3) 提出方法
郵送、FAX又は電子メール

 御意見の総数
合計  557 件
内訳
  労働組合  180 件
  使用者団体  3 件
  弁護士団体  20 件
  個人  351 件
  (学者  10 件
  その他  3 件

 御意見の概要
 お寄せいただきました御意見につきましては、取りまとめの便宜上、適宜要約させていただいております。


 御意見をお寄せいただきました方々の御協力に厚く御礼申し上げます。

照会先:厚生労働省労働基準局監督課政策係
(電話)03-5253-1111(内線5561)



(別紙)

○ 全体
 ・ 「中間取りまとめ」の基本的性質は今後の議論のための中間的論点整理のために作られたものではなく、最終報告のたたき台として作成したものと言わざるを得ない。「中間取りまとめ」について、各方面から意見を求め、議論を深めるための論点整理の文書作成を求める。もし「中間取りまとめ」の方向性が修正されることなく労働契約法が作られていくのであれば、労働者や労働組合のためにならない労働契約法であると判断する。
 労働契約法では、労使自治に委ねるだけでは妥当ではなく、労使の非対等性を補強し、実質的対等に近づけるような仕組みが必要である。
 労働契約法を制定するにあたっては、必要なルールは明確に法律化して、労使の行為規範となり、紛争発生の予防に資するものにしなければならない。「中間取りまとめ」では、指針やガイドラインを作ることに重点が置かれているが、これらは労使の行為規範になりうることがあったとしても、裁判官には一顧だにされず、重要なルールは法律化が必要である。
 裁判において紛争を解決することを考えれば、権利義務の「要件」と「効果」をはっきりさせ、立証責任の在り方についても考察しなければならない。労使の非対等性にかんがみれば、立証責任は基本的に使用者が負うものとすべきである。
 もし労働契約法に任意規定を多くすれば、結局は使用者が提案する労働条件等に合意せざるを得ない労働者にとって労働契約法の意義は薄らぐ。労働契約法の基本は、当事者の意思に関わりなく適用される強行規定とすべきである。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法は契約自由の原則を最大限尊重し、労使の自主的な労働条件の決定を補完する法律であるべきである。その性質は任意規定であるべきで、実体規制をするべきでない。「中間取りまとめ」にある、試用期間の上限の規制、兼業禁止規定や合意を無効とすることは反対する。
 「中間取りまとめ」では、懲戒処分、有期雇用契約、採用内定の留保解約事由、試用期間、転籍、競業避止、秘密保持などについて書面化を要求し、書面で明らかにされていなければ無効など使用者に不利に取り扱われる。これらの強行法規による規制はかえって労使紛争を誘発するおそれがあるため反対である。
 契約法であるから、使用者側の義務に偏することなく、労使双方の義務を規定すべきである。例えば、労働者の誠実義務(企業秩序遵守義務、秘密保持義務、競業避止義務、自己健康保持義務等)についても積極的に定めるべきである。
 労働基準法の刑罰法規が現在本当に必要かどうか見直し、不要な罰則規定を削除すべきである。例えば、労働基準法第91条に定める減給の制裁の厳しい上限規制(1回の額の上限は平均賃金の半日分)は必要性も合理性もなく、公務員と同程度の減給処分(1年以下の期間、俸給月額の5分の1以下)が可能とすべきである。
 さらに、民法の雇用の規定との関係についても整理すべきである。
 労働契約法はわかりやすいシンプルなものであるべきであり、就業規則の不利益変更の考慮要素の指針、整理解雇の指針については不要である。また契約法の指針であることから、「使用者が講ずべき」とするような行政指導的なものを定めることには反対であり、情報提供的な指針に限るべきである。(使用者団体1件)

 ・ 近年の経済のグローバル化や多様化するライフスタイルを反映して、人事管理に関する企業の意識や労働者の就業形態及び就業意識も多様化している。企業・労働者双方の視点から、多様な雇用機会を創出し、働き方の選択肢を増やすためには、これまでの、画一的処理を目指した現行の労働関係法規や判例法理では時代の変化に十分に対応できていないとの危機感をもっており、同様の問題意識をもって、労働契約関係における公正かつ透明なルールを確立し、労働・雇用契約関係における契約当事者の自立性を一段と推奨しようとする厚生労働省の昨今の取り組みと、これを受けて開催されている本研究会の活動を、高く評価する。(使用者団体1件)
 ・ 労働契約に関し、労働基準法など現在の法律に加えて新たに立法化を図る必要はなく、現行法の見直し、判例、労使の話し合いにより十分に対応できると考える。しかしながら、立法化を前提にした意見ということであれば、基本的には中間報告の考え方に賛成する。その際、わが国の労使が対等な立場で、自己責任の原則に立ち、自主的に労働条件を決定していくことを通じて、わが国の労使がより自立することを促進する法規定をお願いする。すなわち、法規定はできるかぎり簡潔にし、個々の労使が自己の裁量により決定できるよう、原則的なものに止めてほしい。(個人1件)

 ・ 規制緩和論が想定している契約は、新古典派経済学の価格理論が想定する完全市場での契約である。しかし、現実には、企業は、個々人の労働の質が同一ではないことを知ってはいるが、個々人に関する完全な情報を集めることができないために、平均値でみた統計的グループから差別グループを選び出す。したがって、アメリカでもイギリスでも規制緩和推進と同時に契約当事者の実質的な平等を担保するための差別禁止立法が相次いで制定されているが、日本の場合、差別禁止立法が不十分で対等な立場で決定するための前提が担保されていない。
 「中間取りまとめ」の最大の問題点は、売り手市場ではなく買い手市場に直面する普通の労働者や非正規労働者が、自主的、対等な立場で労働条件決定をすることを可能にするための具体的な検討・提言が示されていないところにある。(個人(学者)1件)
 ・ 「対等」「自主的」「公正」とは、労働者が、人たるに値する労働条件のもとで働く権利を保障するという労働権保障の理念(憲法第27条)に照射された社会法としての対等性、自主性、公正さでなければならない。今日においても、労働契約法制のなかに労働者保護の視点が要請されており、目的規定に労働権保障の理念を盛り込むべきである。(個人(学者)1件)
 ・ 労働力流動化政策に代表される労働政策や人事労務政策の弊害を抑止する方向で、労働契約制度・法制のあるべき姿が構想されなければならないが、「取りまとめ」は、そのような方向での議論の集約となっていないことが最大の問題点である。労使当事者の自由な意思といった仮装によって、際限のない労働者の自由や権利への簒奪を防ぐ労働契約法制こそが構想されなければならない。(個人(学者)1件)
 ・ 今日の労働関係・人事管理の多様化・複雑化のなかで伝統的な集団的・統一的労働条件形成の方式だけでなく、個別労働契約の役割は増しつつあり、これを対象とする法制度の定立は重要な意義を有する。(個人(学者)1件)
 ・ 私的自治原則から導かれる「自主的に決定」と、生存権保障、個人の尊厳の尊重という基本理念に根拠を持つ「公正かつ透明なルール」とは、いわばトレード・オフに類似した関係にある。「自主的決定」を制約・支援する規制内容の見直しや労働条件の「適正さ」を確保できるに足る「自主的決定」の条件整備と同時に、日本の労使関係の現実における「自主的決定」の意味や労働条件の「適正さ」を評価・判断する基準が問われなければならない。(個人(学者)1件)
 ・ 近時における労働契約をめぐる状況の変化のなかで、過労死やサービス残業の常態化、失業や不安定雇用の増大等の雇用問題に対する明確な認識・評価が報告のなかから窺えないことに懸念を感じる。労働契約法制は、まず第一に、生存権保障を指導理念とした労働者保護の法体系として構想されなければならない。
 労働契約法制の制定は、労働基準法の制定に匹敵する重要な立法課題であり、いかに焦眉の課題であっても、それにふさわしい慎重かつ十分な検討と社会的合意の形成が要請される。広く関係諸団体および世論の意見を反映したうえで、拙速のそしりを受けないよう十分な審議がなされることが望まれる。(個人(学者)1件)
 ・ 予定される労働契約法は、労働基準法等の従来の法令との関係、また判例法理との関係で、均衡のとれた役割分担により、労働法体系のなかの場所を獲得しようとしている。第二に、その内容が、判例理論を確認する部分と画期的な制度創設の部分とが、適度のバランスで配置され、全体としては漸進的で確実な改革を志向している。第三に、労使いずれの利益にも偏することなく、現実主義と理想主義の間の、絶妙な均衡点を追求している。
 しかし、バランスが利いていることは、逆に見れば不満を惹起する要因でもあり、例えば、労働契約法の制定の必要性以上にどのような思想と理念を持つ労働契約法が制定されるべきかの方針が提示されておらず、法技術論に埋没している。(個人(学者)1件)
 ・ 判例法理を前提にするなど全体的に保守的であり、いかなる方向に向けどのような雇用社会を形成していくのかのヴィジョンが必ずしも明らかでなく、この意味で基本理念・目的と創造性を欠くという根本的な欠陥を有する。
 判例法理は日本的雇用慣行をベースに形成されてきたが、労働力の流動化や成果主義賃金の普及といった日本的雇用慣行の変容によって現在その基礎が崩れつつあり、判例法理を若干整序し明確化することでは大きく変化する現代の雇用社会に対応できない。また、判例法理は労働者の雇用の安定を図ることと引き替えに使用者に広範な裁量権を容認するという構図となっているが、「中間取りまとめ」が就業規則や配転、昇進・昇格・降格などにつき後者の側面をそのまま法制化しようとしている点は、対等・自主的な労働条件決定や公正で透明なルールという理念と矛盾する。そして、法律ではなく指針が活用される事項についてはルールの明確化・安定化・実効性の点で弱く、問題があろう。
 また、半世紀以上前の時代状況をふまえて制定された労働基準法の基本骨格・構造を前提に労働契約法制のみを新たに設けることでは、現代の雇用社会に到底対応できない。労働基準法も全面的にリニューアルを図って労働契約法制と統合し、様々な規定・規制を問題となる事項ごとに適切に組み合わせた総合的な「雇用関係法」を構想すべきである。(個人(学者)1件)
 ・ 労使当事者の自主的決定を促進する労働契約法制を具体化し、事前規制・調整型社会から事後監視・救済型社会を目指すとの中間とりまとめの立場は、法と監督行政による規制から労使当事者を遠ざけ、労使自治の名の下に、使用者が一方的に労働条件の変更・決定ができるようなシステムを作ることにつながる。
 研究会は、使用者によって一方的に労働条件が決定されている実態を踏まえ、労使が実質的に対等な立場で労働契約の締結し、労働者が真に自律的な働き方ができるよう、中間取りまとめの内容を抜本的に見直すべきである。(労働組合83件、個人7件)
 ・ 中間取りまとめは、全体として、労働法制の規制緩和と企業のリストラや合理化を促進するものであり、このような労働契約法制が整備されたならば、働くものの雇用と労働条件は根底から破壊されることとなる。したがって、研究会の検討課題を一旦白紙に戻し、労働条件の一方的不利益変更や一方的な解雇など、企業の無法・脱法を規制し、実質的な労使対等が実現できるような労働契約法制の制定について再検討するべきである。(労働組合57件、個人264件)
 ・ 労働契約法制の策定に当たっては、労使が対等に立場にないという現実を踏まえ、労働者保護に役立つことを第一義とするべきである。労働条件は労使の自主決定に委ねることを基本とするという発想は改めるべきである。(労働組合15件、弁護士団体5件、個人40件)
 ・ 暮らしや働き方が大変厳しくなっている中で、人間らしく働くためのルールの確立が求められている。「中間取りまとめ」は一層の労働法制の規制緩和・ルール破壊を進めるものであり、反対である。今こそ人間らしく生き働き続けられる労働契約法制の制定を要求する。(団体2件)
 ・ 労働基準法は、不十分な部分もあるものの、企業が守れば労働者が働きやすくなる法律である。しかし、「中間取りまとめ」に記載された内容はこれを根底から崩してしまうものであり、絶対に反対である。(個人1件)
 ・ 労働契約の名の下に、個人個人の労働者と使用者の力関係を無視して、労働者に不利な契約が締結されるおそれが大きいので、基本的に反対である。(弁護士団体8件)
 ・ 現状の労働条件の後退を追認するだけの法律を制定するのならば許容できない。実態を深く調査した上で、その対策として何が必要なのかの議論がまず必要である。そうした細やかな対応と一緒に考えなければ、実質的に対等な立場で自主的に労働条件を設定することを促進する環境は作り得ない。現場労働者の意見を汲んだ議論をお願いする。
 また、能力主義・成果主義等の労働者の差別化は、柔軟な運用がなければ労働者の勤労意欲をそぎ、ひいては生産性もないがしろにしかねない。能力主義・成果主義の効果も議論すべきである。(個人1件)
 ・ 政府の果たすべきことは人間らしく働ける環境を整備することにつきる。「中間取りまとめ」は、より一層の規制緩和策を支持する内容であり、労働者とその家族の生活を破壊しかねない問題をはらんでいる。
 研究会は、「中間取りまとめ」の内容を全面的に見直し、労使の実質的な対等のもとでの労働契約の締結、労働者が真に自律的な働き方ができるような法制度の検討が進められることを要請する。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制は、個々の労働者と使用者の現実の関係は使用者が圧倒的に有利であることを踏まえ、労働条件の労使対等決定を実現するものでなければならない。就業形態の多様化、労働条件決定の個別化に進展に伴う弊害をどのように是正するかという観点からの議論を求める。
 財界の要望に沿って、迅速・柔軟な労働条件変更のために労働契約法を制定するのはいかがなものかと考える。ホワイトカラー・エグゼンプション導入のために労働契約法を制定することなどは論外である。
 「中間取りまとめ」の提言は、勤労権と団結権の否定である。労使当事者が実質的に対等な立場で労働条件が決定できるような労働契約法制の制定を望む。(個人1件)
 ・ 労使間の交渉力に圧倒的な格差がある職場においては、労使が対等に話し合って適正な労働条件を決めるという基盤はない。「中間取りまとめ」が想定する労働契約法制の下では、これまで以上に使用者から一方的に労働条件を押しつけられることになる。労働契約法制は、労使間に交渉力に格差がある場合であっても、適正な労働契約を締結しうるよう、労働者保護の立場を明確にしたものにすべきである。(個人1件)
 ・ 労働契約法制は、労働者の定着化・固定化を推進すること、サービス残業を根絶すること、残業を例外化すること、同一労働同一賃金の原則を徹底すること、鬱病を予防することを目的とするべきである。(個人1件)
 ・ これまでに確立した判例法理や指針等で示されていることを盛り込むことにより、募集から退職までのルールを作ることは重要である。(個人1件)
 ・ 「中間とりまとめ」は、「上方硬直・下方開放」の観点から労働基準法や労働組合法を形骸化させようとするものであり、労働者保護の解体につながるものである。労働者保護と労働条件向上に資する方向での抜本的見直しを求める。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制は本来指針的な性格を有するものであることから、可能な限り、別指針を設けないようにするべきである。
 集団的な労働条件決定システムの機能の低下を挙げながら、集団的な労使合意を解雇の金銭解決制度の要件とするなど集団的な労働条件決定システムの評価が不十分である。(個人1件)
 ・ 「中間取りまとめ」は、憲法の想定する労働者保護の理念を根本的に破壊しかねない危険なものである。「中間取りまとめ」の内容を全面的に見直し、労使対等な関係を土台にした労働契約により労働者の権利が保護される方向での法制度づくりを検討するべきである。
 「中間取りまとめ」の問題点は、労使の力関係の不均衡を前提に圧倒的に強い立場にある使用者から立場の弱い労働者を守るという視点が欠けていることである。(労働組合1件)
 ・ 研究会は、労働者の声を聴いた上で、「中間取りまとめ」を全面的に見直し、労使が真に対等な立場で労働契約を締結できるようにすることと、労働者の権利が保障された働きやすい労働環境を実現する制度とすることを要請する。(個人1件)
 ・ 厚生労働省の実情認識は恐ろしいほどに浅薄である。日本では、典型的には、過労死・過労自殺、少子高齢化、家庭が破壊されることによる子供の情緒の不安定化という問題が発生している。(個人1件)
 ・ 労働組合がない企業が多く、労働組合がある企業であっても十分に機能していない中で、労使自治を強調することは、使用者の都合の良い労働者代表や労働組合によって、個々の労働者の基本的な労働条件がおかされることになりかねないため、断じて容認することはできない。
 労働契約法制を作るにあたっては、労使が対等の立場にはないという現実を踏まえて労働者保護を目的とすることが第一義とすべきであり、労働条件は労使の自主決定に委ねるという発想は改めるべきである。(個人1件)
 ・ 圧倒的に優位な立場に立つ使用者の横暴を抑止し、労働者の権利を保護するために、労働契約の内容である労働条件について、その内容、手続の両面にわたり法律で一定の定めをすること(労働契約法制の整備)によって、明確にすることは望ましいことである。労働契約法制の在り方を考える上では、今日の日本の労働現場において労働者の権利が空洞化しているという現実を直視し、労働者の権利を擁護するための法制化を目指すべきである。(弁護士団体1件)
 ・ 労働組合の組織率の低下と集団的労使決定システムの機能が低下を同等に評価することに反対である。むしろ、集団的労使決定システムを有効に機能させることが必要である。
 この報告書の総論における考え方は、憲法第28条で保障された労働三権の否定するものであることから、既に崩壊しかけている労使対等原則をさらに窮地に追いやるものと言わざるを得ない。
 この研究会報告は、すべてが使用者側のためにつくりあげられているとしか言いようがなく反対である。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制作りに当たっては、労使が対等の立場にないことは冷厳たる事実であって、この事実を踏まえて労働者保護を図るべきである。労働条件決定を労使の自主決定にゆだねることは、結局使用者に19世紀のフリーハンドを与えるに等しい。(個人1件)
 ・ 労働契約法については、労使双方が実質的に対等な立場で労働条件の決定ができる法律となるようにすべきである。特に労働者保護に力点を置いたものを求める。(労働組合1件)
 ・ 労働者の人権保障のために一定の範囲で契約の自由に枠をはめるという観点から考えるべきである。このため、判例法理の明文化は意味のあることである。使用者の都合による労働条件の不利益変更をこれまでより緩やかに認める制度の導入は行うべきでない。(個人1件)
 ・ 特殊な技術や才能を持った一部の労働者の中に、経営者と実質的に対等な立場で契約を結ぶ者が出てきているかもしれないが、圧倒的多数の労働者が対等な立場とは無縁のところで労働契約を結ばざるを得ないという現実を無視している。
 雇用の多様化は労使関係が対等でないことから起きているものと認識すべきである。
 今年の秋という期限にとらわれることなく、中間取りまとめを見直すべきである。(個人1件)
 ・ 「中間取りまとめ」は労働者保護の理念を突き崩し、経営者の横暴を助長する立場に立っているとしか思えない内容となっている。今後の労働契約法制の在り方としては、定年まで元気で働ける職場を作ること、同一職場で働く労働者には出来る限り同一労働条件を保障すること、思想信条・性別等を理由とする差別を禁止すること、労使対等の原則を明確に保障すること、労働者の働く権利を保障し、安易な解雇を許さないことが重要である。(個人1件)
 ・ 労働契約法制は労使間の非対称性に立脚して構想されなければならない。「中間取りまとめ」では、労使間の非対称性を手続論・技術論で補完する手法が多く採り入れられており、机上の論理と言わざるを得ない部分も見受けられる。今後、慎重に検討すべきである。(労働組合1件)
 ・ 労働条件を労使の自主決定に委ねることは、使用者が圧倒的に優位な社会的地位を利用して、労働者側に不利な労働条件を押しつけることを是認するものである。これは、労働基準法の最低基準性や、労働法制の社会福祉的性格を無にするものである。(個人1件)
 ・ 現時点の日本で労働基準法が最低限度としての役割を十分果たしていない、もしくは経営が守っていない中で、ただ単に民法上のルールを新たに作り、労働法制とのダブルスタンダードにしたときの労働者側の損失は計り知れないものとなることが想像できる。「中間取りまとめ」は廃棄し、仕切り直すべきである。(個人2件)
 ・ 現在サービス残業や違法派遣、男女の賃金差別などが公然と行なわれている実態がある中で公正かつ透明なルールを労使当事者間に求めることは、労働者側にとって労働条件の切り下げの可能性もあることから、労働契約法制の導入について到底容認できない。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制が実質的に有効に機能するための前提として、使用者に対して労働基準法等による最低基準・ルールの遵守を徹底することがまずもって必要と考えられる。(弁護士団体1件)
 ・ 「中間取りまとめ」は、労働契約法制の名の下に、労働組合や労働者個人が裁判などを通じて獲得してきた権利を大幅に後退させるものである。勤労権及び労働基本権を侵害しかねないため、断固として反対するものである。(弁護士団体1件)
 ・ 研究会本来の趣旨にそぐわない内容は、即座に削除するか、大幅に見直す必要があると考える。抜本的見直しがなければ、研究会が考える労働契約法制は使用者のためだけのものであり、労働者や労働組合にとって害悪であると考える。
 個別の労使関係で対等となりうることはあり得ない。労働契約法制が、結局のところ、本来の目的とは大きくはずれ、既に保障されている労働者の権利を奪うための法整備となるのではないか。労働組合として、大きな危惧を持つものである。
 このままの方向で労働契約法制が整備されるとすれば、その法律は無責任な使用者のミスを労働者に押しつけることを合法化するものであり、あるいは労働組合つぶしのための法整備である。それには断固として反対する。(労働組合1件)
 ・ 労使対等な契約が確保されるためには、現行の労働者保護の法制を一層現実にあわせて強化し、違反に対しては罰則を持って企業を監督する体制強化がまず不可欠である。そうした土台があってこそ労働契約法制がその役割を発揮できる。労働契約法制があるから労働契約の問題について行政が監督を行わないといったことはあってはならない。(労働組合1件)
 ・ 研究会は、十分な調査・審議をつくさず、あまりにも実態からかけ離れた事実認識のもとに、従来からの財界要望に沿って性急に結論を出そうとしている。このように無責任な取扱いをすることは許されない。
 研究会は、最高裁の諸判例を無批判に肯定し、事実上、最高裁判例に沿った労働契約法制定を進めようとしており、再検討の意志も感じられない。これでは専門的な調査研究を行う研究会としての資格要件を満たしていないといわねばならない。
 「中間取りまとめ」は、あたかも労使が対等な立場で自主的に労働条件を決定することが今日一般に可能であるかのように主張し、労使自治に基づく労働契約法制定を推進しようとしている。それは、なし崩し的に労働法を空洞化させ、事実上、使用者が一方的に労働条件の変更・決定を行うことのできる契約システム導入に途を開くことになろう。
 「中間取りまとめ」の内容を全面的に見直し、労働法本来の労働者保護の理念を踏まえて、労使の実質的な対等を実現することに資する労働法制の検討に向けて、真摯に取り組むよう要請する。(団体1件)
 ・ 「中間とりまとめ」の目指す労働契約法制の内容は、憲法上保障されている勤労権(憲法27条)及び労働基本権(憲法28条)を侵害しかねない大問題をはらんでおり、反対せざるを得ない。(弁護士団体1件)
 ・ 事前監視監督型の労働契約概念を事後型に変質させることに反対する。また、労働者が使用者と真に対等な立場で労働契約が確立されることを求める。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制のあるべき姿は、(1)労働者保護法制に徹するべきである、(2)使用者による一方的・理不尽な解雇・労働条件切り下げ・労働強化・配転・イジメ等々を、厳しく規制するものでなければならない、(3)使用者が(2)の規制を無視・違反した場合、職場でそれと闘おうとする労働者・労働者集団の武器となるものでなければならない、(4)(3)の紛争が裁判所に持ち込まれた場合、裁判所が使用者の横暴を厳しく規制し、無効・不法行為と宣言する根拠となるものでなければならない。「中間取りまとめ」は、労働者保護法という色彩が極めて弱く、「規制緩和」を振りかざして、原始的蓄積期資本主義への復古を強行しようとしている使用者に奉仕するものと思わざるを得ない。根本的な再検討・転換を求める。(労働組合1件)
 ・ 労働者の人権保障のために、一定の範囲で労使の契約の自由に枠をはめようというのが労働関係法規の基本的な考え方であり、労働契約法制の整備にあたっても、まず、この労働者の人権保障の観点から考えるべきである。
 そこで、労使が適正な労働契約を締結しうるよう、労働契約の締結・展開・終了に関し、労使の自治に一定の枠をはめるルールをつくるという意味では、判例法理を明文化しようとするのは意味のあることである。
 しかし、ルールを守らない使用者の行為を法的に是認するような法制化はするべきではない。中間とりまとめは、「金銭補償解決制度」、「雇用継続型契約変更制度」「労使委員会の5分の4以上の同意により就業規則変更の合理性を推定する規定」など使用者の都合による労働条件の不利益変更をこれまでより緩やかに可能とする制度の導入をうたっており、労働契約の内容が適正なものになるような労働契約に関する基本的なルールを確立するという目的から外れかねないものであると憂慮する。(個人1件)
 ・ 将来不安な雇用制度・解雇多発・フリーターなど不安定雇用・低賃金の増大と格差・不安定雇用の拡大は年金制度の崩壊をもたらす。さらに、自殺・過労死の世界的にも異常な数字がこれらを物語っている。憲法にもある健康で文化的な生活・労働の権利に違反し、一層乖離していく条件をつくり出すものといえる。
 さらに、労使対等で自主的に決定するといっても、日本の企業の横暴さから、企業倫理の実態から、更にコンプライアンスからみても遠いものである。思想差別、解雇四条件すら全く不知のように不当解雇、長時間過密労働が蔓延している現状をいかに改善するのか、その担保を問いたい。一人ひとりの人間が、企業の不当性について訴えるのは並大抵のことではない。今日の日本の裁判制度も、労働者には過酷な制度である。
 今回の動きは、今日的に遅れている労働諸法制の改善どころか、自由に解雇をする環境づくりや、企業の使いやすい労働者管理へ一層流れに掉さすものである。「中間取りまとめ」が、いかにも企業の代弁を推進しようとするものであり、日本の計をまた誤る最悪な方向へ行くものと思われる。今日の悲惨な状況をよく分析され、真に日本の将来への条件づくりへ再検討されるよう要請する。(個人1件)
 ・ 「中間取りまとめ」のめざす労働契約法制の内容は、全体として、労働者の人権を保障していく立場にたった内容になっていないことから反対である。今こそ、日本国憲法の立場にたち、労働者が人間らしく働き続けることができるための法律を拡充・強化すべきである。厚生労働省の役割は、労働者の人権を守ることであり、そのために、企業に対する規制を強めること、そのための法的規制の強化と厚生労働省職員の大幅な人員増などを行うべきである。(労働組合1件)
 ・ 中途採用の増加、採用方法の多様化、成果主義・能力主義的処遇制度の導入・拡大など人事管理の個別化・多様化・複雑化は、社会の流れとはいえ労働者が自ら望んだものではない。労働者と使用者との間には情報の質及び量、交渉力の格差があり、対等性がない状況下において労働契約を労使間の個々による自主的決定に任せることは、労働者へ一方的に負担を負わせる危険を考慮しなければならない。労働契約法制を整備するならばその点を十分考慮するべきである。また、米国のように代理人制度が浸透していない日本においては、労使間の問題を単純に契約として扱うことにも細心の注意が必要である。(労働組合1件)


○ 労働契約法制の必要性
 ・ 労働契約に関する紛争の増加の大きな要因は、労働契約に関するルールの未整備にあり、労働契約の成立から展開、終了まで、包括的に労使の権利義務を規定する労働契約法が必要である。(労働組合1件)
 ・ 就業形態や就業意識の多様化により、労働者ごとに個別に労働条件が決定・変更される場合が増え、それに伴う紛争も増えている状況を考えれば、むしろ個別事案にあったケースバイケースの解決方法によらざるを得ず、労働契約で定めるべき基本的な項目を除けば、統一的・画一的なルールの法制化は馴染まない。あくまでも労使自治の原則と契約自由の原則を最大限に尊重すべきであり、個別労使紛争の迅速な解決や未然防止、労使双方にとっての行動規範となる指針もしくはガイドラインレベルにとどめるべきである。(使用者団体1件)

 ・ 外部の第三者機関を通じて紛争解決を図る労働者は、すでに企業とある程度対等の立場であるにも関わらず、紛争処理機関が準拠するのは、画一的処理を目指した時代に取り残された労働基準法等の労働関連法規と、企業による労働者搾取時代に弱い労働者を念頭に構築された社会通念という曖昧模糊とした基準に基づいたケースバイケースの判例法理である。これでは紛争が解決するわけもなく、結局、ある程度の規模の会社、特に外資系の企業であれば、紛争の報道等による企業価値の低下に配慮し、労働者に有利な譲歩策を提案し非効率的解決を図ることとなる。
 このような閉塞的な労働関係の構築を許す現行法制は速やかに改善されるべきであって、企業と労働者がそれぞれ独立の契約当事者として対等な立場に立ち、明確な基準に基づき契約を締結し、契約内容に疑義があるような場合には公正かつ透明なルールに基づいて労働契約を変更するよう両当事者が協議することが促進されるべきである。
 明確なルールは、労使双方にとって予測可能性を高め、紛争の予防及び迅速な解決に資するものと考える。企業と労働者が共に依拠することのできる公正かつ透明なルールが確立すれば、真の意味での自由かつ独立した一個人としての労働者像が実現する。企業に対して十分な発言力を持った有能な人材が創造的、専門的能力を発揮して、自立的かつ生産的な働き方をすることができる基盤を法制で保障することにより、生産的で健全な企業、ひいては国際競争力のある魅力ある企業を育てるのである。(使用者団体1件)

 ・ 手続とその効果を明確に示すことは大切なことである。
 紛争を未然に防止し、契約の明確化を図る意味から、書面による手続の厳格化や法律による手続の検討も必要かと考える。
 民事ルールと罰則規定を分けるのではなく、労働基準法に民事ルールと罰則を含めさせるべきである。労働契約法は手続を中心に検討すべきである。
 労働基準法第13条、第18条の2等の規定については、労働契約法に移すよりもむしろ、罰則を設けることを含めて検討すべきである。(個人1件)
 ・ 継続的な労働契約関係が適正に遂行されることを確保するため、労働契約法制を制定することは大切である。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制の必要性についての「中間取りまとめ」の指摘それ自体については異論はない。(個人1件)
 ・ 公正で透明なルールがどうして労働基準法の外におかれ、民法の特別法の範囲となるのか理解に苦しむ。使用者側に有利な法整備づくりを進めていると思わざるをえない。(労働組合1件)
 ・ 「労使当事者の自主的な決定」と「公正かつ透明なルールの必要性」を強調しているが、労使の関係には「労使当事者間の情報の質及び量の格差、交渉力の格差」が歴然と存在する下で、両者は両立できるのか疑問である。よほど規制的な側面を強化した「公正かつ透明なルール」を担保した法制にしないと、労使の自主性にゆだねた場合には、圧倒的に優勢な使用者側に有利に働き、機能不全に陥る懸念があり、労働者側への適切な配慮を欠いたままの「自主的な決定」を強化する方向には反対である。(労働組合1件)


○ 労働契約法制の内容と規定の性格
 ・ 中間取りまとめは、実体規定だけでなく手続規定も整備するとしており、一般論としてはその方針を支持する。しかしながら、例えば、最近の職務発明に関する特許法の規定の改正に伴う「新職務発明制度における手続事例集」に見られるように合理的とは思われない何重もの手続とその要件を詳細に定め、企業の機動力をまったく失わせ硬直させるような過度の手続的要件を不用意に課すことにならないよう、個別の場面について、適切な手続規定がどうあるべきかについて慎重に議論がなされるべきである。(使用者団体1件)
 ・ 賃金は労働契約法制の最も基本的な検討課題の一つのはずである。しかも、民法上、使用者の労務受領義務が明文上存在しないため、使用者側又は労働者側の事情により労務が給付されていない場合における賃金請求権の有無が問題となり、使用者の労務受領義務について明文規定が必要である(就労請求権の存在を肯定するかどうかとは別の問題である)。
 今回の「中間取りまとめ」においては、賃金や、期間の定めのある契約や解約告知等の民法上の規定をどのように扱うのかについて、いっさい論じていない。このままでは、賃金に関する規定が存在せず、民法の規定との整合性を欠く労働契約法制ができることになる。
 解雇権濫用法理や整理解雇の四要件を知らない中小企業経営者が多い状況下で、労働契約に関して確立した判例法理を中小事業主に浸透させるには、要件と効果を明確にした法律の制定が必要不可欠である。しかし、中間報告は、判例法理に即して法律上で要件と効果を明示することを多数の項目で回避している。また、多数の項目について、指針やガイドラインで処理する方針を示しているが、指針・ガイドラインは、使用者を拘束する行為規範として機能しないばかりか、中小企業に周知徹底を図るのはきわめて難しい。今回の「中間報告」には、判例法理の無知に起因する「不幸」や「悲劇」から中小企業経営者を守るという視点が欠落している。(個人1件)
 ・ 労働者のプライバシー保護のための施策が提言されているが、非常に不十分なものにとどまっている。近年、成果主義賃金の普及にともない学説により公正評価義務の法理が展開されているが、重要であるにもかかわらずこれについての積極的な言及がみられない。さらに、就労請求権や職場環境配慮義務について消極的姿勢が示されており問題である。(個人(学者)1件)
 ・ 企業組織の再編にともなう問題は、会社分割法制の導入の際に議論され、一部は新たに実定法化されたが、その他についてはまだ検討が残されている。営業譲渡に関する判例法理で問題を処理できるというのが立法が見送られた理由の一つであるが、判例法理が何か必ずしも明確ではないことは、多くの論者が指摘しているところであり、企業組織再編にともなう問題には、依然として立法によって解決すべき点が多いのではないか。(個人(学者)1件)
 ・ 憲法第25条や第27条の理念を具現するものとしての労働基準法の体系から離脱するということは、罰則や監督指導といった実効性を欠いたものになるだけでなく、結局は、理念なき労働契約法制へと変質し、同時に、労働基準法という根本的な法制度の理念と労働者保護の役割を換骨奪胎させる。(個人(学者)1件)
 ・ 裁量的要素を含まざるをえない配転・出向・転籍、服務規律・懲戒、昇進・昇格・降格等の人事条項についてよりも、労使の付随義務関係についての契約法上の規定の充実が期待される。(個人(学者)1件)
 ・ 労使間の特殊性をふまえた合意の成立要件を明確化するため、労働者の黙示の承諾や労使の申込の拘束力をどのように位置づけるかや、「熟慮された意思」が必要であると考え「時間の経過」をもって契約を確定的に成立させる制度としてのクーリングオフ制度の活用も広く検討すべきであっただろう。
 また、合意の有効要件に関わり、労使の実情に即したかたちで「合意の瑕疵」が認定できるよう「沈黙による詐欺」を広く活用するため、使用者に情報提供義務を課すことが公平の見地から適切であろう。さらに、合意の有効要件に関わり、約款規制や不当条項規制を課す必要性がないか。(個人(学者)1件)
 ・ 企業変動のうちでも、営業譲渡に関する契約紛争は、合併や会社分割の場合と異なり、判例法理のみに依存するものであり、予測可能性が低く、安定的なルール形成には程遠い。労働契約法制が、まさしく着手すべき課題ではないだろうか。いま解雇規制についての立法に着手しようとするとき、営業譲渡にともなう労働契約の承継等について定めを設けないのは、むしろ「バランスを失する」というべきである。(個人(学者)1件)
 ・ 企業再編など労働者の雇用や労働条件変更に重大な影響を与える経営施策についての労働組合等との事前協議などを制度化する必要がある。会社分割の際の転籍に対する本人同意権について、労働契約法制の中で見直すべきである。
 営業の全部譲渡の場合について、解雇権濫用法理を適用すべきである。営業の一部を譲渡する場合や、ある部門を子会社化する場合には、他の職場への配置転換などを含めて労働者の雇用を確保する努力義務を課すべきである。(労働組合1件)
 ・ 使用者による一方的な解雇や賃金・労働条件の切り下げは許されないと明記すべきである。(労働組合1件、個人1件)
 ・ 使用者が一方的に優位な立場に立っている現状を規制する立場で、使用者による人間破壊を防ぐ実体的な強行規定を盛り込むべきである。(個人1件)
 ・ 企業再編の際における労働契約に明文の規定を設けるべきである。(個人1件)
 ・ 労働条件の適正な基準を可能な限り定めることに主眼が置かれるべきである。「中間取りまとめ」が交渉力の格差故に本来保護方策が創設・強化されねばならない普通の労働者や非正規労働者に対する適正労働条件を保障する点で、現在の問題状況を改善する具体的な提言について消極的であるのは残念であり、今後この点について具体的な提言がなされるよう期待する。(労働組合1件、個人1件)
 ・ 労働行政は監督指導をさらに強化するべきである。守らない経営者に罰則を設けることによる、公正なルールの下での競争が求められている。そのために充分な監査をする人員・人材を確保すべきである。(労働組合1件)
 ・ 労働基準法における罰則や監督指導といった強行規定がない下で、労使がどうやって「自主的な労働条件の決定」ができるのか疑問がある。最低基準の労働基準法すら満足に守られていない労働実態がある中で、「任意規定」や「推定規定」が労働者側に必ずしも有利に働くとは思えず、この点を最終答申に向けて解明してほしい。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制の必要性と、基本的な方向性は理解できる。
 ただ、強行規定が存在するとはいえ、民法の特別法であり、行政の指導等関与は消極的とならざるを得ない。従って、改正が予定される労働基準法がどのようなかたちとなって、使用者の規制にかかわっていくのかが大きな関心事になると思われる。つまり、労働基準法の改正と、労働契約法制の制定は密接不可分の関係にあると言えるのではなかろうか。中間とりまとめは、「労働基準法の民事的効力のみを有する規定を労働契約法に移行する」としているが、そもそも民事的効力のみを有する規定とは明確であろうか。また、労働基準法の性格をどのように理解するのか、新たな性格・使命を付与する事は不可能なのかといった点もあわせて、同時に検討がなされるべきと考える。(個人1件)


○ 労働契約法制の履行確保措置
 ・ 「中間取りまとめ」では労働者への情報提供や手続規定を重視する傾向が見受けられるが、これらの充実だけでは労働者の権利実現が図られない。また、労働契約法で一切の罰則が排除されるべきなのかは十分に検討するべきである。例えば商法では、手続規定に違反した場合の罰則が発達しており、履行確保のための罰則の有用性を示している。(労働組合1件)

 ・ 労働者の人権保護を主眼とする労働基準法は、罰則及び監督指導による履行確保措置を背景に維持されるべきであり、対等な当事者間の労働・雇用契約に関するルールを定める労働契約法制はこれとは別個の民事法の特別法として位置付けられるべきであるので、中間取りまとめの立場を支持する。
 また、中間取りまとめは、行政の関与は個別労働紛争解決制度に従って行い、監督指導は行わないことが適当であるとしており、労働契約法制を設ける趣旨に照らしこの立場を支持する。なお、相談対応や情報提供等の行政としての援助が、個別案件についての実質的な指導、勧告に近い形で運用されることのないよう、同法が民事法の特別法であり履行確保措置は行政によるものではない点を法律において明確にすべきである。(使用者団体1件)

 ・ 労働基準法とは別に、かならずしも罰則および指導監督を前提としない労働条件部分を中心に、新たに労働契約法制を整備する方向を打ち出したことは賛成である。(個人(学者)1件)
 ・ 労働契約法制においては特に行政による監督指導が予定されていないが、指針等を多用することが提言されているので、実効性を確保するためには労働基準法とは異なる形での行政の監督指導を組み込む必要があるのではないか。(個人(学者)1件)
 ・ 制定される労働契約法に基づいて、積極的な監督指導ができるものとするべきである。(労働組合1件、個人1件)
 ・ 労働条件を決定する就業規則や労働契約について、労働行政の監督指導が及ばないこととすることは問題である。労働契約をめぐるトラブルの解決に個別労働関係紛争解決制度を使うことは非現実的である。多くのトラブルを泣き寝入りさせてしまうことにつながりかねない。(個人1件)
 ・ 履行を確保するためには、少なくとも、行政に指導・監督権限を与えるべきである。(個人1件)
 ・ 個別労働関係紛争解決制度の現在の体制はあまりに貧弱であることから、体制の整備を検討するべきである。
 行政による援助の機能を労働基準監督署に担わせることは、筋違いであり、監督行政の主体的能力を失わせることとなる。(個人1件)
 ・ 労働行政に労働契約法制に基づく監督・指導権限を与え、労働者が民事裁判によらなくてもその権利が保護されるような仕組みを作るべきである。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制から罰則や強行規定を一切排除してしまうことは反対である。差別禁止規定については罰則を設けてもよいのではないか。(労働組合1件)
 ・ 個別労働紛争解決制度は、労働契約法制の履行に係わる行政の関与、あるいは労使の問題解決の手段として、有効な手段とは言い難い。個別労使紛争解決制度によって、労働契約法制を施行する上での行政の責任を果たしたとはとても言い難い。
 適切な情報提供だけで紛争の未然防止等が図れるのか。かえって労使間の紛争を増やす要因となるのではないか。(労働組合1件)
 ・ 紛争発生前の相談段階から積極的に助言・介入すべきである。少なくとも労働契約法制のうち強行規定部分についてはその一般的実効性を確保する必要性が高いと考えられるべきである。(弁護士団体1件)
 ・ 「労働契約法制の履行に関わる行政の関与」について、かねてより財界から要望の強い方向での対応を取り入れているのは納得しがたく、反対である。憲法の理想や、労働行政がその使命と役割を終えたのならともかく、欧米諸国に比べてもかなり劣悪な労働条件、労働環境がまかり通っている下で、行政の関与を緩和し権限を縮小するとすれば、その結果はすべて労働者側に被害を及ぼすことにならざるを得ない。行政の役割を「相談」や「指針の提示」、「情報の収集・提供」などに矮小化してしまうのは誤りである。(労働組合1件)


○ 労働契約法制の対象とする者の範囲
 ・ 請負、委託といった契約だが、実際は労働者と変わらない働き方をしている人が増えている問題だけでなく、労働者ではないが労働者に近い働き方をしている人が増えているという問題もある。こういった人たちにも、何らかの保護が与えられるような法制度が現在求められている。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制の対象者の範囲については、明確性を図るべきであるので、基本的には現行労働基準法が定める労働者、使用者とすべきである。(使用者団体1件)

 ・ 労働契約法制の対象者の範囲については、(1)請負・委任契約に基づいて労務を提供する者も広く含めるとすると、真に請負や委任の関係にある者についても適切ではない規定を適用することになったり、他の法制との適用関係に混乱が生じること、(2)形式的に契約の名称を「労働」「請負」「委任」の文言を含まないように変更することにより安易な脱法が試みられる可能性があることは適用範囲を広げようと狭めようと大差ないと考えられること、(3)労働契約法制が適用されるか否かについて結局のところ契約の名称に関わらず実質的判断を行わざるをえないので原則ルールとしては明快な適用範囲が望ましいことから、労働基準法と同一の定義に従い、事業に使用される者に限定すべきである。(使用者団体1件)

 ・ 「労働者」の概念については、不十分ながら言及されているが、「使用者」の概念についてはまったく言及がない。労基法第10条に「使用者」の定義規定があるが、労働契約法の使用者は明らかにそれとは異なり、労働契約法でいう使用者とは誰を指すのか、民法第625条の使用者と同じなのか、といった問題についても検討がなされるべきであろう。(個人(学者)1件)
 ・ 従属的自営業者あるいは契約労働者を適用対象とする場合にも実際に適用される条項はきわめて限られてくるだろうが、契約関係の終了、とりわけ金銭解決の方法や有期契約などについては適用ないし準用の余地があり、実際の就業関係が継続的であればその解消にあたってこれらの法理・手段が利用されることは、従属的自営業者にとっては大きな保護といえるだろう。(個人(学者)1件)
 ・ 労働者及び使用者の範囲が狭く定義されている。形式的に請負、任用などと呼ばれ、労働者の保護の適用を外されている実態を踏まえて、労働者の範囲を広くする検討をするべきである。持株会社、親会社、派遣先、元請、発注者などの実質的な使用者の責任を明確にするべきである。
 企業の買収や営業譲渡に伴う労働契約関係の在り方について、労働者保護の観点から明文規定を設けるべく検討することが必要である。(労働組合83件、個人7件)
 ・ 労働基準法上の労働者性が認められない者であっても、ある程度の従属性が認められる者については、労働契約法制の対象とすることは有意義としたことは評価する。
 しかし、労働基準法が雇用契約のみを規制していることを見直すべきである。(個人1件)
 ・ フランチャイズチェーンの店長は、経営に対する裁量がないため、個人事業主ではなく、労働者であると考えられることから、労働者に対する保護を受ける立場にあると考える。(個人1件)
 ・ 対象とする者の範囲については、労働者保護的な性格を後退させるべきではない。(個人1件)
 ・ 公務員型の特定独立行政法人や、非常勤職員を含む非現業公務員(公権力を行使する一部の職員は除く。)も適用対象とするべきである。(労働組合1件)
 ・ 直接に雇用契約を結んでいなくても、契約上の雇用主と同様の支配力がある者や、支配関係がある者については労働契約法制上の使用者とするべきである。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制の対象範囲については、労働基準法以上に拡大する方向での今後の検討を期待したい。(労働組合1件)
 ・ 派遣や請負における使用者責任が不明確な部分についての法制化は、トラブル防止の意味で使用者にもメリットがあるのではないか。(個人1件)
 ・ 労働基準法上の労働者ではない者であっても、経済的な従属性や、情報力・交渉力に大きな格差のある者については、労働契約法制の対象とすべきである。労働審判制度の対象範囲とも関連して検討されるべきである。(労働組合1件)
 ・ 正規雇用労働者がどんどん非正規雇用労働者に置き換えられており、非正規労働者の処遇も劣悪を極めている。これらの労働者をも保護し得る法制でなければ意味がなく、法技術上の困難を乗り越えて対象に含めなければならない。その場合「正規労働者との均等待遇」を基本に据えなければならない。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制を考えるにあたり、「労働契約法制と密接な関わりがある」としていながら、法の対象となる者が明定されていないのでは十分な検討を行うには無理がある。(労働組合1件)
 ・ 間接雇用にある労働者が実際の賃金・労働条件(ここには労働安全衛生関係事項も含まれるはず)を元請企業と直接交渉できるルールを定めるべきである。(個人1件)
 ・ 「中間取りまとめ」は、労働者の範囲を非常に狭くとらえており、現実の問題に対応しうるのかどうか疑問が残る。また、使用者を直接的関係にある者だけに止めることも現実的ではない。親会社、持ち株会社、元請、派遣先の責任なども明確にすべきである。(労働組合1件)


○ 労使委員会制度
 ・ 「中間取りまとめ」における労使委員会制度は、労働組合との性質や役割の違いが不明確、労使委員会の民主性確保のための方策が示されていない、という点で問題である。
 労働組合と違ってストライキ権や不当労働行為制度がない労働委員会が、労働条件等について使用者と対等に協議・交渉することは到底不可能である。また、中間取りまとめでは労使委員会の決議と労働協約の関係が一切論じられていない。両者が重複した場合にも労働協約が優先とするべきである。
 「中間取りまとめ」では労使委員会の選出方法について検討した形跡は見られず、任期についても労使委員会で定めるのか、法律で定めるのかすら明らかになっていない。労使委員会の民主制確保のためには、少なくとも改正前の企画業務型裁量労働制の労使委員会のレベル以上のものが必要である。
 「中間取りまとめ」で示されているような労使委員会に、就業規則の変更の合理性を推定させる効果等を認めることは、絶対にできない。(労働組合1件)
 ・ 労使関係のあらゆる場面に手続的要件として労使委員会における同意等を要求することは疑問である。労使委員会については、必要性や現在の労使協定の活用、労働組合との関係なども十分考慮した上、導入の是非については、慎重に検討すべきである。仮に導入するとしても、組織・決議要件、画一的な多数決(4/5)要件などについては疑問であり、労使自治に委ねるべきである。(使用者団体1件)

 ・ 中間取りまとめで提案している労使委員会の活用については、次の理由から、賛成できない。
(1) 就業形態の多様化を踏まえて個別の労働条件の交渉を可能にする制度を構築しようという本法制の趣旨と、労使委員会による協議等、労働条件の決定・変更について集団的取扱いを要求することは矛盾すること。
(2) 労働者が使用者と交渉する媒体として現行法は労働組合を認めており、それで必要十分と考えられること。
(3) 労使委員会によりますます労働組合の存在意義が低くなるおそれがあること。
(4) 中間取りまとめは労使委員会に事前協議や苦情処理の機能を持たせるとしているが、制度の改定にさらなる手続的要件を課すことにより迅速な制度改定ができなくなるおそれがあること。
(5) 常設的な労使委員会を設けたとしてもそれが労働者の意見を正しく代表する保障はないこと(事実上は立候補もなく推薦、信任といったプロセスを踏むに過ぎないことが予想される)。
(6) 事前協議の機能は、現行の過半数代表制度で図られており、また、仮に過半数代表制度が機能していないとすれば、その活性化をまず検討すべきで、安易に類似の新制度を導入する意義が認められないこと。また任意の労使協議会を設置し円滑な労使関係を推進している企業もあり、法律で新たな義務を課すことは望ましくないこと。
(7) 苦情処理機能については、使用者の代表者も構成員とする労使委員会に苦情を積極的に提起するようになるとは期待できず、むしろ、匿名で問題提起や苦情相談ができるような制度の創設を促進することが適切と考えられること。(使用者団体1件)
 ・ 労働協約との関係、特に、労働条件の変更について、労使委員会の決議が行なわれた場合における労働協約の効力については明らかになっていない。また、複数の労働組合が存在する場合、労使委員会の構成委員の選出、決議の効力についてはどのように考えるべきか。(個人1件)

 ・ わが国で本格的な常設の従業員代表制度を志向するものとしてその方向性は評価できるが、設置するかどうかはあくまで労使に委ねられているように読めるし、労使委員会の権限が共同決定ではなく協議にとどまっており、労使の対等性確保という点からみて問題が残る。(個人(学者)1件)
 ・ 労使委員会での労働者代表の過半数の合意に就業規則の変更の合理性を推定する機能を与えるなど、過半数代表者の権限と責任は重大であるが、過半数組合が存在しない企業や事業場(それが圧倒的多数である)での過半数代表者の選出方法、労働者の意見聴取方法が必ずしも適切に規制されていない。
 それに加えて、もし過半数代表者にこれだけの重要な機能を担わせるとなると、使用者側の代表者と対等に協議できるための制度的保障をきちんと整備すべきである。具体的には、勤務時間中の有給での活動の保障、労働者数に応じた複数代表の選出、企業外の弁護士や社会保険労務士に相談できる金銭的保障等を行なうべきである。こうした保障がないと、労働者代表制度は、それに求められる機能を発揮できなくなっているのが現実である。(個人(学者)1件)
 ・ 労働者代表制として、筆者はドイツに範をとった日本型経営組織法のようなものを望んでいるが、それ自体、労働法体系全体に関わる大問題であって、労使委員会が労働契約法制の一部として唐突に語られているのは手順前後の感が否めない。(個人(学者)1件)
 ・ 構想されている「労使委員会」は「協議」機関にすぎず、「労使当事者が実質的に対等な立場で交渉ができるような仕組み」と言えるのか疑わしい。集団的労働条件決定システムが機能不全に陥っており、その克服が喫緊の課題であることは共通認識となっているが、その突破口を「労使委員会」に求める十分な論拠は示されていない。「労使委員会」と「過半数代表」制度との関係、少数組合との関係等の検討が必要である。(個人(学者)1件)
 ・ 新たな労働者代表制を構想するのであれば、例えば労使共同決定制の導入がわが国で可能かどうかという点にまで踏み込んだ抜本的な検討が、要請されている。「労使委員会制度」が規模、公正、運営等の諸点で真の労働者代表制にふさわしい制度設計でなければ、労働条件の自律的・自主的決定および変更の促進というこれまでとは異なった重要な役割を付与されているだけに、悪くすれば、使用者の人事管理、労務管理上の決定を推進する役割をも担いかねない。(個人(学者)1件)
 ・ 裁量労働に関する現在の労使委員会の選出が民主的に行なわれているとはいえないにもかかわらず、「中間とりまとめ」は使用者から独立した機関としての労使委員会の権利性と構成員の民主的な選出方法への具体的な提言を示していない。女性労働者、非正規労働者、外国人労働者、障害を持つ労働者等の労使委員会への公平な参加と決定権はどう担保されるのかが課題である。(個人(学者)1件)
 ・ 労働条件の変更が労使委員会で決定できるようになれば、労働組合(特に少数組合)の団結権、団体交渉権が侵害されることになるため、反対である。(労働組合58件、個人264件)
 ・ 委員選出が民主的手続によって行われるか、民主的に運営されるか、実効性を持つのか、少数組合の団体交渉権が実質的に無力化されてしまうのではないか、非正規労働者の意見が労使委員会に反映されるのかなどをあいまいにしたままでは、不当な不利益変更や不当な解雇を正当化し、促進する可能性すら予想される。これらの問題点に厳格な制限を設けるか、職場労働者の意向を公正に代表し得る厳格な選出手続と使用者からの自立性を保証できるような制度の導入を検討するべきである。(労働組合83件、個人7件)
 ・ 常設的な労使委員会の設置には反対する。使用者から独立した機関としての権限が付与され、労働者代表にも権限・保護が与えられた「従業員代表制度」の設立を求める。(労働組合1件、個人1件)
 ・ 労使委員会の決議を重視することは、労働者と使用者の力関係を無視して、労働者に不利な契約が締結されるおそれが大きいので、基本的に反対である。(弁護士団体1件)
 ・ 労働組合の組織率が低下する中で、労使委員会の必要性は認める。しかし、労働三権のない労使委員会がどこまで労働者の権利を守れるか疑問である。労使委員会の権能について十分な検討をお願いする。(個人1件)
 ・ 労使委員会制度は、法と監督行政による規制から労使当事者を遠ざけ、労使自治の名の下に使用者が一方的に労働条件の変更・決定できるようなシステムを作ることになりかねない。特に労働組合がない職場においては、使用者の思い通りの就業規則変更や解雇ルールができる可能性がある。また、労働組合の役割を無視したものである。このため断固反対である。(労働組合1件)
 ・ 諮問機関にしかすぎない労使委員会に対して、決議に就業規則の合理性の推定効を与えることや事前協議を権利濫用の判断要素とすることといった権限を与えることは極めて危険である。未組織職場の実態から考えると、労使一体になってリストラを進める委員会になりかねない。少数組合の排除にもつながりかねない。ILO第135号条約にあるように、使用者から独立した機関として権限が付与され、労働者代表に権限・保護が与えられなければならない。最低限、労働者代表の民主的な選出手続と使用者からの独立の保障は必要である。(個人1件)
 ・ 労使委員会の決議に対して、労働条件切り下げの合理性を推定する効力や、配置転換、出向、解雇等の権利濫用にお墨付きを与えることには反対する。(個人1件)
 ・ 労使委員会は使用者から独立した恒常的組織とするべきである。その際、選挙手続を明確にした上で、少なくともILO第135号条約に沿って労働者代表の権限と保護が規定されなければならない。そうでなければ、労使委員会の決議に法的効果を付与することに法的正当性が得られないものと考える。(個人1件)
 ・ 労使委員会の構成については、労働者の構成比を反映するようにするべきである。
 また、少数組合との集団的労使関係を阻害しないようにするべきである。(個人1件)
 ・ 労働組合と労使委員会の関係や、労使委員会の民主性・自立性・実効性確保について一層議論すべきである。
 労使委員会を就業規則の合理性の推定に活用することは認められない。(労働組合1件)
 ・ 労働組合が存在しない職場において、労働組合とは別の労使協議の場を作ることは検討に値するかもしれない。
 労働者全体の意思統一を図る仕組みのない労使委員会は労働者代表制とはいえない。これに対して、労働条件の変更等の協議対象とするなどの大きな権限を与えることには反対である。
 仮に労働者代表制を導入するとしても、多様な就業形態や価値観の違いをどのように反映させるか、どの程度使用者に情報を開示させるか、不利益取扱いや差別の禁止、職場での討議の保障について十分に検討すべきである。安易な導入は極めて危険である。
 労働組合が存在しない場合には、労働組合の団交権を侵害しないよう、労働者代表制を導入すべきでない。少なくとも、労働者代表と使用者との合意が少数組合に所属する組合員を縛る者ではないことを明確にすべきである。
 労働者代表制を有効なものとするためには、職場の労働者の意向を公正に代表し得る委員の選出手続を定め、行政の監視も含めてそれを厳格に運用することが重要である。(労働組合1件)
 ・ 労使委員会に大きな権限を与えることは、労働組合の権限を事実上否定することにつながる。
 使用者の決定を労働者に押しつける隠れ蓑となるおそれがある。このような機関を労働者保護の美名のもとに作るべきではない。(個人1件)
 ・ 労働組合のない企業において、従業員の意見を反映する制度は必要と考える。それは少数者の意見も最大限反映できるシステムであるべきである。「中間取りまとめ」における労使委員会は具体的なイメージが明確ではない。今後慎重に検討を進めることを望みたい。(労働組合1件)
 ・ 日本の労働組合は大多数が企業内組合であって、企業の利害を離れて運営できない。したがって、常設的な労使委員制度は却って使用者が有利な立場にあることを正当化するために使われるだけであるため、反対である。(個人1件)
 ・ 労使委員会はこれまで築き上げてきた労使の信頼関係に亀裂を生じさせる危険がある。労働者を徒に刺激するようなシステムは不要である。(個人1件)
 ・ 従業員代表の選出は形骸化している。労使委員会制度を整備することに反対である。(労働組合1件)
 ・ 趣旨には賛同できる。しかし、使用者による一方的な労働条件の不利益変更を方策として恣意的に利用されることの歯止めを考えるべきである。(個人1件)
 ・ 委員選出手続等があいまいなままで、労使委員会に大きな権限を与えることだけを検討するのは問題である。(個人1件)
 ・ 大多数の労働者が経営者に言いたいことも言えず、劣悪な労働条件に甘んじている中で、労使委員会において自分の権利を主張できる人がいるとは考えられない。新たな制度を設ける前に、今ある過半数代表や労働組合に実効性を持たせる工夫・改善を試みるべきではないか。(労働組合1件)
 ・ 過半数代表者の民主的な選出方法の保障、過半数代表者による他の労働者の意見の適確な反映、委員の独立性の保障、労使委員会の役割の限定など課題は多い。また、これらを解決しても労使間の対等性が確保される訳ではない。慎重な制度設計が必要である。(労働組合1件)
 ・ 「中間取りまとめ」が描く労使委員会制度は、使用者に対し、自由かつ迅速な労働条件切り下げないし雇用流動化の権利を与える一方で、これに不服のある労働者からは裁判で争う権利までをも奪い去ることを目的としたものであると言わざるを得ない。このような労使委員会制度を労働契約法に導入することには断固として反対である。(弁護士団体1件)
 ・ ILO第135号条約に定められている使用者から独立した機関としての権限と、労働者代表への権限・保護が付与されている制度が労働者代表制度と呼ぶのにふさわしい。労働者代表制度の在り方についてさらに検討を行うべきである。(個人1件)
 ・ 労使委員会とは一体どのようなものであり、労働者委員はどのように選出されるのか疑問である。(労働組合1件)
 ・ 労働三権のない労使委員会が実質的対等交渉の役割を果たせるとは全く考えられない。労使委員会の決議に就業規則不利益変更の合理性推定などの積極的機能をもたせることは適当とは考えられない。(弁護士団体1件)
 ・ 労使委員会の合意によって、少数派組合の団体交渉権が無力化されてしまうのではないか、非正規労働者の意見が労使委員会に反映されるのかなどの疑問について何ら言及がない。労使委員会制度は労働者保護の歯止めになりえないし、労働者を労使対等の立場に立たせるどころか、少数組合としての労働基本権をないがしろにし、争う権利を失わせることになる。断固として反対する。(弁護士団体1件)
 ・ 現実に過半数代表者を選出する過程が不明朗であることが少なくない現状の下で労使委員会制度がなじむのかどうか、その選出過程が民主的になるのかどうか、パート、アルバイト、臨時などが代表に含まれるのか、そのような労働者の意見がどのように反映されるのか、使用者から独立した存在として成り立ちうるのか、といったことが疑問である。
 使用者から独立が保障される労働者代表でなければ、使用者の横暴にお墨付きを与える委員会になりかねない。権限にふさわしい労使委員会の在り方(選出方法、選出基準、運営など)を検討するか、ふさわしい権限にとどめることが必要である。
 労働組合と労使委員会がどのような関係であるのかがはっきりしないのは不満である。労使委員会の存在によって、労働組合の活動に支障をきたすことになれば、労働組合つぶしのための労働契約法制であるといわざるをえない。(労働組合1件)
 ・ 労働者代表(又は労使委員会委員)の選任手続や権限等について触れていない。これらの点は今後の検討課題であるのであれば、その点も検討・整備した上で、合わせて提起すべきではないか。(労働組合1件)
 ・ 労働組合の権利の確保や、委員会への参加保障、民主的な労働者代表の選出、使用者の介入の排除など十分な対応が導入の前提として必要である。むしろ、労働者の代表機関を設置し、労働者の意見を吸収することなどの検討が必要である。(労働組合1件)
 ・ 労使委員会の委員の公正な任命と役割を果たす制度を求める。さらに、労働委員会の制度を選任のあり方を含め、民主的な改革でこの役割を果たせるようにすることを提案する。(労働組合1件)
 ・ 委員選出が民主的手続きによって行なわれるのか、民主的に運営され、かつ実効性をもつのかなど、大きな疑問がある。また、少数派の労働組合の団体交渉権が労使委員会の合意によって、実質的に無力化されてしまうのではないか、非正規労働者の意見が委員会に反映されるのかなどの疑問について何ら言及がない。
 このような労使委員会に重大な権限を与えることは大変危険と言わざるを得ない。労使委員会の合意は、不当な不利益変更や不当解雇を正当化し促進し、反対する労働者から少数組合としての労働基本権や裁判を受ける権利を剥奪しかねない、危険な役割をもつおそれが高い。よって、そのような制度には反対せざるを得ない。(弁護士団体1件)
 ・ 労働者委員が本当に民主的手続によって行われることは期待できず、少数組合の団体交渉権や協約が諮問的性格の労使委員会の合意によって実質的に無力化してしまう危険性が十分考えられる。その一方で決定的に大きな権限を労使委員会に付与しようとしており、労使委員会が適正な労働条件決定をなし得るかどうか、その選出方法、権限などについて更に検討が必要である。(労働組合1件)
 ・ 過半数組合がない職場に、労使委員会を設けただけで労働者保護・使用者の横暴規制の役割を担わせ得るとは到底考えられない。そのような労使委員会の決議に、就業規則不利益変更の合理性推定や、解雇権の非濫用推定の効果を持たせることは、事実上、使用者にフリーハンドを与えることである。断固反対する。
 どうしても労使委員会を設け、そのような効果を持たせようというのであれば、少なくとも、(1)労使委員会の労働者側委員の選出は、職種・職域ごとの選挙制度とし、実効性の高い不当労働行為制度(その選挙を含む労働者の自主的運営に対する使用者の支配介入・不利益取扱いの禁止と、違反に対する効果的な救済)を導入する、(2)労使委員会の協議の席への、産別役員・地域労組役員・弁護士の参加の義務づけ、(3)決議は全会一致制とする、(4)使用者に対して、労使委員会へ付議する事項に関する全資料について十分な時間的余裕を置いて提示すること、及び使用者の施設内で就業時間内にそれを検討できるための便宜供与を義務付けること、が必要である。(労働組合1件)
 ・ ドイツの従業員代表委員会は、異議申立等を通じて労働者に有利な方向で使用者をチェックすることだけが期待されており、使用者のとる手段を私法的に正当化する権能は与えられていない。これと比べ、「中間取りまとめ」は使用者の権限を正当化する方向でも労使委員会を位置づけているようであるが、労働契約上の労働条件の規制にあたって労使委員会の権能を過大評価することは誤りである。(個人(学者)1件)
 ・ 労使委員会の委員が、就業規則による労働条件の引下げ問題に関わるならば、労使委員会について、民主性・自主性の要件の担保を正面から論じる必要が生じる。また、これまでの労使委員会の設置状況から窺われるように、立法による「上からの」役割拡大が成功するとは予想しがたい。(個人(学者)1件)
 ・ タイトルの「労働者代表制度」と本文の「労使委員会」はどういう関係があるのか。また、「労働条件の決定に多様な労働者の利益を公正に代表できる常設的な労使委員会」という組織は、どこに設置され、誰が委員を選出し、そこには使用者も入るのかという基本的なことが全く読みとれない。「(当該委員会において)使用者が労働条件の決定・変更について協議を行うこと」を法制化によって促進する、「配置転換・出向・解雇等の権利濫用の判断基準」とするなどの効力を与えるのであれば、使用者側の論理が幅を利かせるための仕組みになるのではないか。こうした点があいまいなままの安易な「労働者代表制度」や「労使委員会」の設置は労働者保護には役に立たないため反対である。
 「労働者代表制度」が労働者の働く権利を擁護し、使用者側の勝手な雇用条件の押しつけなどを排除するための仕組みであるのか、大いに疑問である。労使双方が委員を出し合う「労使委員会」で労働者を代表したりその雇用条件が守れるとはとうてい思えない。労使双方が同数で委員を選出したとしても、「労資協調」的な労働組合風土が根強い日本で有効に機能させるのは至難である。(労働組合1件)
 ・ 労働組合をつくること、労働組合に入ることは労働者の権利であり、厚生労働省として、もっと労働者の権利を広く啓発するべきである。労使委員会をつくることによって、労働組合の団体交渉権等など労働組合の力を弱めるようなことにならないように、あくまでも労働者の権利保障の立場にたった位置付けが大切である。(労働組合1件)
 ・ 労使委員会が元請の正規職員で構成されるならば、それ以外の身分で働く労働者にとっては機能不全に陥ることになる。また、建設業や運輸業などでは、個人請負労働者の産業別労働組合組織への結集も始まっており、産業別の労使関係の構築を可能とする法規制として労働契約法制が位置づけられるべきである。中間とりまとめが想定しているような企業内主義を助長するような労働契約法制には反対である。(個人1件)
 ・ 個々の労働者の交渉力を補うために、常設の労使委員会の活用をあげているが、労働組合も無く、労働者と使用者の立場が対等ではない事業所では、使用者に影響を受けない労働者代表を選出することは難しいことから、労働契約の内容やその履行を監視する第三者による公正な機関が必要である。そのためには現行の労働委員会の公正任命と基準監督署の機能強化が厚生労働省に求められる。(労働組合1件)


○ 労働関係の成立
 ・ 採用内定の取消事由に関し、採用内定当時、使用者が「知ることができた事由」に基づく取消まで無効とするのであれば、使用者は、採用候補者の経歴、職務経験のほか過去の非違行為、犯罪歴の類まで調査義務を負うことにもなりかねず、現行の行政の指導と矛盾し、また毎年大量採用を行う使用者にこのような負担を負わせることは非現実的である。
 採用内定、試用期間中の雇用関係の解消について、確立した裁判例を法制化し紛争解決基準を明確化するという姿勢には基本的に賛成であるが、「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当」というような、およそ基準として機能しそうにない抽象的かつ曖昧な表現がそのまま法律に持ち込まれないよう、明確な法定要件を確立するか、または指針等で具体的な基準を明らかにすべきである。
 試用期間の上限については、特に専門性と経験を買って採用した中途採用者の場合には、その能力等を慎重に見極める必要があることに照らし、労働者の雇用安定の要請に偏重したり、実態に反したりせず、不必要に短い期間を法定することがないよう要望する。また、例外的に上限を越えることが認められるべきケースがあることも考慮して、実態を適切に反映したルールを定立すべきである。(使用者団体1件)

 ・ 労働者が、使用者が提示した募集条件を得られるものと信じ、期待するのは当然のことであり、法はその当然の期待を保護すべきである。実際の労働条件を募集条件以下とすることは、使用者の信義則違反であろう。(労働組合1件)
 ・ 採用の際の明確な差別禁止基準を定めるとともに、罰則により規制するべきである。
 書面による個別の労働条件明示に対する規制を強化するべきである。(労働組合1件)
 ・ 採用差別を禁止する規定を盛り込むべきである。具体的には、性別・年齢・門地・社会的身分・人種・障害・国籍などを理由とする募集・採用段階での差別を罰則により禁止すべきである。(労働組合1件)
 ・ 採用内定については積極的に労働契約の成立となるように法整備すべきである。採用内定取り消しの事態に当たっては解雇と同様の扱いとすべきである。
 また、試用期間については、できる限り短い方が良いと考える。しかし、そもそも、労働者にとって試用期間を存在させる理由はないのではないか。(労働組合1件)
 ・ 労働契約の内容を「公正かつ透明」にするために、そこに記載すべき事項を法定し、当事者が当該労働契約を誠実に遵守する義務を負うことを規定しなければならない。基本的な労働条件をめぐって個別的労使紛争が絶えないのは、労働契約の締結時に明確な労働条件が決定されていないからではないか。労働基準法第15条および施行規則5条を整理し、本則で、必要的記載事項を明文で規定すべきである。(個人(学者)1件)
 ・ 労働条件の明示について、監督指導と罰則の強化を検討するべきである。
 労働基準法第15条とは別に、就業を予定している事業場における過去の残業時間、有給休暇取得日数、労災事故の発生件数、労働組合の有無、労働基準法違反や労働委員会の命令を受けている場合はその事実などの明示を義務づけるべきである。
 労働契約締結時に説明された労働条件と実際が食い違う場合における行政の強力な指導・監督を検討するべきである。
 労働契約締結時における配置転換、出向などの将来の労働条件変更に関する事項の明示については、効力の必要条件とし、十分条件としないとする意見に賛成する。(労働組合1件)
 ・ 試用期間はその上限を3ヶ月とし、勤怠不良などの相当程度の問題がなければ本採用することとすべきである。有期労働契約にまで試用期間を設けることは原則的として禁止すべきである。(労働組合1件)
 ・ 試用期間は3か月以内とする法律が必要である。(労働組合1件)
 ・ 試用期間を設けて労働者の採用を判断する行為は認めざるを得ないと考えるが、試用期間の適用や解雇となる事由などは労働者に事前に説明されている必要があり、解雇の自由度を広げる目的での法制化は認めることはできない。(労働組合1件)


○ 就業規則
 ・ 就業規則の作成と変更については、協議を義務付け、使用者が一方的に作成・変更できないようにするべきである。
 「中間取りまとめ」にあるように、就業規則の変更による労働条件の不利益変更について、労使委員会の委員の5分の4以上の賛成があれば合理性を推定することについては、反対する。(労働組合1件)
 ・ 過半数組合が合意をした場合には変更後の就業規則の合理性を推定することには賛成であるが、不利益変更について現行判例法理以上の厳格な制約を課すことには反対する。例えば、「一部の労働者に対して大きな不利益のみを与える変更の場合を除き」との要件を付加することは、規定を不明確にするため反対であり、このような事情は原告が主張立証し、合理性の推定を覆す仕組みとすべきである。
 また、行政官庁への届出を就業規則の効力発生要件とすることは、判例上まったく求められていない規制を使用者に課すもので反対である。(使用者団体1件)

 ・ 就業規則の内容が合理的である限り、労使当事者に労働条件は就業規則による意思があるとして就業規則の内容が労働契約の内容となるとする判例法理を明確にするとの意見に賛成する。
 もっとも紛糾するであろう就業規則の「合理性」の判断基準は疑義のないよう具体的に法定しまたは指針の中で示すべきであるが、具体化が難しければ、「著しく不合理である場合を除き合理性有り」という趣旨の推定規定を設けることは有意義である。なぜなら、通常、円満な労使関係を維持し、労働者に適切な労働条件及び職場環境を提供して生産的な貢献を期待する企業側としては、リソースを駆使し、適法性を検討し、市場や他社比較調査等検討しながら、当該企業に合った適正妥当な就業規則を策定しようと試みているのであり、通常はその策定した就業規則は合理性があるものと考えられるからである。
 就業規則の拘束力の発生要件として、労働者への周知徹底及び過半数労働者代表の意見聴取を求めることについて特段異議はない。しかし、それを超えて、常設的労使委員会を新設し作成手続に一定の役割を求めることは、企業運営への影響が大きく適切ではない。
 就業規則の不利益変更に関する確立した裁判例の基準を明確化することは、紛争回避の観点から有意義である。規定の方法については、案(2)が妥当であると考える。人材の流動化をある程度保障する制度が未発達である現状を考えれば、ある程度の期間雇用が継続することを前提に、画一的・統一的処理が期待される就業規則の変更については使用者側に合理的な範囲で変更についての裁量の幅を認め、拘束力も強めるべきである。使用者の変更権を広く認めたとしても、個別の合意の成立を推定を覆す反証とすることで労働者の保護は図ることができる。また変更について効力発生要件を課すことにより不合理な変更が横行する危険は回避することができる。
 就業規則の変更について合理性の推定規定を設けることは有意義であるが、推定の要件としては、過半数組合の同意や適正な意見聴取がされたなどの客観的に証明できる事実とすべきである。「一部の労働者に対して」「大きな不利益のみを与える」といった評価が入る事項は反証として位置付けるべきである。(使用者団体1件)

 ・ 労働条件は就業規則によるとの「意思の推定」のような、より契約説的構成をとるのであれば、さらに一歩進めて「就業規則」は企業内の標準的な契約のモデルとして、採用にあたりこれを(黙示的にも)承認する方式としてはどうか。これに連動して「労働契約法」が各企業で就業規則において採用しうる契約モデルを呈示する、あるいは、就業規則に規定のない部分について内容補充する任意規定として存在することも有意義であろう。
 労働者側代表の賛成=集団的合意による手続的正統化を試みても、労使委員会の代表選出手続やこれら職員の活動の経済・財政的支援等について明確な規定がないと、実際上十分な活動、とりわけ関係従業員の利害の把握や内容の説明、使用者側との折衝等が十分に行なわれるとは思えない等の問題点が指摘できよう。就業規則について労使の集団的意思形成の方式が望むべき方向であるとすれば、組織法・手続法的部分も含めた「就業規則法」の制定が必要になってくる。(個人(学者)1件)
 ・ 最高裁判例の論理は、就業規則が使用者の一方的決定により制定されるという現行法のシステムを前提とする以上、契約法上論理的整合性を欠く。また、「合理性」の判断基準は一般的・抽象的内容にならざるをえないため、これを立法上確認することは、使用者がまず不利益変更を行なったうえでその効力を争うという傾向を助長しかねない。立法化するとすれば、「就業規則の不利益変更は、労働者の同意を必要とする」という大原則を掲げたうえで、例外的に同意しないことが企業経営上著しい支障が生じる場合に限定して、不同意の労働者を解雇しうる旨を規定することであろう。(個人(学者)1件)
 ・ 「就業規則による」との意思は擬制が強すぎ、従来のように就業規則に労働条件変更法理の多くを委ねるのは正しくない。労働契約における「要素」は擬制的な意思ではなく、当事者の真意に拠り所を求められるような法制度を構想することが適切であろう。(個人(学者)1件)
 ・ 就業規則については最低基準としての効力の問題と拘束力の問題の双方が検討されているが、このような発想自体が就業規則をめぐるこれまでの法理的混乱の原因であったと考えられ、事業場の最低労働条件保障の問題と労働契約内容となる集団的労働条件の問題は別個の方策として新たに制度構想されるべきではなかったか。(個人(学者)1件)
 ・ 就業規則の不利益変更に関して提案されている二案とも、判例法理が形成していた「変更の必要性」という判断要素を完全に無視してしまっている。判例法理を前提としても、規定の最初に、「使用者は、就業規則を変更する必要性がなければ、これを行うことはできない。賃金や労働条件などの重要な労働条件の変更には、高度の必要性を要する。」という内容の文言がくるべきである。
 労働契約法であるから、労働契約の意義についての言及があって然るべきであろう。就業規則が現実に果たしている労働条件規制機能からすると、それが検討の中心になることは否定できないとしても、「当事者の合意によって契約内容が決まる」のが、契約の本則であり、そのことを明言すべきである。(個人(学者)1件)
 ・ 労働基準法第93条を労働契約法制の体系に移すならば、就業規則で定める基準に達しない労働条件を使用者側が提示してきた場合、労働局・労働基準監督署は企業に対し指導監督できないことから、労働者は泣き寝入りしかない。このような法改正は断じて反対である。(労働組合1件)
 ・ 就業規則の作成に当たって、労働者の関与を増やすべきである。その際、関与する労働者が使用者の意のままにならないよう、適正な手続を保障するべきである。
 また、周知されていない就業規則は無効とするべきである。(個人1件)
 ・ 就業規則の作成・変更に当たって、労働者の意思が十分に反映される制度が確立されるべきである。
 労働条件の不利益変更の際には、労働者の協議・同意を前提とし、厳格な手続を課すべきである。
 労使委員会の労働者代表が労働者全体の意見が反映される選出手続が確立され、真に使用者から独立することが担保されていない限り、労使委員会を就業規則の変更についての協議の相手方とすることには賛成できない。
 一部の労働者を対象とする就業規則については、その対象とする労働者の意見が反映されるようにするべきである。(労働組合1件)
 ・ 就業規則は、労使合意を前提にすることを求める。また、就業規則が合理的であるとは、職場実態や利害関係者等に理解されるものでなくてはならないと考える。(労働組合1件)
 ・ 使用者に対して労働者への就業規則の交付を義務づけるべきである。
 就業規則の作成・変更については、本来従業員からの同意を要するものであり、最低でも従業員への協議を義務づけるべきである。(労働組合1件)
 ・ 就業規則の内容が合理的である限り労働契約の内容となる場合において合理性とは何と何との比較で合理性を判断するのか不明である。
 労働基準法上、就業規則はすべての労働者について作成されなければならず、労働条件が異なる者については別規程を定めなければならないことを明確にすることは議論していただきたい。運用の際には、その違いの意味も含め、全労働者に明確に文書で示すことが必要と考える。(個人1件)
 ・ 就業規則の制定・変更による労働条件の不利益変更は許されないと明記すべきである。(労働組合1件、個人1件)
 ・ 労働契約法において、「就業規則の作成・変更によっては、一方的に既得の権利を奪い、労働条件を不利益に変更することはできない。」と明記すべきである。せいぜい、例外として、「高度の必要性と合理性がある場合を除く」とすべきである。(個人2件)
 ・ 就業規則の変更についてはまず周知が前提である。
 就業規則の不利益変更は労働者の同意なく行ったものは無効であることを条文に明記すべきである。(労働組合1件)
 ・ 就業規則に労働者を拘束する効力を認めるためには、少なくとも協議、できれば同意を要するものとすべきである。
 また、原則として不利益変更はできないこととし、一方的な不利益変更には、高度の必要性と客観的合理性が条件となることを法律上明記すべきである。(労働組合1件)
 ・ 過半数組合との合意又は労使委員会の決議による就業規則の不利益変更についての合理性の推定を導入することに対して強く反対する。(労働組合15件、弁護士団体5件、個人41件)
 ・ 労働条件の不利益変更は慎重に行うべきであり、まず、役員や株主に対して報酬の減額や賠償を求めるべきである。
 また、一方的な不利益変更を認めるのではなく、代償措置を求めるべきである。(個人1件)
 ・ 過半数組合や労使委員会5分の4以上の賛成による就業規則の合理性の推定は、労働条件の不利益変更が安易に行われることになりかねず、全く労働者保護にならない。従来の判例法理に従って、内容面の合理性・相当性を担保する規定が設けられなければならない。(個人1件)
 ・ 過半数労働組合の合意または労使委員会5分の4以上の決議に就業規則の合理性を推定する効力を付与することには反対である。仮に、かかる効力を付与するならば、多数組合の労働組合員でない労働者が労働条件の不利益変更を争うことを困難にすることとなり、極めて不適切である。ましてや、公正代表制が担保されていない労使委員会決議にも推定効を認めることは到底できない。(弁護士団体1件)
 ・ 過半数組合との合意又は労使委員会の決議による就業規則不利益変更についての合理性推定を導入しようとしていることに強く反対する。管理職は、訴訟で就業規則の不利益変更の効力を争うことができなくなる。(個人1件)
 ・ 過半数組合が同意した場合であっても、就業規則の変更を無効とした裁判例があることや、労働者代表の選出手続が不明瞭であることから、安易な推定規定の導入はすべきではない。(個人1件)
 ・ 労働契約法制として必要なのは、労働条件の一方的な変更・切り下げは許されないという大原則を確認することである。
 就業規則の合理性推定規定の導入は、迅速かつ柔軟な労働条件切り下げを狙う使用者にとって、不利益を受ける反対者の裁判で争う権利を完全に封じ込めるという大きなメリットをもたらすものである。他方で、不利益を受ける少数労働者にとっては、不服を申し立てる最後の手段である裁判を利用する権利までをも奪い取られることとなる。過半数組合の合意ないし労使委員会の多数決による合理性推定の仕組みは、「自主的決定」に名を借りた使用者の一方的な労働条件切り下げシステムである。このような合理性推定制度の導入には断固として反対する。 労働契約法制に就業規則変更による労働条件変更に関する規定を設けるのであれば、みちのく銀行事件において示された判断基準や考慮要素をこそ明記すべきである。(弁護士団体1件)
 ・ 就業規則の周知よりもむしろ、労働者への就業規則の交付を就業規則の拘束力の要件とすべきである。
 多数組合の合意に変更の合理性への推定効を付与することになれば、労働協約の内容の合理性審査を行うことが出来るとする判例法理を覆すこととなる点に留意すべきである。(個人1件)
 ・ 就業規則の不利益変更について、過半数組合との合意又は労使委員会の決議をもって合理性を推定することに反対する。このような就業規則の一方的不利益変更が原則として許されないとした秋北バス最高裁判決の規範について、原則と例外を変更するものである。(個人1件)
 ・ 就業規則に何らかの拘束力を認める以上は、就業規則の作成・変更に過半数代表の同意を要することとするべきである。少なくとも、過半数代表との協議手続を保障することは不可欠である。
 就業規則の周知手続の内容が不明確である。労働者全員がその内容を確実に了知できるようにするため、書面の交付を要求すべきである。
 労使委員会の労働者委員の民主的な選任が確保されていないことと、労働者委員が労働者全体の意向を汲み上げるシステムが用意されていないことから、労使委員会の労働者委員からの意見聴取をもって過半数代表からの意見聴取に代えることは許されない。
 「就業規則の作成・変更により既得の権利を奪い、あるいは労働条件を不利益に変更することはできない」という原則を明記した上で、例外的に就業規則の変更による労働条件の不利益変更が拘束力を持つ場合があることとすべきである。
 判例においても多数組合の同意を重視していないものがあること、使用者が交渉の形式だけを整えることは困難ではないこと、自主性が乏しい多数派組合も多数あること、多数派組合に属さない労働者からすれば多数派組合の合意は第三者の合意にすぎないこと、労使委員会は多数の労働者の意見を反映するシステムとして不十分な制度であること等を考慮すると合理性推定規定の新設には反対である。(弁護士団体1件)
 ・ 拘束力の要件について、周知手続という極めてあいまいなものではなく、労働者への書面交付を要件とすべきである。
 就業規則変更の効力については、「就業規則の制定・変更によって、既得の権利を奪いあるいは労働条件を不利益に変更することはできない」という大原則を法定すべきである。その上で、例外として、高度の必要性と合理性がある場合に限り、労働者を拘束しうる旨の規定とすべきである。また、過半数組合の合意又は労使委員会5分の4以上の決議に変更の合理性を推定する効力を付与することには多くの問題があり、反対である。(労働組合1件)
 ・ 就業規則の不利益変更は許されるのかという問題をそもそも検討すべきある。この点の検討すら行なわないのは本末転倒も甚だしい。
 労使委員会の5分の4の賛成で合理性が推定されれば、少数組合労働者の意見は反映されず、不利益な就業規則変更を受け入れざるを得ない状況に追い込まれることにならざるを得ない。労使委員会の5分の4以上の賛成で「合理性」を推定することなど許されない。(団体1件)
 ・ 就業規則の制定・変更によって、既得の権利を奪いあるいは労働条件を不利益に変更することはできないとの大原則を堅持すべきである。また、過半数組合の合意や労使委員会の5分の4以上の決議であらゆる変更が合理性を持つというのは余りにも乱暴であり、反対する。(労働組合1件)
 ・ 中間取りまとめでは「多様化」への対応を強調しながら、労働条件を「統一的かつ画一的に決定」(秋北バス事件判決)する就業規則法理を法律化しようとするのは矛盾している。秋北バス事件最高裁判決を始め多くの判例が、使用者の立場での「合理性」を根拠に不利益変更を許容しているが、契約法理としては真に乱暴なものであり、かつ、事実上は、使用者が就業規則の変更を悪用して、労働条件を一方的に切り下げることを手助けするものである。労働者保護法制であるべき、労働「契約」法制に持ち込んではならない。
 労使委員会の4/5の賛成による決議を経た場合は、「合理性が推定される」とすることにも、反対である。
 一方的な労働条件切り下げは、「合理的」であるか否かを問わず、また、就業規則の変更によるか否かを問わず、原則として許されないこととすべきであり、例外として許されるのは、(1)他に選択肢がないほどに強度の経営上の必要性、(2)不利益をこうむる労働者への、不利益を十分カバーし得る代償措置を含む十分な説明と、その同意、(3)当該労働者が労働組合員であれば所属労働組合(企業内であるか、また、過半数であるかを問わない)への、非組合員であり労使委員会などがあればそれへの、説明とその同意、(4)説明に当たっての資料開示、という厳しい要件を充足した場合のみとすべきである。(労働組合1件)
 ・ 労使の力関係は対等ではない。少しでも労使が対等に契約をする方向を目指すならば、例えば、就業規則や賃金規定等を社会的に公開させるなどの思い切った案を出すべきである。(個人1件)
 ・ 就業規則変更の合理性の有無はあくまでも客観的価値評価であって、「手続」によってその価値が増減するごとき性質のものではない。労使協調主義に陥って、真の労働者の団結主体としての実質を失っている労働組合や、未組織労働者のなかから「選ばれ」企業従属性をつよく帯びざるをえない「労使委員会」による合意・決議によって合理性を推定することには、なんらの現実的根拠もなく、正当性も認められない。このような推定効がはたらくことになれば、不利益変更に同意しない労働者が提訴しようとしても、勝訴の見込みはほとんどなく、提訴をあきらめざるをえなくなる。(弁護士団体1件)
 ・ 労使委員会または過半数組合の同意で就業規則の不利益変更の合理性を推定する規定を設けることは、職場の声を集約するわけでもない少数の者の同意を偏重し、その他の考慮要素を従たる地位におくものであり、確立した判例法理を後退させる。これが導入されてしまえば、少数の者との協議によって変更の合理性が推定され、変更の「不合理性」を、異を唱える労働者の側において主張・立証しなければならなくなってしまう。これでは、就業規則の不利益変更の効力を争う裁判を事実上封殺することになる。過半数組合が同意した場合でも就業規則の変更を無効とした裁判例があることや、労働者代表の選出手続が不明瞭なことを考え合わせると、中間とりまとめの提言は極めて危険な発想であり、安易な合理性推定規定の導入はすべきではない。(個人1件)


○ 雇用継続型契約変更制度
 ・ 労働協約や就業規則の変更では対応できないのは、いかなる労働条件変更であり、いかなる方法で規定された労働条件なのか理解できず、必要性は感じられない。
 労働条件の変更を提示された労働者が変更後の労働条件に異議があれば訴訟を提起しなければならないが、ドイツと違って日常的に労働事件が裁判所に持ち込まれる状況にない日本では、労働者にとっては解雇を背景に労働条件変更を迫られる制度でしかない。
 雇用継続型契約変更制度と解雇の金銭解決の二つの制度を新設すれば、労働条件は解雇を背景に変更できるようになり、違法な解雇であっても最終的には金銭を払えば解決することになって、使用者にフリーハンドを与えることになる。(労働組合1件)
 ・ 雇用継続型契約変更制度は、要件・効果を具体的に検討する必要がある。不十分な検討状況のまま拙速に取り入れるべきではなく、慎重な検討が必要である。同制度が本来認められるべき解雇に対する新たな規制となる制度になるのであれば反対である。(使用者団体1件)

 ・ 雇用継続型契約変更制度は解雇という社会的コストを避ける妥当な解決策となり得ると思われるが、同じ労働条件の変更について、就業規則の変更による場合と個別契約の変更による場合とで、解雇の要件に違いが出てくることに説明がつくのか疑問がある。また、特別な制度として構築すべきか、使用者の広範な変更権限という枠組みの中で論じれば十分であるのか、それぞれの長所と短所とをより詳細に検討したうえで、議論を深めることを要望する。(使用者団体1件)

 ・ これまで変更解約告知として論じられてきた問題を「雇用継続型契約変更制度」と位置づけ直し、雇用の継続をはかりつつ労働条件の変更を実現する方策を打ち出した点は評価できるが、案(2)の一方的変更権承認型をとれば当事者の対等で自主的な決定の実現と乖離する結果となろう。(個人(学者)1件)
 ・ 労働契約の変更の申入れといっても解約告知を背景にしている以上相当程度権力的あるいは圧力的性格を有しており、解約告知が容認される場合でもこの点は看過しえない。その意味では「内容の合理性」のみを基準とする(2)案よりは「異議をとどめて承諾」の(1)案が支持される。(個人(学者)1件)
 ・ 雇用継続型契約変更制度は就業規則の不利益変更問題の有力な対応策の一つとして注目に値する。もっとも、報告は、使用者との「協議」を基本的枠組みとしており、労働者保護という点で機能するかどうかについては疑問であり、労働審判制度や調停制度等の活用と結びつけて構想することも検討されるべきであろう。(個人(学者)1件)
 ・ いわゆる「変更解約告知」には反対である。労働条件の不利益変更か解雇かの選択を労働者に迫ることを認めることは、あまりにも経営者を優遇し、労働者に過酷な道を押しつける。労働者が労働条件変更を認めないことを理由とする解雇を禁止すべきである。(労働組合57件、個人264件)
 ・ ドイツにおいて、変更解約告知が訴訟で争われる場合には、解雇の正当性と変更内容の相当性の二段階の審査を受ける。「中間とりまとめ」において示された案では二段階審査のうち、解雇の正当性を不要としているため、到底容認できない。(個人1件)
 ・ 使用者による一方的な労働条件変更に法的お墨付きを与えることは労働者の労働条件に対する自己決定権を一方的に剥奪するものである。仮に「留保付承諾」を認めたとしても、後日裁判で争う道を残すだけで使用者を優遇し、労働者が不利益を被る。このため、この制度の導入に反対する。(労働組合84件、個人7件)
 ・ 雇用継続型契約変更制度を導入することに対して強く反対する。(労働組合16件、弁護士団体5件、個人40件)
 ・ 雇用継続型契約変更制度の導入に反対する。一方的な賃金・労働条件の不利益変更は許されない。(労働組合1件、個人1件)
 ・ 変更解約告知を認める制度には反対である。(弁護士団体8件)
 ・ いわゆる変更解約告知が認められれば、異議留保付承諾を認めたとしても、使用者が優遇され、労働者が不利益を被る。使用者による労働条件の一方的な不利益変更に法的根拠を与えることになりかねないため、この制度の導入には反対する。(個人1件)
 ・ 今でも使用者による一方的な賃金・労働条件の不利益変更が横行しているにもかかわらず、それにお墨付きを与えるよう制度は設けるべきではない。(個人1件)
 ・ 労働者に対して、労働条件の切り下げに合意するか解雇されるかを選ばせる変更解約告知の法制化には反対する。(個人1件)
 ・ いわゆる変更解約告知には反対である。もし導入するならば、案(1)のように労働者側に留保の機会を保障するべきである。(個人1件)
 ・ 使用者が一方的に労働条件を引き下げられないよう法律で規制するべきである。変更解約告知には反対である。(労働組合1件)
 ・ 案(1)については前提として、労働契約の変更に応じないことを理由とした解雇は認められないこと、労働契約の変更には労働者の合意が必要であること、労働者と使用者の間で協議が整わない場合に契約を継続しつつ合意を作る手続を検討することが必要である。
 案(2)は近代市民法の原則から逸脱するものである。このようなものを認めることは論外と言わざるを得ない。(労働組合1件)
 ・ この制度は使用者に対して一方的に労働条件を変える権利を与えるものである。労働条件は、権利の保護を前提として、労働者が使用者と合意することにより決定するべきものである。(個人1件)
 ・ 現状分析を通じた今後の慎重な検討を要望する。(労働組合1件)
 ・ 労働契約の変更に関して、労働者が雇用を維持した上でその合理性を争うことは基本的権利である。変更を制度化するのは疑問である。(個人1件)
 ・ こうした制度を認めることは、使用者の脅しによって同意させられた労働条件の引下げにお墨付きを与えることになりかねない。端的にこうした制度を禁止すべきである。(個人1件)
 ・ 使用者が自由に賃金の切り下げができるようになるため、この制度を濫用することになる。労働者を徒に刺激するようなシステムは不要である。(個人1件)
 ・ 変更解約告知は労働者に不利益変更か解雇かを二者択一させるという制度であり、就業規則の変更による労働条件の不利益変更以上にかかる制度を導入しなければならない必要性があるという立法事実の存在そのものに疑問がある。また、変更権付与制度についても、契約を締結するかどうか、契約内容をいかなるものにするかを当事者の合意により決するという契約法理の基本原則に抵触する制度であって、かかる変更権を法定することには慎重であるべきである。(弁護士団体1件)
 ・ 雇用継続型契約変更制度を導入することに強く反対する。変更後の労働条件を拒否し、訴訟を起こした労働者を使用者が雇用しつづけることなど考えられない。また、訴訟を労働者が起こすことも、過大な負担であって、結局泣き寝入りしか生まないと考える。(個人1件)
 ・ 解雇の脅威を伴う労働条件変更の申し出による事実上の変更の強制は労働契約法制の趣旨に反する。また、変更権を付与することについては、使用者にのみ付与することが問題であるほか、他の手段によっては労働条件の変更ができない場合が何かが不明瞭である。拙速な制度化はすべきではない。(個人1件)
 ・ 前段として、労働者の合意や就業規則等の社内規範に基づかない労働条件の不利益変更は無効とするとの記述が必要である。その上で、例外規定として検討を行うべきである。(個人1件)
 ・ この制度は解雇を背景として安易に労働条件の不利益変更を実現させることとなりかねないものである。導入には反対である。(労働組合1件)
 ・ 今必要なのは、使用者からの一方的な契約変更を許さず、かつ、変更に応じないことを理由とする一方的な解雇を明示的に禁止することである。使用者からの契約変更の申出に対して、個々の労働者が訴訟を構えて争うなどということは現実にはほとんど起こりえないことから、このような制度を設けることは使用者に実質的な一方的契約変更権を与えることにほかならない。このような制度の導入には断固反対である。(弁護士団体1件)
 ・ 労働者に提訴を強いる点が問題である。
 新たな制度を提案する場合は、予想される問題点や今後検討を要する問題点を合わせて指摘する必要があり、まず制度ありきの考え方は妥当でない。(労働組合1件、個人1件)
 ・ 雇用継続型契約変更制度の創設に反対する。不本意ながら異議を留めて配転等の効力を争い、訴訟等で原状回復を求めることは、現在でも問題なく行われており、創設の必要性がない。仮に、制度を創設するのであれば、現職にとどまりつつ効力を争うことのできるようにしなければならない。(個人1件)
 ・ 労働者が労働契約の変更を受け入れなければ解雇をするとはあまりに乱暴である。この制度は、労働者の立場の弱さをさらに弱くさせるだけで労使紛争の防止に役にたたず、かえって混乱をもたらすだけである。(労働組合1件)
 ・ 従業員の地位を保持したまま、使用者と訴訟で争うことは日本の企業社会においては極めて困難であることや、労働者は提訴の負担を覚悟しなければならないことから、多くの労働者が労働契約変更の受諾を事実上強いられることになる。雇用継続型契約変更制度と解雇の金銭解決制度の双方が新設されれば、使用者にフリーハンドを与えることになる。したがって、雇用継続型契約変更制度の新設には反対である。(弁護士団体1件)
 ・ もしこのような制度が導入されれば、労働条件の不利益変更を認める制度が公認されたとして、労働条件の不利益変更が多発し、労働者が使用者と訴訟で争うことが困難であることから、労働者の地位が大きく低下させられることとなる。このような制度を設けることには反対である。
 裁判で争えば、違法無効とされるような解雇が横行している現状こそが問題である。迅速に労働者を救済する方策が講じられるべきである。(弁護士団体1件)
 ・ この制度の導入に反対する。(労働組合1件)
 ・ 例え、異議留保付承諾を認めたとしてもその有効性には疑問があり、使用者からの一方的な労働条件改悪を認めるものでしかないように思われる。日本で現実的に必要とされる制度なのかどうかをよく精査し、制度そのものの妥当性を検証すべきである。(労働組合1件)
 ・ この制度は使用者による一方的な労働条件変更をしやすくするものである。労働者にとっては、労働条件が改悪された下で裁判等を行うことになり、多大な負担がかかることとなる。このような制度の導入には反対する。(労働組合1件)
 ・ 労働者が変更された契約にしたがって就労しながら、裁判によってその有効性を争うことは現在でも可能であり、実際に行われていることから、新たに制度を設ける意義は認められない。このような制度の新設はかえって労働者の働く権利を脅かす危険性がある。(団体1件)
 ・ このような制度の導入により、解雇権を法的に経営者が握ることになる。この制度は必要ないと考える。(労働組合1件)
 ・ この制度は、契約を破ろうとした者(使用者)が、契約を守ることを主張した者(労働者)に対し、一方的に契約のキャンセル(解雇等)を突きつけるものであり、「契約は守られなければならない」という民法上の原則に反するものである。仮に、異議留保付承諾を認めたとしても、わが国において労働者が使用者を相手に訴訟で争うことの困難さを考えれば、事実上労働者に泣き寝入りを強いる結果となることは明らかである。そのような制度の導入には反対せざるを得ない。(弁護士団体1件)
 ・ 案(1)、(2)ともに変更や解約を争う労働者に提訴を強いる結果となることは明らかである。労働条件の切下げを有期雇用契約継続の条件とする事案が増えているが、契約変更解約告知の法制化は使用者に労働条件変更について法的な手段を与えることになる。案(2)については、変更権の範囲および必要とされる「相応の手続・代償措置」の内容が具体的になっていない。(個人(学者)1件)
 ・ 使用者による一方的な雇用と労働条件の変更を許すもので、到底認められない。留保付承諾はヒルトン事件で最高裁が実質的に認める不当判決を出したばかりである。広範に存在する未組織労働者にとって、留保付承諾を行って裁判を起こしてまで働くことは不可能である。(労働組合1件)
 ・ 「異議をとどめて承諾しつつ、雇用を維持したままで当該変更の効力を争うことを可能にするような制度を設ける。」といっても、労働者にすれば、争えば必ず勝訴できるか、きわめて高い確率で勝訴できる保証がなければ画餅である。そこで、使用者から開示された資料によって、「他に選択肢がないほどの経営上の必要性、代償措置の十分性」などについて、専門家の力も借りながら検討し、裁判予測を立てられることが重要となる。従って、この制度をどうしても導入しようとする場合には、十分な時間的余裕を持った資料開示を使用者に義務付けることが不可欠であり、この前提が満たされない場合は反対である。(労働組合1件)
 ・ 近代法社会においては、すべての構成員に「契約は守らなければならない」義務が課せられているにもかかわらず、使用者が労働契約の変更を求めることは日常的に行われている。この場合、法の任務は「契約を守らない」使用者を禁圧し、その犠牲者たる労働者の権利を迅速かつ実効的に保障・救済するところにこそ存在するはずである。
 これに対し「中間とりまとめ」が提唱する「雇用継続型契約制度」(変更解約告知)は、第1に、みずから約束した契約を一方的に変更する使用者の行為を合法化し、第2に、契約変更の効力を争う負担をすべて労働者に転嫁させるもので、近代法としてあるまじき本末転倒といわざるをえない。
 この制度が導入された場合、おおくの労働者は、訴訟の困難性や長期化を嫌い、提訴をためらうだろうから、契約変更の合法化の側面がほぼ全面をおおい、変更の効力が争われる事例はきわめて例外的現象となる。また、少数の労働者が提訴し勝訴した場合でも、わが国の訴訟制度では、その効力は当事者間の範囲にとどまり、使用者にとってもその負担は無視するにたるものである。以上の必然的結果として、使用者による一方的な契約変更は、飛躍的に拡大せざるをえない。使用者にとって、その成果をほぼ確実に入手でき、その負担は無視するにたる範囲にとどまるうえ、かりに勝訴すれば「不満分子」の追放というボーナスまで手に入れることができるからである。ここには、一片の法の正義も認められない。(弁護士団体1件)
 ・ 解雇の脅威を伴う労働条件変更の申し出は、労働者に、「解雇されるよりはいい」と思わせ、労働条件の変更を事実上強制することになる。そうなれば、労働者の自律的決定をうたう労働契約法制の趣旨にも反する事態となるのであり、絶対に認められない。
 また、合理性がある場合に使用者に変更権を付与するという制度も、契約の一方当事者である使用者に一方的な変更権を付与する点で問題があるし、この制度の適用される場合も不明確である。個別に業務と待遇とがミスマッチとなっている労働者の労働条件を変更するのであれば、従来でも降格その他の手段があるところであり、何故に使用者に変更権を付与することを制度化するのか詳細な理由は語られていない。そうであれば、拙速な制度化はすべきではない。(個人1件)
 ・ 労働契約の変更に際して、雇用を継続しながら労働者に過酷な裁判制度の利用を迫る制度の導入には反対である。労働者側に一方的な不利益変更を強いるものでも、経営にとって「合理的」であれば許されるのであれば、使用者側にとってこの上ないフリーハンドを与えるし、たとえ雇用を継続してその不利益変更を争うことになれば、人材も資金も豊富に対応可能な使用者側に比べて、労働者側には裁判への負担は時間、労力、費用負担など計り知れず不利な状況は目に見えている。労働者にしてみれば、異議を唱えることですら勇気がいるにもかかわらず、しかも雇用を継続しながら訴えを提起しなければならないのであるから、制度を創設しても大部分の労働者は争いの権利を留保しつつもあきらめざるを得ない。(労働組合1件)
 ・ 契約内容や勤務地が特定されている労働契約を使用者が変更しようとする場合に、労働者の合意なしに変更されることは認められない(配置転換や出向においても同様)。特に労働契約は当初から十分に検討されて、締結されるべきであり、契約中に安易に変更するべきではないと考える。この制度の法制化により、逆に使用者が労働契約の変更を申し入れることが容易になることは、交渉力の弱い労働者にとっては脅威であり、当初に締結した労働契約は、違法なものを除き安易に変更できないよう法制化するべきである。(労働組合1件)
 ・ 雇用継続型「契約変更制度」はいっそうの単身赴任を強要するものであり、反対する。(労働組合1件)


○ 配置転換
 ・ 配転命令について権利濫用法理を法律で明らかにする点については、判例上、配転命令が権利濫用とされる場合は極めて例外的であり、立法の必要はなく反対である。(使用者団体1件)

 ・ 配置転換及び出向については、人事権として使用者に既に広い裁量が認められている権限を不用意に制限すべきではない。但し、最高裁判例が示すような極めて例外的で悪質なケースを念頭に権利濫用法理を法制化し、考慮要素を具体化して指針等で示すことは紛争回避のためには有用である。その際、配置転換、出向が一般的に行われる有益な人事権行使であり労働者の予測可能性にも欠けることがない点を重視し、解雇権濫用や整理解雇の考慮要素などとは一線を画した検討が行われるべきである。
 労働者の予測可能性という観点から、就業規則や労働協約において予め配置転換や出向の可能性を明記することを要求することは、合理的であると考えられるが、それに加えて、個別の同意を要することとする必要はないと考える。(使用者団体1件)
 ・ 配置転換、出向、転籍、休職、昇進、昇格、降格などは使用者の人事権に関する重要な項目であり、解雇権の行使が非常に制限されているわが国においては、使用者の裁量権をできる限り認めるべきである。(個人1件)

 ・ 配転・出向・転籍に関し、これまで判例上確立されてきた使用者の人事権行使制限法理を実体的要件として立法上明文化することは重要であり、異論はない。(個人(学者)1件)
 ・ 配転に関する最高裁の判例法理(東亜ペイント事件)は、かなり定着した感があるが、家庭生活と労働生活の調和に関する労働者の自己決定の尊重という二一世紀型人事管理には適していない。この問題を使用者の「配慮義務」というパターナリスティックな概念で処理したり、また日々刻々と変化する家庭生活のあり方(あるいはその反映としての労働生活のあり方)を、契約締結当初の合意だけで処理するのも適切ではない。むしろ、配転命令時における説明や説得という手続要件を重視する解決方法を導入すべきである。(個人(学者)1件)
 ・ 配転・出向等は、労働者の個別的事情が考慮されるべきもので、就業規則による画一的・集団的処理になじまない。したがって、企業が、これらを制度として定めるにしても、過半数代表なり労使委員会なりのより深い関与が必要であろう。少なくとも「会社の都合により、配転・出向を命じることがある」などの抽象的な条項をもって、これに従う旨の当事者意思を推定するのは適切ではない。(個人(学者)1件)
 ・ 配置転換をするためには、事前に労働者と協議した上での合意が必要とすべきである。(労働組合1件)
 ・ 配転・出向・転籍については、安定的な家庭生活を破壊することや、苛めによって退職を強要することを防ぐ規定が必要である。ILO条約の基準の実現を望む。(個人1件)
 ・ 配置転換、出向、転籍等の労働条件の大幅な変更を伴う際には、十分な説明と労働者の同意を必要とするべきである。(個人1件)
 ・ 企業側の責任を明確にし、本人の同意のない遠隔地への配転や出向について罰則も含めた法整備を求める。(労働組合1件)
 ・ 配転については、労働協約、就業規則、慣行慣例等に基づくものでなくてはならない。さらに、労働者・労働組合が納得しうる企業方針が必要である。いやしくも、労務方針(思想、信条の違いを含む労働組合の活動など)で配置転換を濫用させてならないことを明文化する法律を求める。(労働組合1件)
 ・ 東亜ペイント事件最高裁判決やこれに従う諸判例は業務上の必要性がきわめて広い等の問題があり、これを法律化しようというのであれば、(1)労働条件不利益変更と同様、使用者に当該労働者に対する説明・資料開示義務を負わせる、(2)「必要性」に絞りをかけ、「余人をもって替えがたい」にできるだけ近づける、(3)「不当な動機・目的」が認められる場合、因果関係説に立って、直ちに権利濫用(無効)とする、(4)転勤による不利益について、「通常甘受すべき程度を著しく超える」かどうかの評価基準を大幅に引下げる、といった措置が必要である。(労働組合1件)


○ 出向
 ・ 出向者の労働条件保護という観点からは、出向元と出向先の間に何の取り決めもない場合に一定の労働条件についていずれが使用者としての責任を負うかにつき推定規定を設けることは、確立した裁判例と解釈に基づいて行われるのであれば、紛争防止のためには有益である。(使用者団体1件)

 ・ 出向の法的根拠として、「労働者の個別的同意」の他に、「就業規則又は労働協約上の同意」を明文化することには、出向の法的性質からみて反対である。(個人(学者)1件)
 ・ 出向について、労働者の包括的な合意で足りるとするならば、不当な出向から労働者の権利を保護することができなくなってきている。労働契約法制において、改めて個別の労働者の同意権を確立すべきである。(労働組合1件)
 ・ 任意規定では守られない。法制化を求める。(労働組合1件)
 ・ 出向を利用しての労働条件切り下げを許してはならない。出向中の賃金水準の維持は強行規定とし、それに違反する出向は無効とすべきである。任意規定は、賃金を支払う者についてのみとすべきである。(労働組合1件)
 ・ 出向期間中の賃金は「出向直前の賃金水準」を「出向元及び出向先が連帯して支払う義務がある」とする考え方は支持できるが、「任意規定を置く方向で検討」というのでは実効が上がるのか疑問である。強制力を持って措置すべきであり、出向する労働者が不利益を被らないような措置を強く望む。(労働組合1件)


○ 転籍
 ・ 転籍については、使用者が変更になる点で配置転換や出向以上に、同意の取得等労働者の保護がより厚く確保されるべきであるが、そもそも法的には転籍元の退職と転籍先への入社と構成されることから、転籍時点で新労働条件を明示しなければならないことは当然であり、あえて法制化する必要があるかはさらに検討の余地がある。また、労働契約承継法における転籍との整合性についても十分に検討されたい。
 なお、「転籍後に説明内容と現実とが異なることが明らかとなった場合には転籍を遡及的に無効とする」場合、「転籍後」を転籍からどの位の期間と考えているのか明確ではない。
 転籍後の処遇は、転籍時点での処遇であり、転籍後の処遇の変更は、労働条件の(不利益)変更の問題として対処すべきことを明確にすべきである。なぜなら、特に、組織再編に伴う労働契約の承継においては、複数の異なる労働条件が並存する状態が想定されるが、労働条件の集合的処理や組織としての一体感醸成の観点から処遇の変更が求められることが多い。この場合、通常よりも使用者に裁量を持たせた運用を判例法理は認めていると思われるが、この点も労働契約法制において、明確化すべきである。(使用者団体1件)

 ・ 労働者の合意が得られなければ強制できないことを明らかにした上で、報復措置を禁止するべきである。また、条件付同意を認めることにより、裁判等で争えるようにするべきである。(個人1件)
 ・ 転籍の場合で大きな問題は、転籍前の賃金が転籍によって大きく切り下げられる例が多発していることである。これは、まさしく労働者にとっては不利益変更にあたり、中間報告の方向はおおむね支持できるものの、賃金については大幅なダウンによって不利益を強要できないような仕組みを考えるべきである。(労働組合1件)


○ 休職
 ・ 労働契約は、労働の提供とそれに対する対価の支払という関係であり、契約締結時に約束された債務が履行されない場合に、常に使用者に債務の内容を低減して契約を維持することを要求することは疑問である。既に、多くの企業において、労使双方の利益を考慮した折衷案として休職制度が設けられている趣旨を重視すべきである。休職期間満了時に治癒していない労働者を配置転換等して復職させるべきとする最近の裁判例の傾向を、原則論と捉えて法制化するのは疑問である。(使用者団体1件)

 ・ 「作業関連疾患」の理解の浸透にともない、労働者の健康についての課題は労務管理の重要課題であり、病気休職に関連する裁判紛争も増加しているのみならず、病気休職は労働契約の契約理論の根幹にふれる問題を惹起する。すでに問題は「判例法理の限界」に立ち至っており、病気休職について法的な規整が予定されていないのは疑問でしかない。(個人(学者)1件)
 ・ 休職中の労働者が、原職への復帰が困難であっても、配置可能な業務があればその業務に配置することで労働契約を継続する義務があることを明らかにするべきである。(労働組合1件)
 ・ 一定の休職制度を設置することが適当である。また休職終了後、配置可能な業務に復帰させる義務を設けるべきである。(弁護士団体1件)


○ 懲戒
 ・ 懲戒について権利濫用規定を設け均衡論等の要素を盛り込むことについては、服務規律や慣行など企業によりさまざまであることを考えれば不要な立法の介入であり、反対である。(使用者団体1件)

 ・ 紛争防止の見地及び罪刑法定主義の観点から、労働者に予測可能性を与えるため、懲戒の種類及び事由を予め就業規則等に明記すべきであるとの点には賛成である。しかし、服務規律事項や懲戒事由の内容については、企業の裁量に委ねるべきである。例えば、法令遵守を重視する使用者においては自ずと処分が厳格になる一方、懲戒手続も適正手続の観点から整備されているなど、企業により千差万別である。これを、終身雇用制を前提として非違行為に対する処分も寛大な傾向にある日本企業の慣行を基準として、「均衡を欠く」処分であると一律に権利濫用と判断したり、懲戒事由を限定解釈したりすることは不適切である。不当な懲戒を抑制するという観点からは、推奨されるプロセスを指針等で示し周知徹底すればその目的は十分図られると考える。(使用者団体1件)

 ・ 労働者に与える不利益が大きい懲戒処分については、書面で通知することとし、これを使用者が行わなかった場合には懲戒を無効とすることを検討するとしていることは、議論していただきたい。
 また、懲戒処分の際に、弁護士、労働組合、労使委員会代表等が同席することについても議論すべきである。(個人1件)
 ・ 懲戒解雇・停職・減給について、理由等を書面で労働者に通知することはとても良いことである。書面による説明がなかった場合には無効とするよう望む。(個人1件)
 ・ 使用者が労働者に懲戒を行う場合には、個別の合意または就業規則又は労働協約に基づいて行わなければならないとすることは適当である。
 懲戒は客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と認められる場合でなければ無効とする規定、懲戒の内容は懲戒事由と均衡がとれていなければならないこととする規定、懲戒の内容・上限について制限する規定を明記すべきである。懲戒解雇の場合の退職金不支給・減額規定を一律有効としない規定を設けるべきである。
 懲戒の効力発生要件として、書面交付、弁明の機会を付与すべきである。懲戒権の行使期間を設けるとともに、懲戒当時認識していなかった事由を訴訟上追加することを禁止すべきである。(弁護士団体1件)
 ・ 労働者の主張が充分に出来るように、本人・労働組合・使用者との3者構成による委員会の設置をはからせること、協議ができる場の設置を義務づけること、必要に応じて労働組合の上部組織及び弁護士等の出席を認めるようにすることとすべきである。(労働組合1件)


○ 昇進、昇格、降格
 ・ 昇進、昇格、降格については、企業によって制度内容が大きく異なり、法制化は不適切、困難なため反対である。(使用者団体1件)

 ・ 人事権の濫用として認められない場合を法制化するにあたっては、抽象的に裁判例の表現を引用することは避け、具体的な紛争解決基準足り得る基準を定めるべきである。その際、昇進、昇格、降格については本来使用者に広範な裁量権が認められていることを十分に考慮すべきである。(使用者団体1件)

 ・ 成果主義賃金を導入する場合においては、労働者を客観的に合理的な基準に基づき公正に評価することや、評価の結果を労働者に説明し合意を得ることなど、労働者の権利保護を検討すべきである。(労働組合1件)
 ・ 昇進、昇格、降格等の人事権の行使に際しては、思想信条による差別を禁止するとともに、労働者の要求に応じて考課の開示義務を課すべきである。(個人1件)
 ・ 評価事項、人事権濫用禁止、使用者の公正評価義務・意見聴取義務・不服申立制度設置義務の規定を設けるべきである。
 降格、降給には客観的に合理的な就業規則等の定めを要求するべきである。
 労働者の昇進、昇格請求権を法的権利と認めるべきである。(弁護士団体1件)
 ・ 降格は典型的な不利益取扱い・労働条件切り下げであるから、原則として許されない。懲戒等、明確な規定上の根拠・本人帰責事由がある場合で、所定の厳格な手続を経たものに限られるべきである。(労働組合1件)


○ 就労請求権
 ・ 労働者の就労請求権については、裁判例に従い、一般的には労働者に就労請求権はないとの立場を維持すべきである。仮に就労請求権を否定する考え方を見直すとしても、使用者にとっては、懲戒相当事案の調査期間や、解雇通告を行ってから実際の退職日までの期間などは、秘密保持の観点等から、自宅待機命令を行う合理的な理由がある場合が多く、このような場合の自宅待機命令を不当に制限することのないよう配慮が必要である。(使用者団体1件)

 ・ 憲法第25条及び第27条の観点から議論していいただきたい。若年者の人格形成、技能の継承等をどう確保するのかは重要である。法制化されることがなくとも、労働政策として重視すべき問題である。(個人1件)
 ・ 労働者の就労請求権を確立すべきである。(労働組合1件)
 ・ 労働者の自己実現のために就労請求権を認めるべきである。(弁護士団体1件)
 ・ 労働者には就労請求権を、使用者には就労させる義務を明記すべきである。この点に関し特に問題となるのは、解雇無効・従業員の地位が確認された場合であり、解雇直前の、あるいは、それに近似の仕事をさせるのが当然であるから、その旨を判決主文(請求の趣旨)に書き得るように法を整備すべきである。(労働組合1件)


○ 労働者の付随的義務
 ・ 兼業禁止に関して、労働者の職業選択の自由を尊重し、自立した経済人としての労働者を作るという中間取りまとめの姿勢は評価できるが、その前提として、企業の人事評価や懲戒処分、合意した労務の提供がないことを理由とする解雇を含む労働契約の終了について、使用者の裁量が広く認められなければならない。
 退職後の競業避止義務及び秘密保持義務については裁判例において判断にばらつきがあるため、これを明確にし、一定の要件を充足する場合には有効となる枠組みを確立することに賛成する。(使用者団体1件)
 ・ 労働者の付随的義務について、個人情報を含め秘密保持義務については、在籍中、退職後とも義務を強化すべきと考える。(個人1件)

 ・ 「労働関係における表現の自由」は、労働者の基本的な権利として尊重されなければならない。この問題は、直接的には、労働者の「秘密保護義務」に関連するが、「取りまとめ」においては、労働者の表現の自由を尊重し、保障するという点での考慮の跡を窺い知ることはできず、今後の作業においては、このような基本的な権利の尊重を前提とした検討が必要であろう。(個人(学者)1件)
 ・ 兼業禁止を原則無効とする場合の労働基準法第38条第1項の適用除外に当たっては、過重労働を防止するために労働時間の限度を設定するべきである。(個人1件)
 ・ 競業避止義務や秘密保持義務など退職後まで労働者に義務を課すことは転職の自由を奪うものとなるため、絶対反対である。競合他社に労働者が転職することによる企業の損失は企業自身が負うべきことで労働者には責任がないはずである。このような法律ができれば、同業他社への転職が不可能となり、労働者にとって甚大な損害が生じる。(労働組合1件)
 ・ 競業避止義務については退職後の職業選択の原則自由を謳うべきである。入社時の競業避止の約束と就労開始後に新たに義務を課すことを区別して考えるべきである。(個人1件)
 ・ 職業選択の自由から、使用者は原則として兼業を禁止すべきではなく、やむを得ない事由がある場合に限定して兼業の禁止を認めるべきである。
 競業禁止を課すべき場合として、使用者に実質的な必要性がある場合又は正当な利益がある場合に限定すべきである。退職後の競業禁止については、場所的限定、時間的限定、代償措置等を予め明らかにしておかなければならないこととするべきである。退職後の競業禁止について、就業規則、退職時の合意書面作成を要件とすべきである。
 守秘義務を課すべき場合として、使用者に実質的な必要性がある場合又は正当な利益がある場合に限定すべきである。退職後の守秘義務について、その範囲を予め明らかにしておくべきである。退職後の守秘義務について、就業規則、退職時の合意書面作成を要件とすべきである。(弁護士団体1件)
 ・ 労使ともに秘密保持が重要である。双方に義務を負わせる形での法制化を求める。(労働組合1件)


○ 使用者の付随的義務
 ・ 個人情報保護法が4月に施行されたばかりであること、顧客情報等にも要保護性の高いものがあり、労働者の個人情報のみを特に保護することは適当ではないことから、使用者の個人情報保護義務を定めることには反対する。(使用者団体1件)

 ・ 雇用情報について個人情報保護義務を新たに法制化する場合には、個人情報保護法、これに基づくガイドラインとの関係を十分に精査し、省庁間で連携して整合性ある統一的な基準を設け、ガイドラインも必要に応じ見直しを行い実務に混乱のないよう注意すべきである。(使用者団体1件)
 ・ 使用者の安全配慮義務については、その対象となる範囲が使用者が当初考えられない範囲にまで拡大するおそれがあり、具体的な範囲を明示すべきと考える。(個人1件)

 ・ 労働者の人格やプライバシーに関わる問題への対応として「個人情報保護義務」だけでは不十分である。むしろ、採用から労働契約の終了に至るすべてのステップで、使用者は労働者の人格権やプライバシー権を侵害してはならないことを明らかにすべきであろう。具体的には、採用の段階で労働者の職業能力の評価に関係しない情報を収集してはならないこと、具体的な労働契約の展開過程、とりわけ人事権や労務指揮権の行使に際して労働者の人格権を侵害した場合には、当該権利行使は権利の濫用として無効になること、あるいは違法行為として使用者は損害賠償責任を負うこと、こうしたことを実定法化することを考えるべきである。
 これに対しては、労働者にも使用者の利益を不当に侵害しない義務があることを明記すべきではないかとの反論が予想されるが、労働者の義務については、企業秩序と懲戒処分に関する就業規則の規定のなかですでに現実化しており、両当事者の義務を並列に論じることはかえってバランスを失する。(個人(学者)1件)
 ・ 「職場環境配慮義務」の明文化につき報告は否定的であるが、上司によるいじめや職場の人間関係によるストレスは、過労自殺をも誘発しかねない深刻さとして現れはじめており、「人間の尊厳」原理に立脚した職場環境保持の要請は、今日飛躍的に高まってきている。何らかの形での明文化をさらに検討することが必要であろう。(個人(学者)1件)
 ・ 使用者の義務はできるだけ労働契約法制に取り入れていく努力が必要である。(労働組合1件)
 ・ 安全配慮義務を法律上明文化することについては反対ではないが、必要性を感じない。(個人1件)
 ・ 労働者が危険と感じる業務には就業させないことを明記するべきである。(個人1件)
 ・ 安全配慮義務については、使用者には労働環境を整備する中心的義務があるとするべきである。
 個人情報保護法の趣旨に則り、個人情報の不正取得、目的外使用、第三者提供を原則禁止すべきである。労働者から使用者に対する履行請求権を法律上明記すべきである。(弁護士団体1件)
 ・ 「生命・健康・安全確保請求権(義務)」を法律に明記し、使用者のこの義務違反には、懲罰的な損害賠償を支払わせる法制度を整備すべきである。
 労働者の「危険業務拒否権」を明記すべきである。
 「職場における自由な人間関係形成の自由」を尊重し侵害しない義務を法律化すべきである。
 平等取扱請求権(義務)を明記すべきである。
 労使交渉のあらゆる局面・段階に共通する権利・義務として情報開示請求権(義務)を法律として明記すべきである。
 労働契約法制において、人事権濫用を防止する具体的方法の一つとして人事考課資料開示請求権(義務)を法定すべきである。(労働組合1件)
 ・ 労使ともに安全配慮及び個人情報保護が重要である。双方に義務を負わせる形での法制化を求める。(労働組合1件)


○ 労働者の損害賠償責任
 ・ 労働者の損害賠償責任については、中間報告の指摘する最高裁判例が一般的基準とはなりえないこと、今後ますます労働者の働き方が多様化する中で、損害賠償責任の範囲を法制により一律に制限することは現実的ではないこと、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当」との基準を法律に明記しても結局は個別の事案ごとの判断となり規準となりえないことから、労働者の損害賠償責任の範囲を制限する立法化はすべきではない。
 労働契約締結時に一定期間の就業を条件に労働者に支給されるいわゆるサイニング・ボーナスについて、労働基準法第16条及び第5条に照らし無効とする下級審裁判例があるが、グローバル化、競争化した経済社会において魅力ある人材をひきつけるために有効な措置を一律無効とするのは疑問である。契約自由の原則に照らし、新法制においてこれを認める方向で検討されたい。(使用者団体1件)

 ・ 労働者の損害賠償責任に関する問題については、個別労働紛争において多くの部分を占めており、労働契約法制において何ら立法化しないことは許容されるものではない。(個人1件)
 ・ 労働者の損害賠償責任が、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる程度に制限されている判例法理について、立法で明記し、かつ就業規則に準則を規定すべきである。(弁護士団体1件)


○ 留学・研修費用の返還
 ・ 使用者の命じる留学・研修はおよそ業務との関連性を有し、使用者も留学等の成果を享受しうること、留学等後の労働者の退職は使用者が留学等を命じる段階で当然考慮すべき事項であることから、留学等の費用は原則使用者負担とすることを法律上明記すべきである。業務と区別された留学等については、その免除期間、金額(期間に応じた逓減等)を法定すべきである。免除期間は3年とすべきである。(弁護士団体1件)
 ・ お礼奉公を容認する記載のみをすることに強い違和感がある。(個人1件)


○ 解雇
 ・ 解雇権濫用法理について、予測可能性を高める観点から、「合理的な理由があること」と「解雇に社会的相当性があること」をより具体的に指針等により明確化すべきであり、要件を満たさない解雇または論外な理由に基づく解雇のみが無効とみなされるよう整理することを推奨する。
 差別的解雇、例えば、人種、民族、性別、性的指向、宗教などに基づく解雇やセクシャル・ハラスメントの被害者や内部告発者の解雇を禁止すべきとする国際的な一般認識を支持する。厚生労働省が禁止されるべき解雇の要件を明確に定義する一方で、それ以外の使用者の経営上の必要性に基づく解雇を制限しないことを明確にすべきであると考える。
 解雇権濫用法理を具体化したガイドラインを作成するに当たり、推奨されるべき手続についても言及すべきであると考える。しかし、整理解雇の場合でない限り、労使委員会や労働組合との集団的な協議や意見聴取手続は、プライバシーの観点から問題があり、なじまない。指針において定める手続としては、せいぜい、解雇予告期間に関する規制や解雇対象となる個人への解雇理由の告知、事前の警告、説明等に尽きるべきである。
 法律関係の早期安定の必要性から、解雇の効力を争う場合に出訴期間の定めを設けることに賛成する。但し、使用者が誠意をもって円満に紛争を解決しようと労使間での話し合いの機会をもっているような場合にまで、すぐに訴訟提起を行う動機付けとならないよう、使用者と何らかの形で話し合いがもたれている期間は時効中断の効果を認めるべきである。(使用者団体1件)

 ・ 労働関係の終了の項で提起されている内容は、整理解雇の有効要件として判例法理で確立してきた実体要件を明文化することをはじめ、おおむね賛成である。(個人(学者)1件)
 ・ 解雇事由や整理解雇の四要件を明確化しようとの姿勢は評価できるが、解雇手続規制についてはいくぶん消極的姿勢をとり不十分な提言にとどまっている。(個人(学者)1件)
 ・ 解雇権濫用法理について、合理性と社会的相当性の要件という二段構えの構造であるとの理解には、賛意を表したい。労働組合や労使委員会などの事前手続が解雇権濫用の判断に考慮されるとの指摘は、もともと権利濫用法理が権利行使に関する四囲のすべての事情を考慮するという考え方であるから、法律で考慮すべき点を特に指定するのは、適切ではない。
 労働者に出訴期限を課するのであるならば、逆の側面も考慮しなければバランスを失する。すなわち、労働者の一定の行為を理由に解雇または懲戒をする場合、使用者がその事実を知ったときから処分をするまでの期限を設けることも、「法律関係の早期安定」のために必要である。(個人(学者)1件)
 ・ 解雇に当たり使用者が講ずべき措置については、指針よりもむしろ労働基準法に入れる努力をすべきである。(個人1件)
 ・ 労働者が解雇の効力を争う場合に出訴期間を制限することには反対する。(労働組合1件)
 ・ 労働組合や労使委員への事前協議などをした場合には解雇権濫用の判断の際に考慮されるという手続的規定を設けるならば、形式的に協議を踏むことにより、解雇権が濫用される恐れが強いといえる。したがって、このような手続的規定を設けることには反対である。
 労働基準法に定める手続きを踏まなければ解雇の効力が否定されるという規定を設けることには賛成である。さらに、解雇時に示した以外の理由を後から付加して主張することができないという規定を設けるべきである。
 一般の労働者は、法的知識も乏しく解雇の効力について判断ができないこと、法律専門家に相談することすらためらう労働者も多くいること、会社と争うことは決意のいること、会社の示した解雇理由の真偽が長期間経過した後に判明することもあることなどから、出訴期間の制限は労働者の裁判を受ける権利を実質的に奪うといえる。したがって、出訴期間を制限することには反対である。
 解雇権濫用の規定について、立証責任が使用者にあることが明らかな規定の仕方をすべきである。(弁護士団体1件)
 ・ 整理解雇四要件など解雇権濫用法理を労働基準法などで法制化し、原則的に本人の雇用契約の終了の申し出がない限り解雇はされないことを明確にすべきである。(労働組合1件)
 ・ 講ずべき措置に関する指針等を示すことに異論がないが、現存する労働基準法第19条の概念を下回らないこととすべきである。(労働組合1件)
 ・ 解雇権濫用法理の明確化に関して、ユニオン・ショップ協定(ユシ協定)に言及されているが、ユシ協定は使用者と労使協調組合幹部とにより、労働条件の維持・向上を目指す労働者に対する逆締付けの道具として悪用されてきた。
 最高裁判例は、ユシ協定は、協定締結組合とは別の組合の組合員、締結組合からの脱退者・被除名者であっても、別組合に加入したり、新組合を結成した者には、効力が及ばないとしているのであり、この周知・明文化こそが求められている。(労働組合1件)
 ・ 労働基準法の第18条の2の位置付けを労働基準法から労働契約法に移すことは反対である。解雇問題は労働者にとって、根本問題であり、「整理解雇四要件」など「解雇権濫用の法理」を法制化し、労働基準法などで罰則をもってきちんと規制するべきである。(労働組合1件)


○ 整理解雇
 ・ 労使双方の予測可能性の向上を図るため、整理解雇のための要件を法定しまたは指針で明らかにすることを支持する。その際、基本的には四要素説に立脚することが適当である。例えば、ある企業において、特定の事業部門では黒字を計上しているが他の事業部門では赤字となっている場合、伝統的な四要件説によれば、人員削減の必要性の基準を満たさないとして整理解雇が無効と判断されるが、特に外資系企業の場合、株主への説明責任があり、長期にわたり大きな赤字を計上できないことから、伝統的な四要件説の挙げる全要件を満足させることは困難である。
 明確で合理的な、しかし硬直的ではない指針を求める。例えば、解雇回避努力が行われるべき期間はどれくらいか。また、経営上の必要性は倒産寸前の逼迫した状態である必要はなく、合理的な経営者の判断の幅を認めるべきである。客観的に合理的な選定基準の具体例を示すことも有益である。(使用者団体1件)

 ・ 整理解雇四要件を盛り込んだ実効ある解雇制限のための法制定を求める。(労働組合83件、個人7件)
 ・ 整理解雇四要件など解雇の制限を法律そのものの中で明文化することを検討するべきである。(労働組合1件)
 ・ 整理解雇については、整理解雇四要件を法律で明文化することを求める。(個人1件)
 ・ いわゆる整理解雇四要件について、法律で四要素と定めれば、あいまいなあてはめにより安易に濫用でないとの判断がなされるおそれがある。四要件であることを明示して立法化すべきである。
 整理解雇について説明を尽くすことを整理解雇の要件または要素として立法化すべきとする点には賛同できる。ただし、説明の際には具体的な資料を提示しなければないことを明文化すべきである。(弁護士団体1件)
 ・ 整理解雇四要件を盛り込んだ実効ある解雇制限のための法律の制定を求める。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制を労働者保護法制と位置づけるべきであり、そうすれば当然に四要件説を採り、かつ、それを厳格に適用する方向での法制を追求することになる。(労働組合1件)


○ 解雇の金銭解決制度
 ・ 2003年の労働基準法改正の際は建議には解雇の金銭解決制度が盛り込まれていたが、法案要綱には入れられなかった。この理由の説明が十分になされないまま、「中間取りまとめ」に再度金銭解決制度の項目が入っていることには、納得できない。
 法律扶助制度が不十分なので弁護士費用の負担も大きく、解雇された労働者が裁判を起こすことは難しい中で、裁判を起こし、解雇無効の判決を勝ち取った労働者に対し、会社が一定の金銭を支払えば職場復帰できなくなる制度は労働者にとって非常に酷であり、金銭解決制度の導入には反対である。
 労働者からの申出については、現在でも裁判上の和解では金銭解決が可能であるし、労働審判制度では金銭解決を求めることも可能なので、労働者側にニーズがあるとの指摘は妥当ではない。
 使用者からの申出については、(1)金さえ払えば解雇できるとの風潮が広まる、(2)中間取りまとめで提案するような仕組みとしてもこのような複雑な基準は一般的には理解できない、(3)要件をどれだけ厳しくしても職場復帰を望む労働者が職場に復帰できなくなるケースが発生することはやはり納得できないことから、断じて認められない。(労働組合1件)
 ・ 解雇の金銭解決制度は早急に導入すべきである。ただし、解雇か金銭解決かは労働者個人の選択する問題であり、使用者の申立てに「事前の集団的な労使合意」を要件とすることには反対する。また、「雇用関係を継続しがたい場合」に要件を限ることにも反対する。さらに、紛争の早期一回的解決の観点から、解雇手続の中で、金銭解決の申立も可能とすべきである。
 また、有期労働契約の雇止めについても金銭解決制度を導入すべきである。(使用者団体1件)

 ・ 解雇紛争の救済手段の選択肢を広げるため、解雇の金銭解決制度を導入することを支持する。濫用防止のためには、例えば、思想信条、性別、社会的地位などによる差別等公序良俗に反する解雇については使用者による申し立てを認めない、解決金額の算定基準をはじめとする手続について労使合意に基づくこととするなどにより防ぐことができる。(使用者団体1件)

 ・ 解雇無効の場合の金銭解決制度にふれている点は評価できるが、労働者のみならず使用者からの解消を予めの労使の集団的合意を前提に認めるなど一定の問題点も存している。(個人(学者)1件)
 ・ 解雇の金銭解決制度の導入には、反対である。とりわけ使用者からの申立てを認めることには、解雇権濫用法理の規範としての希薄化を招きかねないこと、現在のようなタイトな労働市場では被解雇者である労働者にあまりにも大きな経済的、精神的負担を強いる結果になること、労働者の職場復帰が困難となる事情が使用者の訴訟遅延に起因していることもありえ、こうした場合にも金銭的解決を認めると禁反言の原則に反する結果になること、等の理由から賛成しかねる。報告は、「公序良俗に反する解雇」は除外されるとするが、実際にはそうした事案であっても、多くは他の理由を持ち出して争われるために、除外規定は有効に機能しないであろう。また、使用者申立ての前提として労使合意を要件とすることも一案としているが、「労」の範囲や合意手続をどうするか等が不明確すぎる。(個人(学者)1件)
 ・ 「解雇の金銭解決制度」の提案は、それが労働者からの申入れである場合、これまでの解雇無効即復職という唯一認められた方法を補完する救済手段として検討に値する制度である。ただし、使用者からの申入れの場合においては、とりわけ整理解雇において弊害のでる虞が強く、否定されるべきである。(個人(学者)1件)
 ・ 解雇が無効である場合の解決金の基準を、個別企業の労使間で集団的に決定させるという構想は、どうしても納得しがたい。例えば三ヵ月分の給与額の和解金さえ支払い困難な中小企業が多いことは知っているつもりであるが、だからといって解決金の基準を労使にゆだねるというのは、そもそも立法としての客観的基準の定立という期待を裏切る。実際にも、そのようなことを労使にゆだねても、理解はえられないであろう。(個人(学者)1件)
 ・ 議論の前提となる解雇の金銭解決制度の性格が不明確と思われる。労使間で金額の折り合いがついた時点で解雇というよりは合意解約になるのではないか。(個人(学者)1件)
 ・ 「解雇の金銭解決制度」は、あたかも雇用責任の確認を前提とした制度であるかのごとく述べているが、実際の機能は、雇用責任を不明確にするばかりか、雇用責任の確認を免脱させるものであり、集団的紛争においても、援用される可能性がある。(個人(学者)1件)
 ・ 日本のように解雇の金銭的な解決制度が存しなかった国でこうした制度を導入した場合には解雇を誘発する可能性は依然として高いと考えられるし、金銭でもって職場を去らなければならない可能性が生まれることで、労働者の交渉力を低下させ、意思決定を対等に行なう環境に大きな影響を及ぼす恐れがある。(個人(学者)1件)
 ・ 裁判所を使って労働者の職場復帰を求める権利を奪うことは、違法な解雇をさらに助長することになる。解雇の金銭解決制度を作ることには反対である。(労働組合57件、個人264件)
 ・ 平成15年労働基準法改正の際に撤回した経緯から、当然、労働契約法制の検討の対象からは除外すべきである。
 解雇の金銭解決制度を導入すれば、解雇権濫用法理は空洞化され、今でも横行する使用者による不当な解雇がさらに多発する。
 解雇の金銭解決制度は憲法第27条に違反するものである。(労働組合83件、個人7件)
 ・ 解雇の金銭解決制度を導入することに対して強く反対する。(労働組合16件、弁護士団体5件、個人41件)
 ・ 解雇の金銭解決制度に反対する。金さえ出せば無効な解雇も不当な解雇も事実上認められるというのはナンセンスである。(労働組合1件、個人1件)
 ・ 解雇の金銭解決方式には反対である。(弁護士団体8件)
 ・ 金さえ出せば無効な解雇も不当な解雇も可能となる制度を導入することを提案していることは良識を疑わせる。(個人1件)
 ・ あらかじめ労使委員会が定めた額を支払えば、自由に解雇ができる金銭賠償方式には反対する。(個人1件)
 ・ 金さえ払えば解雇も自由という、とんでもない制度の検討をやめてもらうようお願いする。(個人1件)
 ・ ドイツにおいて実務上ほとんど例がない制度をモデルとすることは比較法的に根拠を欠く。また、制度の本質が解雇を金で買うものであることは明白であり、労働基準法第18条の2の法意と明らかに矛盾する。(個人1件)
 ・ 解雇が違法であるにもかかわらず非がない者が辞めることとなれば、他の労働者に対して悪影響がある。
 また、労働者としては仕事を失う不利益が大きいため、最低でも3年分以上の年収を支払うことなどが必要である。(個人1件)
 ・ 解雇について法的に争う権利を奪うことになるため反対である。(労働組合1件)
 ・ 解雇権濫用法理を空洞化し、不当解雇がさらに多発することになるため、導入は認められない。(労働組合1件)
 ・ 裁判所が解雇の不法性を認めたにもかかわらず、労働者の働く権利を奪うことは憲法第27条に違反する。研究会の検討課題とすることすらナンセンスであり、絶対に反対する。
 解雇が無効であっても、労働者の原職に復帰できる状況にない場合などというものが本当に存在するのだろうか。(労働組合1件)
 ・ 解雇が無効であっても労働契約の継続を認めず、すべて金で解決するというのは労働者にとって暴論である。(個人1件)
 ・ まずは、職場に復帰する権利又は就労する権利を明らかにするべきである。また、少なくとも使用者側からの請求は認めるべきではない。(労働組合1件)
 ・ 解雇の金銭解決制度の導入には断固反対である。企業のモラル・ハザードを助長するだけである。(個人1件)
 ・ 無効な解雇に対する救済措置は原職復帰が原則とされなければならない。特に使用者からの解雇の金銭解決制度は理不尽な解雇を横行させることになる。さらに、労使自治の名の下に、著しく低額な解決金を定められることになり、ますます解雇のやり得となる危険もある。使用者からの申出を一定の場合に限るとしても、結局、その一定の場合の要件の立証(反証も含む。)が労働者にとって困難であることから、紛争の長期化と労働者保護の後退を招くことになる。(個人1件)
 ・ 解雇の金銭解決制度を導入すれば労使の信頼関係が希薄になるため、企業の風通しは悪くなる。労働者を徒に刺激するようなシステムは不要である。(個人1件)
 ・ 使用者による金銭解決の申し立てを認めるならば、解雇権の濫用として無効とされるべき解雇が、事後的に追完されるようになることは明らかである。使用者からの金銭解決申し立てを認めるような労働契約法制の制定には絶対に反対である。(弁護士団体1件)
 ・ 解雇の金銭解決制度を導入することには絶対反対する。また、労働基準法第18条の2が死文化する。(個人1件)
 ・ 平成15年に法案化を見送った制度を再度提案することは世論に反する。使用者からの申し立てによる労働契約の解消は、労働者の自律的な決定や労使自治の促進といった建前にも反する。このため、解雇の金銭解決制度の導入には反対である。(個人1件)
 ・ 基本的に反対である。あえて導入するのであれば、報告書中に挙げられている要件が真に担保されていることを要する。(個人1件)
 ・ 解雇の金銭解決制度は、解雇権濫用法理を無力にし、脱法行為の温床となる極めて危険な制度であるため、その導入は許されない。(個人1件)
 ・ 労働者側からの解雇の金銭解決制度については十分検討に値すると考える。しかし、使用者側からの解雇の金銭解決については断固として反対である。むしろ、就労請求権を導入すべきである。(労働組合1件)
 ・ 労使間における公正なルールの確立を促すのであれば、解雇が違法とされた場合の労働者の復帰プロセスこそ検討されるべきである。金銭解決の使用者申し立てを認めることは、使用者に解雇のやり放題を許し、他方で、労働者の働く権利を低額の解決金で奪い去るものにほかならない。これに断固として反対する。(弁護士団体1件)
 ・ 違法・不当な解雇に対する賠償制度として、解雇無効訴訟と併存し、その選択権は労働者のみが持つものとして法制化するべきである。解決金の額の基準を予め労使委員会で決議することには反対である。
 使用者側からの解雇の金銭解決は、「中間取りまとめ」に記載されている限定をしたとしても、雇用保障を空洞化させるものであり、強く反対する。(個人1件)
 ・ 解雇の金銭補償解決制度には反対するほかない。解雇と天秤にかけさせたいのであれば、解決金の額を退職金+生涯賃金+違法解雇の慰謝料相当額を上回る金額にするべきである。(個人1件)
 ・ 労働者の職場復帰が困難な特別な事情は、使用者が裁判などで証拠調べのときにいくらでも作り出すことが可能である。このように、金銭解決の条件を使用者が整えれば、安易に金銭解決の道をつくり出すことが可能である。解雇の金銭解決制度は絶対に容認できない。(労働組合1件)
 ・ 使用者の雇用の対する責任感が薄れ、解雇するか否かをコストだけで考える風潮が生まれる。このような制度は違法な解雇を助長する結果となる。
 このような金銭により労働者の従業員たる地位を奪えるという本質・実態をもつものである。
 労働者が使用者と対等に交渉することができない現状を踏まえれば、予め労使の合意した内容に沿った申し出がなされても濫用の弊害を防ぐことはできない。
 使用者からの金銭解決の申し出の制度が導入されれば、解雇権濫用法理は著しく規範性を弱められることになる。かかる制度の導入に強く反対する。(弁護士団体1件)
 ・ 公序良俗に反しないことを条件としても、違法解雇の歯止めになるとは思われない。
 このような制度が導入されれば、労働組合が団体交渉で原職復帰を勝ち取ることが困難になり、労働組合の力が減殺される。
 これまでの検討の経緯に照らしても、再度労働契約法制の検討課題とするべきではない。
 以上のとおり、労働者の人権侵害を助長する解雇の金銭解決制度に強く反対する。(弁護士団体1件)
 ・ この制度は憲法第27条に違反する。(労働組合1件)
 ・ このような制度は気に入らない労働者をいつでもクビにしたいと考えている悪質な使用者のためのものでしかない。このような規定を設けた法律がないことにより不利益を被る、あるいは対応に苦慮するという事態は皆無である。また、このような制度が設けられることにより、解雇権が濫用されることは想像に難くない。さらに、雇用を守りたい労働者全般からすれば極めて不利な状況に追い込まれることは確実である。この項目はすべて削除すべきである。(労働組合1件)
 ・ このような制度が導入されれば、解雇権濫用法理を立法化した労働基準法第18条の2の規範性は著しく弱まることとなる。仮に、限定をしたとしても、使用者申立による金銭解決制度は、雇用保障を空洞化させるものであり、反対である。(労働組合1件)
 ・ 解雇の金銭解決制度は、使用者に解雇の自由を事実上与えるものであって、弱い立場にある労働者をさらに弱い立場に追い込むものであるため、絶対認められない。(労働組合1件)
 ・ 労働者が解雇を違法と考えた場合に、争う方法は解雇無効を求める裁判しかあり得ないわけではない。当該解雇を不法行為として損害賠償を請求する裁判を提起する方法もあり得るし、実際にも行なわれている。提言された制度は、職場に複数の労働組合がある場合、少数組合に所属する労働者の申立を阻む機能を持ちかねないものであり、労働者の訴訟権への無用かつ有害な介入とならざるをえないものである。この制度は使用者を解雇紛争から救済する方策でしかない。
 この制度が導入されたとすれば、不当な解雇をさらに誘発する可能性が高く、ひいては解雇権濫用法理が空洞化される危険性がある。解雇が違法無効である場合に、労働者本人の意思に反して労働契約関係の終了を認めるような、いかなる制度も認めるべきではない。(団体1件)
 ・ 希望退職を募る場合はこの制度の活用となると思うが、解雇を金銭解決出来る制度の導入には反対である。(労働組合1件)
 ・ これまでの経緯に照らし、再度労働契約法制の検討課題とすることは到底許容できない。
 このような制度が導入されれば、解雇権濫用法理は空洞化され、不当な解雇がさらに多発することは疑いない。このような制度が憲法27条に違反する疑いが強く、直ちに撤回されるべきである。(弁護士団体1件)
 ・ 解雇の金銭解決制度は憲法第27条に違反するものであり、これが導入されれば解雇権濫用法理が力を失い、不当な解雇やいじめによるリストラが更に多発する。労働者本人からの雇用契約終了の申し出がない限り、労働契約が継続されるべきである。(労働組合1件)
 ・ 裁判所によって解雇権濫用と判断された違法な解雇を、使用者申出により金銭解決できる制度を導入することには強い抵抗があり、基本的には反対である。
 どうしても導入しようという場合には、使用者に、それなりの代償を支払わせるべきである。再就職の世話等も不可欠であるが、それに加えて、結局は解決金の金額ということになろう。金額については、(1)判決確定日までの過去分賃金、(2)判決確定日以降定年退職日までの将来賃金、(3)定年退職日に定年退職したものとしての退職金、(4)年金額減少が生じる場合はその補填、(5)特別事情がある場合の加算金(いじめ等のひどい仕打ちをした場合の懲罰的慰謝料等)を一括して支払わせるべきである。(労働組合1件)
 ・ 金銭解決制度の導入は、労働者の労働契約上の権利を金銭の力によって奪い取り、かつ、労働者の訴権を剥奪するものにほかならず、わが国の司法制度の根幹を揺るがし、ひいては、法の支配を否定するものといわなければならない。
 「解雇の有効・無効の判断を金銭解決の判断を同一の裁判所」でおこなわせることは、すでに解雇無効の心証を固め、原職復帰の道を開くことを決断した裁判所(官)にたいし、金銭提供によって原職復帰の道を切断する判断を迫るものにほかならない。前者の判断が正しいと信じるなら、後者の判断はありえないし、後者の判断をすれば、みずから正しいと信じた前者の判断を裏切らざるをえない。その意味でこの制度は、裁判官の良心を引き裂き、二重人格者となることを強制するものというべきである。
 解雇無効の判決が確定しているにもかかわらず、原職復帰を認めず、労働者との間に紛争を生じさせる無法な使用者が少なくないことは事実である。このような問題が発生するのは、わが国ではヨーロッパ諸国と異なり、就労請求権を否定する判例が存在するからである。労働者の就労請求権を法律によって容認すれば、解雇無効の判決が確定しているのに原職復帰を否認するような無法な使用者は一掃され、問題は抜本的に解決する。また、解雇された労働者の多くは、無法な解雇をおこなった使用者に愛想をつかし、職場復帰を希望せず、裁判上の和解、労働協約・和解契約の締結などによって解決をみている。それにもかかわらず、つよく原職復帰を希望する比較的少数の労働者にたいしてまで、原職復帰の道を閉ざそうとする金銭的解決制度は、悪法以外のなにものでもない。(弁護士団体1件)
 ・ 使用者からの申立に基づいて労働者の意思に反しても労働契約の解消を認めるというのは、労働者の自律的な決定、労使自治の促進という労働契約法の建前にも反することになると考える。このような制度が導入されれば、使用者は、気に入らない労働者を一方的に解雇し、たとえ解雇が無効と判断されても予定した金を積んで労働契約の解消を申し立てることができる。使用者に対してものを言う労働者は職場から放逐され、ものを言えない労働者だけが残ることになり、労働条件の悪化はますます加速することになる。違法・不当な解雇が目的とする、労働者の職場からの排除を可能とするような「金銭補償解決制度」の導入には絶対反対である。(個人1件)
 ・ 使用者側の不当な解雇をめぐる事件が後を絶たない中で、このような不合理な制度の導入は労働者の地位を著しく不安定にすることから絶対反対である。また、「労使間で集団的に解決金の額の基準の合意があらかじめされている」などは、本来的には解雇の規制を目的に定められるべきもので、将来の解雇を予測して解決金の額まで決めておくという論理はおかしいのではないか。これでは、「偽装倒産」であっても「解決金の額の基準の合意」さえあれば正当化されてしまい、労働者側にとっては著しく不合理な制度になるおそれがある。(労働組合1件)
 ・ 解雇問題の金銭的解決は、使用者に事実上解雇の自由を与えるようなものであり、絶対反対である。(労働組合1件)
 ・ 解雇紛争の解決の手段として金銭解決をあげているが、解雇紛争の多くは使用者による安易な解雇の濫用によるものが多く、労働者の多くは労働契約の継続を望む場合が多いと考える。また研究会の中においても賛否両論があり結論を出せる状態にないと思われるが、このような状況で、無理に報告書を提出すれば、十分な検討もされないまま、金銭解決のみが独り歩きを始めることが危惧される。(労働組合1件)
 ・ 解雇の金銭解決はお金を払えば解雇出来る事につながり、労働基準法の18条の2がないがしろになることから反対である。(労働組合1件)


○ 合意解約、辞職
 ・ 「中間取りまとめ」にある合意解約・辞職のクーリングオフは、民法理論・現行の判例の立場に反するものであり、反対する。合意解約や辞職は、長期にわたって契約関係のあった者からの契約の打ち切りであり、売り手の巧みな口車に乗せられ契約をしたばかりの軽率な消費者を保護するクーリングオフ制度とは適用場面が異なる。
 辞職の効力発生時期に関しては、民法第627条第1項により、2週間経過日に雇用契約が終了することとされているが、同法は一般に強行規定と解されるため、引継ぎ・後任の手当などの準備のため、就業規則などで2週間より前に定めることはできず不都合である。したがって、少なくとも1か月以上の期間が可能とすべきである。(使用者団体1件)

 ・ 使用者の働きかけに応じた合意解約申し入れや辞職を一定期間撤回できるようにすることについては、最初の働きかけが使用者の側にあったとしても、自由な意思に基づく退職の申出を撤回できるようにする必要性については疑問である。
 期間の定めのない雇用契約においては、個別の契約、就業規則又は労働協約の定めにより、1ヶ月程度の不当に長くない期間を合意すれば一般法である民法の規定に優越することを認めるべきである。2週間前の解約通知では、引継ぎや残務処理の関係で不十分であり、実務に支障をきたす。また、懲戒相当事由がある可能性を調査中に一方的解約通知でもって雇用を解消できることにも疑問を呈したい。(使用者団体1件)

 ・ 準解雇につきクーリングオフを認める点は評価できるが、意思表示の取消しを認める方向が検討されていないことは問題であろう。(個人(学者)1件)
 ・ 退職勧奨が程度を超えれば違法となり、損害賠償責任が発生することを指針等で明示するべきである。また、そのようなことが生じないよう、行政が指導・監督できるようにするべきである。
 合意解約又は辞職の申出を撤回することのできる期間としては、最低でも2週間は必要である。(個人1件)
 ・ 退職の意思表示を撤回できる期間は1か月程度の長さにするべきである。(労働組合1件)
 ・ 使用者の働きかけによる労働者の退職を一定期間撤回できる制度は是非導入するべきである。(個人1件)
 ・ 執拗な退職勧奨は違法とする判例法理を盛り込むべきである。(個人1件)
 ・ 一定期間ではなく、原則撤回出来ることとすべきである。(労働組合1件)
 ・ 使用者の働きかけによる合意解約、辞職の撤回が認められる期間として8日間では短すぎ、少なくとも3週間程度とすべきである。(労働組合1件)
 ・ 中間とりまとめでは、使用者の働きかけによって労働者が退職届をした場合に、一定の期間内であればこれを撤回できる制度を設けることを提言しているが、これは是非とも導入すべきである。(個人1件)


○ 有期労働契約
 ・ 試用を目的とする有期労働契約が法制化されれば、企業が適性が見極めにくい若年労働者に対して一斉に利用することが容易に予想できる。有期労働契約自体にも規制が必要だが、試用を目的とする有期労働契約の新設は、絶対に許されない。(労働組合1件)
 ・ 民法第628条に基づき労働者が使用者に損害賠償を請求する際に、使用者の過失についての立証責任を転換することは、労働者を過度に優遇し使用者に過失の不存在という証明困難な過度な負担を課すものであり、労使対等を基本とする労働契約法になじまないので反対である。(使用者団体1件)

 ・ 有期労働契約の雇止めの効果及び手続について法定または指針により明確化すべきである。解雇権濫用法理の類推適用を認めた裁判例の存在により、雇止めが制限される場合の予測可能性が非常に低く、将来的な雇止めが無効と判断されるリスクを避けるため、更新回数に上限を設けるなどの措置を取らざるをえず、労働者にとっては雇用機会が狭まり、使用者にとっても人材の有効活用を阻んでいる。「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」を履行したことを雇止めの有効性の判断の考慮要素とするほか、裁判所が考慮する基準として、明確で合理的なルールを確立することを推奨する。
 試行雇用契約については、裁判所によって、雇い止めの有効性を判断する際に、この契約類型を選択したことが有期雇用社員の正社員への登用の期待を高めたと評価されないような法的手当を行うなど、明確な制度の構築が必要になる。
 契約期間中の解雇については、いかなる場合の解雇が民法第628条の「やむを得ない事由」によるものか具体例を示すなどして明確化し、予測可能性を高めるべきである。(使用者団体1件)
 ・ 雇止めに関する基準について、現実の契約の実態は千差万別であり、現状以上の法規制が加わることは、有期契約労働者の雇用をかえって制限することにつながるおそれがある。法制化に当たっては過度な規制は避けるべきと考える。(個人1件)

 ・ 有期労働契約の規制の見直しのなかで、実態調査を行なって検討することが提案されているが、この点だけなぜ実態調査を必要としているのか、唐突の感がある。実態がよくわからないというのなら、解雇の金銭的解決の方策についても、それがどのように機能するか、あるいはドイツでどのように機能しているかについての調査が十分ではない。規制の検討の見送りの理由としては、説得的ではない。(個人(学者)1件)
 ・ 有期労働契約は、労使間の力関係を使用者有利にすることにより、自律的な働き方を破壊する制度である。
 有期労働契約の反復更新及び雇止めに関する制限、恒常的に存在する仕事に対する有期労働契約の導入を禁止し、期間の定めのない労働契約とするなどの規定を検討するべきである。(労働組合83件、個人7件)
 ・ 労働契約法においては、有期契約労働者の権利の保障を基本に置いた上で、有期労働契約に対して原則として制限を加えるべきである。(労働組合1件、個人1件)
 ・ 試用を目的とする有期労働契約(試行雇用契約)を導入することに対して強く反対する。(労働組合15件、弁護士団体5件、個人40件)
 ・ 民法第628条に基づき労働者が使用者に損害賠償を請求する際に、使用者の過失についての立証責任を転換することは大いに検討するべきである。(個人1件)
 ・ 有期契約労働者は、更新拒否を脅しにされることにより、労働者として当たり前の権利が行使できない状況にある。有期労働契約を規制する法整備が求められている。(個人1件)
 ・ 労働契約法制においては、有期契約労働者の権利の保障をどうするのかと、有期労働契約に対する制限と限定をどうするかを基本とするべきである。
 労働基準法第14条は退職の制限に関する規定であることを明確にすることは、有期労働契約の問題点を拡大する。また、雇止めの基準を明確化することは、判例法理をなくすことにつながり、有期労働契約は更新されないことが原則になる。
 試行雇用契約については、研究会が問題の多い有期労働契約の拡大を提唱することはいただけない。(個人1件)
 ・ 労働者が契約期間中に退職しようとすると、損害賠償される制度への変更、契約書に一筆書いておけば更新拒否ができる制度の導入、試用期間として有期労働契約が使える制度の導入については反対する。(個人1件)
 ・ 有期労働契約が、実態として、期間の定めのない契約と実質的に異ならない場合には、期間の定めのない契約とする規定を置くべきである。
 更新回数に制限を設けるなど、解雇規制を逃れるための有期労働契約は認めないようにするべきである。(個人1件)
 ・ 合理的な理由のない有期労働契約は無効とするべきである。(個人1件)
 ・ 労働基準法第14条の趣旨である退職制限の弊害排除を明確にすることは当然である。さらに、雇止め制限や均等待遇の規定を設けるべきである。
 試行雇用契約は、若年者の雇用の不安定化に拍車をかけるため、認められない。(労働組合1件)
 ・ 有期契約労働者の権利保護の抜本的強化を検討するべきである。有期労働契約の更新は原則として禁止し、引き続き雇用する場合は常用雇用とすることを義務づけるとともに、有期契約労働者の雇止めをした後、別の労働者を有期労働契約で雇用することを禁止するべきである。
 常用雇用労働者と有期契約労働者の同一労働同一賃金の原則を法的に明確にするべきである。
 試行雇用契約の法律上の位置づけを明確にすることは、新規学卒者の雇用を不安定にすることから、原則として禁止すべきであると考える。(労働組合1件)
 ・ 有期労働契約は例外的なものとするべきである。有期契約労働者の権利を抜本的に改善していくための検討が行われるべきである。(個人1件)
 ・ 有期労働契約の濫用を規制することが重要である。その際、有期労働契約が認められる場合を明確に定めるべきである。(労働組合1件)
 ・ 有期労働契約により試用の役割を担わせるせることは、試用における判例法理の脱法行為に等しいものであって、そのような制度を導入する必要性も相当性も存在しない。(個人1件)
 ・ 有期労働契約を更新するならば、期間の定めのない労働契約とするべきである。(個人1件)
 ・ 非正規雇用に関しては、使用者と労働者が個別に労働条件を決定することを厳しく取り締まるべきである。労働者は、契約更新時に法的に保障されている当然の権利行使をマイナス評価とされることや、労働条件を著しく低下させられることも容認しなければ雇用を確保できないような状況にある。
 均等待遇なくして雇用の多様化はあり得ない。
 労働者が正当な権利を行使したことによる雇止めができないことの明確化には賛成である。
 有期雇用契約は一時的・臨時的業務に限定すべきである。
 試用を目的とした有期労働契約の新設は絶対に許すべきではない。(労働組合1件)
 ・ 試用目的の有期労働契約を法律上位置づける意味は、試用目的の有期労働契約につき試用期間を定めたものと認定した神戸弘陵学園事件の判例法理の適用を受けないようにすることにある。試用目的の有期労働契約など必要ない。(個人1件)
 ・ 有期労働契約の締結は、労使間の公正・対等が図られる例外的ケースや、限られた一時的・臨時的な場合に制限されるべきである。(労働組合1件)
 ・ 有期労働契約について労働契約法制で求められることは、雇用の安定と正規雇用労働者との均等待遇を図ることである。
 さらに、EU諸国と同様に、そもそも有期労働契約は特別の場合に限り認められるものであり、雇用の原則的形態は期間の定めのないものとすることこそ必要である。
 私たちは、雇い止めを今以上にやりやすくしたり、試用を有期労働契約にすりかえ、新規採用者の地位を著しく不安定にする試行雇用契約制度を導入したりすることに断固反対する。(弁護士団体1件)
 ・ 有期契約労働者に対して、本来の権利を行使し得る条件を整備することこそ喫緊の課題である。
 雇止めの基準を守ったことを雇止めの効力の判断要素とすることは、判例法理を崩壊させるおそれがあり、有期契約労働者の地位を一層不安定にする。
 有期労働契約の締結規制を検討すべきである。
 試用期間の上限規制と、試行雇用契約が併せて法制化されれば、本来の試用期間制度を採用する使用者はいなくなってしまうだろう。(個人1件)
 ・ 試行雇用契約は、新入社員の身分を不安定にするものであり、賛成できない。(個人1件)
 ・ 事前に更新なしと明示していた場合には、雇止めを有効とすることについては、使用者が労働者の使い捨てをはばからなくなること、雇止めをめぐる判例法理に基づく労働組合による救済ができなくなることから、労働者を過酷な状況に追いやるものであり、絶対に反対である。(弁護士団体1件)
 ・ 恒常的に存在する仕事への有期労働契約の導入を禁止すること、均等待遇を図ること、期間の定めのない雇用とすることなどが必要である。正確な実態調査をすべきである。(労働組合1件)
 ・ 労働者を雇う場合は、期限の定めのない契約とすることを基本とすべきである。有期労働契約の範囲をできる限り狭め、合理的理由が認められない場合は明確に禁止すること、その理由についても厳格にし、使用者の裁量の範囲を狭めることが必要である。
 早急に実態を調査し、労働者のための真摯な議論を展開し、現実に基づいた対応策を期待する。(労働組合1件)
 ・ 有期労働契約であるが故に、権利を奪われ、あるいは権利主張をなしえない労働者が本来の権利が行使しうる条件を整備することこそ緊急の課題である。「中間取りまとめ」は、是正の方向を目指すのではなく、逆に、現状を追認し、差別の固定化、拡大となりかねない内容であり、賛同できない。有期労働契約そのものを制限するシステムを作るべきである。(労働組合1件)
 ・ 恒常的・継続的な業務については有期労働契約を原則的に認めないなど労働者の就労を確保することが重要である。契約更新について使用者が一方的に打ち切ることを禁止するなどの措置が必要である。均等待遇を義務付けることは不可欠である。(労働組合1件)
 ・ 有期労働契約の反復と雇止めに対する制限や、恒常的に存在する仕事への有期労働契約の導入を禁止し、期限の定めのない雇用契約とすることなどの規定が求められている。(弁護士団体1件)
 ・ 現在の労働問題で最大の課題である有期労働契約については問題の存在の指摘にとどまっている。恒常的に存在する仕事への有期労働契約の導入を禁止し、均等待遇を図り期間の定めのない雇用契約とすることなどの規定が絶対に必要である。(労働組合1件)
 ・ 有期労働契約は、真に「有期」にする業務上の理由がある場合に限られるべきである。恒常的に存在する仕事について「有期」とした場合は、それを無効とし、「期間の定めのない労働契約」と見做すことにすべきである。(労働組合1件)
 ・ パート労働者の最大の関心事は契約更新と雇止めにあるため、この点のルールを明確にする必要がある。有期労働契約の締結から終了まで固有の法的問題が多いことから、単独立法の可能性も検討すべきであろう。(個人(学者)1件)
 ・ 試用は、引き続き雇用する意思があるが、場合によっては雇用を継続することが困難な場合があるかもしれないために、試しに使ってみるというものであり、試用目的での有期雇用など必要はない。試用目的であることを明示しておかなければ、通常の有期雇用であり雇用期間満了とともに当然に契約が終了するのだとすれば、試用目的をわざわざ明示する使用者はほとんどおらず、労働者の地位は著しく不安定なものとなるおそれがある。
 そもそも有期雇用は、一時的臨時的な業務についてのみ許されるべきものであるにもかかわらず、すでに職場の3分の1以上の労働者が有期雇用を含めた非正規雇用労働者になっており、こうした不安定な身分の労働者層の増大が賃金水準全体を引き下げている。いま取り組むべき法制は、こうした有期契約労働者の不安定な地位を改善することであり、このような状態を一層加速する試用雇用契約は導入すべきではない。(個人1件)
 ・ 中間報告では、いろいろと問題のある「有期労働契約」について、「実態を調査し、調査結果を踏まえて検討」と述べており、その観点を支持する。増加しつつある「雇止め」に伴うトラブルや、「正規職員との均等待遇」についても、賃金や休暇、社会保険など労働者保護の観点から実効ある対策となるように強く望む。(労働組合1件)
 ・ 有期労働契約については、規制を強化すべきである。労働基準法等の規制が緩和されてから一層不安定雇用・有期限雇用が増え、多くの労働者が雇用不安を抱えて働いている。労働者の置かれている実態を把握し、有期労働契約でも持続的もしくは継続的な業務の場合は労働基準法18条の2の適用がおこなわれるべきである。(労働組合1件)
 ・ 有期労働契約については、使用者の不当な雇い止めを防止するための法整備を求める。(労働組合1件)


○ 仲裁合意
 ・ 取りまとめでは事前の仲裁合意について「引き続き検討」としているが、労使紛争処理の現状に鑑みれば、現行を維持すべきである。(労働組合1件)

 ・ 労働契約を締結する際に、将来の労働関係紛争の解決を仲裁制度に委ねる旨を合意してもそれを無効とするべきである。(労働組合1件)
 ・ 労使委員会が同意して仲裁制度を作ることとなれば、労働者は仲裁結果について裁判で争う道が閉ざされてしまう。(弁護士団体1件)
 ・ 仲裁合意条項導入に強く反対する。「将来において生ずる個別労働関係紛争を対象とする仲裁合意条項は無効」とする現在の制度を堅持すべきである。(労働組合1件)


○ 労働時間法制との見直しとの関連
 ・ なぜ労働契約法に関する研究会であるにもかかわらず、労働時間法制の見直しについて言及するのか理解できない。(労働組合1件)
 ・ ホワイトカラー・エグゼンプション制度を導入すべきである。(使用者団体1件)

 ・ 労働者の創造的・専門的能力を発揮できる働き方を促進するため今後の労働時間法制の検討もあわせて行うべきであるとする中間取りまとめの立場を支持する。「今後の労働時間制度に関する研究会」の活動にも注目しており、創造的・専門的能力を発揮できる自立した働き方が日本に普及し、労働時間の長短ではなく、会社への貢献度、生産性といったより知的な基準により労働者が対価を受けることができる仕組みが構築され、日本が真に国際的競争力のある国となることを希望する。(使用者団体1件)

 ・ 中間取りまとめは、労働時間法制の見直しを同時に提案しているが、「労働契約法」の立法提言のなかでこの問題に言及するのは、お門違いである。労働基準法の労働時間規制のあり方は、それとして独自にきちんと検討すべきである。(個人(学者)1件)
 ・ ホワイトカラー・エグゼンプションは、今でも問題になっているホワイトカラー労働者の長時間労働、サービス残業を助長させるものであるため、反対である。(労働組合57件、個人264件)
 ・ ホワイトカラー・エグゼンプションは、ホワイトカラーの定義自体も不明であり、違法な賃金不払残業を合法化するものであること、長時間労働を増やすことにより労働者の健康と生活に悪影響を及ぼすことから、長期的には労働者の利益だけでなく国益や企業の利益にも反するものであるため、反対する。
 すべての労働者に厳しい労働時間規制をした上で、違反に対する罰則強化をするべきである。(労働組合83件、個人7件)
 ・ ホワイトカラー・エグゼンプションの制度の導入には反対する。(労働組合1件、個人1件)
 ・ 労働時間法制を骨抜きにするような法制には反対である。(弁護士団体8件)
 ・ サービス残業、過労自殺、心疾患などが生じている現状を打開することから議論を始めるべきである。(個人1件)
 ・ ホワイトカラー・エグゼンプションは過労死助長の引き金を引くことになる。(労働組合1件)
 ・ これまでの労働時間法制の改正について検証もしないままに、労働時間規制の適用除外の検討を行うことには断固反対である。労働者にとって一番重要な基本的な権利である雇用と労働時間について根底から破壊されてしまいかねないことを危惧する。(個人1件)
 ・ 残業無しの長時間労働を合法化するホワイトカラー・エグゼンプションに反対する。(個人1件)
 ・ 誰が対象であっても残業代を払わなくてよいという、とんでもない制度の検討をやめてもらうようお願いする。(個人1件)
 ・ 長時間労働を野放しにするホワイトカラー・エグゼンプションに反対する。(個人1件)
 ・ ホワイトカラー・エグゼンプションは、賃金不払残業を合法化し、長時間・過密労働を増加させることから、労働者の健康、家庭生活の破壊、過労死、過労自殺を招くものである。絶対に認められない。(労働組合1件)
 ・ 労働時間法制の見直しについては、唐突な記述となっており、作為的な扱いとなっている。(個人1件)
 ・ ホワイトカラー労働者への労働時間規制が外されれば、健康破壊、家庭崩壊、過労死、過労自殺が激増することが容易に予想される。また、賃金不払残業が合法化される。
 労働者が使用者との間で業務内容や労働時間を含め、労働契約の内容を実質的に対等な立場で自主的に決定できるはずがないことは明らかである。
 日本においても、管理職のエグゼンプションは既に存在しているにもかかわらず、一般のホワイトカラー労働者に対しても労働時間の規制を外すということは労働基準法を根底から形骸化することにつながる。(労働組合1件)
 ・ 賃金不払残業を解消することが急務である。労働時間規制の撤廃により、ますます多くの労働者を過労死状態に落とし込んではならない。(個人1件)
 ・ 人が人たるに値する生活を確保するためには、労働時間の厳格な規制が必要不可欠である。労働時間規制を排除する制度を導入することは使用者によるただ働かせを合法化するものである。このような制度が導入されれば、これまで以上に過重労働と労働者の健康破壊がはびこることとなる。これは残業代を支払いたくない使用者側の要求に過ぎず、労働者の生存権を破壊するものであって、その導入に必要性も相当性も存在しない。(個人1件)
 ・ ホワイトカラー労働者に対して、これまで管理職にのみ適用されていた制度を全般的に適用すべきではない。(個人1件)
 ・ 男女ともに労働時間の規制を強化すべきである。労働者が任意で雇用形態を選択できることを保障すべきである。(労働組合1件)
 ・ 労働基準法の労働時間規制を排除できる制度(イグゼンプションなど)を導入することに強く反対する。(個人1件)
 ・ 過労死が後を絶たない現状において、労働時間規制を外そうとするのは明白に誤りである。(個人1件)
 ・ 労働時間の規制緩和の検討を是とした記載を行うべきではない。(個人1件)
 ・ なし崩しにホワイトカラー労働者の範囲が拡大される危険性を排除しないままで、労働時間法制が規制緩和に向かうことを危惧する。(労働組合1件)
 ・ 労働時間規制の緩和を目指すのではなく、むしろ、使用者の健康配慮義務を法律上も明確にし、過労死など生じえない環境をまず実現すべきである。(労働組合1件)
 ・ 今必要なのは、すべての労働者が仕事と生活を調和できるよう長時間労働を規制することであり、また、実際に行なわれた残業に対してはフェアに残業代が支払われるようにすることである。
 一日8時間労働制という労働者の命と健康を守る最低限の規制さえも撤廃するというのは、使用者の際限なき搾取・収奪から労働者を守ってきた工場法以来の労働法の歴史的役割を完全に放棄するものにほかならない。(弁護士団体1件)
 ・ 自律的な働き方ができるごく一部の例外的労働者のために、労働基準法や労働契約法を制定・改正すべきでない。(個人1件)
 ・ ホワイトカラー・エグゼンプションなどの労働時間規制を排除することに反対する。過労死予防やサービス残業の是正に取り組むことこそ必要である。(個人1件)
 ・ 長時間労働を助長する労働時間法制の見直しには反対である。(労働組合1件)
 ・ 労働時間法制の見直しについて論及することは全く唐突というほかない。仮に労働時間法制について、何らかの検討をする場合、最優先されるべきは横行する賃金不払残業や尽きない過労死・過労自殺を制度的にいかに根絶していくかということのはずである。(弁護士団体1件)
 ・ 賃金不払残業が放置されていることが労働時間規制についての最大の問題なのであり、労働時間規制の厳格な実施が求められている。(弁護士団体1件)
 ・ ホワイトカラーのエグゼンプション制は賃金不払残業(サービス残業)の合法化、現状追認の適法化に過ぎず、労働者にとっては何も良いことはない。また、この課題はこの研究会の議論の対象ではない。(労働組合1件)
 ・ ホワイトカラー・エグゼンプションが日本に導入されれば、賃金不払残業が合法化され、長時間労働が一層激化し、労働者の健康と家庭生活の破壊、過労死・過労自殺という最悪の事態が増大することが予想される。すべての労働者に対する厳しい労働時間規制と、違反に対する罰則強化が必要である。(労働組合1件)
 ・ 長時間労働を規制することが当面の最大の課題である。長時間労働を押し付けることに道を開くことには絶対反対である。厳しい労働時間の規制と、違反に対する罰則と指導の強化が重要である。(労働組合1件)
 ・ 労働基準法の労働時間規制を緩和・撤廃する政策方向は根本的に誤りである。労働時間規制を強化することこそ必要である。労働時間規制を今回自主ルールに任せるという発想は、このような歴史的経過をも無視するものであり、労働者保護法制としての労働基準法の存在意義さえ没却するものである。(団体1件)
 ・ もしこの制度が導入されれば、現在横行している賃金不払残業という犯罪が合法化されてしまう。そして、長時間労働が一層激増し、労働者の健康と家庭生活の破壊、過労死・過労自殺という最悪の事態が今後ますます増大することが容易に予想される。一日8時間労働という最低限の規制を撤廃することではなく、現在の労働実態を直視し、全ての労働者に厳しい労働時間規制と違反に対する罰則を強化し、違法残業への取り締まりを強化するべきである。(弁護士団体1件)
 ・ これ以上のただ働き拡大と健康破壊、家庭生活の破壊は許されず、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入には断固反対する。労働時間規制の適用除外ではなく、すべての労働者に厳しい労働時間規制と違反に対する罰則強化を求める。(労働組合1件)
 ・ 労働時間規制は、労働者の健康を維持するためであると同時に、労働者に人間として生きる上で不可欠な自由な時間を保障するためのものである。日本の現実は、それとはまさに正反対の方向に進んでおり、その結果が過労死・過労自殺等々の継続的多発である。時間外労働上限時間を引下げる、時間外労働賃金割増率を引き上げる、変形労働時間制を圧縮する、休暇を取りやすくする等の方策こそが追求されるべきであり、残業料不払いを合法化する、「ホワイトカラー・エグゼンプション導入」など、もってのほかである。(労働組合1件)
 ・ 労働時間こそ行政の監督に服すべき労働基準であるから、労働契約法に移すべき性質のものではない。とはいえ、裁量労働時間制など、労働時間法制そのものが複雑化していることから、これも労働基準法から切り離し、単独立法化を検討してよい。(個人(学者)1件)
 ・ 労働時間法制の見直しは、労働現場の実態を省みないか、むしろ実態を知りながら、企業の残業代「負担」を軽くしてやろうというものである。厚生労働省は、自ら不払い残業撤廃キャンペーンをはり、労働基準監督署により不払い残業が是正され、労働者に支払われた割増賃金額が最高を更新している状況で、違法な不払い残業を文字通り合法化しようとするとはいったい何を考えているのか。しかも、そのような制度を労働基準法の中に設けることは同法32条および37条を無意味にさせる「自殺行為」に等しい。ただでさえ、長時間・過密労働による過労死が後を絶たない現状で、労働時間規制を外そうとするのは明白に誤りであると考える。(個人1件)
 ・ 労働時間制度の見直しの方向が示唆されているが、日常生活もままならないような就業形態が、使用者側の論理である「事業の多様化・高度化・高付加価値化」という美辞麗句で行われているのが実態ではないか。労働者の「創造的・専門的能力を発揮できる自律的な働き方」というのは、一般的な労働者の実態とはほど遠い特殊な職種であり、そうした労働者に対して適用できるものを整備するなら分かるが、これが根拠になって一般的な労働時間の規制が緩和されたり、「実質的に対等な立場で自主的に決定できる」ように改変されれば、無制限な長時間労働を一般労働者にも広げる危険がある。特殊な労働形態の職種(例えば研究者など)については、その特殊性にあわせた労働時間を現行法の中で考え、工夫すれば足りるのではないか。(労働組合1件)
 ・ 労働時間法制の見直しには反対である。労働者の働き方が多様化しても、一日24時間は普遍であり、人間らしく健康に働き続けるには、誰でも一日の労働時間規制が必要である。特に、「次世代育成」や「男女共同参画」を進めるには一日の労働時間規制が不可欠である。一日8時間労働は最低基準であり、早期に一日7時間週35時間、時間外労働一日2時間年150時間の規制を行い、年総労働時間1800時間以内をすべての労働者に実現すべきである。(労働組合1件)
 ・ サービス残業が問題となっている現状において、労働時間規制の緩和を行うことは、社会の要請に反している。より一層の監督強化を求めるものである。(労働組合1件)
 ・ 労働時間規制の撤廃はサービス残業を進めるだけであり、過労死の温床を作るだけであるので反対する。(労働組合1件)


○ その他
 ・ 研究会は、労働契約に関わるあらゆる論点を洗い出し、いま一度、自由活発に議論を行い、意見を踏まえた最終の取りまとめが行われるよう強く要望する。(労働組合1件)
 ・ 「中間取りまとめ」の内容は大変広範にわたり、法制化されれば労使に多大な影響を及ぼすものであるため、法案の提出時期を決めてそこから遡って決めた期間でのみ検討するのではなく、審議会で十分な議論を尽くす必要がある。その際、審議会では研究会での取りまとめに縛られることなく、よりよい法制化に向けて自由な議論がなされることが肝要である。(使用者団体1件)
 ・ 労働契約に関する指針・ガイドラインの整理にあたっては、特に中小企業の実態を十分に反映してはじめて実効性のある内容となるため、十分な配慮が必要である。今後、研究会の最終取りまとめにあたっては、企業経営や経済活動の実態を十分に踏まえた議論がなされるべきである。(使用者団体1件)

 ・ 研究会は、労働政策審議会での議論が充実してなされるように準備することが任務であり、結論を出すものであってはならないと考える。今後は労使関係の実態を踏まえた慎重な討議が行われるべきである。
 意見募集を行う場合には、早期にその旨を発表し、余裕をもった期間を設けるべきである。
 労働政策審議会又は労働条件分科会には、労使の立場で実務に携わる弁護士がメンバーに入ることが望ましい。(弁護士団体1件)
 ・ 法制審議会や司法制度改革審議会の場合には、論点整理を重ねながら、全体の討議を二巡、三巡させ、結論を出すのが通例である。一巡目が終わり二巡目の討議に入るとき、二巡目が終わり三巡目の討議に入るときに、次の討議のために、論点整理がなされる。この段階までの討議や関係各方面から提出された意見書をふまえて、あらゆる論点を抽出し、各論点の位置づけと相互関係を整理し、各論点ごとにA案、B案、C案を並記し、それぞれのメリットやデメリットと検討課題を整理することによって、討議の到達点を整理するとともに、次に討議を重ねて結論を出すべき課題を析出し、これを公表して審議会委員だけでなく関係各方面から広く意見を求めるのである。
 今回の「中間取りまとめ」は、研究会の討議が一巡し、二巡目に入る段階で作成されたものであるが、前掲のような中間的な論点整理はほとんどなされていない。A案、B案が並記されているのは、就業規則による労働条件変更の拘束力、雇用継続型契約変更制度、解雇の金銭解決程度に限られ、しかも、選択肢の幅が狭い。
 労働契約法制をめぐっては様々な論点があり、論点ごとに様々な立法案がありうるはずである。しかるに、「中間取りまとめ」は、研究会の一巡目の議論が終わった段階で作られたものであるのに、大多数の事項につき結論の方向性が明らかにされている。研究会の構成員が高度な均質性・同質性を有しているか、さもなくば、担当事務局が強力なリーダーシップを発揮しない限り、このような「中間取りまとめ」の作成は難しい。
 そして、基礎的論点整理を回避したまま、最終報告の方向性を最初から一方的に示す手法では、説得性・納得性の高い結論を導くのは困難であることを指摘せざるをえない。(個人1件)
 ・ 出来るだけ多くの人からのヒアリング、現実の就労の視察を通して、地に足のついた議論をしていただきたい。(個人1件)
 ・ 労働基準法に定められた最低基準を高めるよう努力すべきである。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制を一般化するためには事業主に労働者を教育させるよう義務づけるべきである。(個人1件)
 ・ 労働時間の長短にかかわらず、労働者は同じ待遇を受けられるようにするべきである。(個人1件)
 ・ 研究会は結論を急ぐのではなく、寄せられた意見に基づいて、実態調査を行うとともに、労働組合や実際に労働関係で係争中の当事者などからのヒアリングを行うべきである。
 労働基本権の意義や労働組合の役割について労働者が認識できるよう、学校教育の場を含め、啓蒙活動を強めていくべきである。(労働組合1件)
 ・ このような広範囲かつ多岐にわたる事柄について、たった一年で中間とりまとめを行い、一年半で報告書を作ること自体があまりにも乱暴ではないか。研究会の在り方自体を問い直すべきである。(個人1件)
 ・ 労働三権について国民一般に周知させることが必要である。(労働組合1件)
 ・ 内部告発者たる労働者の保護を保障するべきである。(個人1件)
 ・ この報告を文字通り中間と位置づけ、自由闊達な議論のもと、正しい論点の整理を行い、さらなる意見の公募を行うことを求める。その結果、本来の目的に沿った文章としてまとめられることを強く期待する。(労働組合1件)
 ・ 労働契約法制の当事者である労働組合などの関係者と、十分な意見聴取や協議を行うことを求める。(労働組合1件)
 ・ 労働契約中に、万一、労使間紛争解決に要する弁護士費用の両面的敗訴者負担規定が盛込まれた場合は、それを無効とすることを法律化すべきである。「法の支配」を職場に貫徹するために、労働者側勝訴の場合の片面的敗訴者負担制度が推奨・導入されるべきである。(労働組合1件)
 ・ 民間の労働者に適用されている労働者保護法制が公務職場においても適用されることを明確にすべきである。(労働組合1件)
 ・ 労働条件の最低条件は法律で定め、全労働者を法律の枠内で保護すべきである。(労働組合1件)
 ・ 契約問題よりも企業へ基準法の遵守を徹底して求めることを要求する。(労働組合1件)
 ・ まず、存在する法律を守らせることが求められていると考える。(労働組合1件)

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