おわりに

「はじめに」でも触れたように、モニター報告は来院患者から原因と考えられる家庭用品等について情報を収集するシステムである。特定の家庭用品等による健康被害の報告の変動があれば、その情報の周知を図り、当該家庭用品等による被害の拡大を防止すること、さらに、そこから原因となった化学物質を特定できた場合には、必要な対策をとることにより新たな健康被害を未然に防止することを目指している。また、(財)日本中毒情報センターに問い合わせのあった事例に関する情報は、主に電話とアンケート調査によって収集されたものであり、医学的により詳細な内容を把握したり、予後を明確にしたりすることは困難であるが、モニター病院で収集している以外の情報が消費者より直接寄せられており、家庭用品等による健康被害をモニターする上で重要な役割を果たしている。

本モニター報告は平成18年度で28回目となった。報告件数において上位を占める製品はほとんど変動していない。それだけ広く普及し、使用されているものでもあるが、引き続き、本モニター報告を通じて消費者、事業者等への情報提供と注意喚起を行い、家庭用品等による健康被害を減少させるよう努めていく必要がある。小児科領域におけるタバコの誤飲事例は依然として報告の3割以上を占め、医薬品・医薬部外品の誤飲では入院事例が毎年報告されている状況にある。家庭用品を主な原因とする皮膚障害については、原因製品の使用を継続したり、原因製品と同じ素材の製品を使用したりすると、症状の悪化を招き後の治療が長引く場合がある。次亜塩素酸系(塩素系)の洗浄剤・漂白剤と酸性洗浄剤の混合による塩素ガス発生死亡事故が過去に発生し、これらの混合使用に対して広く注意喚起が行われて久しいが、幸い死亡という痛ましい事例はないにせよ、いまだにガス発生事例の報告が存在している。他にも、使用方法を誤ると重篤な事故が発生する可能性が高い製品が存在する。製造事業者等においては、より安全性の高い製品の開発に努めるとともに、消費者に製品の特性等について表示等による継続的な注意喚起をし、適正な使用方法の推進を図る必要がある。

本モニター報告制度の対象ではない事故例で、成分と死亡との因果関係は明らかではないが、認知症の高齢者が消臭剤を開けてビーズ状内容物を誤食し、死亡した例があった。大人における事故例においては、子どもでは開けられないような形状の容器でも、大人では開けることができてしまうことがあることも考慮し、注意が必要である。また、海外において、小児用ビーズ玩具製品を誤飲した小児が意識不明となる事故(平成19年)や誤飲したブレスレット中の鉛中毒により小児が死亡する事故(平成18年)が発生している。子どもや認知症の方がいる家庭では、同居する家族等が家庭用品等の誤飲による事故防止のため製品の選択や管理方法に十分に留意する必要がある。

これらの注意喚起に加え、今までにない家庭用品中の化学物質による新たな健康被害が生じていないか、特に注意すべき事例はないか等、引き続きモニターしていくことも本制度に課せられた役割である。当室では、様々な家庭用品による製品事故情報を以下のサイトで提供しているので、消費者、関係事業者、医療関係者等に広く御参照頂き、家庭用品の適正な使用や健康被害の防止に活用していただきたい。

http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/katei/kateiindex.html


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