私が強迫性障害になったとき

私の経験(40歳女性・専業主婦)

アジア各国で、子どもが鳥インフルエンザで亡くなっているというニュースが伝えられていた頃のこと。外国のことでもあり、ニュースはあまり気にしなかった。

ところが、ある日、ベランダに干してあった布団にハトの羽毛がついているのを見て、ゾッとするほど怖くなった。

当時、私の子どもは4歳。「死んだらどうしよう」と思うと不安でたまらず、すぐ布団カバーをはがして洗った。それからは家族3人分の布団は外には干さず、布団乾燥機のダニパンチ機能を毎日使うようにした。洗濯物も部屋干しにして、高温のアイロンをかけているものの、ウイルスが死んだという保証はなく、不安は消えない。

外出するたびに「ウイルスがついた」と不安で、入浴し、何度も髪や体を洗うのでとても時間がかかってしまう。子どもは外で遊ばせないことにした。

1日の大半が洗濯と入浴についやされるし、電気や水道の料金は何倍にもなっていて、さすがに私は病気なのかもしれないと思っていたところ、夫が買っている健康雑誌に「強迫性障害」の記事を見つけた。

「これは私のことだ」と思い、すぐに受診し、処方された薬を1年間服用し、それとともに曝露反応妨害法という行動療法も始めた。最初はつらく感じたけれど、電気や水道の請求書の金額がだんだん下がっていくので、病気がよくなってきているのだと実感でき、はげみになっている。

先日は、洗濯するとき、何年ぶりかで「全自動のコースを1回だけ」という普通の洗い方をすることができて、とてもうれしい。

薬は必要十分量を服用することが大切です

強迫性障害の治療に用いる抗うつ薬(SSRI)は、うつ病に用いるときより量が多く、長期間の服用が必要です。同じSSRIでも何種類かありますので、あまり合わないように思う場合は、医師に相談してみましょう。

いちばん困っていることから改善する方法もある

曝露反応妨害法では、本人が不安に思ういくつかのものから、いちばん不安度が低く、何とか耐えられそうなものから取り組みます。
しかし、本人の希望によっては、いちばん困っていること、治療効果を実感しやすいものを優先させる場合もあります。回数や時間、水道料金の変化など、具体的に回復度がわかる課題が効果的なこともあります。