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医療体制

I 事前対応
 レベルI
突然の天然痘患者発生に備え、厚生労働省及び自治体は、あらかじめガイドラインの作成・配布、ホームページ掲載等により、天然痘の診断・治療方法を周知しておく。
天然痘の診断・治療の支援を行うため、厚生労働省及び自治体は、あらかじめ派遣医師等のリストを作成し、それらのメンバーからなる「天然痘技術派遣チーム」を組織する。
自治体は、天然痘患者を入院させる施設を、想定される患者発生規模ごとに選定する。
(例)
(1) 患者数が1〜2名の場合:特定・第一種感染症指定医療機関等
(2) 患者数が10名程度の場合:第二種感染症指定医療機関、結核療養所等
(3) 患者数が100名程度の場合:第二種感染症指定医療機関、結核療養所等
(4) 患者数が100名以上の場合:体育館、公民館等

 レベルII
レベルIIと判断された時点で、天然痘患者を入院させる施設の医療スタッフに対して、ワクチン接種を行う。

II  感染症法の適用
天然痘は、感染症法上の一類感染症として、同法に基づく措置をとる。

III 患者の分類・定義
 天然痘患者
感染症法に基づく「報告基準」に該当する患者は、疑似症も含めて、「天然痘患者」という。

 天然痘疑い患者
感染症法に基づく「報告基準」には該当しないが、疫学的関連性や症状から、天然痘が強く疑われる患者を「天然痘疑い患者」という。

IV 医療機関への入院
 「天然痘患者」への対応
「天然痘患者」に対しては、感染症法第19条に基づき、入院勧告を行う。
患者が少数である場合は、一類感染症に準じて、特定感染症指定医療機関(全国2医療機関6床)及び第一種感染症指定医療機関(全国15医療機関28床)に入院させる(特定及び第一種感染症指定医療機関が未整備の自治体においては、第一種感染症指定医療機関に準じた設備を有する適当な施設とする。)。
特定及び第一種感染症指定医療機関の収容能力を超えた場合は、第二種感染症指定医療機関(全国303医療機関1710床)、結核療養所等の活用を検討する。
さらに、多数の患者が発生した場合は、体育館、公民館の活用等の対応を検討する。ただし、このような状況にあっても、自宅での隔離は極力避ける。

 「天然痘疑い患者」への対応
「天然痘疑い患者」に対しては、感染症法に基づく入院勧告等の措置を講じることはできないが、接触者を少数に抑えるため、本人の同意を得て、外出自粛等の行動制限を行う。
必要に応じて、第一種感染症指定医療機関等に任意入院させることも検討する。

V  天然痘患者が多数発生した場合の対応(体育館・公民館等における医療提供)
バイオテロにより、多数の天然痘患者が発生した場合のことを想定し、体育館・公民館等における天然痘患者への医療提供についても準備しておくこととする。

 体育館・公民館等の条件
(1)  体育館・公民館等の周辺に十分な安全域を確保できること。また、医療機関との連携が図りやすい場所であること。
(2)  駐車場の広さ等、アクセスのしやすさにも配慮すること。
(3)  出入口や廊下の配置について、警備・保安上の観点から問題がないかを確認すること。また、スタッフの移動や必要物資搬入路など動線にも配慮すること。
(4)  電力・上下水道・ガスが確保できること。
(5)  冷暖房・換気装置の外部への換気口には、HEPAフィルターなどを装着することが望ましいこと。
(6)  酸素供給設備を整備できること(酸素ボンベでは設置場所、予備ボンベを保管するスペースが必要。酸素供給ラインを設置することが望ましい。)。
(7)  電気系統が整備できること(ナースステーション用のライト、患者ベッドサイド灯、全体の夜間照明、非常灯などの確保)。
(8)  洗浄・消毒等をしやすい床であることが望ましいこと。
(9)  手洗い・入浴設備・排水設備が整備されていること(患者用と医療スタッフ用をそれぞれ確保)。
(10)  冷蔵庫・冷凍庫などの飲食料備蓄設備を整備できること(患者用と医療スタッフ用をそれぞれ確保)。
(11)  患者収容エリアとは隔絶された医療スタッフ専用の居住区を確保できること(医療スタッフの除染のしやすさ、医療スタッフのストレス等に配慮し、患者収容エリアとは別棟にすることが望ましい。)。

 必要な設備・物品等
(1)  患者監視モニター・サチュレーションモニター 25台
(2)  必要な医薬品
(3)  感染予防に必要な器材等
(4)  その他

 ベット・酸素ライン等の配置
50ベッドを配置する場合のベッドや酸素供給ラインの配置例を以下に示す。

ベット・酸素ライン等の配置の図

 必要医薬品リスト
収容されている天然痘患者の基礎疾患に対応するため、以下の基本的な医薬品類を確保しておく。
(1)  抗生物質(第1世代セフェム系などの広域をカバーする経口抗生剤)
(2)  プロメサジン:制吐、鎮静用。
(3)  ジゴキシン:心疾患、不整脈を持つ患者用。
(4)  フロセマイド:利尿剤を必要とする患者用
(5)  ジフェンヒドラミン:アレルギー反応、嘔気、不眠用。
(6)  ロラゼパム(ベンゾジアゼピン):不安、不眠用。
(7)  ニトログリセリン舌下錠:心不全、狭心症用。
(8)  インシュリン(レギュラー、NPH)
(9)  アルブテノール吸入剤(気管支拡張剤)
(10)  アスピリン:虚血性心疾患、脳卒中用。
(11)  モルフィン
(12)  ナロキソン(ナルカン)
(13)  Oral Rehydration Therapy (ORT)**:発熱、嘔吐、下痢などによる脱水患者用。点滴をしなくてもORTにより水分を効率的に補給できる。

**  世界保健機関(WHO)が推奨しているORTは、水1リットルに、砂糖8さじ、塩1さじを加える簡便法でも作成可能である(市販のスポーツ飲料水でも代用可)。

感染症指定医療機関の指定状況(平成15年12月現在)

特定感染症指定医療機関 :2医療機関(6床)
病院名 病床数 所在地
国立国際医療センター 4床 東京都
市立泉佐野病院 2床 大阪府

第一種感染症指定医療機関:15医療機関(28床)
病院名 病床数 所在地
山形県立中央病院 2床 山形県
成田赤十字病院 2床 千葉県
東京都立荏原病院 2床 東京都
東京都立墨東病院 2床 東京都
新潟市民病院 2床 新潟県
福井県立病院 2床 福井県
大津市民病院 2床 滋賀県
大阪市立総合医療センター 1床 大阪府
市立堺病院 1床 大阪府
市立泉佐野病院 2床 大阪府
神戸市立中央市民病院 2床 兵庫県
奈良県立医科大学附属病院 2床 奈良県
岡山大学医学部・歯学部附属病院 2床 岡山県
福岡市立こども病院・感染症センター 2床 福岡県
熊本市立熊本市民病院 2床 熊本県

第二種感染症指定医療機関:303医療機関(1,710床)
*配置基準による必要病床数1,786床
 指定病院の区分は以下のとおり。
区分 医療機関数 病床数   区分 医療機関数 病床数
国立 11 62 社団法人 1 4
都道府県立 59 324 社保 4 24
市町村立 118 750 健保 4 16
公的医療機関 88 432 医師会立 4 16
財団法人 4 16 民間 10 66


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