(照会先)

厚生労働省政策統括官付

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宮崎、佐野

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03-3595-2159(直通)

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規制改革会議「第二次答申」に対する厚生労働省の考え方

(PDF:228KB)

平成19年12月28日

厚生労働省


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規制改革会議「第2次答申」(医療分野及び労働分野の問題意識)に対する厚生労働省の考え方

平成19年12月28日
厚生労働省

1 基本的考え方

○  このたび、規制改革会議において、医療・福祉、労働などの規制改革に関する「第2次答申」が決定された。

○  厚生労働省としては、国民生活の安全・安心を確保する立場から、サービスの質の向上、利用者の選択の拡大や、労働者が安心・納得して働くことができ、持てる能力を十分に発揮できることにつながるような規制改革については、これまでも積極的に対応してきているところである。

○  一方、厚生労働行政の分野は、サービスや規制の内容が国民の生命・生活や労働者の労働条件などと密接に関わるものであり、また、そのサービスの大半が保険財源や公費で賄われているなど、他の分野とは異なる性格を有していることから、規制改革を進めるに当たっては、経済的な効果だけでなく、

(1)  サービスの質や安全性の低下を招いたり、安定的な供給が損なわれることがないか、

(2)  逆に、過剰なサービス供給が生じる結果、保険料や公費の過大な負担とならないか、

(3)  規制を緩和した結果、労働者の保護に欠けることとなったり、生活の不安感を惹起させないか、

などの観点から、それぞれの分野ごとに慎重な検討を行うことが必要であると考えており、これまでもその旨主張してきたところである。

○  今回の「第2次答申」のうち、「具体的施策」に盛り込まれた事項については、これまで、厚生労働省としても規制改革会議側と真摯な議論を重ねてきた結果得られた成果であり、その着実な実施を行ってまいりたい。

○  しかしながら、今回の「第2次答申」のうち、「問題意識」に掲げられている事項については、その基本的な考え方や今後の改革の方向性・手法・実効性において、当省の基本的な考え方と見解を異にする部分が少なくない。

○  以上を踏まえ、「第2次答申」が公表されるに当たり、「II.各重点分野における規制改革」のうち、特に「1 安心と豊かさの実現」の「(1)医療分野」及び「4 機会均等の実現」の「(1)労働分野」のそれぞれの「問題意識」について、当省とは異なる主な主張を整理し、これに対する当省の考え方を公表することとしたものである。

2 規制改革会議の主張と厚生労働省の考え方

(II1(1)医療分野)

規制改革会議の主張(抄)

厚生労働省の考え方

 

○  当会議はいわゆる混合診療問題を引き続き最重要課題と位置付け、今後も、厚生労働省による原則禁止措置が続く限り、このスタンスを変えるつもりはない。

○  また先般の東京地裁判決に鑑み、緊急の措置として、今回の答申においては以下の具体的施策を求めるものであるが、当会議は混合診療の原則自由化の実現に向けて、引き続き厚生労働省の取組状況を注視しつつ、必要に応じて具体的な提言を行う所存である。

【はじめに】

規制改革会議の答申をめぐる規制改革会議と当省との一連の協議では、最終的に

・ 東京地裁判決の引用を避ける

・ 緊急措置との文言を削除する

との合意がなされたにもかかわらず、規制改革会議の答申における「問題意識」においては、東京地裁判決の内容が記載されるとともに、「混合診療禁止措置の原則廃止について早急に検討を開始」という文言を盛り込む内容となっている。

厚生労働省としては、答申の「具体的施策」に盛り込まれた施策(個別の医療技術ごとに実施医療機関について審査を行った上で、国内未承認の薬物・機械器具を用いた先進的な医療技術に関する保険診療との併用を認める枠組みの創設、先進医療の実施件数と金額を含む調査及びその結果の公表)について、着実に取り組んでいくこととしており、その一方で、このような「問題意識」が盛り込まれた答申が出されることについては、非常に遺憾の意を覚えるものである。

以下、厚生労働省が再三主張してきた混合診療についての考え方を説明することとする。

 

○  混合診療の存在は当然に前提とすべき

・ 「必要な医療技術等は全て保険収載すべきであり、混合診療は国民皆保険を破綻させる」との論理は間違っている。

・ 個々の患者にとって必要な治療がすべて保険収載されるわけでない。

・ 患者にとって必要だが、未だ保険収載していない、あるいは保険収載できない治療は常に存在する。このような治療は、必要な治療を切実に求める患者の命を救い、健康を回復させるために、混合診療によってこそ賄わなければならないのである。したがって、医療費負担を保険制度によってカバーする以上、混合診療の存在は当然に前提とすべきものである。

 

○  根本的な発想転換が不可欠

・ 厚生労働省のこれまでの行動様式の根底には、「お上」が国民に関する全てを管理・統制・調整することが望ましいとするパターナリズムがあることは明らかである。

・ 現行の措置において必要なものは維持しながらも、保険診療との併用を認める保険外診療を事前承認の下で限定列挙するという従来の手法ではなく、混合診療を実施した上で届出義務や情報公開義務を課すことにより、不適切な医療が行われないための必要な措置を講じるといった根本的な発想転換が不可欠である。

○  混合診療を実施した場合には格差縮小につながる

・ 混合診療を実施した場合には、保険診療分には保険給付されることから、混合診療が禁止される状況下で希望する医療を受けられない患者が経済的恩恵を受けることとなり、格差縮小につながる。このように考えれば、保険外診療部分の自己負担により経済的に困窮している患者に、本来保険給付がなされるべき保険診療部分においても全額自己負担を強いる混合診療禁止措置が公平と言えるのか、極めて疑問である。

・ 仮に当該保険外診療が有効であることが明らかで、患者と医師との間で確認と同意がなされている場合であっても、このような措置の下では、当該患者は経済的理由からその診療を受けることを断念せざるを得ない。

○  医療の安全性確保は医師が行う治療行為すべてについて担保されるべき

・ 提供される医療の安全性確保については、保険診療であるか自由診療であるかを問わず、医師が行う治療行為すべてについて論ずべきである。

・ そもそも医療の安全性確保というのであれば、自由診療やこれらの集学的治療も含めた、医師による治療すべてについて担保されるべきであり、現行の医師法等では不十分ということであれば、不要あるいは逆効果の治療を高額で押し付けるような悪質な医療行為に対する民事・刑事責任を厳格に問うための法整備を行うことが先決であろう。

・ 混合診療を認めた場合、「安全性の確認ができない治療法等が保険給付と併せて提供されることになる」と厚生労働省は主張するが、重大な論点のすり替えであり、自らの知見や技能を最大限活用して患者のために最善を尽くそうとしている現場の大多数の医師を蔑ろにする論理である。

【いわゆる「混合診療」に対する厚生労働省の考え方】

我が国の公的医療保険制度は、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により担保する」という国民皆保険の理念に基づき、必要な医療については、国民全体にあまねく平等に提供されることを確保しているものである。

このため、安全性、有効性等が確認され、傷病又は負傷の治療に対して必要かつ適切な医療であれば、速やかに保険導入を進め、誰もが公平かつ低い負担で当該医療を受けることができるようにすることが、富裕層のみならず患者全体の利益になるものと考えている。

このようなルールを廃止し、保険診療と保険外診療を制約なく併用できることとすることについては、

・ 保険診療により一定の自己負担額において必要な医療が提供されるにもかかわらず、患者に対して保険外の負担を求めることが一般化し、患者の負担が不当に拡大するおそれがあること

・ 安全性、有効性等が確認されていない医療が保険診療と併せ実施されてしまうことにより、科学的根拠のない特殊な医療の実施を助長するおそれがあること

から適切ではなく、患者の方々のニーズを踏まえて一定のルールを設定して運用していくことが重要であると考えている。

規制改革会議の答申における「問題意識」においては、「患者の多数が混合診療を求めている」との趣旨の記述が見受けられるが、客観性のある傍証が示された記憶がない。12月17日には、我が国最大の患者団体より「規制改革会議の混合診療解禁論に反対します」と題する意見書が国に対して提出されているところであり、この中で「患者の名を騙り「あたかも患者自身が混合診療の解禁(原則自由化)を望んでいるかのように言う規制改革会議などの意見に対して、強い憤りをもって反論します」としている。不安な気持ちを持たれた患者が少なからずいらっしゃることは、この意見書において明らかである。

なお、本来、医療については医師の医学的判断に基づく裁量に委ねられるべきものであるが、医師法(昭和23年法律第201号)、医療法(昭和23年205号)、薬事法(昭和35年法律第145号)等により、国民の健康の保持・安全の確保等の観点から必要な措置が講じられているところである。

一方、公的医療保険は、「保険給付」を行うことにより、「国民の生活の安定と福祉の向上に寄与」(健康保険法第1条)するための社会保険制度であり、その費用は、国民の負担(税・保険料)により行われるものであることから、安全性のみならず、有効性、普及性等の観点からも、その範囲を設定しているものである。

 

○  先進医療の拡大について

・ 従来の措置においては必要とされず、「基本的合意」でも言及されていない「薬事法承認」要件が、関係機関との議論が不十分なまま、平成17年6月の保険局医療課長通知に挿入された。

・ このことは、結果的に「基本的合意」以前の状態よりむしろ逆に規制強化になった部分が出てきたことを意味し、「基本的合意」の精神に反する極めて遺憾な措置であると言わざるをえない。したがって、この保険局医療課長通知中、薬事法承認の要件は即刻解除するべきである。

・ 混合診療を積極的に認めていくという姿勢は感じられない。

・ 「基本的合意」以降、混合診療を原則禁止とする従来措置の根幹を見直さず、個別審査・事前承認制を維持し続けた結果であり、この乏しい実績もまた、「基本的合意」の精神に反するものである。

【これまでの取組について】

いわゆる「混合診療」については、平成16年に規制改革・民間開放推進会議と真摯な議論を行った結果、未承認薬の使用、先進的な医療技術、制限回数を超える医療行為等に関して改革を行うことを内容とする「いわゆる「混合診療」問題に係る基本的合意」(以下「基本的合意」という。)を規制改革担当大臣と厚生労働大臣との間で結び、平成18年の健康保険法の改正による保険外併用療養費の創設まで、必要な改革を着実に実施してきたところである。

これらの改革は、一定のルールの下に保険診療と保険外診療との併用を認めるとともに、これに係る保険導入手続を制度化するものであり、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により担保する」という国民皆保険制度の理念を基本に据えたものである。また、この改革により、保険診療と保険外診療との併用に関する具体的要望については、今後新たに生じるものについても、おおむねすべてに対応できるものである。

さらに、基本的合意に基づくこれらの取組のほか、平成18年より「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」を設け、欧米主要国での承認実績のある医療ニーズの高い医療機器の早期承認を促すなど、厚生労働省としても早期の保険併用・保険導入に向けて積極的に取り組んでいるものである。

なお、臨床研究等の実施体制(当該薬物又は機械器具の効果を測定するために対象患者を選定すること等)やデータの管理体制等が整備されていない医療機関で臨床事例を蓄積したとしても、薬事法上の承認の審査に活用できるデータとはならず、最終的な保険導入に資するものにならないことから、現在は、将来的な薬事承認(ひいては保険導入)につながる治験の枠組みにおいて実施することと整理したものである。

しかしながら、従来の高度先進医療に該当する技術であって、当該用法等に係る薬事法上の承認が得られていない医薬品又は医療機器を用いているものについては、「臨床的な使用確認試験」の対象として一定条件の下、保険併用を引き続き可能とする方向で検討を行っているところである。(なお、この点については、答申の「具体的施策」に基づき、着実に取り組んで行くこととしている。)

また、先進医療の承認に当たっては、保険併用を希望する医療機関からの届出を受けて、当該技術の安全性及び有効性が担保されているか否かについて検討がなされる。承認された医療技術数及び承認された割合については、科学的な評価の結果であると受け止めているが、平成18年度診療報酬改定においては、高度先進医療や先進医療を経ることなく、新規に保険導入された技術が50あり、新しい医療技術の保険導入を進めるという先進医療の本来の趣旨に沿った取組は着実に実施されている。

先進医療を実施する医療機関については、先進医療導入前の126機関(平成17年4月時点の高度先進医療実施医療機関数。延べ335機関)から、506機関(平成19年11月時点の旧高度先進医療も含めた先進医療実施医療機関数。延べ899機関)に増加しており、安全性及び有効性が担保された先進的な医療技術について保険併用を希望される患者のニーズに応えているものと考えている。

 

○  混合診療の原則禁止自体は現行法において根拠がない

・ 平成19年11月7日には、東京地方裁判所の判決において、混合診療の原則禁止自体は現行法において根拠がないことが明確に確認された。

・ 混合診療原則禁止という状態を容認することは、国民の生存権、財産権、平等権など基本的人権を保障した憲法にも抵触しうるとの指摘。

・ 国民の自由な選択・国民の権利を制限する法的根拠のない措置が存在するとしたら、これを是認することは到底できない。

・ 先般の東京地裁判決に鑑み、緊急の措置として、今回の答申においては以下の具体的施策を求めるものである。

【いわゆる「混合診療」を原則禁止とする法令上の構成について】

いわゆる「混合診療」は、

(1)  健康保険法上、療養に係る費用のうち患者が支払うこととされている額が、

・ 一部負担金(健康保険法第74条)

・ 入院時の食事療養に要する費用(健康保険法第85条)

・ 入院時の生活療養に要する費用(健康保険法第85条の2)

・ 評価療養又は選定療養に要する費用(健康保険法第86条)

のみであること、

(2)  健康保険法の委任を受けて定められている保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)において、同令第5条等において患者から一部負担金の他に追加的な負担を求めることが出来る場合を限定列挙していることから、これ以外に患者から負担を求めることは認められていないこと

(3)  同令第18条及び第19条においては、保険医による特殊な療法等及び厚生労働大臣が定める医薬品以外の薬物の使用を禁止していること

を法的根拠として禁止されているものである。

(II4(1)労働分野)
規制改革会議の主張(抄) 厚生労働省の考え方

○  労働市場における規制については、労働者の保護に十分配慮しつつも、当事者の意思を最大限尊重する観点から見直すべきである。誰にとっても自由で開かれた市場にすることこそが、格差の是正と労働者の保護を可能とし、同時に企業活動をも活性化することとなる。

一部に残存する神話のように、労働者の権利を強めるほど、労働者の保護が図られるという安易な考え方は正しくない。

○  一般に労働市場において、使用従属関係にある労働者と使用者との交渉力は不均衡であり、また労働者は使用者から支払われる賃金によって生計を立てていることから、労働関係の問題を契約自由の原則にゆだねれば、劣悪な労働条件や頻繁な失業が発生し、労働者の健康や生活の安定を確保することが困難になることは歴史的事実である。

このため、他の先進諸国同様、我が国においても、「労働市場における規制」を規律する労働法が、立法府における審議を経て確立されてきたものと理解している。

○  もとより、その規制の内容については、経済社会情勢の変化に即し、関係者の合意形成を図りつつ、合理的なものに見直されるべきではあるが、契約内容を当事者たる労働者と使用者の「自由な意思」のみにゆだねることは適切でなく、一定の規制を行うこと自体は労働市場の基本的性格から必要不可欠である。

○  同様の理由から、「一部に残存する神話」、「安易な考え方」といった表現も不適切である。

○  無配慮に最低賃金を引き上げることは、その賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらし、同時に中小企業経営を破綻に追い込み、結果として雇用機会を喪失することになる。

○  最低賃金は、最低賃金法に基づき労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められるものである。これらの考慮要素に照らして必要がある場合には、最低賃金の引上げが必要であり、また、こうした観点からの引上げは、直ちに労働者の失業をもたらすものではないと考える。

○  過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から雇用を手控える結果になるなどの副作用を生じる可能性もある。

○  女性労働者の権利の保護は、人権上の観点から図られるべきものである。例えば、男女雇用機会均等法等は企業に対し、人権上の観点から、性差別をせずに雇用管理を行うことや、妊娠・出産に係る女性の保護など、当然のことを求めているにすぎない。

「過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から雇用を手控える結果になるなどの副作用を生じる可能性もある。」という記載は、

・人権上の必要性の有無にかかわらず、一方的に女性労働者の権利確保を否定することにもなり得る

・「女性の雇用を手控える」企業については、その行為自体が女性に対する差別となり、男女雇用機会均等法上の指導の対象となる

など、人権上あるいは法制度上認められない行為を容認する記述であると考える。

○  一定期間派遣労働を継続したら雇用の申し込みを使用者に義務付けることは、正規雇用を増やすどころか、派遣労働者の期限前の派遣取り止めを誘発し、派遣労働者の地位を危うくする。

○  雇用の申込義務は、無制限な派遣労働の拡大に歯止めをかける役割を果たしているが、当該義務を撤廃すれば、直用の常用労働者から派遣労働者への代替が一気に加速するとも考えられ、当該義務の存在が派遣労働者の地位を危うくするとの主張は不適当である。

○  労働政策の立案に当たっては、広く労働者、使用者を含む国民や、経済に及ぼす影響を、適切に考察するとともに、各種統計調査等により、実証的に調査分析することが必要なはずである。しかしながら、たとえば、労働政策審議会は、平成19年のパート労働法改正に当たり、差別的取扱いが禁止される「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」が具体的にどの程度の規模、存在しているかを把握していなかったのである。

○  労働政策の立案に当たって、実証的に調査分析する必要があることは当然であり、現に、労働政策審議会の平成19年のパート労働法改正審議においては、既存のパート法の規定について、詳細な実態調査結果に基づき実証的に検討が進められたところである。しかしながら、新たに法定することとした差別的取扱いの禁止の対象については、その是非も含めて検討したことから、新たに設定された要件に完全に合致する者がどの程度存在するかについて過去の調査結果から把握できないことは、それ自体やむを得ないところであると考える。

したがって、今般の第二次答申において、「改正パート労働法」の例を挙げるのは極めて不適切である。

○  解雇権や雇い止めは著しく制限されており、しかも、これらはいずれも、どういう理由と手続きの下で解雇あるいは雇止めが有効となるのか、予測可能性が低い。

そこでまず、労働者保護に十分配慮しつつも、当事者の自由な意思を尊重した合意に基づき予測可能性が向上するように、法律によってこれを改めるべきである。

○  労使それぞれが有する相手方に関する情報の質と量の格差を是正する対策、例えば、業務内容・給与・労働時間・昇進など処遇、人的資本投資に対する労使の負担基準に関する客観的細目を雇用契約の内容とすることを奨励することにより、判例頼みから脱却し、当事者の合致した意思を最大限尊重し、解雇権濫用法理を緩和する方向で検討を進めるべきである。

○  労働者と使用者との間には交渉力においても格差があることや、労働者は経済的に弱い立場にあり、使用者から支払われる賃金に生計をゆだねていることなどから、契約の内容を使用者と労働者との「自由な意思」のみにゆだねることは適切ではなく、最低限かつ合理的な範囲において規制を行うことは必要であり、専ら情報の非対称性を解消することで必要な労働者保護が図られるとの見解は不適切である。

○  また、こうした実態を踏まえて、判例によりルールが整備され、労働契約法に規定された解雇権濫用法理について、その緩和を主張するのは不適切である。

○  労働者派遣法は、派遣労働を例外視することから、真に派遣労働者を保護し、派遣が有効活用されるための法律へ転換すべく、派遣期間の制限、派遣業種の限定を完全に撤廃するとともに、紹介予定派遣の派遣可能期間を延長し需給調整機能を強化すべきである。また、モノづくりの実態において法解釈が過度に事業活動を制約している点、また、法解釈に予測可能性が乏しい点、実態と整合していない点等の指摘があることを踏まえ、法の適正な解釈に適合するよう37号告示および業務取扱要領を改めるべきである。少なくとも、さしあたり37号告示の解釈が明確となるよう措置すべきである。

○  労働者派遣制度については、労働者からの一定のニーズがある一方、直接雇用を望んでいるもののやむを得ず派遣労働者になる者がいたり、派遣労働者の労働条件が必ずしも職務にふさわしいものではないという指摘もある中で、派遣期間の制限や派遣業務の限定の完全撤廃などの規制緩和を行うことがすべて労働者のためにもなるという主張に同意することはできない。

○  「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示(昭和61年労働省告示第37号)」は、偽装請負を判断するための基準であり、この基準が事業活動を制約している等の事業主側のみの主張を根拠に、当該告示が法の適正な解釈に適合していないとの主張は不適切である。


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