家族や友人がアルコール依存症になったとき

夫がアルコール依存症になった妻の経験 (妻62歳 夫68歳)

夫は車を使う仕事をしていたので、平日は飲まず、週末の金曜から日曜までの夕飯時にビールのロング缶を1本飲むだけというのが長年の習慣だった。

定年後、夫は節約のため、ビールを安い焼酎に変え、お湯割りで飲むようになったが、だんだんお湯より焼酎の量が多めになっていくのが気になっていた。

でも、「夫は長年まじめに働いてくれたのだから」と思うと、大目に見てあげたかった。夫は酔ってもあまり変わらない。静かな酒で、いつもニコニコ笑っておだやかに飲んでいた。ただ、よく見ると最近は「静か」の中身が違ってきたような気がする。笑顔はなく、無表情でかなりのスピードで飲んでいる。ときには、昼から夕方まで飲み続けている。仕事をやめてさびしいのかもしれない。

ある日、外で飲んでいた夫が酔って足を骨折したのをきっかけに、お酒を控えるようにいってみたのだが、夫は突然怒り出して、とにかく酒を持ってこいと怒鳴った。あまりの剣幕にいつもの焼酎を渡すと、暗い顔をして飲み続けていた。

骨折の回復が遅くイライラするのか、夫の酒量はその後さらに増えていった。最近では、「足が痛いのだから仕方ない」といって、酔ったまま車を運転して出かけようとする。

こんな飲み方を続けていたら体が持たないし、私の力では飲酒運転をとめられなくなりそうなので、骨折のときに受診した医師に相談したところ、アルコール依存症の専門病院を紹介された。夫にアルコール依存症の話をしたところ、鼻で笑うばかりで相手にもされなかったので、私がまず施設に行き、話を聞いてこようと思う。

周りの人の気づきが早期診断につながります

アルコール依存症になった人の多くは「自分は依存症ではない」と否認します。アルコール依存症であることを否認し自分に都合のいい解釈をするために、お酒のせいで体をこわしたとしても内科の病院で治療を受診します。こうしてアルコール依存症に対するケアを受けずに体調が回復すると、また飲酒を始めるため、だんだんアルコール依存症の症状が悪化するという過程をとりがちです。

本人がアルコール依存症の専門科に行きたがらないときは、まず家族や周囲の人がアルコール依存症への理解を深め、本人を治療に導くことが早期治療への第一歩となります。家族や周囲の人の協力が治療を進めるうえで大きな意味をもつ病気なのです。

依存症が疑われるサインを見逃さない

次のような変化があった場合は、もしかしたら依存症かもしれません。

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