厚生労働省発表
平成20年3月28日

職業能力開発局能力評価課
課   長小 林 洋 司
課長補佐焼 山 正 信
電   話03(5253)1111(内線5969)
夜間直通03(3502)6958
中央職業能力開発協会
能力評価部次長内 藤 眞紀子
評価制度開発課長辻 本   明
電  話 03(5800)3689(直通)


「コンビニエンスストア業」、「金属プレス加工業」、
「産業廃棄物処理業」の職業能力評価基準が完成

(ポイント)

○ 現在、厚生労働省では「職業能力が適正に評価される社会基盤づくり」として、能力評価のいわば”ものさし”、”共通言語”となる職業能力評価基準の策定に取り組んでいる。
これまで、経理・人事等の「事務系職種」に関する横断的な職業能力評価基準のほか、電気機械器具製造業、自動車製造業、ホテル業等33業種の職業能力評価基準が策定されたところである。

○ 「コンビニエンスストア業」、「金属プレス加工業」、「産業廃棄物処理業」の職業能力評価基 準は、それぞれ業界団体との連携のもと、企業実務家や学識者からなる職業能力評価制度整備委員会において策定作業が進められ、今般報告書が取りまとめられた。
同報告書においては、業界の職業能力や人材育成に関する状況が分析され、その結果を踏まえて職業能力評価基準が定められた。

○ 職業能力評価基準は職務遂行に必要な職業能力や知識に関し、担当者に必要とされる能力水準から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定している。また、単に知識があるということにとどまらず、職務を確実に遂行しているか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している。
このため、職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針としての活用も期待される。

○ 現在、イベント産業、マテリアル・ハンドリング業等幅広い業種において職業能力評価基準の策定を進めており、また、「事務系職種」の職業能力評価基準をはじめ、既に策定したもののメンテナンスを行っているところである。

○ なお、上記の報告書及び職業能力評価基準は、中央職業能力開発協会のホームページから入手可能である。[ 中央職業能力開発協会 http://www.hyouka.javada.or.jp

I コンビニエンスストア業

1 コンビニエンスストア業について

(1) 今回対象とした「コンビニエンスストア業」は、もともとはアメリカで生まれた小売業態で、今や我が国の日常生活に欠くことのできない存在として定着している業種である。

(2) 売上規模は近年では7兆円を超えるまでに成長しており、地域の雇用の受け皿としても存在感が大きくなっている。

2 職業能力評価基準の策定までの経緯

(1) コンビニエンスストア業については、(社)日本フランチャイズチェーン協会(会長・加藤 充:(株)ユニバーサルホーム代表取締役、加盟119社)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・上原 征彦:明治大学大学院グローバルビジネス研究科 教授)を設置し、検討を行った。

(2) 同委員会は、コンビニエンスストア業における専門性の高い職種として、

[1]販売、清掃、商品管理など、日常的な店舗運営を推進する(コンビニエンスストアの一般スタッフの仕事)「店舗オペレーション」
[2]店舗全体に関わる業務の企画・立案または管理・運営を行う(コンビニエンスストアの店長または店長代理クラスの仕事)「店舗マネジメント」
の2職種について職業能力評価基準の策定を行った(図1参照)。

(3) コンビニエンスストア業では、市場環境が変化する中で競争を勝ち抜くため、フランチャイズ本部や加盟店舗の「人材力」をいかにして高めていくかが共通の課題となっており、こうした現状も踏まえつつ職業能力評価基準が策定された。

(4) なお、同委員会では、アルバイト等の職業経験により培われた職業能力を評価できるようにするための「経験能力評価基準」についても検討を行い、昨年9月に作成・公表を行っている。

図1 コンビニエンスストア業の職業能力評価基準の全体構成
図1 コンビニエンスストア業の職業能力評価基準の全体構成
3 レベルの設定

職業能力評価基準の策定に当たっては、これが職業能力を評価する基準であると同時に、労働者 にとってキャリア形成上の指針となるように、役職等とそれに必要とされる職業能力の関係の実態 に照らし、担当者に必要とされる能力水準(レベル1)から組織・部門の責任者に必要とされる能 力水準(レベル4)まで4つのレベルを設定している。

職業能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、コンビニエンスストア業におけるレベル区分の目安を設定した(図2参照)。

図2 コンビニエンスストア業のレベル区分の目安
図2 コンビニエンスストア業のレベル区分の目安
4 コンビニエンスストア業の職業能力評価基準の例
コンビニエンスストア業の職業能力評価基準の例

II 金属プレス加工業

1 金属プレス加工業について

(1) 今回対象とした「金属プレス加工業」は、材料である金属の板を金型とプレス機械で変形させる業種であり、その製品は自動車産業や電機・電子産業用部品として広く用いられている。

(2) 本基準では、多様で奥深いプレス加工の職務を、「打ち抜き加工」「ファインブランキング」等のように主な加工法別にとりまとめている。さらに、プレス製品の品質を左右する「金型」や、製品の付加価値として重要性を増している溶接や表面処理などの「2次加工」に関する職種・職務を含めている。

2 職業能力評価基準の策定までの経緯

(1) 金属プレス加工業については、(社)日本金属プレス工業協会(会長・晝田 眞三:ヒルタ工業(株)代表取締役社長、加盟87社)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・小松 勇:小松技術士事務所 所長)を設置し、検討を行った。

(2) 同委員会は、金属プレス加工業の職種の区分を、

[1]研究開発テーマを設定し、新技術・新材料の研究開発及びその応用分野の開拓や研究開発部門が開発した技術や顧客からの発注仕様書を踏まえ、製品化に向けた具体的な設計を行う「開発・設計」
[2]製品図面から、製品に要求される品質・機能を踏まえて、金型の設計を行う「金型設計」
[3]生産ライン及び製造設備を企画・開発・設計し、その製品を製造するために必要な生産設備・生産システム等を設計するとともに、その設備を改良しながら最適な条件で安定稼働させ、改善・保全を行い、プレス加工機や周辺機械の点検・検査、調整、修理、部品の取り替えなどにより故障を排除し、設備を正常・良好な状態に保つ「生産技術」
[4]設計された金型をもとに、組立・調整を行ってプレス加工用の金型を製作し完成した金型を用いてプレス加工機で試作して、必要な修正作業を行い、その品質を確認する「金型製作」
[5]プレス加工の材料、金型、加工機の特徴を理解し、定められた手順でプレス製品の加工・測定を行う「プレス加工」
[6]プレス加工製品として仕上げるために、必要な機器及び部品を準備し、工具・機械等を用いて部品の溶接・組立・表面処理を行う「2次加工」
[7]検査等により製品品質の維持向上を図る品質管理、及び国際規格の取得などの品質保証を行う「品質管理」
の7職種とし、職業能力評価基準の策定を行った(図3参照)。

(3) 金属プレス加工業では、経営改革とともに技術や技能の継承と人材育成が大きな課題となっており、こうした現状も踏まえつつ職業能力評価基準が策定された。

図3 金属プレス加工業の職業能力評価基準の全体構成
図3 金属プレス加工業の職業能力評価基準の全体構成
3 レベルの設定

職業能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、金属プレス加工業におけるレベル区分の目安を設定した(図4参照)。

図4 金属プレス加工業のレベル区分の目安
図4 金属プレス加工業のレベル区分の目安
4 金属プレス加工業の職業能力評価基準の例
4 金属プレス加工業の職業能力評価基準の例

III 産業廃棄物処理業

1 産業廃棄物処理業について

(1) 今回対象とした「産業廃棄物処理業」は、一般的には「事業活動に伴って生じた廃棄物を 収集運搬・処分する事業」であるが、取り扱う廃棄物の性状は顧客である排出事業者ごとに多岐にわたっており、産業廃棄物処理業を営む企業の経営形態も排出事業者の業種や処理方 法ごとに多様化しており、それらを完全に網羅することは困難な状況である。

(2) そこで、本基準では産業廃棄物処理業において特徴的な職種・職務を洗い出し、整理した。 (「収集・運搬及び積替え・保管」、「中間処理」、「最終処分」、及び「技術」の4職種で構成)
なお、本基準は、既設の産業廃棄物処理施設における日常的な業務を整理したものであり、施設の新規設置業務については取り扱っていない。

2 職業能力評価基準の策定までの経緯

(1) 産業廃棄物処理業については、(社)全国産業廃棄物連合会(会長・國中 賢吉:(社)大阪府産業廃棄物協会会長、加盟47社)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・下田 健人:麗澤大学 国際経済学部 教授)を設置し、検討を行った。

(2) 同委員会は、産業廃棄物処理業の職種の区分を、

[1]産業廃棄物を発生事業所等から処理施設まで、車両を用いて運搬する「収集・運搬及び積替え・保管」
[2]産業廃棄物を処理して、無害化ないし再生利用可能な製品化を行う「中間処理」
[3]処理され、再生利用のできない産業廃棄物を最終処分場に受け入れ、適切に維持管理する「最終処分」
[4]産業廃棄物の処理・処分にあたり、分析に基づく処理・処分方法を検討し、処理・受入れの可否判断を行う、また法制度、処理技術の変化に対応し、廃棄物処理の技術について、実験、分析、市場調査等による研究開発、事業性判断を行う「技術」
の4職種とし、職業能力評価基準の策定を行った(図5参照)。

(3) 産業廃棄物処理業では、現在の社会における産業廃棄物処理業の役割や社会的義務を理解し、過去に培ったスキルに加え顧客の望む新たなニーズを踏まえて、より質の高いサービスを提供できるような応用力が求められており、こうした現状も踏まえつつ職業能力評価基準が策定された。

図5 産業廃棄物処理業の職業能力評価基準の全体構成
図5 産業廃棄物処理業の職業能力評価基準の全体構成
3 レベルの設定

職業能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、産業廃棄物処理業におけるレベル区分の目安を設定した(図6参照)。

図6 産業廃棄物処理業のレベル区分の目安
図6 産業廃棄物処理業のレベル区分の目安
4 産業廃棄物処理業の職業能力評価基準の例
4 産業廃棄物処理業の職業能力評価基準の例

「職業能力評価基準」について

職業能力が適正に評価されるための社会基盤として、能力評価のいわば“ものさし”、“共通言語”となるよう「職業能力評価基準」を順次策定。

職業能力評価基準とは、

業種別、職種・職務別に、必要とされる能力を担当者から組  織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定し整理・体系化。

・仕事をこなすために必要な「知識」や「技術・技能」に加えて、どのように行動すべきかといった「職務遂行能力」を記述。

・職務を確実に遂行しているか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述。

・業界団体との連携のもと、企業調査の実施による職務分析に基づき策定。

(職業能力評価基準を活用するメリット)

求職者・労働者にとって、職業選択やキャリア形成の目標を立てる際に、[1]自らの能力の客観的な把握、[2]企業が必要とする能力の把握が可能となり、職業能力の向上に向けた取組につなげることができる。

企業にとっては、人材に関する企業戦略を立てる際に、採用すべき人材の明確化人材育成への効果的な投資能力に基づいた人事評価・処遇等の導入・定着に関するスタンダードとして活用できる。

ハローワーク等の労働需給調整機関にとっては、労働者、企業の双方が職業能力を明確に示すことにより、雇用のミスマッチ解消につなげることができる。

教育訓練実施機関にとっては、職業訓練の対象者の能力レベル表示や修了時の能力評価を適切に行うことができる。

【企業における活用の取組みの例】

○ 人事制度・賃金・処遇制度の見直しや整備に活用

「新しい人事制度構築・導入の検討資料として活用している」(プラスチック製品製造業)

「賃金・処遇制度の見直し資料として活用した」(電機メーカー)

「自社制度との比較により、既存の職務遂行基準の見直しを行った」(スーパーマーケット業)

「自社は人事評価制度は無きに等しいので参考に活用したい」(鉄筋工事業)

「新規雇い入れ時のレベル判定基準として活用している」(建設業)

○ 能力開発・研修体系の見直しや整備に活用

「若手社員に対して具体的な目標の一つとして活用している」(建設業)

「社内能力開発制度の体系的整備のフレームとして活用している」(スーパーマーケット業)

「社員の教育訓練のガイドラインとして活用している」(電機メーカー)

【業界団体における活用の取組みの例】

○ スーパーマーケット業

職業能力評価基準に基づき、既存の業界内資格(=スーパーマーケット検定)を実際の職階やキャリアルートに即応した実践的な検定制度として再構築し、新たなスーパーマーケット検定を実施している。併せて企業内研修や個人の学習に利用するため、同検定の学習用教材を整備した。

○ 自動車製造業

職業能力評価基準の内容を基に、人事評価・処遇制度への活用の参考例となる「能力診断シート」を作成した。正規従業員の他、能力評価の必要性の高い期間工・派遣社員にも適用できるものであり、今後、人事評価制度等が未整備である中小零細企業も活用できるよう、普及促進に取り組む考え。(次頁参照)

(参考例)自動車製造業

人事評価・処遇制度への活用の参考例となる
「能力診断シート」を作成

(参考例)自動車製造業

職業能力評価基準策定状況

職業能力評価基準策定状況

「職業能力評価制度整備委員会活動報告書」
及び「職業能力評価基準」の入手先

広く活用を図るため、職業能力評価基準データを自由に閲覧・ダウンロードできるよう中央職業能力開発協会のHPにおいて公開を行っている。

○中央職業能力開発協会 能力評価部

〒112−8503 東京都文京区小石川1−4−1
住友不動産後楽園ビル

http://www.hyouka.javada.or.jp

(こちらよりダウンロードできます)

E-mail hyouka@javada.or.jp

TEL 03-5800-3689


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