経験能力評価基準(仮称)検討報告書

平成19年9月

中央職業能力開発協会


目次

第1章 経験能力評価基準の策定について

1 検討の視点

第2章 経験能力評価基準(仮称)について

1 経験能力評価基準(仮称)の考え方
2 経験能力評価基準

第3章 委員会等の活動

1 委員会の構成
2 委員会の活動経緯
3 企業調査概要

第1章 経験能力評価基準の策定について

1 検討の視点

経験能力評価基準の策定について、包括的職業能力評価制度整備委員会(コンビニエンスストア業)(以下、「委員会」という)において、以下の視点で検討を行った。

(1) 若年者(特にフリーター)の雇用・就業を取り巻く状況

・ 昨今の景気の回復を反映し、若年者の完全失業率も徐々に低下し、フリーターの数も2003年の217万人をピークに2006年において187万人(総務省統計局「労働力調査(詳細調査)」)と減少してきている。しかしながら、25~34歳のいわゆる年長フリーターの数は依然90万人を上回ったまま推移(2006年で92万人)しており、就職活動の時期が新卒採用の特に厳しい時期、いわゆる就職氷河期に当たった世代であり、非正規雇用に応じざるを得ないまま就労を開始し、今日なお不安定就労に甘んじている者も多く含まれているものと考えられる。

・ 労働政策研究・研修機構「第2回若者のワークスタイル調査」(2006年)(18歳から29歳の者(正規課程の学生、専業主婦を除く)について行った調査)によると、若年者のフリーター経験率(就業経験としてのパート・アルバイトを経験した者の割合)は、およそ半数に達している(男性;48.7%、女性;53.2%)。そのうち、半数近くの者が正社員になろうとして行動した(男性;50.5%、女性;36.3%)ものの、正社員となった(なれた)者はその半数程度にとどまり(男性;58.7%、女性;53.6%)、4割以上は正社員になっていないのが現状である。

・ 若年期は、職業能力を身につけ、円滑なキャリア形成(生涯キャリア形成)を図るうえで、極めて重要な時期であることを踏まえると、フリーターとりわけ年長フリーター等の雇用・就業の問題は、看過できない重要な課題であるということができよう。

図1 年齢階級別フリーター数の推移

図1 年齢階級別フリーター数の推移

資料出所:厚生労働省『労働経済白書 19年版』p.26 第1−(1)−24

表1 フリーター経験率

(単位:%)
2006年:フリーター経験率
男性 48.7
年齢別    18-19歳 72.5
20-24歳 51.9
25-29歳 41.3
本人学歴  高卒以下 62.2
高卒超   37.5
女性 53.2
年齢別    18-19歳 77.4
20-24歳 50.4
25-29歳 50.0
本人学歴  高卒以下 74.4
高卒超   41.1

資料出所:労働政策研究・研修機構「第2回 若者のワークスタイル調査」

注:東京都(島嶼除く)の18-29歳の若者計2000人(正規課程の学生、専業主婦を除く)のうち、就業経験を持たない若者19名を除いた、男性1028名、女性953名における就業経験としてのパート・アルバイト(学校在学中の経験を除く)の経験割合。

表2 フリーターから正社員への離脱行動

(単位:%)
2006年:正社員になろうとしたことがある
男性 50.5
年齢別    18-19歳 16.7
20-24歳 45.9
25-29歳 67.3
本人学歴  高卒以下 45.5
高卒超   57.6
女性 36.3
年齢別    18-19歳 15.2
20-24歳 34.0
25-29歳 45.3
本人学歴  高卒以下 29.3
高卒超   43.4

資料出所:労働政策研究・研修機構「第2回 若者のワークスタイル調査」

注:東京都(島嶼除く)の18-29歳の若者計2000人(正規課程の学生、専業主婦を除く)のうち、フリーター経験がある者998名における正社員になろうとした割合。

(2) 社会全体での取組が必要

・ フリーター等の雇用・就業の問題は、個々人のキャリア形成上の問題にとどまらず、例えば、税収等に与える影響、消費に与える影響、貯蓄に与える影響さらには少子化に与える影響など、社会経済全体に影響を及ぼす問題であるといえよう。したがって、単にフリーター等の職業意識等の問題に帰することなく、社会全体の問題としてとらえることが必要であり、若年者・フリーターをとりまく「家庭」「教育」「ビジネス」の総体の中で対処されるべき問題であるというとらえ方がなされるべきである。

・ とりわけ、職業生活の初期の段階において、第一歩をどう踏み出すかが、その後の職業キャリア形成において重要な意味を持つことを踏まえれば、企業の役割には大きなものがあり、企業が正規雇用や適正処遇に積極的になるよう促していくための仕組みづくりが重要となってくる。

・ おりから、改正雇用対策法が平成19年10月1日より施行され、改正後の第7条において「事業主は、青少年が将来の産業及び社会を担う者であることにかんがみ、その有する能力を正当に評価するための募集及び採用の方法の改善その他の雇用管理の改善並びに実践的な職業能力の開発及び向上を図るために必要な措置を講ずることにより、その雇用機会の確保等が図られるように努めなければならない」とされ、また同法第9条に基づく指針において「事業主は、青少年の募集及び採用に当たり、就業等を通じて培われた能力や経験について、過去の就業形態や就職状況にとらわれることなく、人物本位による正当な評価を行う」旨、事業主に求められている。

・ これをより実効あるものとし、フリーター特に年長フリーター等の雇用機会の確保につなげていくことが今日強く求められているといえよう。

(3) フリーター等の経験能力を積極的に評価することが重要

・ 厚生労働省「雇用管理調査(平成16年)」の企業調査によると、フリーターであったことを「マイナスに評価する」企業の割合は30.3%にのぼっている。その理由については、「根気がなくいつ辞めるかわからない」が70.7%、「責任感がない」が51.1%、「職業に対する意識などの教育が必要」が42.6%などとなっている(企業のフリーター等の採用実績等を考慮すれば、これらの回答には、多分に先入観に基づくものも含まれているものと考えられよう)。

・ 一方、厚生労働省の「企業が若年者に対して求める能力要件に関する調査(平成16年)」によると、企業が重視すると回答した能力は、「コミュニケーション能力」(85.7%)、「基礎学力」(70.8%)、「責任感」(64.3%)、「積極性・外交性」(59.5%)、「資格取得」(56.3%)、「行動力・実行力」(54.8%)、「ビジネスマナー」(51.7%)などと続いている。

・ いわゆるフリーターには、明確な目的意識や、自分の仕事・役割に対する意識を高く持って努力している者もおり、そうした姿勢や努力は正当に評価されることが重要であろう。また、フリーター経験を通じてビジネスマナーやコミュニケーション能力などについて訓練を受け、向上させるケースも見られる。そこで、本委員会においては、アルバイト等の職業における職務分析を行い、職業経験から培われた職業能力が正しく評価され、職業キャリア形成の上で的確に位置づけられるよう、事業主の求める人材ニーズや、安定的な成果につながる行動特性(コンピテンシー)の観点も踏まえつつ、適当な項目を職務行動の形で抽出・整序を行い、経験能力評価基準(仮称)としてまとめることとした。

・ したがって、本委員会で検討した経験能力評価基準(仮称)については、本人が自己の経験能力を客観的に把握・評価できるのみならず、事業主がフリーターの職業能力を正当に評価するための手だてとなるものでもある。本基準が、若年者及び事業主双方に対して、相互の橋渡しに資するものとなり、フリーター特に年長フリーター等の雇用機会の確保につながることが強く期待されるところである。

・ さらにいえば、こうした経験能力の評価基準の策定は初めての取組であることから、活用に当たって、フリーターがビジネス風土に馴染んでいくプロセスで活用されることに伴う必要な配慮、アルバイト等の職種によって抽出した職務行動についての判定ができないケースが生じた場合には柔軟な対応が必要であり、これらの状況も踏まえつつ、引き続き見直しを図っていく方向で対応することが望まれる。

表3 フリーターであったことの評価別企業数割合(2004年)

(単位:%)
企業規模 プラスに評価する マイナスに評価する 評価にほとんど影響しない 無回答
総計 3.6 30.3 61.9 4.2
5000人以上 1.8 34.0 56.0 8.2
1000〜4999人 1.4 33.2 61.9 3.4
300〜999人 2.4 34.1 60.1 3.4
100〜299人 2.9 33.7 60.3 3.1
30〜99人 4.0 28.8 62.6 4.6

資料出所:厚生労働省「平成16年雇用管理調査」

表4 フリーターであったことをマイナスに評価する企業の理由別企業数割合

複数回答(単位:%)
企業規模 フリーターであったことをマイナスに評価する企業 根気がなくいつ辞めるかわからない 年齢相応の技能、知識がない 責任感がない 組織になじみにくい 職業に対する意識などの教育が必要 入社時の格付け、配置が難しい 人物像がつかみにくい その他 無回答
総計 [30.3] 100.0 70.7 38.1 51.1 36.3 42.6 14.6 29.1 5.5 0.8
5000人以上 [34.0] 100.0 33.6 50.9 26.7 34.5 44.8 19.8 8.6 12.1 -
1000〜4999人 [33.2] 100.0 50.3 37.9 33.1 37.6 44.5 21.0 23.6 8.0 -
300〜999人 [34.1] 100.0 58.3 44.0 40.5 35.8 44.4 22.7 20.9 7.2 0.4
100〜299人 [33.7] 100.0 67.3 41.2 48.9 42.9 43.9 17.7 26.3 5.6 0.3
30〜99人 [28.8] 100.0 74.2 36.3 53.7 34.1 41.9 12.4 31.3 5.2 1.1
平成13年調査                      
総数 [30.2] 100.0 73.1 26.0 55.2 40.1 39.3 15.9 28.3 3.0 0.0

注:[ ]内の数字は、フリーターであったことをマイナスに評価する企業の割合である。
資料出所:厚生労働省「平成16年雇用管理調査」


第2章 経験能力評価基準(仮称)について

1 経験能力評価基準(仮称)の考え方

「経験能力評価基準(仮称)」においては、職務経験を重ねる段階を、(1)自らの働く意識を形成する段階、(2)他者との関係の中で職務を行うために必要な能力を形成する段階、(3)職務への取組をさらに発展したものとするために必要な能力を形成する段階、(4)さらに専門的な職業能力を形成する段階の4段階とし、第1の段階において「働く意識と取組」「責任感」、第2の段階において「ビジネスマナー」「コミュニケーション」「チームワーク」、第3の段階において「チャレンジ意欲」「考える力」、第4の段階において「自己調整力」「専門性」を培われる職業能力として分類している。そして、それぞれの能力において、その修得度の段階に応じて抽出した職務行動を配列している。

【自らの働く意識を形成する段階】
○  働く意識と取組(職業意識・勤労観を持ち職務に取り組む能力)

職業選択や職務遂行を通じて働くことを自らの問題としてとらえ、働くことの意義や目的を考えることにより自らの職業意識・勤労観が形成される。これにより職務の意義を自らの職業意識・勤労観と関連づけて理解し、職務に取り組むことにより培われる能力を「働く意識と取組」とする。

職業意識・勤労観との関連の深まりに沿って、とられる職務行動を段階的に抽出する。具体的には、(1)既に決められている法令や職場ルール・慣行等の遵守、(2)自らの職務によって定める時間を確実に守る行動、(3)業務指示・命令をかみ砕いて自らの職務に取り込む行動、(4)職務への自らの目的意識の設定、(5)職務に前向きに反映されていることの順となる。

○  責任感(社会の一員としての自覚を持って主体的に職務を遂行する能力)

職業意識・勤労観に基づき自らの職務に取り組むことにより、職務に対する責任が自覚される。これは自らの職業において職務を分担することに伴う責任であり、社会の一員としての自覚につながる。これに基づいて自らの職務を主体的に遂行することにより培われる能力を「責任感」とする。

自らの責任を意識する職務の程度に沿って、とられる職務行動を段階的に抽出する。具体的には、(1)依頼され引き受けた仕事に対する責任、(2)自らも合意した約束事に対する責任、(3)手順を伴う一連の職務全体に対する責任、(4)職務を遂行した結果に対する責任、(5)次の職務へのつながりを見通した職務に対する責任の順となる。

【他者との関係の中で職務を行うために必要な能力を形成する段階】
○  ビジネスマナー(円滑に職務を遂行するためにマナーの良い対応を行う能力)

職場において職務を遂行する際には、上司・同僚・後輩及び仕事上の相手や顧客(お客様)などとの接触・やりとりが必要となり、互いに相手に配慮した態度・対応で接することがマナーとして社会通念上定着している。アルバイト等の職業経験においても円滑に職務を遂行するためにマナーのよい対応を行う能力が培われるので、これを「ビジネスマナー」とする。

職務において求められる頻度に沿って、とられる職務行動を段階的に抽出する。具体的には、(1)身だしなみ、(2)日常的あいさつ、(3)状況に応じた敬語、(4)お客様に対する礼儀、(5)接遇時、訪問時などのビジネスマナーの順となる。

○  コミュニケーション(適切な自己表現・双方向の意思疎通を図る能力)

職場において上司・同僚・後輩及び仕事上の相手や顧客などに接しながら仕事上必要なことを正確に相手に伝えることが必要となる。この適切に自己表現を行い、相手への配慮を行いながら双方向の意思疎通を図ることにより培われる能力を「コミュニケーション」とする。

能力が前提となる職務行動の程度に沿って、(1)事実等の正確な伝達、(2)意見や主張の説明、(3)依頼や折衝、(4)人間関係構築、(5)困難な人間関係構築の順となる。

○  チームワーク(協調性を発揮して職務を遂行する能力)

職場において上司・同僚・後輩と協同で職務を遂行するためには、仕事上必要なことを正確に伝えながらさらに相手の立場や置かれた状況等を理解することによる協調性を発揮した職務行動をとることが必要となる。この協調性を発揮して職務を遂行することにより培われる能力を「チームワーク」とする。

協調性が発揮される程度により遂行される職務行動に沿って、(1)周囲に目配りをして手伝っている、(2)仕事を分担し協同で取り組んでいること、(3)周囲の状況を考えて実施していること、(4)困難な人間関係においても協力して仕事をしていること、(5)新人や下位者の指導に当たっていることの順となる。

【職務への取組をさらに発展したものとするために必要な能力を形成する段階】
○  チャレンジ意欲(行動力・実行力を発揮して職務を遂行する能力)

職務遂行に当たってさらに発展的に職務内容の充実を図っていくためには、仕事を効率的に進めるために作業の工夫や改善が必要であり、新たな課題を発見しながらこれを解決していくこと、さらには困難や障害に対しても原因をつきとめ解決していく必要がある。この行動力・実行力を発揮して職務を遂行することにより培われる能力を「チャレンジ意欲」とする。

行動力・実行力を発揮して遂行する業務の困難度に沿って、(1)与えられた職務に対する工夫や改善、(2)与えられた職務への発展的対応、(3)必要性が認められるものの改善への行動、(4)未経験・難しい職務への意欲、(5)資格取得・自己啓発の順となる。

○  考える力(向上心・探求心を持って課題を発見しながら職務を遂行する能力)

職務に対する取組みをさらに発展させて新たな課題を発見しながら職務を進めていくためには、現在の職務に対して自ら見通しを立てて必要な行動をとり、仕事を効率的に進めるための作業の工夫や改善が必要であり、新たな課題を発見しながらこれを解決していくこと、さらには困難や障害に対しても原因をつきとめ解決していく必要がある。ここでは、向上心・探求心を持って課題を発見しながら職務を遂行することにより培われる能力を「考える力」とする。

遂行する業務の困難度及びPDCAサイクルの過程に沿って、(1)与えられた職務に対する分析・計画・実施、(2)新たな職務に対する取組立案・実施、(3)実施している職務の評価・改善実施、(4)困難や障害への対応策発見、(5)予期しない問題の解決策発見の順となる。

【さらに専門的な職業能力を形成する段階】
○  自己調整力(ストレスをコントロールしながら職務を継続する能力)

職務において上司・同僚・後輩及び顧客(お客様)との関わり、また、負担感の高い職務等に対応の中で、身体面とならび精神面での負担がかかる。これに対して職務を継続していくためには、精神面での自己調整が不可欠になる。そのため、ストレスをコントロールしながら職務を継続することにより培われる能力を「自己調整力」とする。

未然防止、ストレスに直面した際の対応、ストレスをコントロールしての職務遂行の順に沿って、(1)自己の健康管理、(2)感情的にならない自己コントロール、(3)ストレス解消策の実践、(4)自己調整した上での職務行動、(5)職務上の負担感を乗り越えた前向きな職務行動の順となる。

○  専門性(自らの専門的能力を蓄積しながら職務に活かしていく能力)

技術や技能などの専門的能力は、自らその能力を意識して職務に活用することにより向上し、さらに職務遂行に当たって職業経験・自己啓発等を通じて蓄積されていく。そこで、さまざまな専門的能力を蓄積しながら職務に活かしていくこと、また活かしていこうとする能力を「専門性」とする。

職務に生かす専門的能力の多寡及び職務遂行への反映度に沿って、(1)身につけている能力を職務への活かし方に気づいていること、(2)積極的に活かしていること、(3)職務内容を踏まえ自己啓発を行っていること、(4)様々な専門的能力を職務に活かす方法を工夫して組み合わせながら職務に活かしていること、(5)様々な専門的能力をさらに身につけ、困難度の高い職務に取り組んでいることの順となる。

2 経験能力評価基準

「経験能力評価基準」は別添のとおり。(省略)


第3章 委員会等の活動

1 委員会の構成

経験能力評価基準(仮称)の策定に当たっての検討を行った委員会の構成は以下のとおり。

表5 包括的職業能力評価制度整備委員会(コンビニエンスストア業) (敬称略)

氏 名 所属先・役職名
上原征彦 明治大学大学院 グローバルビジネス研究科 教授
泉井清志 (株)セブンーイレブン・ジャパン トレーニング部   社員トレーニング担当
総括マネージャー
竹内修一 (株)サークルKサンクス 運営統轄本部 運営本部 運営総務部
部長
細江雅彦 ミニストップ(株) 管理本部 人事部 教育担当マネージャー
村山  啓 (株)ローソン ヒューマンリソースステーション 人事企画リーダー
望月啓之 (株)ファミリーマート 開発本部 店舗開発業務部 開発推進グループ マネージャー
内野達矢 (社)日本フランチャイズチェーン協会 研修・調査課長(平成19年6月まで)
武田  暁 (社)日本フランチャイズチェーン協会 研修・調査部(平成19年6月より)

2 委員会の活動経緯

経験能力評価基準(仮称)の委員会での検討は、以下の日程で3回実施された。

表6 委員会検討日程

  開催日 開催の状況
第1回 平成19年4月25日(水) ・プレ調査の結果を基に議論
第2回 平成19年7月20日(金) ・1次調査結果を基に議論
第3回 平成19年9月20日(木) ・2次調査結果を基に議論
【主な意見と検討結果】
○第1回

・たたき台となる「経験能力評価基準(仮称)」イメージ(評価シート等)を提示。評価シート等はアルバイト等の職業における職務分析に基づき職務行動を抽出し能力を整理したものである。

・そのたたき台(評価シート)を基に行ったプレ調査結果の報告を行った。

・評価シートの利用等について、確認、議論し、たたき台について了承。

・「経験能力評価基準(仮称)」イメージ(評価シート等)を「経験能力評価基準(仮称)」素案として、1次調査でさらに検討を行うこととした。

○第2回

・1次調査結果の報告を行った。

・1次調査結果に基づき、「経験能力評価基準(仮称)」素案をさらに検討、修正した「経験能力評価基準(仮称)」(案)を提示し、議論のもと、評価項目の追加等を了承した。

○第3回

・2次調査結果の報告を行った。

・前回委員会での審議を踏まえて作成された「経験能力評価基準(仮称)」案を2次調査結果と併せて検討し、了承した。

3 企業調査概要

○プレ調査

プレ調査は、小売業とコンビニエンス業の2社に対し、企業ヒアリングを行った。ヒアリングの内容は、(1)アルバイト等の職業における職務分析に基づき職務行動を抽出し能力を整理した。また、(2)「経験能力評価基準(仮称)」イメージ(評価シート等)に関する意見を伺った。

○1次調査

1次調査は、第1回で了承された「経験能力評価基準(仮称)」素案を基に、企業に対してヒアリング調査を行った。プレ調査同様に、他業種の企業に対して(1)フリーター等を正社員として雇用する際の必要な能力について確認した。特に、仮に設定した6つの評価項目「I職場ルールの遵守/規律性」、「II チームワーク/協調性」、「III チャレンジ意欲/積極性」、「IV 仕事への責任感/責任性」、「V コミュニケーション/人間関係構築」、「VI ビジネスマナー」についての吟味とともに、それ以外に必要な能力はないかの確認も行った。(2)経験能力評価基準(仮称)」素案に対する意見を聞いた。特に次のようなフィードバックがあった。

(1)フリーターが書きやすいシートに

・アルバイト経験があったとしても社会人として仕事の経験がないフリーター等では自己評価は難しいのではないか。

(2)企業として求人者の知りたいこと

・企業としては、フリーターであった理由が知りたい。何らかの目標があって努力していたかなど、積極的な理由もある。

(3)活用面の検討が必要

・以前仕事をしていた企業に評価してもらうのは無理があるのではないか。しかも自己評価はもちろん、上司評価にあっても、その信憑性の確保は難しいのではないか。

(4)必要能力の追加

・新たに盛り込み必要がある項目として「考える力」「ストレス耐性」「働く意識と取組み」が出された。「職場ルールの遵守」は、新たに設けた「働く意識と取組み」に組み込み、計8つの能力(項目)とした。

○2次調査

2次調査は、1次調査結果や委員会の検討内容を踏まえ、下記によりシートの修正を図った上で実施した。

(1) 評価基準の設定

アルバイト等により培われた能力を「経験能力評価基準」として従来の8項目に加え、「専門性」(仕事の経験が様々な業種に生かされる能力)を追加した9項目に設定し、能力要件を明確化した。

(2) 上司アドバイスシート

上司評価シートを上司アドバイスシートとして、評価を主体とするものから、本人の気づきを促すことを目的としたアドバイスシートとしてその位置づけを変えた。

(3) 経験能力記述シート

自己プロフィールのシートを「経験能力シート」として「経験能力評価基準」に基づき、上司やハローワークのアドバイスを参考に自身が記述するシートとした。

追加修正した評価項目は以下の9項目

「I 働く意識と取組(自らの職業意識・勤労観を持ち職務に取り組む能力)」、

「II 責任感(社会の一員として自覚を持って職務を遂行する能力)」、

「III ビジネスマナー(円滑に職務を遂行するためにマナーの良い対応を行う能力)」

「IV コミュニケーション(適切な自己表現・双方向の意思疎通を図る能力)」、

「V チームワーク(協調性を発揮して職務を遂行する能力)」、

「VI チャレンジ意欲(行動力・実行力を発揮して職務を遂行する能力)」、

「VII 考える力(向上心・探求心を持って課題を発見しながら職務を遂行する能力)」

「VIII 自己調整力(ストレスをコントロールしながら職務を継続する能力)」

「IX 専門性(自らの専門的能力を蓄積しながら職務に生かしていく能力)」

その結果、次のような主なフィードバックがあった。

(1)評価項目について

・項目はこの9つで十分足りている。このシート構成でまずやってみることが大事ではないか。それで修正を加えていく方がよい。

(2)ツールとして

・自己評価シートを見ながら、参考にしながら面接するには、よいツールである。また、評価シートではなく、本人が記述することにより、考えが伝わるのでよい。

(3)シートの活用について

・シートを利用しない人の就職活動もある。ハローワークとの連携も含めキチンと提示してほしい。

(4)記述例を提示

・ 求職者(フリーター)が書けるように、わかりやすい記述例を詳しく提示してほしい。

ヒアリング先は次のとおり。

表7 企業調査(ヒアリング先:業種)一覧

  調査時期 業種 企業名 事業内容
1 1次調査 サービス業 A社 コールセンター事業
2 IT業 B社 ITソリューション
3 調査業 C社 調査全般、マーケティングリサーチ
4 人材育成 D社 人材紹介、「JAIC営業カレッジ」
5 ロジスティクス E社 物流サービス、引越し、物流センター
6 2次調査 サービス業 F社 ボウリング場業、コンビニ業、その他
7 ビルメンテナンス業 G社 ビルメンテナンス全般清掃、設備、警備等
8 製造業 H社 自動車関連部品、エレクトロニクス関連部品等
9 製造業 I社 アルミアルマイト処理
10 建設業 J社 総合建設業
11 人材育成 K社 人材紹介、「JAIC営業カレッジ」
12 サービス業 L社 テーマパークの経営・運営

トップへ