職業能力開発局能力評価課
  課    長  小 林 洋 司
  課長補佐  焼 山 正 信
  電    話  03(5253)1111(内線5969)
  夜間直通  03(3502)6958
中央職業能力開発協会
  能力評価部次長    内 藤 眞紀子
  評価制度開発課長  辻 本   明
  電    話  03(5800)3689(直通)
厚生労働省発表
平成19年10月12日

「鍛造業」、「卸売業(食品・菓子・雑貨等)」
の職業能力評価基準が完成

(ポイント)

○  現在、厚生労働省では「職業能力が適正に評価される社会基盤づくり」として、能力評価のいわば”ものさし”、”共通言語”となる職業能力評価基準の策定に取り組んでいる。
  これまで、経理・人事等の「事務系職種」に関する横断的な職業能力評価基準のほか、電気機械器具製造業、ホテル業、自動車製造業等28業種の職業能力評価基準が策定されたところである。

○  「鍛造業」、「卸売業(食品・菓子・雑貨等)」の職業能力評価基準は、それぞれ業界団体との連携のもと、企業実務家や学識者からなる職業能力評価制度整備委員会において策定作業が進められ、今般報告書が取りまとめられた。
  同報告書においては、業界の職業能力や人材育成に関する状況が分析され、その結果を踏まえて職業能力評価基準が定められた。

○  職業能力評価基準は職務遂行に必要な職業能力や知識に関し、担当者に必要とされる能力水準から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定している。また、単に知識があるということにとどまらず、職務を確実に遂行しているか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している。
  このため、職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針としての活用も期待される。

○  また、現在、電気通信工事業、産業廃棄物処理業等幅広い業種において職業能力評価基準の策定を進めているところである。

○  なお、上記の報告書及び職業能力評価基準は、中央職業能力開発協会のホームページ から入手可能である。

[ 中央職業能力開発協会 http://www.hyouka.javada.or.jp

I 鍛造業

1 職業能力評価基準の策定までの経緯

(1) 鍛造業については、(社)日本鍛造協会(会長・大西 匡)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・木村 勝三郎:(株)経営技術機構 代表取締役社長)を設置し、検討を行った。

(2) 同委員会は、鍛造業における専門性の高い職種として10職種について職業能力評価基準の策定を行った(図1参照)。 具体的には、(1)生産ライン及び製造設備の企画・開発及び設備の改善・保全を行う「鍛造技術」、(2)自社製品の品質向上活動を推進・実践するための具体的な方策を検討・計画し、それを管理する「品質管理」、(3)工程・日程を管理するとともに、資材の調達・管理や外注管理、在庫管理、原価管理に関する企画及び推進を行う「生産管理」、(4)金属素形材を加工品(ワーク)の大きさに切断する「切断」、(5)加工品を型鍛造または自由鍛造により成形を行う「鍛造」、(6)鍛造製品に加熱・冷却の操作をして、目的とする特性に改善する「熱処理」、(7)製造現場における最終段階で、表面処理やコイニング、機械加工などによって鍛造品の外観を整えるとともに様々な機能を持たせる「仕上」、(8)フライス盤や放電加工機などの各種工作機械による機械加工、表面仕上げ、保守、金型検査といった金型の製作・維持管理を行う「金型製作」、(9)製品の一つ以上の特性値に対して、測定、試験、ゲージ合わせなどを行い、製品ごとの要求仕様に適合しているかどうかを判定する「検査」、(10)工場の生産ラインに設置されている機械設備に関する故障や劣化等の問題に対し、設備技術部門等と連携しながら問題解決のマニュアル作成、再発防止策を企画・実行する「設備保全」の10職種について職業能力評価基準の策定を行った。

(3) 鍛造業では、経営改革とともに技術や技能の継承と人材育成が大きな課題となっており、こうした現状も踏まえつつ職業能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図1 鍛造業の職業能力評価基準の全体構成

図1 鍛造業の職業能力評価基準の全体構成
2 レベルの設定

職業能力評価基準の策定に当たっては、これが職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針となるように、役職等とそれに必要とされる職業能力の関係の実態に照らし、担当者に必要とされる能力水準(レベル1)から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準(レベル4)まで4つのレベルを設定している。

職業能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、鍛造業におけるレベル区分の目安を設定した(図2参照)。

図2 鍛造業のレベル区分の目安

図2 鍛造業のレベル区分の目安
3 鍛造業の職業能力評価基準の例
選択
能力ユニット
  能力ユニット名 ハンマ型鍛造
概  要 ハンマ型鍛造によって製品の成形及び鍛錬を行う能力
能力細目 職務遂行のための基準
(1)ハンマ型鍛造作業の理解と段取り

○ハンマ型鍛造用機械及び付属機械の取扱いや条件設定について精通し、関連技術についても幅広い知識を有し、部下への指導及びチェック・管理を行っている。

○ハンマ型鍛造作業の流れや手順、段取りを理解し、作業手順書や作業マニュアルの作成を行うと同時に、品質向上や作業の効率化に向けたプロセスの見直しや工夫を行うとともに、部下への指導及びチェック・管理を行っている。

○部下や後輩に対して、ハンマ型鍛造作業におけるコツやポイントの指導及びチェック・管理を行っている。

(2)ハンマ型鍛造作業の実施

○鋼材の状態や製品の形状・要求精度など様々な条件を考慮しながら、ハンマ型鍛造用機械及び付属機械の条件を設定するとともに、部下への指導及びチェック・管理を行っている。

○伸ばし作業、荒打ち作業、仕上げ作業など、それぞれの作業内容に応じ、打撃数と必要な力を調整しながら、極めて複雑かつ高精度なハンマ型鍛造作業を行うとともに、部下への指導及びチェック・管理を行っている。

○ハンマ型鍛造用機械、付属機械の些細な異常も見逃すことなく、故障・トラブルの未然防止処置を行うとともに、部下への指導及びチェック・管理を行っている。

○ハンマ型鍛造用機械、付属機械等のトラブルが発生した場合、部下への指導及びチェック・管理を行っている。

(3)作業の評価と検証

○外観検査における製品の良否判定基準の取決めを行うとともに、部下への指導及びチェック・管理を行っている。

○ハンマ型鍛造用機械及び付属機械、金型など、常に最良の状態に維持するための点検・保全を行うとともに、部下への指導及びチェック・管理を行っている。

○不良品や設備のトラブルの発生原因が複雑な場合、必要に応じて関係部門と連携しながら原因を解明し、適切な処置を行うとともに、部下への指導及びチェック・管理を行っている。

●必要な知識

1. 鍛造一般

・鍛造加工の種類及び特徴

・鍛造品の熱処理、表面処理、検査

2. 材料

・金属材料の種類、性質及び用途

・鍛造用材料の欠陥の種類

・材料試験

3. 機械工作法

・工作機械の種類及び用途

・手仕上げ、その他の工作法

4. JISに定める図示法及び材料記号

5. 電気

・電気用語、電気機械器具の使用方法

6. 関係法規

・関連する環境基本法関係法令

7. 安全衛生

・安全衛生に関する詳細な知識

8. ハンマ型鍛造法

・ハンマ型鍛造用機械及び付属設備の種類、構造及び用途

・ハンマ型鍛造に使用する器工具の種類及び用途

・ハンマ型鍛造の方法

・鍛造方案

・ハンマ型鍛造品に生ずる欠陥の原因及び防止方法

II 卸売業(食品・菓子・雑貨等)

1 職業能力評価基準の策定までの経緯

(1) 卸売業(食品・菓子・雑貨等)については、全国卸商業団地協同組合連合会(会長・尾池 良行)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・菊池 宏之:目白大学 経営学部准教授)を設置し、検討を行った。

(2) 同委員会は、卸売業(食品・菓子・雑貨等)の職種の区分を3職種とし、職業能力評価基準の策定を行った(図3参照)。
  具体的には、(1)メーカーの各種活動を支援する「メーカー・サービス」、(2)小売業の各種活動を支援する「リテール・サービス」、(3)メーカーから仕入れた商品を小売業に納品する「ロジスティクス」の3職種について職業能力評価基準の策定を行った。

(3) 卸売業(食品・菓子・雑貨等)では、市場環境が変化する中で競争を勝ち抜くため、卸売業の「人材力」をいかにして高めていくかが共通の課題となっており、こうした現状も踏まえつつ職業能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図3 卸売業(食品・菓子・雑貨等)の職業能力評価基準の全体構成

図3 卸売業(食品・菓子・雑貨等)の職業能力評価基準の全体構成
2 レベルの設定

職業能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、卸売業(食品・菓子・雑貨等)におけるレベル区分の目安を設定した(図4参照)。

図4 卸売業(食品・菓子・雑貨等)のレベル区分の目安

図4 卸売業(食品・菓子・雑貨等)のレベル区分の目安
3 卸売業(食品・菓子・雑貨等)の職業能力評価基準の例
選択
能力ユニット
  能力ユニット名 商品調達(仕入先開拓等)
概  要 小売業の視点で小売業が望む商品調達を実施及びサポートする能力
能力細目 職務遂行のための基準
(1)ニーズの把握と自社の現状把握

○得意先小売業の商品調達に関する基本方針(コンセプト等)や考え方を理解している(顧客の望む商品は1品からでも品揃えするなど)。

○特定カテゴリーのプラノグラム(棚割計画)を理解している。

○自社はどのような業務を提供することができるか理解している。

○どれくらいの資源(人材及びコストなど)を必要とするか理解している。

○既に他のベンダーがどのような商品調達を行っているか、あるいは今後行う予定であるか理解している。

○曖昧な点があれば本部及び売り場責任者に質問し解決している。

(2)商品調達(仕入先開拓)

○得意先小売業が望む商品調達計画を立案・提案している。

○得意先小売業が望む商品調達を行う上で、必要となる様々な付随業務計画を立案・提案している。

(3)成果の確認及び次回へのフィードバック

○得意先小売業が要望する商品調達を適切に行えたかどうか、得意先小売業の担当者にヒアリングし、それをベースに自己評価している。

○今後の課題や早急に習熟しておくべきノウハウなどを記録している。

○他の小売業においても展開可能かどうか、可能性を検討している。

○本来小売業の業務である商品調達業務の提供に対し、フィービジネス化することが可能であるかどうか検討している。

●必要な知識

1.得意先小売業に対する知識

・企業理念、経営方針、経営目標(中長期及び本年度)、店舗及びカテゴリーの売上目標・利益目標 など

2.競合店に関する状況

3.商品調達に関する知識

・仕入先に関する知識

・商品に関する知識

・納入条件に関する知識

・調達交渉に関するノウハウ

4.小売業本部及び店舗へのヒアリング

・必要とされる情報を聞き出す能力

・話し方・話法

・敬語の使い方 など


「職業能力評価基準」について

職業能力が適正に評価されるための社会基盤として、能力評価のいわば“ものさし”、“共通言語”となるよう 「職業能力評価基準」を順次策定。

職業能力評価基準とは、

業種別、職種・職務別に、必要とされる能力を担当者から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定し整理・体系化。

・仕事をこなすために必要な「知識」「技術・技能」に加えて、どのように行動すべきかといった「職務遂行能力」を記述。

・職務を確実に遂行しているか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述。

・業界団体との連携のもと、企業調査の実施による職務分析に基づき策定。

(職業能力評価基準を活用するメリット)

求職者・労働者にとって、職業選択やキャリア形成の目標を立てる際に、(1)自らの能力の客観的な把握、(2)企業が必要とする能力の把握が可能となり、職業能力の向上に向けた取組につなげることができる。

企業にとっては、人材に関する企業戦略を立てる際に、採用すべき人材の明確化人材育成への効果的な投資能力に基づいた人事評価・処遇等の導入・定着に関するスタンダードとして活用できる。

ハローワーク等の労働需給調整機関にとっては、労働者、企業の双方が職業能力を明確に示すことにより、雇用のミスマッチ解消につなげることができる。

教育訓練実施機関にとっては、職業訓練の対象者の能力レベル表示や修了時の能力評価を適切に行うことができる。

【企業における活用の取組みの例】

○ 人事制度・賃金・処遇制度の見直しや整備に活用

「新しい人事制度構築・導入の検討資料として活用している」(プラスチック製品製造業)

「賃金・処遇制度の見直し資料として活用した」(電機メーカー)

「自社制度との比較により、既存の職務遂行基準の見直しを行った」(スーパーマーケット業)

「自社は人事評価制度は無きに等しいので参考に活用したい」(鉄筋工事業)

「新規雇い入れ時のレベル判定基準として活用している」(建設業)

○ 能力開発・研修体系の見直しや整備に活用

「若手社員に対して具体的な目標の一つとして活用している」(建設業)

「社内能力開発制度の体系的整備のフレームとして活用している」(スーパーマーケット業)

「社員の教育訓練のガイドラインとして活用している」(電機メーカー)

【業界団体における活用の取組みの例】

○ スーパーマーケット業

職業能力評価基準に基づき、既存の業界内資格(=スーパーマーケット検定)を実際の職階やキャリアルートに即応した実践的な検定制度として再構築し、新たなスーパーマーケット検定を実施している。併せて企業内研修や個人の学習に利用するため、同検定の学習用教材を整備した。

○ 自動車製造業

職業能力評価基準の内容を基に、人事評価・処遇制度への活用の参考例となる「能力診断シート」を作成した。正規従業員の他、能力評価の必要性の高い期間工・派遣社員にも適用できるものであり、今後、人事評価制度等が未整備である中小零細企業も活用できるよう、普及促進に取り組む考え。(次頁参照)

(参考例)自動車製造業
職業能力評価基準策定状況

「職業能力評価制度整備委員会活動報告書」
及び「職業能力評価基準」の入手先

広く活用を図るため、職業能力評価基準データを自由に閲覧・ダウンロードできるよう中央職業能力開発協会のHPにおいて公開を行っている。

○中央職業能力開発協会 能力評価部
〒112−8503 東京都文京区小石川1−4−1
住友不動産後楽園ビル

http://www.hyouka.javada.or.jp
(こちらよりダウンロードできます)
E-mail hyouka@javada.or.jp
TEL 03-5800-3689


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