平成19年12月26日
厚生労働省医薬食品局
審査管理課化学物質安全対策室
室長 山本 順二(2421)
室長補佐 廣田 光恵(2910)
担当 下位 都詩子(2424)
電話代表 03-5253-1111

平成18年度家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告について

厚生労働省は、家庭用品等に係る健康被害の実態を把握し公表することにより、家庭用品等の安全対策を一層推進することを目的として、家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告制度を実施しており、皮膚科領域8病院、小児科領域8病院、(財)日本中毒情報センターの協力を得て健康被害情報を収集している。

今般、平成18年度におけるこれらの病院等からの健康被害報告の内容について、家庭用品専門家会議(危害情報部門)(座長:新村眞人 東京慈恵会医科大学皮膚科名誉教授)に御確認頂き、以下の通り取りまとめた。概要は別添のとおりである。

厚生労働省としては、地方公共団体、関係業界団体等に対し本報告を周知するとともに、引き続き本制度を通じ、家庭用品に含有される化学物質による健康被害の実態の把握と情報提供等を図ることとする。

(別添)

平成18年度家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告(概要)

本制度は、モニター病院(皮膚科8施設、小児科8施設)の医師が家庭用品等による健康被害と考えられる事例(皮膚障害、小児の誤飲事故)について、また、(財)日本中毒情報センターが収集した家庭用品等による吸入事故等と考えられる事例について、それぞれ厚生労働省に報告する方法により行っているものである。

平成18年度に報告された事例の件数は、合計1,434件(前年度1,693件)であった。

1. 家庭用品等に係る皮膚障害に関する報告
(1)調査結果の概要と考察

・報告された事例の件数は、60件(前年度133件)であった。

・皮膚障害の原因となった家庭用品等の種類は、装飾品が18件(27.3%)、時計バンドが7件(10.6%)、洗剤が5件(7.6%)等であった(参考参照)。

・性別では、女性が43件(71.7%)と大半を占めた。そのうち30歳代が10件、次いで50歳代が9件であった。

・皮膚障害の種類は、アレルギー性接触皮膚炎が32件(48.5%)と最も多く、次いで刺激性皮膚炎が14件(21.2%)、手の湿疹(刺激性皮膚炎)が10件(15.2%)等であった。

・報告件数の減少は、協力病院の変更に伴うものと考えられる。新しい製品による事故をチェックするという第一の目的達成に影響は少ないものの、引き続き幅広い情報を収集するようにしていく。

家庭用品との接触部位に痒み、湿疹等の症状が発現した場合には、原因と考えられる家庭用品の使用を極力避けることが望ましい。再度使用して同様の症状が発現する場合には、同一の素材のものの使用は避けることが賢明であり、症状が改善しない場合には、早急に専門医の診療を受けることを推奨する。

また、日頃から使用前には必ず注意書をよく読み、正しい使用方法を守ること、自己の体質について認識し、製品の素材について注意を払うことが重要である。

(2)製品別の結果と考察

(装飾品)

・装飾品に関する報告件数は18件(27.3%)であり、製品別の内訳は、ネックレスが3件、ピアスが3件、指輪が2件、ブレスレットが1件等であった。

・障害の種類は、アレルギー性接触皮膚炎が15件と最も多かった。

・金属の装飾品について、12件のパッチテスト施行例が報告され、ニッケル又はコバルトにアレルギー反応を示した例が多かった。

汗を大量にかく可能性のある時には装飾品類をはずすことが望ましい。また、ピアスは表皮より深部に接触する可能性が高いため、初めて装着したり、種類を変更したりした後には、症状の発現に特に注意して使用する必要がある。

症状が発現した場合には、原因製品の装着を避け、装飾品を使用する場合には別の素材のものに変更することが症状の悪化を防ぐ上で望ましい。また、早急に専門医の診療を受けることを推奨する。

(時計バンド)

・時計バンドに関する報告件数は7件(10.6%)であり、製品別の内訳は、革バンドが3件、金属が3件等であった。

・障害の種類は、アレルギー性接触皮膚炎が6件と最も多かった。

これらの症状は皮膚と時計バンドの成分とが接触することにより発現するので、症状が発現した場合には、すみやかに別の素材のものに変更することにより被害を防ぐことが出来る。また、装飾品同様、金属に対するアレルギー反応が認められた場合には、他の金属製品の使用に際しても注意が必要である。

(洗剤)

・洗剤に関する報告件数は5件(7.6%)であり、全てが台所用洗剤であった。

・障害の種類は、手の湿疹(刺激性皮膚炎)が4件と最も多かった。

洗剤を使用する際には希釈倍率に注意する等、使用上の注意・表示をよく読んで正しい使用方法を守ることが第一である。また、必要に応じて、保護手袋を着用することや、使用後にクリームを塗ることなどの工夫も有効と思われる。それでもなお、症状が発現した場合は、原因と考えられる製品の使用を中止し、早急に専門医の診療を受けることを推奨する。

2.家庭用品等に係る小児の誤飲事故に関する報告
(1)調査結果の概要と考察

・報告された事例の件数は、646件(前年度725件)であった。

・誤飲事故の原因となった家庭用品等の種類は、タバコが231件(35.8%)、医薬品・医薬部外品が106件(16.4%)等であった(参考参照)。

・年齢別では、6〜11か月が最も多く214件(33.1%)、次いで12〜17か月が154件(23.8%)であった。

・誤飲事故の発生は、夕刻以降に増加する傾向が見られ、全体の約51.9%が午後4時から午後10時の間に発生していた。

・報告件数の多い製品の種類、性別・年齢別、発生時刻の内訳等は例年と同様の傾向であった。

乳幼児は、身の回りのあらゆるものを口に入れてしまうことから、保護者は誤飲する可能性のあるものを極力乳幼児が手にする可能性のある場所に置かないこと、及び大人が管理することが有効な対策である。乳幼児の口に入るサイズはおよそ直径3cmといわれており、このサイズ以下のものには注意が必要である。特に報告事例も多く、重篤な事例に陥る可能性のあるタバコや医薬品・医薬部外品等の管理には引き続き注意を怠らないよう努める必要がある。

(2)製品別の結果と考察

(タバコ)

・タバコに関する報告件数は231件(35.8%)であり、そのうち生後6〜11か月の乳児の事故が124件と、発生が特定の時期に集中しており、さらに12〜17か月の幼児の事故とあわせると報告例の大半を占めた(191件)。

タバコや灰皿は乳幼児の手の届かないところに保管すること、飲料の空き缶等を灰皿代わりに使用しないことなど、それらの取扱いや置き場所に配慮が必要である。特に小児が生後6〜17か月の場合には細心の注意を払う必要がある。

(医薬品・医薬部外品)

・医薬品・医薬部外品に関する報告件数は106件(16.4%)であり、入院事例も報告された。

・タバコに比べ事故が発生する年齢層が広いが、特に1〜2歳児に多く、報告件数は73件であった。

医薬品等の誤飲事故の大半は、保管を適切に行っていなかった場合や、保護者が目を離したすきに発生していた。特に医薬品の誤飲では健康被害が発現する可能性が高く、時に重篤な障害をもたらすおそれがあるので、保管・管理に十分注意する必要がある。

(その他)

・誤飲した場合に消化管せん孔を起こす可能性のある電池の誤飲が、未だに多数報告されている(14件)。

3.家庭用品等に係る吸入事故等に関する報告
(1)調査結果の概要と考察

・報告された事例の件数は、728件(前年度835件)であった。

・吸入事故等の原因となった家庭用品等の種類は、殺虫剤(医薬品等を含む)が165件(22.7%)、洗浄剤が111件(15.2%)、 芳香・消臭・脱臭剤が85件(11.7%)等であった(参考参照)。

・性別では女性が399件と全体の54.8%を占め、男女の差はほとんどない。年齢別では、9歳以下の小児が311件(42.7%)と大半を占めた。

・製品の形態の内訳では、スプレー式の製品が301件(41.3%)(うち、エアゾールが164件)、次いで液体の製品が200件(27.5%)と件数が多かった。

・報告件数の多い製品の種類、性別・年齢別、形態の内訳等は例年と同様の傾向であった。

今年度も、小児の健康被害に関する問い合わせが多く寄せられた。保護者は家庭用品等の使用や保管には十分注意するとともに、製造事業者も小児のいたずらや誤使用等により吸入事故が生じないような対策を施した製品開発に努めることが重要である。

使用方法や製品の特性について正確に把握していれば事故の発生を防ぐことができた事例やわずかな注意で防ぐことができた事例も多数あったことから、消費者も日頃から使用前には必ず注意書をよく読み、正しい使用方法を守ることが重要である。製造事業者は、より安全性の高い製品開発に努めるとともに、消費者に製品の特性等について表示等により継続的な注意喚起をし、適正使用方法の推進を図る必要がある。

(2)製品別の結果と考察

(殺虫剤)

・殺虫剤(医薬品等を含む)に関する事例は165件(22.7%)であった。

手軽に使用できるエアゾールや蒸散剤は、使用方法を誤ると健康被害につながる可能性が高いので、使用前に製品表示を熟読し、よく理解した上で正しく使用するべきであり、保管、廃棄の際にも注意が必要である。

(洗浄剤・洗剤、漂白剤)

・洗浄剤・洗剤に関する事例は144件(19.7%)であり、そのうち塩素系の製品(59件)が最も多かった。

・洗浄剤・洗剤の製品の形態の内訳は、ポンプ式スプレー(76件)が最も多かった。

・漂白剤に関する事例は48件(6.6%)であり、そのうち塩素系が36件と大半を占めた。

被害を防ぐには、換気を十分に行う、適正量を使用する、マスク等の保護具を使用することが重要である。また、塩素系の洗浄剤・漂白剤と酸性洗浄剤の混合使用など複数の洗浄剤の使用による塩素ガスの発生にも注意が必要である。

 

[参考]平成18年度 家庭用品等による健康被害のべ報告件数

(上位10品目及び総計)

皮膚障害 小児の誤飲事故 吸入事故
装飾品 18 (27.3%) タバコ 231 (35.8%) 殺虫剤 165 (22.7%)
時計バンド 7 (10.6%) 医薬品・医薬部外品 106 (16.4%) 洗浄剤(住宅用・家具用) 111 (15.2%)
洗剤 5 (7.6%) 玩具 55 (8.5%) 芳香・消臭・脱臭剤 85 (11.7%)
眼鏡 4 (6.1%) 金属製品 51 (7.9%) 消火剤 50 (6.9%)
下着 3 (4.5%) プラスチック製品 29 (4.5%) 漂白剤 48 (6.6%)
革靴 3 (4.5%) 硬貨 29 (4.5%) 洗剤(洗濯用・台所用) 33 (4.5%)
時計 3 (4.5%) 食品類 16 (2.5%) 園芸用殺虫・殺菌剤 30 (4.1%)
スポーツ用品 3 (4.5%) 洗剤・洗浄剤 14 (2.2%) 灯油 18 (2.5%)
ゴム・ビニール手袋 2 (3.0%) 電池 14 (2.2%) 防水スプレー 17 (2.3%)
ベルト/ナイロンタオル 各2 (3.0%) 文房具 13 (2.0%) 除草剤 16 (2.2%)
総計 66
  (100.0%)
総計 646
  (100.0%)
総計 728
  (100.0%)

平成18年度家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告
(1〜46ページ(PDF:463KB)、47〜48ページ(PDF:360KB)、全体版(PDF:661KB))

   

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