職業能力開発局海外協力課外国人研修推進室
室  長 藤枝 茂
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厚生労働省発表
平成19年5月11日(金)

「研修・技能実習制度研究会中間報告」のとりまとめについて

外国人研修・技能実習制度については、平成5年4月の制度発足以来14年余りを経過し、研修生・実習生の数も大幅に増加しているものの、技能移転の実効性や労働条件の確保などを中心に制度の適正化が必要であるとの指摘がなされている。

特に、「規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申(平成18年12月25日規制改革・民間開放推進会議)」において、「実務研修中の法的保護の在り方」等について「遅くとも平成21年通常国会までに関係法案提出」等必要な措置を講ずることとされているほか、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」等においても制度の見直しが提言されている。

このような状況を踏まえ、厚生労働省は「研修・技能実習制度研究会(座長:今野浩一郎 学習院大学経済学部教授)」を設置し、制度の適正化や在り方に関する事項について、平成18年10月以来9回にわたって、問題点の整理及び検討を行ってきたところである。

こうした検討の結果、今般、制度見直しの方向性について一定のとりまとめとして中間報告をとりまとめたので、公表する。(別添)

なお、詳細な報告書については、追って公表することとする。


別添

研修・技能実習制度研究会中間報告

研修・技能実習制度については、研修生が実質的に低賃金労働者として扱われている等の実態を改善するとともに、技能移転を通じた国際協力という制度本来の目的が適正に実施されるよう、以下の方向で必要な見直しを行うこととする。

なお、制度見直しについては、「遅くとも平成21年通常国会までに関係法案提出」(規制改革・民間開放推進会議第3次答申)とされており、今後、関係省庁との間において具体的な制度設計について調整を行う。

1.実務研修中の研修生の法的保護のあり方

実務研修中の研修生が実質的に低賃金労働者として扱われている等の問題が生じているが、組織的な労務管理体制が不十分な中小零細企業を中心に、「労働」とならないよう「研修」の性格を担保することは困難であることから、「研修(1年)」+「技能実習(2年)」については、最初から雇用関係の下での3年間の実習とし、労働関係法令の適用を図る。

2.技能実習の実効性の確保

実習としての実効性を確保するため、実習計画の作成の他、実習指導員の配置、技能実習終了時の評価等を義務づける。

また、対象職種については、実習生の幅広い技能の修得が可能となるよう見直す。

3.受入れ団体の役割・責任

受入れ団体(第一次受入れ機関)は、新たに、傘下の技能実習中の受入れ企業に対する実習の適正実施に係る指導、監査等の監理責任を負うこととする。また、営利目的の団体の設立を防止するため、本来の事業協同組合等としての活動実績を有することを実習生受入れの要件とする。

4.同等報酬要件の実効性の確保

日本人の労働市場への悪影響を防ぐため、同等報酬要件の判断の前提となるガイドライン(目安)を設定し、実習生の賃金水準が目安に照らし著しく低い場合には同等報酬要件の遵守状況を調査し、必要な措置を講ずる。

5.より高度なレベルの技能実習

いったん帰国した実習生の再入国による実習(再技能実習)については、現行制度において技能移転や適正な運営がなされていること、定着のおそれがないことが前提であり、概ね技能移転と適正化が図られ、失踪率も低い「企業単独型」に限り、現地法人における更なる技能向上のためなど、個別の審査により再実習の必要性が認められた場合に、2年間に限定し(合算して5年以内)これを認める。

6.ブローカー対策等

受入れ機関・送出し機関の適正化、不正行為を行った場合の規制の厳格化等の措置を講ずる。

7.チェック機能の強化

JITCOにおいて巡回指導等を強化するとともに、その役割・体制を抜本的に見直す。


1.実務研修中の研修生の法的保護のあり方

研修の実態をみると、「実務研修」中の研修生が実質的に低賃金労働者として扱われ、残業までさせられている等の問題が生じているが、組織的な労務管理体制が不十分な中小零細企業(団体監理型による受入れ)を中心に、「労働」とならないよう「研修」の性格を担保することは困難である。

また、現行の「研修(1年)」+「技能実習(2年)」は、実態的には、「実務研修」から「技能実習」まで一連のものとして捉えられている。

研修生の法的保護を図る観点から、「研修(1年)」+「技能実習(2年)」を統合し、最初から雇用関係の下での3年間の実習とし、労働関係法令の適用を図る。


2.技能実習の実効性の確保

現行制度上、技能実習中は実習計画の作成・履行が義務づけられているものの、実習指導員の配置や、実習終了時の評価試験は義務づけられていないことから、次の事項について義務づけを図る。

(1)実習指導員の配置(新規)
(2)1年経過時の技能検定基礎2級レベルの受験(継続)
(3)実習終了時の技能検定3級レベルの評価(新規)

現行の技能実習の対象職種・作業範囲(現在62職種114作業)については、評価制度が整備されている職種・作業に限定されていることから、実習生の幅広い技能の修得や、効果的なOJTを可能とする観点から、見直しを行う

(※)

例えば、関連する複数職種について実習することを可能とし、評価制度については、中心となる職種が整備されていればよいこととする。

受入れ人数については、研修生・実習生の数が日本人従業員を大きく上回り、実習生を適正に指導できる体制が確保されていない例が見られることから、受入れ人数の在り方について今後検討する。

(注)

現行制度上、3〜50人以下の企業では、毎年研修生3人まで新規受入れが可能。つまり、日本人従業員が3人いれば、3年間で研修生・実習生合わせて9人まで受入れられる。


3.受入れ団体の役割・責任

現行制度上、研修中は受入れ団体(第一次受入れ機関)に監理責任(受入れ企業に対する研修の適正実施に係る指導、監査等)があるが、技能実習中については受入れ団体に監理責任がなく、実習の実施責任は受入れ企業に委ねられている。

 

実習の実効性や労務管理体制を確保する観点から、技能実習中において、受入れ団体が企業の実習を補完するとともに、受入れ企業に対する実習の適正実施に係る指導、監査等の監理責任を負うこととする。

受入れ団体の中には、研修生・実習生の受入れによる営利のみを目的として事業協同組合を設立し、ブローカー的に高額な管理費等を徴収するケースもある。

 

本来、実習生を受入れ、的確な実習を実施するためには、一定の事業基盤が確立し、事業活動を適正に実施している実績が必要であることから、受入れ団体について、本来の事業協同組合等としての活動実績(例えば、5年以上)を要件とし、営利のみを目的とした受入れ団体の新設を防止する。

技能実習移行申請企業(団体監理型)が所属する  

JITCO巡回指導で指摘のあった受入れ企業の属性(受入団体)別割合

受入機関の属性 受入企業数
企業単独 72( 1.7%)
公益法人 430(10.4%)
協同組合(同一業種) 1,363(32.9%)
協同組合(異業種) 1,741(42.0%)
商工会等 117( 2.8%)
職業訓練法人 11( 0.3%)
農協等 265( 6.4%)
その他 142( 3.4%)
合 計 4,141( 100%)

4.同等報酬要件の実効性の確保

制度上、日本人との同等報酬要件が課されているが、何をもって同一労働とみなすかが難しく、実態として比較対象となる日本人労働者がいない場合にはこの要件は機能しない。

一方、受入れ企業の一部には、専ら人件費の削減を目的として、あえて日本人を採用せず、技能実習生を低賃金労働力として悪用しているケースもみられ、労働市場への悪影響が懸念されている。

 

同等報酬要件の判断の前提となるガイドライン(目安)(例えば、都道府県別高卒初任給平均額等)を設定し、実習生の賃金が目安に照らし著しく低い場合にはJITCO等が同等報酬要件の遵守状況を調査し、必要な措置を講ずる。

平成17年度技能実習移行申請者への支給予定賃金(基本給)の水準

(JITCOデータなどより)

(注)
初任給=所定内給与額−(超過労働給与額)−(通勤手当) (平成17年)

最低賃金(全国平均推計)= 最低賃金加重平均値(時給673円)×8(時間)
×22日(平成18年)
 

受入れ企業における技能実習生と日本人労働者の賃金支払額(基本給+諸手当)の比較

日本人労働者の支払賃金額は、受入企業において、技能実習生と同様の職務に就いている日本人労働者、同じ職務についている者がいなければ、基本給が最も安い日本人労働者について回答を求めた。

※有効回答数は、技能実習生については10,292企業、日本人労働者については、8,909企業。

(JITCO自主点検結果より)


5.より高度なレベルの技能実習

使用者団体や受入れ団体から、いったん帰国した実習生の再入国による実習(再技能実習)の要望がある。

再技能実習については、一般にトータルの滞在期間が長期化することによる失踪・定住化のおそれがあること、長期(5年以上)に渡って家族の呼び寄せを制限することは人権上の問題が生じるおそれがあること、現行の技能実習制度において、団体監理型を中心に、技能移転の実効性や労働条件の確保などの問題点が指摘され、その適正化が求められている実態があること等を踏まえる必要がある。

 

再技能実習については、現行制度において技能移転や適正な運営がなされていること、帰国が担保されていることが前提であり、概ね技能移転や適正化が図られ、失踪率も低い「企業単独型」に限り、現地法人における更なる技能向上のためなど個別の審査により再実習の必要性が認められた場合に、2年間に限定し(合算して5年内)これを認める。

(※) ・不正行為認定件数の98%が団体監理型である。
・技能実習生の失踪率については、企業単独型では1.5%、団体監理型では4.0%。

例えば、下記のような要件を踏まえた上で、定住につながらないこと等を個別に審査し、受入れの可否を判断

実習生は、初回実習終了後、必ず帰国し、帰国後一定期間(例えば3年)以上経過、かつ、その間技能移転を図っていること
実習生は、初回技能実習終了時に技能検定3級レベルに合格していること
受入れ企業について実習終了時の評価試験(3級レベル)の合格率が高いこと
なお、現行の「研修」においても、個々に審査し合理的な事情があるときは、「再研修」が認められている。

6.ブローカー対策等

<国内の受入れ団体>

受入れ団体の中には、ブローカー的に不当な仲介手数料や管理費等を徴収するケースもあるが、
・ 最初から雇用関係の下での実習とすることにより、実習生のあっせん行為について職業紹介事業の許可又は届出が必須の条件となり、紹介に係る手数料も透明化される。
・ 他方、受入れ管理費については、その使途を、透明化しチェックしていく仕組みを検討する。

不正行為等の問題も団体監理型において多く発生しており、特に異業種組合において問題が見られる割合が高い。不正行為を行った場合の規制(現行では、3年間の新規受入れ停止。)について、例えば、受入れ停止期間を5年以上に延長するなど、厳格化する。

〔団体監理型における不正行為の内容〕
(1)名義貸し(飛ばし)(49.6%)、(2)所定時間外活動(研修中の残業)(38.7%)、(3)研修・技能実習計画との齟齬(29. 6%)
(4)労基法違反等(12.8%)

受入れ団体の中には、研修生・実習生の受入れによる営利のみを目的として事業協同組合を設立し、ブローカー的に高額な管理費等を徴収するケースもある。

本来、実習生を受入れ、的確な実習を実施するためには、一定の事業基盤が確立し、事業活動を適正に実施している実績が必要であることから、受入れ団体について、本来の事業協同組合等としての活動実績(例えば、5年以上)を要件とし、営利のみを目的とした受入れ団体の新設を防止する。

<国外の送出し機関>

送出し機関の中には、受入れ企業・団体から必要以上に高額な送出し管理費を徴収したり、本人から高額な保証金等を徴収するケースもあることから、送出し国政府に対し、送出し機関の適正化を強く要請する。


7.チェック機能の強化

JITCOが受入れ企業を巡回し、技能実習計画に即した適正な実習が実施されているかチェックしている。(年間約6,000件)

<適正化のための当面の対応>

○ JITCOによる全受入れ機関に対する自主点検の実施等

・労働関係法令の遵守状況を中心にした自主点検を、すべての技能実習生受入れ企業(14,500企業)及び受入れ団体(1,180団体)を対象とし、JITCOを通じて昨年9月に実施。(回答率74%)

・JITCOにおいて、自主点検結果を踏まえ、未回答企業及び問題があると認められた企業への巡回指導等を昨年12月より実施し、それらの結果を労働基準監督機関に提供している。

○ JITCOを通じた巡回指導の強化。

・平成19年度巡回指導件数を増加し、7,300企業(全受入れ企業の約半数)に対して予定。(前年度比1,300件増)

○ 労働基準監督機関による監督指導等の実施

・労働基準監督機関においては、JITCOから提供された情報も踏まえ、技能実習生の労働条件の履行・確保上、問題が  ある技能実習生受入れ事業場に対する監督指導を実施。

・出入国管理機関との間に新たに設けた相互通報制度を適切に運用。

○ 出入国管理機関による調査等

・ 受入れ団体・企業に対する実態調査を行い、入管法令等に照らして「不正行為」に当たると判断した場合は、新規受入れを3年間停止するなど、厳格に対応。

・ 労働基準監督機関との間に新たに設けた相互通報制度を適切に運用。

<チェック機能の強化>

JITCOについては、自主点検・巡回指導を抜本的に強化するとともに、アウトソーシング等業務の見直しを図り、管理・指導業務への集中化を図る。具体的には、実習の実施状況の点検・改善指導や評価、労働基準監督機関、出入国管理機関に対する情報提供・連携の強化、実習生に対する相談・援助に重点を置く方向で抜本的に見直す。

(注) 今国会に外国人雇用状況報告の義務化(報告漏れや虚偽報告には罰則)等を内容とする雇用対策法改正案が提出されており、その報告対象には技能実習生も含まれる。

研修・技能実習制度研究会委員名簿

今野(いまの)浩一郎(こういちろう)(学習院大学経済学部教授)
 上林(かみばやし)千恵子(ちえこ)(法政大学社会学部教授)
 北浦(きたうら) 正行(まさゆき)((財)社会経済生産性本部社会労働部長)
 丹野(たんの) 清人(きよと)(首都大学東京都市教養学部准教授)
 樋口(ひぐち) 美雄(よしお)(慶應義塾大学商学部教授)
 森永(もりなが) 卓郎(たくろう)(獨協大学経済学部教授)
 山川(やまかわ) 隆一(りゅういち)(慶応義塾大学大学院教授)
 渡邊(わたなべ) 博顕(ひろあき)((独)労働政策研究・研修機構主任研究員)
  (注)◎は座長 (敬称略、五十音順)

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