家族や友人がうつ病になったとき

夫がうつ状態を示した妻の経験 (夫36歳会社員 妻37歳会社員)

まじめでコツコツ仕事をするタイプだった夫が、残業の多い部署に変わり、疲れがたまって仕方がないとこぼすようになった。そのうち胃腸の不調を訴えるようになったが、検査をうけても、どこも悪くないといわれる。不調を訴えるくせに夜は遅くまで起きているようで、朝の寝起きは最悪だ。

ある日、マンションの隣の住人から夫が毎日昼過ぎまで家にいるようだが仕事が変わったのかと聞かれて驚いた。子供も私も夫より早く家を出ていたので夫のそんな変化に気づいていなかったのだ。そのことについて夫に尋ねたところ、なんと夫は泣き出した。夫が泣く姿を見るのは初めてだった。ただ、泣くだけで夫が何をいいたいのかはわからなかった。夫も自分がどういう状態なのかわからない様子だった。自分のことは放っておいてくれともいい、私を突き放す様子も見せた。

どこかおかしいと感じたのだが、どうすればいいかわからない。夫がとても苦しんでいることだけはわかるのだが、どう手をさしのべていいのかもわからない。突然私との間の扉を閉められた感じがするのだ。

夫は自分の問題なのだから誰にも話すなといったが、私は知り合いになっていた子供の学校のカウンセラーに内緒で電話をしてみた。彼女に夫の様子を話したところ、もしかしたら夫の様子はうつ状態かもしれないので、一度精神科か心療内科を受診してみたらとすすめられた。夫婦間で解決できる問題と思っていた私は、そういわれたことにびっくりした。

すぐに精神科に行こうとはいいだせないので、私はまず、うつ病について書かれた本を買ってきた。カウンセラーに相談したことは伏せて、その本を見せて「こんな感じかな?」と聞いただけで、あとは本人が自分で考えるようにして様子を見ていたところ、夫は私がいないところでその本を読んでいたようだ。夫も自分がどうにかなっている恐怖からのがれたかったのだろう。その後しばらくして、精神科の診察をうけることもしぶしぶではあるが承知してくれた。二人で(とはいっても、実際にはほとんど私が行動して決めたのだが)何冊かの本とインターネットなどの情報から、家から電車で1時間ほどの場所にある病院の医師がいいだろうと決めて、予約をいれた。どんな診察結果になるかわからないが、今はひとつの道が開かれた気分だ。

気づく

うつ病の症状には、周りから見てわかるサインもあります。こうした変化に気づいたら、本人を見守りながら医師や専門家、地域の相談窓口などに相談してみましょう。

自殺をほのめかす言葉を無視しない

うつ病は自殺の危険のある病気です。うつ病になった人は時に自殺をほのめかす言葉を口にします。このとき、その言葉に反応するとかえってその気にしてしまうのではと心配になって話をそらせてしまいたくなります。でも本は話を聞いてもらえないと自殺願望を抱え込んでしまうことになります。
本人が自殺をほのめかしたら、批判したり励ますのではなく、まずは聞き役につとめてその思いをきちんと受け止めている態度を示します。そして主治医と連絡をとりながら、見守り続けるようにします。

無理に外出させる、趣味など気晴らしになりそうなことを強制しない

うつ病の人に気晴らしをさせることは、ガス欠の車を無理やり走らせようとするようなものです。まずはうつ状態を受け止めて、エネルギーが戻ってくるのを待ちましょう。

自分自身を追いつめないで

本人の周りにいて献身的な人ほど自分一人でいろいろな問題を受け止めて疲れてしまうことがあります。ストレスをためすぎないようになるべく多くの人と協力して、時に休息をとれるくらいの余裕を作っておくようにしましょう。同じ環境で愚痴を話し合ったり悩みを共有したりできる家族会や家事などを手伝ってくれる人の存在なども助かります。

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