・ | 天然痘の病原体に応じた感染拡大防止策が講じられている必要がある。 |
・ | 移送では適切な器材が使われ、移送従事者等の安全確保策が講じられている必要がある。 |
・ | 汚染拡大を避けるため、移送距離を考慮し、移送時間を出来る限り短くする。 |
I | 移送に使用する車両 |
・ | 患者収容部分と運転者や乗員の部位は仕切られていることが望まれる。仕切りがない場合には、ビニールなどの非透水性の資材を用い、一時的にカーテン状に囲い周囲への病原体の拡散を防ぐ。(HEPAフィルターつきアイソレータを保有している場合は、その活用が望ましい。) |
・ | 患者収容部の構造は移送後の清掃、消毒を考え、出来るだけ簡単なものが望ましく、原則として器材は置かない。器材が既に固定してある場合には、それらの汚染を防ぐため防水不織布などでしっかり覆う。 |
・ | 患者のプライバシー保護のため、移送患者が外部から見えないような配慮が必要である。摺りガラス、フィルムなどを張る等で内部を遮断する方法が適切である。 |
※ | 移送車両患者収容部の分画実施例および患者収容先へ到着後の措置を参照 |
II | 移送従事者 |
・ | 患者の移送に従事する者は、予防接種を実施した者のみとする。 |
・ | また、天然痘患者の確定症例・疑似症例を問わず、移送作業に起因する感染被害を防止するため、適当な防護服を着用しなければならない。 |
※ | 移送の装備着用手順を参照 |
III | 移送する患者 |
・ | 患者のストレッチャーへの移動は、手袋、ガウンの二重着用、靴カバーを着用した上で行う。 |
・ | ストレッチャー移動後に患者を非透水性ドレープなどでくるみ保護した状態で移送するが、この保護作業は患者をストレッチャーに移動させた者ではなく、別の者が同様に防護服の二重着用の下に行う(ドレープ外側の汚染を防ぐため)。 |
・ | 飛沫防止のため、患者の鼻、口はマスクで覆うが、呼吸苦がある場合、顔面に皮疹がある場合は、清潔なタオルを重ねたもので顔面下半分を覆う。患者の医療器具は最小限とする(尿バッグ、点滴程度)。 |
・ | 呼吸管理が必要な場合は、感染対策に十分な知識と経験を有する医師が同行する。 |
※ | 移送の際の患者の保護を参照 |
IV | 装備の脱衣手順 |
・ | 自己への感染を防ぐためには装着以上に重要であり、注意を払わなければならない。脱いだ防護ガウンや手袋は汚染面を内側にして、他へ触れないよう注意しながらバイオハザード容器に収納する。 |
・ | 脱衣後、流水、石鹸で入念に手洗いを行う。 |
V | 移送経路 |
・ | 安全かつ確実に患者移送ができる経路を事前に確認する必要がある。移送に用いる車両が緊急自動車指定車以外の場合は、より迅速な移送を可能とするために、パトカーによる先導を依頼することも検討する。 |
VI | 患者移送に従事した者の健康管理 |
・ | 天然痘患者の移送に関わるチームは、原則的に、事前に予防接種を実施している者によって構成されていなければならないが、予防接種を受けず天然痘患者の移送業務に従事した場合、又は移送に従事した後で移送した者が天然痘患者であったことが判明した場合、従事者は速やかに予防接種を行なう。 |
・ | 接触から予防接種までの時間が長くなるほど保護効果が減弱するため接触後4日以内に予防接種をすることが望まれる。したがって、接触者の迅速な同定及び追跡調査が重要となる。 |
VII | 患者移送後に天然痘の患者であることが判明した場合の対応 |
・ | 感染拡大防止のためにも、病原体に汚染された可能性のある場所は全て早急に消毒し、患者との濃厚接触が認められる移送従事者は健康診断を受ける必要がある。 |
・ | 予防接種を受けていないことが明らかな移送従事者は、早急にこれを受ける必要がある。 |
・ | また、患者移送に際し、患者が不特定多数の者と接触した場合には至急保健所へ連絡を取り、感染拡大などのための対応をとらなければならない。その際には、正確な情報を伝達することにより、住民のパニックを回避することも考慮する必要がある。 |
資材 | 数量 | 備考 |
マスク | 乗務員等の数×2+α | 使い捨てタイプ |
手袋 | 乗務員等の数×2+α | |
ゴーグル | 乗務員等の数×2+α | |
ガウン | 乗務員等の数×2+α | |
ヘッドカバー | 乗務員等の数+α | |
靴カバー | 乗務員等の数×2+α | |
ゴム長靴 | 乗務員等の数+α | |
ビニールシート | 2m×5m 1枚以上 2m×2m 2枚以上 |
感染者収容部分簡易間仕切り |
両面テープ | 40mm×20m1本以上 | 〃 |
消毒薬剤 | 消毒用アルコール500ml 1本従事者の手指等消毒用は別にスプレータイプを1以上 | |
次亜塩素酸ナトリウム溶液 500ml1本 |
||
噴霧器 | 1台以上 | |
ペーパータオル | 1箱以上 | |
タオル(布) | 1本以上 | 患者咳嗽防御用 |
防水シート | 患者の全身を包み込めるサイズを1枚以上 | |
感染性廃棄物処理用ビニール袋 | 適宜 |
移送車両患者収容部の分画実施例(ビニールシートと両面テープを使用) |
車両内を前後に分画した例(後方から)![]() |
車両内を前後に分画した例(前方から)![]() |
患者収容部分を分画した例(内部)![]() |
患者収容部分を分画した例(車外から)![]() |
患者収容先へ到着後の措置 |
![]() |
![]() 患者に面していた側を内側にして ビニールシートをまとめている。 |
移送の装備着用手順 |
1.長靴の着用 ズボンの裾は中に入れる。![]() |
2.1層目の防護ガウンを装着![]() 裾が床に触れない事、背部と長靴が 覆われていることを確認する。 |
3.1層目の手袋を装着![]() |
4.マスク、ヘッドカバー、ゴーグルを装着![]() 頭髪が覆われていることを確認する。 装着が完了したら、他の人にも見てもらい、装備の 確認を二重に行う。 |
※ | 患者に接触せず、移送のみを行う場合は、これで十分である。 |
※ | 患者の搬入・搬出作業を直接介助する場合は、ガウン・手袋を二重にする。 |
5.2層目の防護ガウンを装着![]() |
6.2層目の手袋を装着![]() 裾が床に触れないこと、背部が覆われていること、長靴が覆われていることを確認する。 |
移送の際の患者の保護 |
1.担架の上に防水シートを敷く 写真は手術用ドレープ(2×3m、表吸水・裏撥水加工)を使用。吸水加工面を上(患者に触れる側)に敷き、担架の輪郭がはっきり出るように整える。 |
![]() |
2.患者を担架に乗せる。![]() 患者が担架内にきちんと納まっていることを確認する。 |
3.患者からの飛沫の飛散を防止するためマスク又はタオルで顔面下半分を覆う。![]() 患者に呼吸苦がある場合、顔面に皮疹がある場合はタオルを用いる。 |
4.患者足下の余った部分を折り返す。![]() |
5.左右から包むようにドレープを巻く。 必要に応じてガムテープなどで固定する。 ![]() |
6.担架のベルトを固定する。 担架の持ち手が見えることを確認する。
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