職業能力開発局総務課基盤整備室
室    長    亀島    哲
室長補佐    宇野    浩一
電話 03(5253)1111(内線5601)
03(3595)3377(夜間直通)
厚生労働省発表
平成19年7月19日(木)

「平成18年度 能力開発基本調査 結果概要」

<ポイント>

・  企業の能力開発方針において、「企業責任」、「ライン主導」、「労働者全体」重視の傾向が強まる

・  「人材育成に問題がある」とする事業所は8割

・  正社員を大きく下回る非正社員に対する教育訓練等

・  「忙しくて自己啓発の時間がない」など多くの労働者が自己啓発に問題意識

「能力開発基本調査」は、我が国の企業、労働者の能力開発の実態を明らかにすることを目的として、平成13年度より実施しており、平成18年度は、平成17年度(平成17年4月1日〜平成18年3月31日)の1年間の能力開発の方針、教育訓練の実施状況、自己啓発の実施状況等について、平成18年11月から平成19年2月にかけて実施したものである。

平成18年度における本調査は、総務省の承認を受け実施している。

1  企業の能力開発方針において、「企業責任」、「ライン主導」、「労働者全体」を重視する傾向が強まる

(1) 企業における「これまで」と「これから」の能力開発方針について、次の傾向が見られた。

[1] 能力開発責任は、企業の責任とする傾向が今後一層強まる。ただし、正社員に比べ、非正社員に対しては企業責任とする企業の割合は低い。
(「企業の責任」「企業の責任に近い」正社員68.4%→74.8%、非正社員51.8%→56.9%。)

[2] 本社主導の教育訓練から、今後、ライン主導への教育訓練への傾向が強まる。
(「ライン主導」「ライン主導に近い」正社員45.3%→51.2%、非正社員53.7%→57.7%。)

[3] 能力開発の対象者は、選抜重視よりも労働者全体のレベル重視が、今後、やや強まる。
(「労働者全体のレベル重視」「労働者全体のレベル重視に近い」正社員52.1%→58.3%、非正社員57.6%→59.7%。)

さらに、

[4] 引き続きOJT重視の傾向は続くが、そうした中で、今後については、OFF-JT重視がやや増える傾向が伺える。
(「OFF-JT重視」「OFF-JT重視に近い」正社員22.9%→32.2%、非正社員19.7%→24.0%。)

※ 「→」の左は「これまで」、右は「これから」の割合をそれぞれ示したもの。
→ 参照図表NO.3〜10

2 「人材育成に問題がある」とする事業所は8割

(1) 「人材育成に問題がある」とする事業所は、80.6%にのぼる。

(2) 問題の内訳を見ると、「指導する人材が不足している」59.1%、「人材育成を行う時間がない」55.7%とする事業所が多い。
  → 参照図表NO.13

3 正社員を大きく下回る非正社員の教育訓練等

(1)  非正社員に対する「OFF-JT」実施事業所は37.9%、「計画的なOJT」実施事業所は32.2%、「自己啓発支援」実施事業所は、38.0%であり、いずれも正社員に対する「OFF-JT」実施事業所の72.2%、「計画的なOJT」実施事業所の53.9%、「自己啓発支援」実施事業所77.3%に比べ、大きく下回っている。
  → 参照図表NO.11,12,14,15

(2)  OFF-JTを受講した非正社員は31.0%と正社員の58.2%を大きく下回り、また、OFF-JTを受講した者の平均延べ受講時間でも非正社員は17.6時間と、正社員の33.2時間を大きく下回っている。
  → 参照図表NO.26

4 「忙しくて時間がない」など多くの労働者が自己啓発に問題意識

<自己啓発の実施状況>

(1)  自己啓発を行った者は、正社員では46.2%、非正社員では23.4%であった。

(2)  自己啓発を行った者の一人当たり平均延べ受講時間は、正社員で42.7時間、非正社員で30.8時間。

(3) 正社員・非正社員ともに、「10時間〜50時間未満」の延べ受講時間の者が最も多く、50時間未満の者が、過半を占めた(正社員62.6%、非正社員69.4%)。
  → 参照図表NO.29,30

<自己啓発上の問題等>

(1)  自己啓発に問題があるとした労働者は、正社員では85.5%、非正社員では71.7%。

(2) 自己啓発における問題として、正社員、非正社員ともに「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」が最も多く、次いで、「費用がかかりすぎる」、「セミナー等の情報が得にくい」となっている。

(3)  正社員に比べ、非正社員が問題とする割合が高いのは、「家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない」、「セミナー等の情報が得にくい」、「適当な教育訓練機関が見つからない」、「やるべきことがわからない」。

(4) 企業の教育訓練費の中でも、1社当たりの平均OFF-JT費用額326.7万円に比べて、自己啓発支援費用は40.3万円と少ない。
  → 参照図表NO.1,32,33

<職業生活設計における正社員と非正社員の考え方>

(1)  これからの職業生活の設計についての考え方について、正社員は、自分自身での職業生活設計を主体的に考えていきたいとする者が7割近く(67.9%)を占めている。

(2) 一方、非正社員においては、主体的に考えていきたいとする者が半数に満たず(46.3%)、「わからない」とする者が3割となっている。

(3) キャリア・コンサルティングを利用したいとする者は、正社員では43.5%、非正社員では30.0%となっている。
  → 参照図NO.36,37

5 職業能力評価の実施事業所は約6割、その3/4が問題点を感じている

(1) 職業能力評価を「実施している」事業所は、61.1%であった。

(2) 職業能力評価の事業所での活用状況を見ると、「人事考課の判断基準」82.1%、「人材配置の適正化」57.5%、「労働者に必要な能力開発の明確化」37.6%などとなっている。

(3) 職業能力評価を実施している事業所で、職業能力評価に問題点を感じている事業所は、75.2%。

(4) 問題点としては、「全部門・職種で公平な評価項目の設定が難しい」80.9%とするところが多い。
  → 参照図表NO.21,22,25

6 団塊の世代の退職等に伴う技能継承の問題があるとする事業所は約3割

(1)  団塊の世代の退職等に伴う技能の継承問題(いわゆる「2007年問題」)に対して、問題があるとする事業場は、29.6%であった。

(2)  業種別にみると、「建設業」58.0%、「電気・ガス・熱供給・水道業」57.0%、「製造業」46.2%で高い。

(3)  規模が大きくなるほど、問題があるとする事業所の割合は高くなり、1000人〜4999  人規模では60.3%、5000人以上規模では87.9%の事業所が問題があるとしている。
  → 参照図表NO.19,20


I 調査の概要

1  能力開発調査は、我が国の企業、事業所及び労働者の能力開発の実態を正社員・非正社員の別に明らかにし、職業能力開発行政に資することを目的として実施した。

2  調査は、「企業調査」、「事業所調査」、「個人調査」からなり、主な調査項目は下表のとおりである。

調 査 票主 な 調 査 項 目
企業調査企業の教育訓練費用、従業員に対するする能力開発の方針
事業所調査教育訓練の実施状況、人材育成上の問題、キャリア形成のための支援、
団塊の世代の退職等に伴う技能継承、職業能力評価
個人調査OFF-JTの受講状況、自己啓発の実施状況、これからの職業生活の設計

3  調査の対象は、全国・全業種の従業員規模30人以上の企業から無作為に抽出した企業、事業所及びその従業員であり、調査対象数、有効回答数及び有効回答率は以下のとおりである。
(1) 企業調査
調査対象数:7,372企業   有効回答数:2,333企業  有効回答率:31.7%
(2) 事業所調査
調査対象数:6,886事業所 有効回答数:2,836事業所 有効回答率:41.2%
(3) 個人調査
調査対象数:23,637人    有効回答数:8,644人    有効回答率:36.6%

4  構成比は小数点以下2位を四捨五入しているため、計は必ずしも100.0とはならない。


II 調査結果の概要(骨子)

1 企業調査
(1)企業の教育訓練費用

(1)1社平均の教育訓練費(図1、図2)

OFF-JT費用及び自己啓発支援費用の1社平均総額366.9万円*1であった。OFF-JT費用326.7万円に比べると、自己啓発支援費用40.3万円は小さな額となっている。

OFF-JT費用の内訳では、「研修委託費・参加費」49.9%の割合が高く、次いで、「社外に支払う人件費」17.6%、「社内の人件費」14.0%となっている。


*1 千円単位で四捨五入となっているため計は一致しない

(2)従業員に対する能力開発の方針

(1) 「企業の責任」か「労働者の責任」か(図3、図4)

正社員に対する能力開発は、企業の責任又は企業の責任に近いとする企業は68.4%であり、労働者の責任又は労働者の責任に近いとする企業の30.0%を大きく上回っている。

一方、非正社員の能力開発については、企業責任又は企業の責任に近いとする企業は51.8%と正社員に比べその割合は低い。

今後については、正社員、非正社員ともに、企業の責任とする企業の割合が高まっている。

(2) 「選抜重視」か「全体重視」か(図5、図6)

正社員に対するこれまでの教育方針については、「労働者全体の能力レベルを高める教育訓練」を重視する又は重視するに近いとする企業は52.1%であり、「選抜した労働者の能力レベルを高める教育訓練」を重視する又は重視するに近いとする企業の46.5%をやや上回っている。今後の教育方針をみると、「全体」を重視する又は重視するに近いとする企業は58.3%に対し、「選抜」を重視する又は重視するに近いとする企業は40.3%であり、「労働者全体の能力レベルを高める教育訓練」を重視する企業が増えている。

一方、非正社員に対するこれまでの教育方針については「全体」を重視する又は重視するに近いとする企業は57.6%となっており、「選抜」を重視する又は重視するに近いとする企業の37.9%を大きく上回っている。今後の教育方針をみても、「全体」を重視する又は重視するに近いとする企業が59.7%とこれまでより増えている。


(3) 「本社主導」か「ライン部門主導」か(図7、図8)

正社員に対するこれまでの教育訓練の主導主体については、「本社主導」を重視する又は重視するに近いとする企業は52.0%であり、「ライン部門主導」を重視する又は重視するに近いとする企業の45.3%をやや上回っている。今後の教育訓練の主導主体をみると、「本社主導」を重視する又は重視するに近い企業は46.3%に対し、「ライン部門主導」を重視する又は重視するに近いとする企業は51.2%であり、逆に「ライン部門主導」が「本社主導」を上回っている。

一方、非正社員に対するこれまでの教育訓練の主導主体については正社員とは逆に、「本社主導」を重視する又は重視するに近いとする企業は41.3%と、「ライン部門主導」を重視する又は重視するに近いとする企業の53.7%を下回っている。今後の教育訓練の方針についても、「ライン部門主導」を重視する又は重視するに近い企業が57.7%となっており、これまでより、「ライン部門主導」を重視する又は重視するに近いとする企業が増えている。


(4) 「OJT」か「OFF-JT」か(図9、図10)

正社員に対するこれまでの教育訓練の方法については、「OFF-JT」を重視する又は重視するに近い企業は22.9%であり「OJT」を重視する又は重視するに近いとする企業の75.3%を大きく下回っている。今後の教育訓練の方法をみると、「OFF-JT」を重視する又は重視するに近い企業は32.2%であり、「OJT」を重視する又は重視するに近い企業の65.8%を下回っているものの、「OFF-JT」を重視する又は重視するに近いとする企業が増えている。

一方、非正社員に対するこれまでの教育訓練の方法については「OFF-JT」を重視する又は重視するに近い企業は19.7%であり「OJT」を重視する又は重視するに近いとする企業の75.7%を正社員と同じように大きく下回っている。今後の教育訓練の方法については「OFF-JT」を重視する又は重視するに近い企業は24.0%と、正社員ほどではないが「OFF-JT」を重視する又は重視するに近いとする企業が増えている。


2 事業所調査
(1)教育訓練の実施状況

(1) OFF-JTの実施状況(図11)

平成17年度に、正社員に対して、OFF-JTを「実施した」事業所は72.2%であった。業種別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」89.4%、「医療,福祉」84.9%、「金融・保険業」84.4%が高い一方、「教育,学習支援業」58.3%、「飲食店,宿泊業」66.4%とと低くなっている。事業所規模別にみると、規模が大きくなるにつれて実施率は高くなっている。

一方、非正社員に対して、OFF-JTを「実施した」事業所は37.9%と正社員に対する場合に比べて低い水準にとどまっていた。業種別にみると、「医療,福祉」で70.6%、「金融・保険業」で62.5%と高い一方、「建設業」17.0%、「情報通信業」24.2%などが低くなっている。事業所規模別に見ると、規模が大きくなるにつれて実施率は高くなる傾向は伺われるが、正社員に対する場合と違い、必ずしも明確なものとはなっていない。

(2) 計画的なOJTの実施状況(図12)

平成17年度に、正社員に対して、計画的なOJTを「実施した」事業所は53.9%であった。業種別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」80.5%、「金融・保険業」77.8%が高くなっている。事業所規模別にみると、規模が大きくなるにつれて実施率は高くなっており、OFF-JTに比べて規模による差が大きい。

一方、非正社員に対して、計画的OJTを「実施した」事業所は32.2%と正社員に対する場合に比べて低い水準にとどまっている。業種別にみると、「医療,福祉」で53.5%、「金融・保険業」で53.1%と高い一方、「建設業」14.2%、「情報通信業」16.6%などが低くなっている。事業所規模別に見ると、概ね規模が大きくなるに従って、実施率が高くなるが、500人以上規模ではほぼ同程度の実施率となっている。

(2)人材育成上の問題(図13)

能力開発や人材育成に何らかの「問題がある」とする事業所は、80.6%にのぼる。問題点の内訳を見ると、「指導する人材が不足している」59.1%、「人材育成を行う時間がない」55.7%とする事業所が多く、次いで、「鍛えがいのある人材が集まらない」36.3%、「人材を育成しても辞めてしまう」35.6%となっている。

(3)キャリア形成のための支援

(1) 自己啓発に対する支援(図14、図15)

正社員の自己啓発を支援している事業所は77.3%であった。「受講料などの金銭的な援助」は63.4%の事業所で実施しており、「就業時間の配慮」43.0%、次いで「社内での自主的な勉強会等に対する援助」41.1%、「教育訓練機関、通信教育等に関する情報提供」40.5%といった支援が多い。

非正社員の自己啓発を支援している事業所は38.0%であり、「受講料などの金銭的支援」は21.4%にとどまっている。

(2) 教育訓練休暇制度の導入(図16)

教育訓練休暇制度を導入している事業所は、10.3%にとどまっている。教育訓練休暇制度を導入しない理由としては、「労働者からの制度導入の要望がない」30.3%が最も多く、「制度導入のメリットを感じない」23.4%となっている。

(3) キャリア・コンサルティング制度の導入(図17)

キャリア・コンサルティング制度を導入している事業所は、6.5%にとどまっている。キャリア・コンサルティングを導入しない理由としては、「制度導入のメリットを感じない」24.7%、「労働者からの制度導入の要望がない」24.5%となっている。

(4) キャリア形成に影響する諸制度の導入状況(図18)

労働者のキャリア形成に影響すると思われる諸制度の導入状況を見てみると、導入が3割を超えていたのは、「目標管理制度」、「変形労働時間制」、「自己申告制度」、「非正社員と正社員との間の転換制度」、「短時間勤務制度」であった。

(4)団塊の世代の退職等に伴う技能継承

(1) 団塊の世代の退職等に伴う技能の継承問題の有無(図19)

団塊の世代の退職等に伴う技能の継承問題(いわゆる「2007年問題」)に対して、問題があるとする事業所は、29.6%であった。

業種別にみると、「建設業」58.0%、「電気・ガス・熱供給・水道業」で57.0%、「製造業」で46.2%と高い一方で、「金融・保険業」、「不動産業」、「飲食店,宿泊業」、「医療,福祉」などでは低くなっている。

事業所規模別にみると、規模が大きくなるほど、問題があるとする事業所の割合は高くなり、1000人〜4999人規模では60.3%、5000人以上規模では87.9%の事業所が問題があるとしている。

(2) 技能継承問題に対する取り組み状況(図20)

技能継承問題に対して特段何の取組も行なっていないとする事業所は2.5%とほとんどなく、多くは何らかの取組を行っている。その取組内容をみると、「退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」81.1%、「中途採用を増やしている」43.2%、「新規若年者の採用を増やしている」38.0%、「事業所内で非正社員、派遣労働者、請負業者等を活用している」33.2%が多くなっている。

また、技能継承問題に対する取組に「うまくいっている」又は「ある程度うまくいっている」としている事業所は65.8%に対して、「うまくいっていない」又は「あまりうまくいっていない」としている事業所は33.5%となっている。

(5)職業能力評価

(1) 職業能力評価の実施状況(図21)

平成17年度に、職業能力評価を「実施している」事業所は、61.1%であった。

業種別にみると、「金融・保険業」が87.9%と特に高い。

(2) 職業能力評価の活用状況(図22)

職業能力評価の事業所での活用状況を見ると、「人事考課の判断基準」82.1%、「人材配置の適正化」57.5%、「労働者に必要な能力開発の明確化」37.6%などとなっている。

(3) 職業能力評価における資格の利用状況(図23、図24)

職業能力評価における資格の利用状況を見ると、資格を利用しているとする事業所が、67.8%であり、「正社員、非正社員の両方に利用している」20.5%、「正社員のみに利用している」46.3%であり、「非正社員のみに利用している」1.1%であった。資格の処遇への反映状況を見ると、「給与」で76.9%、「昇格・降格」で56.0%、「賞与」で41.8%、「異動・配置転換」で34.0%の事業所で処遇へ何らかの形式で反映させている。

(4) 職業能力評価に対する問題点(図25)

職業能力評価を実施している事業所で、職業能力評価に問題点を感じている事業所は、75.2%であった。問題点としては、「全部門・職種で公平な評価項目の設定が難しい」80.9%とするところが多く、次いで「評価者が評価基準を把握していないため、評価内容にばらつきが見られる」44.5%、「労働者へ能力評価結果の開示が行われていない」24.2%、「評価者の負担が大きい」22.1%となっている。

3 個人調査
(1)OFF-JTの受講状況

(1) OFF-JTの受講状況(図26)

平成17年に、OFF-JTを受講した正社員は58.2%、非正社員は31.0%であった。業種別に見て、正社員、非正社員ともに、「医療,福祉」の受講率が高く、正社員と非正社員の受講率に差が大きかったのは、「製造業」、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「飲食店,宿泊業」であった。また、OFF-JTを受講した者の平均延べ受講時間は、正社員33.2時間、非正社員17.6時間となっている。

(2) OFF-JTの受講内容(図27)

平成17年度に、正社員が「OFF-JT」を受講した内容は、社外で行われたOFF-JTでは、「職能別研修」35.2%が多く、次いで「課題別研修」22.3%、「階層別研修」15.8%となっている。社内では、「階層別研修」36.3%、「職能別研修」35.9%、「課題別研修」32.3%は同程度の受講状況であった。

一方、非正社員が「OFF-JT」を受講した内容は、社外で行われたOFF-JTでは、「職能別研修」19.1%、次いで「課題別研修」11.7%「階層別研修」7.6%となっている。社内では、「職能別研修」37.4%が最も多く、次いで「課題別研修」29.5%「階層別研修」24.1%となっている。

また、労働者側から見た各研修の役立度では、いずれも研修も「役立だった」又は「ある程度役だった」とする者が多いが、正社員における評価よりも、非正社員における評価の方が一層高い傾向が見られる。

(3) OFF-JTの実施主体(図28)

OFF-JTを受講した者について、受講した教育訓練の実施主体をみると、正社員においては、「自社」66.5%、「民間教育訓練機関」32.4%、「能力開発協会、労働基準協会、公益法人、その他の業界団体」23.1%が高くなっている。

一方、非正社員においては、「自社」が76.5%と正社員に比べても高く、次いで「親会社・グループ会社」12.9%となっており、受講形態は正社員と異なる様子が伺われる。

(2)自己啓発の実施状況

(1) 自己啓発の実施状況(図29、図30)

平成17年度に自己啓発を行った者は、正社員では46.2%、非正社員では23.4%であった。

一人当たり平均延べ受講時間を見ると、正社員では、42.7時間、非正社員では30.8時間となっており、正社員・非正社員ともに、「10時間〜50時間未満」の延べ受講時間の者が最も多く、50時間未満の者が、過半を占めた(正社員62.6%、非正社員69.4%)。

(2) 自己啓発の実施形態(図31)

どのような自己啓発を行ったかについてみると、正社員においては、「社内の自主的な勉強会・研究会への参加」42.8%、「ラジオ・テレビ・専門書・インターネットなどによる自学・自習」39.0%が多く、次いで、「民間教育訓練機関の講習会・セミナーへの参加」28.6%、「社外の勉強会・研究会への参加」23.2%、「通信教育の受講」21.3%と続いている。

一方、非正社員においても、「社内の自主的な勉強会・研究会への参加」50.9%、「ラジオ・テレビ・専門書・インターネットなどによる自学・自習」33.6%を行った者が多く、次いで「社外の勉強会・研究会への参加」22.1%、「民間教育訓練機関の講習会・セミナーへの参加」19.7%、「通信教育の受講」14.3%と続いている。

(3) 自己啓発の問題(図32、図33)

自己啓発について何らかの問題があるとした労働者は、正社員では85.5%、非正社員では71.7%であった。

自己啓発における問題の内訳を見てみると、正社員では、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」60.5%が最も多く、次いで、「費用がかかりすぎる」、40.3%、「セミナー等の情報が得にくい」、「自己啓発の結果が社内で評価されない」、「適当な教育訓練機関が見つからない」、「コース受講や資格取得の効果が定かではない」とする者が同程度の割合となっている。

一方、非正社員においても、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」42.6%が正社員と同様にもっとも多いが、正社員と比べるとその割合は低くなっている。次いで、「費用がかかりすぎる」36.5%、「セミナー等の情報が得にくい」30.6%となっている。「家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない」、「セミナー等の情報が得にくい」、「適当な教育訓練機関が見つからない」、「やるべきことがわからない」は正社員と比べてより問題点とする割合が高い。

(4) 自己啓発に関する情報(図34、図35)

自己啓発に関して情報が不足しているとした労働者は、正社員では64.6%、非正社員では54.1%であった。不足しているとした情報は、正社員・非正社員とも「どのようなコースが、どの程度あるのか」、「各コースの内容」、「各コースの概要」が高く、さらに、正社員では「各コースの評価」についても不足しているとしている。

(3)これからの職業生活の設計(図36、図37)

これからの職業生活の設計についての考え方をみると、正社員においては、「自分で職業生活設計を考えていきたい」31.1%、「どちらかといえば、自分で職業生活設計を考えていきたい」36.8%と自分自身での職業生活設計を主体的に考える者が7割近くを占めている。

一方、非正社員においては、「自分で職業生活設計を考えていきたい」23.5%、「どちらかといえば、自分で職業生活設計を考えていきたい」22.8%と自分自身での職業生活設計を主体的に考える者が半数に満たず、また、30.6%は「わからない」と回答しており、これからの職業生活設計についての考え方は、正社員と非正社員で異なっている。

また、キャリア・コンサルティングを利用したいとする労働者は、正社員では43.5%、非正社員では30.0%となっている。


(参 考)

主な用語の定義

1  常用労働者

(1) 期間を定めずに、又は1か月を超える期間を定めて雇われている者

(2) 臨時又は日雇労働者で、調査日前の2か月の各月にそれぞれ18日以上雇われた者

2  正社員

常用労働者のうち、一般に「正社員」、「正職員」などと呼ばれている人をいう。

3  非正社員

常用労働者のうち、一般に「正社員」、「正職員」などと呼ばれている人以外の人をいう(「嘱託」、「パートタイマー」、「アルバイト」又はそれに近い名称で呼ばれている人など)。

4  OFF−JT

通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修)のことをいい、例えば、社内で実施(労働者を1ヵ所に集合させて実施する集合訓練など)や、社外で実施(業界団体や民間の教育訓練機関など社外の機関が実施する教育訓練に労働者を派遣することなど)がこれに含まれる。

5  OJT

日常の業務に就きながら行われる教育訓練のことをいう。直接の上司が、業務の中で作業方法等について、部下に指導することなどがこれにあたる。

6  計画的なOJT

OJTのうち、教育訓練に関する計画書を作成するなどして教育担当者、対象者、期間、内容などを具体的に定めて、段階的・継続的に教育訓練を実施することをいう。例えば、教育訓練計画に基づき、ライン長などが教育訓練担当者として作業方法等について部下に指導することなどが、これに含まれる。

7  自己啓発

労働者が職業生活を継続するために行なう、職業に関する能力を自発的に開発し、向上させるための活動をいう。(職業に関係ない趣味、娯楽、スポーツ健康増進等のためのものは含まない。)

8  階層別研修

新任課長研修、新入社員研修など、階層別に行われる研修

9  職能別研修

経理、マーケティング、生産管理、安全衛生、CAD/CAMなど、仕事に関係した専門的能力を養成するための研修

10  課題別研修

語学研修、OA、プレゼンテーションの方法など、部門を問わずに特定の目的・課題に対応して行われる研修

11  教育訓練休暇

労働者が、教育訓練に活用できる休暇をいう。

12  キャリア・コンサルティング

労働者が、その適性や職業経験等に応じて自らの職業生活設計を行い、これに即した職業選択や能力開発を効果的に行えるようにするための専門的な相談のことをいう。


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