1. 家庭用品等に係る皮膚障害に関する報告
(1)原因家庭用品カテゴリー、種別の動向
原因と推定された家庭用品をカテゴリー別に見ると、装飾品等の「身の回り品」が40件で最も多く、次いで洗剤等の「家庭用化学製品」が9件であった(表1)。
家庭用品の種類別では「装飾品」が18件(27.3%)で最も多く報告された。次いで「時計バンド」が7件、「洗剤」が5件、「眼鏡」が4件、「下着」「革靴」「時計」及び「スポーツ用品」が各3件、「ゴム・ビニール手袋」及び「ベルト」、「ナイロンタオル」が各2件の順であった(表2)。従来、報告件数の上位3品目に、洗剤、装飾品、ゴム・ビニール手袋があがることが続いていた。しかし、今年度は品目ごとの報告数にあまり差が見られず、また全体の件数が減少したため、順位が異なったと考えられる。
これまでの報告内容と統計的な比較は適当でないものの、装飾品や洗剤が上位3品目に入っており(図1)、またそれ以外の製品についても、報告数、割合に変動があったものの概ね過去の上位10品目と同様の品目で占められていた。
注 「洗 剤」:野菜、食器等を洗う台所用及び洗濯用洗剤
「洗浄剤」:トイレ、風呂等の住居用洗浄剤
(2)各報告項目の動向
患者の性別では女性が43件(71.7%)と大半を占めた。そのうち30歳代が10件、次いで50歳代が9件であった。
障害の種類としては、「アレルギー性接触皮膚炎」が32件(48.5%)と最も多く、次いで「刺激性皮膚炎」が14件(21.2%)、「手の湿疹(刺激性皮膚炎)」が10件(15.2%)であった。
症状の転帰については、「全治」と「軽快」を合計すると47件(78.3%)であった。なお、本年も「不明」が10件あったが、このような転帰不明の報告例は、症状が軽快した場合に受診者が自身の判断で途中から通院を打ち切っているものと考えられる。
(3)原因製品別考察
1)装飾品
平成18年度における装飾品に関する報告件数は18件(27.3%)であった。前年度18件(11.4%)と比較すると報告件数は昨年と同じであったが、全報告件数に対する割合は増加した(表2)。
原因製品別の内訳は、ネックレスが3件、ピアスが3件、指輪が2件、ブレスレットが1件、複数によるものが5件、不明が4件であった。
障害の種類では、アレルギー性接触皮膚炎が15件(83.3%)と最も多かった。
金属の装飾品について、12件のパッチテスト施行例が報告され、ニッケルにアレルギー反応を示した例が9件と最も多かった(表3)。それに次いでコバルトが5件でパッチテストによりアレルギー反応が観察された。
このような金属による健康障害は、金属が装飾品より溶けだして症状が発現すると考えられる。そのため、直接皮膚に接触しないように装着することにより、被害を回避できると考えられる。しかしながら、夏場や運動時等、汗を大量にかく可能性のある時には装飾品類をはずす等の気を配ることが被害を回避する観点からは望ましい。また、ピアスは耳たぶ等に穴を開けて装着するため、表皮より深部と接触する可能性が高い。このため、初めて装着したり、種類を変えたりした後には、アレルギー症状の発現などに対して特に注意を払う必要がある。事例3のように重症化し、治療が長期にわたることもありうるので、症状が発現した場合には、原因と思われる製品の装着を避け、装飾品を使用する場合には別の素材のものに変更することが症状の悪化を防ぐ上で望ましい。さらに、早急に専門医の診療を受けることを推奨したい。ある装飾品により金属に対するアレルギー反応が認められた場合には、金属製の別の装飾品、眼鏡、時計バンド、ベルト、ボタン等の使用時にもアレルギー症状が起こる可能性があるので、同様に注意を払う必要がある。例えば、最も症例の多いニッケルアレルギーの場合、金色に着色された金属製品はニッケルメッキが施されている場合が多いので注意が必要である。また、歯科治療や骨固定等に用いる金属製医療材料の使用の可否に影響することもあるため、装飾品等により金属に対するアレルギー症状が判明した場合には、歯科診療時等に、医療従事者へこれまでの既往を的確に伝えることが必要である。
◎事例1【原因製品:ネックレス】
患者 | 17歳 女性 | |
症状 | 夏暑い日にネックレスを一日着けたところ、頸部に痒みを伴う紅斑を認めた。 | |
障害の種類 | アレルギー性接触皮膚炎 | |
パッチテスト | コバルト(+)、ニッケル(+) | |
治療・処置 | ステロイド薬外用 | |
転帰 | 全治(13日) |
<担当医のコメント>
ネックレスは合金のものであった。過去に、金属による接触皮膚炎は経験していなかった。
◎事例2【原因製品:ネックレス】
患者 | 62歳 女性 | |
症状 | ネックレス装着にて首回りに発赤、痒み出現。 | |
障害の種類 | アレルギー性接触皮膚炎 | |
パッチテスト | コバルト(+)、ニッケル(+)、水銀(+)、イリジウム(+) | |
治療・処置 | ステロイド薬外用、抗アレルギー薬内服 | |
転帰 | 軽快 |
◎事例3【原因製品:ブレスレット】
患者 | 69歳 女性 | |
症状 | トルマリンのブレスレット(ゲルマニウム等による合金を含有する可能性有り)をつけていたら、全身が痒くなってきた。全身に多型紅斑多発。ブレスレットをつけていた手が一番重症。 | |
障害の種類 | アレルギー性接触皮膚炎 | |
パッチテスト | 未実施 | |
治療・処置 | ステロイド薬外用、抗アレルギー薬内服 | |
転帰 | 全治(30日) |
<担当医のコメント>
トルマリンはケイ素やアルミニウム、鉄等を含有する宝石である。本症例では、パッチテストを行っていないが、アルミニウム等の金属アレルギーが原因であった可能性が高い。
2)時計バンド
平成18年度における時計バンドに関する報告件数は7件(10.6%)であった(表2)。
内訳を見ると、革バンドが3件、金属が3件、不明が1件であった。
時計バンドが原因となった健康障害の種類は、アレルギー性接触皮膚炎が6件(85.7%)と最も多かった。
これらの症状は皮膚と時計バンドの成分とが接触することにより発現するので、症状が発現した場合には、すみやかに別の素材のものに変更することにより被害を防ぐことができる。金属バンドでアレルギー症状が発現した場合には、イヤリング、ピアス、ネックレス等の他の金属製品の使用に際しても注意が必要である。
◎事例1【原因製品:時計バンド】
患者 | 55歳 女性 | |
症状 | 新しい腕時計(革バンド)をはめ、左手〜左前腕にかけて紅斑、痒みを認めた。 | |
障害の種類 | 手の湿疹(刺激性皮膚炎) | |
パッチテスト | 革バンド 国際接触皮膚炎学会(ICDRG)基準で48時間判定(−)、72時間判定(−) 本邦基準で48時間判定(−)、72時間判定(±) |
|
治療・処置 | ステロイド薬外用 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
クロムは陰性であった。
◎事例2【原因製品:時計バンド、ネックレス】
患者 | 39歳 女性 | |
症状 | 昨年から、時計を装着すると、その部位がかぶれるようになった。腕時計を外すと速やかに消失する。右前腕に限り、装着しても発症しない。銀色のネックレスでもかぶれることがある。 | |
障害の種類 | アレルギー性接触皮膚炎 | |
パッチテスト | コバルト(++)、ニッケル(++)、鉛(++)、亜鉛(++) | |
治療・処置 | 不明 | |
転帰 | 軽快 |
3)洗剤
平成18年度における洗剤に関する報告件数は5件(7.6%)であった(表2)。
内訳を見ると、原因は全て台所用洗剤であった。
洗剤が原因となった健康障害の種類は、手の湿疹(刺激性皮膚炎)が4件(80.0%)と最も多かった。
皮膚を高頻度で水や洗剤にさらすことにより、皮膚の保護機能が低下し、手の湿疹や刺激性皮膚炎が起こりやすくなっていたり、また高濃度で使用した場合に障害が起こったりというように、症状の発現には、化学物質である洗剤成分と様々な要因(皮膚の状態、洗剤の使用法・濃度・頻度、使用時の気温・水温等)が複合的に関与しているものと考えられる。基本的な障害防止策としては、使用上の注意・表示をよく読み、希釈倍率に注意する等、正しい使用方法を守ることが第一である。また、必要に応じて、保護手袋を着用することや、使用後、クリームを塗ることなどの工夫も有効な対処法と思われる。それでもなお、症状が発現した場合には、原因と思われる製品の使用を中止し、早期に専門医を受診することを推奨したい。
◎事例1【原因製品:台所用洗剤】
患者 | 26歳 女性 | |
症状 | 平成18年5月より使っていた洗剤を変更したところ、両手に紅斑、落屑が見られた。 | |
障害の種類 | 手の湿疹(刺激性皮膚炎) | |
パッチテスト | 台所用合成洗剤(+?) | |
治療・処置 | ステロイド薬外用 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
アトピー性皮膚炎合併あり。保護オイルで防御することをすすめた。
◎事例2【原因製品:台所用洗剤】
患者 | 25歳 男性 | |
症状 | 約5年前から少し手荒れがあり、1年前から悪化してきた。アトピー性皮膚炎の既往無し。両前腕、特に背部を中心に著明な苔癬化を伴う紅斑、丘疹、血痂多数。 | |
障害の種類 | 刺激性皮膚炎、手の湿疹(刺激性皮膚炎) | |
パッチテスト | 未実施 | |
治療・処置 | ステロイド薬外用、保湿剤外用 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
調理師であることから、頻回の水仕事や台所用洗剤による刺激性皮膚炎を疑った。刺激を避けることは難しかったが、外用薬やスキンケアによりかなり改善が見られた。
4)眼鏡
平成18年度における眼鏡に関する報告件数は4件(6.1%)であった(表2)。
障害の種類では、アレルギー性接触皮膚炎が3件、刺激性皮膚炎が1件であった。
また被害を発症した原因を見ると、つるの先端部分(先セル)によるものが2件、フレーム部分によるものが1件、パッチテストにより金属アレルギーが判明し、眼鏡全体によるものと考えられるものが1件であった。
◎事例1【原因製品:眼鏡】
患者 | 52歳 女性 | |
症状 | 3年前に眼鏡をかけるようになってから、プラスチック製フレーム接触部の痒み出現。 | |
障害の種類 | アレルギー性接触皮膚炎 | |
パッチテスト | パラターシャリーブチルフェノール ホルムアルデヒドレジン(PTBP-FR)(++)、金チオ硫酸ナトリウム(sodium Thiosulfatoaurate)(+)、コバルト(+?)、ニッケル(+?)、クロム(+?)、カドミウム(+?)、白金(+?) | |
治療・処置 | 抗アレルギー薬内服 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
プラスチックフレームによる色素沈着型接触皮膚炎。
◎事例2【原因製品:眼鏡】
患者 | 59歳 女性 | |
症状 | 3年前、眼鏡を変更したが、1年前より眼囲が赤くなった。 | |
障害の種類 | アレルギー性接触皮膚炎 | |
パッチテスト | 金(+) | |
治療・処置 | ステロイド薬外用 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
金の縁取りをしてある眼鏡を使用していた。プラスチック製に変更後、再発を見ない。
5)下着
平成18年度における下着に関する報告件数は3件(4.5%)であった(表2)
障害の種類としては、3件全てが刺激性皮膚炎であった。
下着は長時間にわたって直接皮膚に触れているため、何らかの障害が認められた場合には、原因と思われる製品の使用を中止し、専門医を受診することを推奨したい。
◎事例1【原因製品:下着】
患者 | 44歳 女性 | |
症状 | 下着のあたる部位に一致して紅斑、落屑、痒みが見られる。 | |
障害の種類 | 刺激性皮膚炎 | |
パッチテスト | 未実施 | |
治療・処置 | ステロイド薬外用 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
アトピー性皮膚炎合併有り。スポーツ用下着を着けると、その形に皮疹が見られる。パッチテストを行っていないため、アレルギー反応を否定できない。
◎事例2【原因製品:下着】
患者 | 68歳 男性 | |
症状 | 新しいパンツのゴムで腰が痒くなった。パンツを以前使用していたものに戻して改善。 | |
障害の種類 | 刺激性皮膚炎 | |
パッチテスト | 未実施 | |
治療・処置 | ステロイド薬外用 | |
転帰 | 全治(7日) |
<担当医のコメント>
新品のパンツの素材が硬かったため、刺激性皮膚炎を生じたと思われる。
6)その他
その他、被害報告件数が多かったものは革靴、時計、スポーツ用品が各3件、ゴム・ビニール手袋、ベルト、ナイロンタオルが各2件であった。次から次へと新しい商品が発売されており、それに伴い使用される化学物質の種類も多様化しているが、事例2のように家庭用品が原因となって長期治療を要する症状も起こりうるということを認識し、製造業者において化学物質の安全性についてあらかじめ十分に点検することとともに、消費者も、特に皮膚に直接触れるような製品を新しく使用する場合には、注意して使用することが必要である。
◎事例1【原因製品:ゴム手袋】
患者 | 25歳 女性 | |
症状 | 2年前より、前腕、頸部の皮疹出現。美容師をしているが、染毛剤、洗浄剤使用時に手袋を装着。 | |
障害の種類 | 刺激性皮膚炎 | |
パッチテスト | ゴム手袋(+?)、ゴム手袋先端(++)、コバルト(+) | |
治療・処置 | ステロイド薬外用 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
アトピー性皮膚炎を合併。パッチテストでゴム手袋に陽性であるが、ゴム添加剤成分には陰性。刺激性接触皮膚炎としたが、アレルギー性も否定できない。
◎事例2【原因製品:皮靴】
患者 | 37歳 女性 | |
症状 | 靴を変えて約1か月後に、足背に紅斑、浮腫、小水疱を認めた。素足で靴を履いていた。 | |
障害の種類 | アレルギー性接触皮膚炎 | |
パッチテスト | 未実施 | |
治療・処置 | ステロイド薬外用、抗アレルギー薬内服 | |
転帰 | 全治(45日) |
<担当医のコメント>
症状発症の経過や症状の強さより、アレルギー反応を疑った。靴は全体が皮、足背部のあたる部位にゴムが張ってあり、接着剤でつけてある。皮、ゴム関連物質、接着剤のうちどれが原因であるのか、パッチテストを行っていないため不明である。
◎事例3【原因製品:運動靴】
患者 | 25歳 女性 | |
症状 | 両足に湿疹。5年前にもスニーカーをはいて同じ症状。 | |
障害の種類 | アレルギー性接触皮膚炎 | |
パッチテスト | 未実施 | |
治療・処置 | スニーカー中止、ステロイド薬外用 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
患者は、くつ下をしてスニーカーを履いていたが、両足底、足背に強い症状が出た。パッチテストは施行できなかった。
◎事例4【原因製品:ゴム風船】
患者 | 37歳 女性 | |
症状 | ゴム風船100個以上ふくらませたところ、触れていた両手が腫れた。口ではなく機械でふくらませた。 | |
障害の種類 | 手の湿疹(アレルギー性接触皮膚炎) | |
パッチテスト | チウラムmix(+)、ジチオカーバメートmix(+)、メルカプトmix(+)、ラテックス(−) | |
治療・処置 | ステロイド薬内服、外用 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
アトピー性皮膚炎の合併有り。右眼囲の紅斑、浮腫も同時に見られた。作業中に眼囲をよく触っていた。ラテックスのプリックテストとパッチテストは陰性であり、ラテックスアレルギーは否定的である。
◎事例5【原因製品:ビニール手袋】
患者 | 19歳 女性 | |
症状 | 中学生頃より手湿疹が時々出現し、防御のためにビニール手袋を使用していた。乾燥、落屑、亀裂が両手指に見られた。 | |
障害の種類 | 手の湿疹(刺激性皮膚炎) | |
パッチテスト | ビニール手袋(−) | |
治療・処置 | ステロイド薬外用 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
アトピー性皮膚炎の合併あり。保護オイル使用に変更し、症状は軽快している。
◎事例6【原因製品:ゴルフクラブ】
患者 | 49歳 男性 | |
症状 | 右手の湿疹が慢性で難治。ゴルフのクラブの当たる部分と一致している。 | |
障害の種類 | 手の湿疹(刺激性皮膚炎) | |
パッチテスト | 未実施 | |
治療・処置 | ステロイド薬外用 | |
転帰 | 不明 |
<担当医のコメント>
週1回以上の頻度でゴルフを行う。左手には、手袋をつけるためか症状が無い。
◎事例7【原因製品:ゴーグル】
患者 | 74歳 女性 | |
症状 | プールでゴーグル(白色ゴム製)を使っている。2〜3週間前より、両眼囲に紅斑出現。 | |
障害の種類 | アレルギー性接触皮膚炎 | |
パッチテスト | 未実施 | |
治療・処置 | ステロイド薬外用、黒いゴムのゴーグルに変更して症状改善 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
ゴーグルの素材が長期使用で劣化した可能性等が考えられる。
◎事例8【原因製品:ナイロンタオル】
患者 | 54歳 女性 | |
症状 | ナイロンタオルを20年以上使用している。背中に色素沈着、皮膚の肥厚。 | |
障害の種類 | 色素沈着 | |
パッチテスト | 未実施 | |
治療・処置 | 木綿のタオルへ変更指示 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
ナイロンタオルの長期使用が色素沈着の原因となることを、引き続き啓発する必要がある。
◎事例9【原因製品:金属含有テープ】
患者 | 69歳 女性 | |
症状 | 金属含有テープを10日前に全身に何枚も貼った。テープの形に一致して、紅斑出現、全身が痒くなってきた。 | |
障害の種類 | アレルギー性接触皮膚炎 | |
パッチテスト | 金属パッチテストは全て陰性 | |
治療・処置 | ステロイド薬内服 | |
転帰 | 軽快 |
<担当医のコメント>
患者は、金属含有テープを同時に20枚程全身に使用した。金属パッチテストは全て陰性であったので、アレルギーの原因はテープの粘着剤等の可能性が高い。
(4)全体について
平成18年度の家庭用品を主な原因とする皮膚障害の種類別報告全60件のうち、32件はアレルギー性接触皮膚炎であった。この中でも、装飾品、眼鏡、ベルトの留め金、時計や時計バンド等で金属アレルギーが判明したものが約5割を占めた。
家庭用品を主な原因とする皮膚障害は、原因家庭用品との接触によって発生する場合がほとんどである。事業者においては家庭用品に使用する化学物質の種類、経時変化等に留意して、事故の未然防止に努める必要がある。また、消費者においても家庭用品を使用することによって接触部位に痒み、湿疹等の症状が発現した場合には、原因と考えられる家庭用品の使用は極力避けることが望ましい。気付かずに原因製品の使用を継続すると、症状の悪化を招き、今回紹介した事例にも見られるように後の治療が長引く可能性がある。症状の重症化及び遷延化を避けるためにも、原因製品の特定が重要と考えられる。症状が治まった後、再度使用して同様の症状が発現するような場合には、同一の素材のものの使用は以後避けることが賢明であり、症状が改善しない場合には、専門医の診療を受けることが必要である。さらに、日頃から使用前には必ず注意書きをよく読み、正しい使用方法を守ることや、化学物質に対して感受性が高くなっているアレルギー患者等では、自分がどのような化学物質に反応する可能性があるのかを認識し、使用する製品の素材について注意を払うことも大切である。
なお、平成19年5月14日に施行された改正消費生活用製品安全法に基づく消費生活用製品の使用に伴う重大製品事故(死亡、治療に要する期間が30日以上の負傷・疾病等 消費生活用製品安全法施行令第4条で定める要件に該当するもの)について事業者から経済産業省への報告制度が開始された。そのうち製品に使用されている化学物質が発症原因と考えられるものについては、経済産業省から厚生労働省に通知されるため、厚生労働省から適宜情報提供を行っていくこととしている。平成19年度中には、本制度に基づき、デスクマットによるアレルギー性接触皮膚炎等について情報提供を行ったところであり、本報告書とともに、このような情報も家庭用品の事故防止に有用である。