第4 平成19年度地方労働行政の重点施策

1 各行政間の連携の下に推進する重点施策

各行政において重点的に取り組むべき施策については2以降に具体的に記述するが、総合労働行政機関としての機能を地域の中で具体的に発揮していくことが重要であり、下記の施策については特に留意をし、行政間の連携の下に取組を進める。

(1) 労働条件の確保、雇用の安定等を図るための総合的施策の実施

都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所の連携の下、企業倒産、雇用調整等に係る情報収集を積極的に行うとともに、地域に影響を及ぼす企業倒産、雇用調整が発生した場合、離職を余儀なくされた労働者を対象に、賃金不払、解雇手続、解雇についての性差別、失業等給付、再就職支援などの一連の手続き等について総合的かつ機動的な対応を図る。

また、労働者から寄せられる相談に適切に対応するため、総合労働相談コーナーに対しても情報の提供を行う。

(2) 各分野ごとの連携した対策の推進
ア 「子ども・子育て応援プラン」の実施

「子ども・子育て応援プラン」に掲げられた若年者の就労支援、仕事と家庭の両立支援、働き方の見直しなど、平成21年度までに講ずる具体的な施策内容について、「新しい少子化対策について」の内容を踏まえ、引き続き各都道府県労働局子ども・子育て応援プラン推進本部を中心に、各行政が連携して取組を進める。

イ 次世代育成支援対策の推進

次世代法の周知啓発、301人を越える事業主に対する一般事業主行動計画の策定・届出の義務の履行確保及び300人以下の事業主に対する一般事業主行動計画の策定・届出の啓発・指導について、雇用均等室が中心となり、都道府県労働局内各部が連携しつつ、次世代育成支援対策推進センター及び地方公共団体との連携にも留意しながら取り組む。

また、次世代法に基づく認定申請に対する審査についても、雇用均等室が中心となり各部の連携の下、効率的に実施する。  

ウ 出産・育児により離職した女性に対する再就職・再就業支援の推進

出産・育児により離職した女性に対する再就職の推進に当たり、雇用均等室は職業安定部を通じてマザーズハローワーク等に仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組む企業の情報を提供する等の連携に努める。また、再就業の推進に当たっては、雇用均等室においても労働者等へ関係資料を提供する等により、職業安定部との連携に努める。

エ パートタイム労働対策の推進

均衡待遇の考え方の浸透・定着を図るため、パートタイム労働者を雇用する事業主に対する説明会・相談会の開催等により、雇用均等行政のみならず労働基準行政及び職業安定行政が十分連携し、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「パートタイム労働法」という。)及び「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針」(以下「パートタイム労働指針」という。)の周知等の業務を推進する。

パートタイム労働者に対しては、働く上で必要となる知識が身に付くよう関係法令等関係諸制度に関する情報提供を行う。

オ ワークシェアリングの推進

各都道府県労働局ワークシェアリング推進本部を中心とし、都道府県労働局が一体となって、地方公共団体、労使団体などとも連携を図りつつ、ワークシェアリングの導入促進のための支援等に取り組む。その際、ワークシェアリングについての知識・ノウハウを有する者をアドバイザーとして登録し、ワークシェアリング導入に関心を持つ事業所に対する相談等を行う「ワークシェアリングアドバイザー」が配置される都道府県労働局においては、これを積極的に活用する。

さらに、「多様就業型ワークシェアリング制度導入マニュアル」に示された短時間正社員の導入方法等について、事業主団体の会合等のあらゆる機会を活用し事業主等に対して積極的に周知する。

カ 育児・介護休業法に基づく事業主指導に関する連携の推進

育児・介護休業法の周知並びに個別相談への対応について、雇用均等室は労働基準監督署及び公共職業安定所との連携を密にして取り組む。

また、育児・介護休業法に関して、法違反の疑いがある事業所等に係る情報を、労働基準監督署又は公共職業安定所が把握した場合には、雇用均等室に提供等を行うことにより連携を図る。

キ 男女雇用機会均等確保対策の推進

改正男女雇用機会均等法及び同法に基づく指針の内容について、労働基準監督署における就業規則の受理時及び公共職業安定所における求人の受理時等に、その周知を図る。

また、妊娠・出産等を理由とした解雇等、均等取扱い及びセクシュアルハラスメント等の紛争等に関する相談や、法違反の疑いがある事業所に係る情報を労働基準監督署又は公共職業安定所で把握した場合には、雇用均等室へ提供等を行うことにより連携を図る。

併せて、女子生徒等の意識啓発について、雇用均等室が実施する取組と職業安定部が実施する高校における職業意識形成支援との連携を図る。

ク 派遣労働者の保護及び就業条件の確保対策等の推進

請負事業が活用されている製造現場を中心に、物の製造業務への労働者派遣と製造請負の区分を明確にし、派遣は派遣として、請負は請負として適正に実施されるよう、指導監督に万全を期す必要がある。このため、違反事案があった場合の相互情報提供の徹底、共同監督の実施など職業安定行政と労働基準行政との連携を一層強化する。また、派遣元事業主、請負事業主、派遣先、発注者に対して法令の遵守の徹底を図るため、必要に応じ、職業安定部又は需給調整事業部が実施する労働者派遣法に係る説明会等において、都道府県労働局の労働基準部、雇用均等室等の職員による説明の機会を確保するなど、引き続き各行政間で適切な連携を図る。

ケ 外国人労働者対策の推進

人身取引対策行動計画に基づき、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所においては、労働基準法・職業安定法等関係法令違反が認められる事案において、人身取引事犯が認められた場合は、関係機関と連携の上、適切に対処する。

また、労働基準行政、職業安定行政及び雇用均等行政において、外国人労働者等からの相談等への対応及びこれらの者に対する支援に当たっては、必要に応じて相互に連携して行う。

なお、特に日系人については、しばしば、雇用が安定しない、労働条件が低い、安全衛生対策が不十分、社会保険に加入していない等の種々の問題を抱えつつ就労している実態にあり、法令遵守・雇用管理の適正化のための強力な取組が必要である。このため、公共職業安定所においては、日系人を多く雇用する事業所を中心に計画的に事業所訪問を行い、労働関係法令の周知や「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」に基づく雇用管理指導を行う。また、職業安定行政は、労働基準行政と連携し、さらに社会保険事務所等関係機関とも連携し、外国人を雇用する事業所に対する雇用の安定、雇用管理の改善のための指導等を推進する。

コ 障害者の労働条件確保・雇用対策の推進

障害者である労働者の法定労働条件の履行確保、雇用管理の改善等を図るため、障害者雇用連絡会議などの開催を通じ、職業安定行政、労働基準行政及び福祉行政を始め関係行政が連携の下、これら労働者を使用する事業主に対する啓発・指導を推進するとともに、的確な情報の把握及び提供等を行い、問題事案の発生の防止及び早期是正に努める。

また、障害者雇用に関し、都道府県労働局が都道府県の関係部局との連携を図るとともに、必要に応じ関係団体等と連絡・調整を行うための障害者雇用連絡協議会を開催する。

サ 労働保険の未手続事業の積極的かつ的確な把握等

労働保険の未手続事業の一掃については、これまで以上に都道府県労働局、労働基準監督署と公共職業安定所が連携を図るほか、国土交通省地方運輸局等からの通報制度による未手続事業情報の活用など、関係機関とも緊密な連携を図り未手続事業の積極的かつ的確な把握・加入勧奨を行う。

(3) 職業能力開発行政との連携
ア 「実践型人材養成システム」の周知・普及

現場の中核となる実践的な能力を備えた人材を育成する「実践型人材養成システム」の周知・普及を図るため、 都道府県労働局及び公共職業安定所においては、学校・生徒等に対する当該システムに係る求人についての適切な情報提供並びに事業主・事業主団体に対する当該システムの活用を促す広報、委託募集の特例に係る届出の受理等の適切な運用に努めるとともに、技能継承トライアル雇用を行う際には、当該システムを積極的に活用するよう促すことにより、広く関係者に対して周知・普及に努める。

イ 適切な訓練コース開発への協力

能力のミスマッチを解消するために人材ニーズに基づいた職業訓練の活用が必要であることから、職業能力開発機関に対し、未充足求人の分析や求職相談等を通じて把握した訓練ニーズ等具体的な訓練コース設定・見直しに資する情報の提供・提案・協力等を実施する。

ウ 障害者の職業能力開発施策との連携

福祉から雇用・就労へという障害者支援の流れの中で、職業能力開発機会を拡充するため、障害者職業能力開発校における職業訓練のほか、平成16年度から障害者委託訓練及び一般の職業能力開発校を活用した職業訓練を実施し、平成18年度からは障害者職業能力開発プロモート事業を政令指定都市において実施しているところである。

都道府県労働局及び公共職業安定所においては、都道府県等と連携し、障害者及び企業双方に対する雇用促進支援策として障害者職業訓練を位置付けて、求職登録や求人受理時にこれら施策の周知・広報を図るとともに、特に障害者委託訓練については、その委託先の開拓に配慮する。また、訓練修了者の能力把握と求人確保に努め、効果的なマッチングを実施する。

エ 創業に向けた職業能力開発支援の推進

再就職支援に加え、離職者の創業を支援することは、雇用創出の実現や、雇用の安定を図るために重要である。

独立行政法人 雇用・能力開発機構(以下「能開機構」という。)においては、「創業サポートセンター」を東京、大阪に設置し、創業や新分野展開に関する相談、訓練を実施しているほか、そのノウハウを活用した相談コーナー等を北海道及び福岡に「創業サポートスポット」として設置し、相談支援を実施している。その他にも能開機構では開業に向けた教育訓練機関での座学の訓練や開業希望分野の事業所に委託した実習形式の職業訓練を実施しているところである。

また、地域における創業を支援するため、平成17年度からは、創業に必要な基本的な知識等の講習と、事業計画策定、事業計画に係る分野での企業内実習訓練を内容とした事業を都道府県に委託して実施しているところである。

都道府県労働局及び公共職業安定所においては、これら施策の周知に努めるとともに、職業安定機関で実施している助成金、産業政策として実施されている開業支援施策等と相まって効果的かつ総合的な支援が図られるよう配慮する。

オ 「地域若者サポートステーション」との連携

ニート状態にある者をはじめとした若者の自立を支援するためには、包括的な支援を個別的・継続的に行うことが必要であり、平成18年度から、地方自治体との協働により、「地域若者サポートステーション」を設置し、若者の置かれた状況に応じた専門的な相談を行うとともに、地域の若者支援機関のネットワークの中核として各機関のサービスが効果的に受けられるようにすることにより、若者の自立を支援している。

都道府県労働局及び公共職業安定所においては、当該事業の周知・普及に努めるとともに、就労希望者に対しては、当該施設と連携し円滑な誘導を図り、職業相談・職業紹介を実施する等の効果的・総合的な支援が図られるよう配慮する。

カ 「若者自立塾」との連携

様々な要因により働く自信をなくした若者に対して、合宿形式による集団生活の中での労働体験等を通じて、働くことについての自信と意欲を付与することにより、就労等へと導く「若者自立塾創出推進事業」を平成17年度から実施している。

都道府県労働局及び公共職業安定所においては、当該事業の周知・普及に努めるとともに、就労希望者に対しては、当該施設と連携して円滑な誘導を図り、職業相談・紹介を実施する等の効果的・総合的な支援が図られるよう配慮する。

キ 「私のしごと館」の活用

能開機構が設置する「私のしごと館」は、(1)展示・体験設備等による職業体験機会の提供、(2)総合的な職業情報の提供、(3)キャリア形成に関する相談・援助、(4)キャリア形成に関する研修・セミナー、(5)若年者のキャリア形成支援に関するプログラム・ツールの開発等を実施しており、若年者を中心としたキャリア形成を総合的に支援する中核的な拠点である。

都道府県労働局及び公共職業安定所においては、同館を若年者に対する職業相談や求人説明会、集団面接会等各種イベントの場として活用するほか、若年者を支援する立場にある教師、家庭、企業の雇用管理担当者及び関係行政機関の担当者等に対してその利用について積極的に勧奨を行う。

ク 「キャリア情報ナビ」の活用

「キャリア情報ナビ」は、厚生労働省が所有する情報や、関係府省、都道府県職業能力開発主管課、能開機構、独立行政法人労働政策研究・研修機構、中央職業能力開発協会等が提供している職業能力開発に資する情報を総合的・体系的に提供するシステムである。

都道府県労働局及び公共職業安定所においては、求職者に対しキャリア情報ナビの周知を図り、活用を促進する。

ケ キャリア・コンサルティング技法等の修得

個人の主体的なキャリア形成の促進や求人・求職の的確な結合を図るため、キャリア・コンサルタント等の養成・普及を推進しているところである。キャリア・コンサルティング等は、就職支援等に有効な知識・技能であることから、労働大学校、各都道府県労働局で実施する研修の機会等を活用し、公共職業安定所の職員が積極的にキャリア・コンサルティング等の技法を修得することを奨励する。

コ 勤労青少年福祉対策の推進

従来は、国、都道府県及び市町村の連携の下で在職青少年を対象に有意義な職業生活の実現のための余暇活動の充実に重点を置いた施策を推進してきたが、地域の実情に応じた若年者対策を実施することが重要となってきており、 平成18年度から5年間を期間とする第8次勤労青少年福祉対策基本方針を策定したところである。

本方針では、勤労青少年福祉対策の対象として無業の状態ながらも職業人としての自立を目指すべくその成育を支える必要のある青少年をも視野に入れ 、勤労青少年福祉対策の一層の推進を図ることとしており、都道府県労働局においては、地域のニーズを把握しつつ、関係機関に対する協力を行うなど適切な勤労青少年福祉対策の推進に努める。

サ 若年者就職基礎能力支援事業(YES-プログラム)の普及促進

企業が若年者を採用するに当たり重視する就職基礎能力の内容を明示し、それらを身につけるための目標を若年者に示す制度である若年者就職基礎能力支援事業(YES-プログラム)を若年者が就職活動において有効に活用できるよう、職業紹介の場面や都道府県労働局及び公共職業安定所の主催する合同就職説明会等において、資料の配付等により同プログラムの一層の普及促進に努める。

シ 2007年問題への対応

いわゆる「2007年問題」が表面化する初年度に当たることから、引き続き「技能継承等支援センター」における技能継承や人材育成等に係る総合的な情報提供・相談援助や、技能継承を図るための能力開発の取組を行う中小企業等に対する助成を行うこととしている。

都道府県労働局及び公共職業安定所においては、事業主のニーズを把握しつつ、雇用促進施策と併せて必要な施策の周知・活用促進に努め、円滑な技能継承が図られるよう配慮する。

ス 「2007年ユニバーサル技能五輪国際大会」の周知・広報

本年11月、静岡県において、若者が世界のトップを目指して技能を競う「第39回技能五輪国際大会」と障害のある方が世界レベルの技を競う「第7回国際アビリンピック」が「2007年ユニバーサル技能五輪国際大会」として史上初めて同時開催される。本大会を契機として、若者をはじめとする国民各層に、ものづくり技能の重要性が浸透し、技能尊重の機運の醸成が図られるよう、都道府県労働局及び公共職業安定所においては、本大会の周知・広報に努める。



2 労働基準行政の重点施策

産業構造の変化が進み、就業形態が多様化、個別労働紛争が増加、長時間労働者の割合が高止まり等、企業や労働者を取り巻く環境は大きく変化してきているが、労働基準行政はいかなる経済・雇用情勢の下にあっても、適正な労働条件の下で安心して安全に働くことができる環境を整えることを使命とするものである。

このような労働基準行政に期待される役割を的確に果たしていくためには、今まで以上に監督・安全衛生・労災補償の三行政部門が一体となって取り組んでいくことが重要である。行政運営に当たっては、使用者の遵法意識をより高める観点も踏まえ、重大・悪質な労働基準関係法令違反に対しては司法処分も含め厳正に対処すると同時に、適正な労働条件の確保・改善を図るには、労使の自主的な取組を促進することが極めて重要であることから、労使団体との連携を強化することなどの工夫を行う等、一層、効率的・効果的な行政展開を積極的に図っていく必要がある。

また、企業や労働者を取り巻く環境の変化に対応して、労使双方が安心・納得した上で多様な働き方を実現でき、仕事と生活のバランスのとれた働き方が可能となる労働環境を整備することが労働基準行政に新たに求められているところである。こうした観点から、労働契約法案及び労働基準法改正法案、並びに最低賃金法改正法案を第166回通常国会に提出したところである。

(1) 労働条件の確保・改善等
ア 一般労働条件の確保・改善対策の推進
(ア) 法定労働条件の確保

管内の実情を踏まえつつ、企業における基本的な労働条件の枠組み及びそれらに関する管理体制を適正に確立させ、これを定着させていくことが重要である。特に、派遣労働者、業務請負労働者等事業場内における就業形態ごとの契約内容、実際の就業実態に着目し、法定労働条件の履行確保を図る。

また、労働基準関係法令違反に対しては、厳正に対処する。

(イ) 長時間労働の抑制に向けた取組の推進

長時間にわたる時間外労働の実効ある抑制を図り、また過重労働による健康障害を防止するため、使用者、労働組合等の労使当事者が時間外労働協定を適正に締結し届け出るよう、引き続き周知・指導を行うとともに、限度基準に定める限度時間を超える時間外労働が恒常的に行われている事業場等に対する指導を行う。

また、時間外労働の削減、年次有給休暇の取得促進等働き方の見直しにより長時間労働の是正に積極的に取り組む事業主に対し、助成金を支給する等の支援を実施する。

(ウ) 労働時間管理の適正化の徹底

賃金不払残業の解消を図るため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」の遵守を重点とした監督指導等を引き続き実施するとともに、「賃金不払残業総合対策要綱」に基づき総合的な対策を推進する。

また、重大・悪質な事案に対しては、司法処分を含め厳正に対処する。

(エ) 有期労働契約に係るルールの明確化の推進

有期労働契約について、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に関し、必要な助言及び指導を行うことにより、引き続きその遵守の徹底を図るとともに、有期契約労働者の就労環境の改善を図るため、「有期契約労働者就業環境改善プロジェクト」を実施する。

イ 未払賃金立替払制度の迅速かつ適正な運営

景気は回復基調にあるものの、企業倒産件数が昨年に比べ増加していることを踏まえ、不正受給防止にも留意しつつ、企業倒産により賃金の支払を受けられない労働者の救済を図るため、引き続き迅速かつ適正な対応を図る。

ウ 最低賃金制度の適正な運営

最低賃金制度については、我が国経済の動向、地域の実情を踏まえ適正な運営を図る。

また、最低賃金法の履行確保を図るため、最低賃金の一層の周知徹底を図るとともに、問題のある地域、業種等を的確に把握し、監督指導等を行い、その遵守の徹底を図る。

さらに、最低賃金法改正法案を第166回通常国会に提出したところである。同法案の主な内容は、地域別最低賃金が安全網として十全に機能するようにするため、決定基準の見直しや罰金の上限額の見直しを行うとともに、産業別最低賃金については、最低賃金法の罰則は適用しないこととするものである。同法案が成立した際には、その円滑な施行に向けて、改正内容の周知を図る。

エ 特定の労働分野における労働条件確保対策の推進
(ア) 派遣労働者及び業務請負労働者

製造業を中心として、依然として偽装請負が認められることから、事業場の構内における他の事業場の労働者の混在の状況を的確に把握し、事業場間の契約関係や当該労働者に対する実際の指揮命令等の就労実態を踏まえ、労働基準法等関係法令に係る使用者の責任区分に従って必要な指導を行うとともに、偽装請負が疑われる事案を確認した場合の情報提供、共同監督の実施など職業安定行政と連携を図った対応を行う。

また、偽装請負が関係する死亡等重篤な災害については司法処分も含め厳正に対処する。

(イ) 外国人労働者、技能実習生

国際化の進展等により我が国で就労する外国人労働者が増加している状況を踏まえ、「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」に基づく啓発・指導により、引き続き外国人労働者の適正な労働条件確保対策を推進する。 技能実習生については、依然として、法定労働条件確保上の問題が認められることから、労働契約締結時の労働条件の書面による明示、賃金支払の適正化等労働基準関係法令の遵守の徹底を図る。

また、技能実習生を含めた外国人労働者に係る重大悪質な労働基準関係法令違反等の問題事案については、職業安定行政との連携を図りつつ、出入国管理機関にその旨情報提供する。

(ウ) 自動車運転者

長時間労働を原因とする重大な交通労働災害が増加していることから、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」等の周知及び遵守を徹底するとともに、過労運転事案については、関係行政機関とも連携を図り、引き続き自動車運転者の労働条件の改善を図る。

また、タクシー業に対しては、地方運輸機関と合同により監督・監査を実施するなど連携の強化を図る。

(エ) 介護労働者

介護事業に使用される労働者の法定労働条件の履行確保を図るため、事業の許可権限を有する都道府県等と連携し、引き続き労働基準関係法令の適用について周知するとともに、その遵守の徹底を図る。

(オ) 障害者である労働者

平成18年10月からの障害者自立支援法の施行に伴い、企業等で働く障害者の増加が予想されることから、職業安定機関、都道府県等関係行政機関との連携の下、これらの労働者を使用する事業主に対する啓発・指導に努め、的確な情報の把握を行うとともに、問題事案の発生の防止及び早期是正に努める。

(カ) 短時間労働者(パートタイム労働者)

  パートタイム労働法及びパートタイム労働指針の趣旨及び内容についての周知、啓発を重点とした対策を推進し、事業主による自主的な取組を促進する。

(2) 多様な働き方が可能となる労働環境の整備
ア 労働時間等の設定の改善の促進

「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」は、労働者の健康と生活に配慮するとともに、多様な働き方に対応した労働時間、休日及び休暇の設定に向けた労使の自主的な取組を促進することを目的とするものである。

同法の施行に当たっては、事業主等が労働時間等の設定の改善(計画的付与制度の積極的導入等による年次有給休暇の取得促進、所定外労働の削減等。以下、「設定改善」という。)に適切に対処することが必要であることから、設定改善を行う事業主及びその団体が留意すべき事項について定めた労働時間等設定改善指針の周知啓発を図る。また、事業場における労働時間等設定改善委員会の設置等の体制整備及び労働時間等設定改善実施計画の作成についての普及啓発を図る。

また、同法に基づき、設定改善に向けた労使による自主的取組を促進するため、引き続き、(1)地域の主要な事業主団体に配置し、仕事の内容や進め方にまで踏み込んだ助言・相談を行う労働時間設定改善アドバイザーによる、個々の会員事業場の実情を踏まえた指導、援助、(2)設定改善に取り組む中小企業団体に対しての助成、(3)特に時間外労働が長い事業場の事業主に対して時間外労働の削減に向けて自主点検等の実施の要請、(4)都道府県労働局に配置する労働時間設定改善コンサルタントによる、相談対応や助言・指導の支援を行い、事業主等に対してこれらの積極的な活用を勧奨する。

さらに、平成19年度からは新たに、他の年齢層に比較して実労働時間が長い状況にあり、出産や育児等の子育てを担う世代でもある20歳代後半から30歳代の労働者の労働時間等の設定改善に積極的に取り組む中小企業団体等に対する支援の充実を図り、事業主等に対してこれらの積極的な活用を勧奨する。

加えて、仕事と生活の調和に関する周知啓発活動(「仕事と生活の調和キャンペーン」)により、仕事と生活の調和に係る社会的気運の醸成を図る。

イ 労働時間法制の整備等

仕事と生活のバランスを実現するための「働き方の見直し」の観点から、長時間労働を抑制しながら働き方の多様化に対応するため、労働基準法改正法案を第166回通常国会に提出したところであり、成立した際にはその円滑な施行に向けて周知等を図る。

ウ 裁量労働制の適正な実施の確保

裁量労働制については、業務遂行に当たっての裁量性を確保するとともに業務量が過大になることを防ぐ観点から、同制度の趣旨に適合した上で導入・運用されるよう、周知・指導を行う。特に企画業務型裁量労働制については、対象となる業務の範囲等を含め、制度が適正に実施されるよう「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」の趣旨及び内容について周知を行う。

また、健康・福祉確保措置や苦情処理措置の実施が十分でないなどの実態もあることから、実効ある健康・福祉確保措置等が実施されるよう周知の徹底を図る。

エ 在宅勤務の普及促進

在宅勤務に関する適正な就業環境を確保するため、在宅勤務の労働基準関係法令上の取扱い等を明確にした「情報通信機器等を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」について、事業主等への周知を図る。

オ 賃金・退職金制度の改善の推進

賃金・退職金制度整備・改善事例及び賃金・退職金セミナー等を活用して、賃金・退職金制度に関する相談・援助等の充実を図る。

カ 勤労者生活の基盤の整備・充実

勤労者財産形成促進制度については、制度の周知・広報を行うことにより、その活用・促進を図る。中小企業退職金共済制度については、退職金制度がいまだ整備されていない中小企業も多いことから、それらの企業の加入促進に努めるとともに、適格退職年金制度からの移行を進めるために、制度の周知を図る。

(3) 労働者の安全と健康を確保するための施策の展開
ア 労働災害を減少させるための施策の展開
(ア) 安全衛生管理体制の強化等

低調になりつつある安全衛生管理活動の充実・徹底を図り、労働災害の増加傾向に歯止めをかけるためには、経営トップの強いリーダーシップが必要であることから、あらゆる機会を捉え、局署の幹部が経営トップに対し直接指導を行う。

また、新規労働者の増加、経験が短い労働者の被災割合の上昇等を踏まえ、雇入れ時等における安全衛生教育の徹底を図るよう指導を行う。

さらに、企業の自主的な安全衛生管理を促進するため、職場巡視、安全提案制度、ヒヤリ・ハット体験後の適切な対応等安全衛生活動の充実・徹底、総括安全衛生管理者の職務の追加、安全衛生委員会の調査審議事項の拡充等改正規則の徹底を図るよう指導を行う。

(イ) 危険性又は有害性等の調査等、労働安全衛生マネジメントシステムの普及促進等

事業場における危険性又は有害性等の調査等の実施を促進するため、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」の周知、集団指導、個別指導等を計画的に実施する。指導に当っては、作業別リスクアセスメントマニュアル等を活用する。

さらに、重篤な労働災害を発生させた中小規模事業場等に対しては、危険性又は有害性等の調査等などを主な内容とする安全衛生診断の対象とするなどにより自主的な安全衛生管理活動の推進を図る。

また、安全管理特別指導事業場等に対しては、安全衛生改善計画に危険性又は有害性等の調査等などの実施を盛り込むよう指示するなど、効果的な改善措置の実施を図る。

さらに、労働安全衛生マネジメントシステムについても、業種別団体等を通じた支援、促進協議会の設置等により、事業者、事業者団体等による自主的な取組の促進を図るとともに、計画届の免除認定制度の活用の周知を行う。

(ウ)製造業等における労働災害防止対策の推進

関係請負人を含めた総合的な安全衛生管理体制を確立するため、「製造業の元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針」の周知を行うとともに、同指針に定められた措置の実施等について指導を行う。

また、危険性又は有害性等の調査等の実施を促進するため、作業別リスクアセスメントマニュアル等を活用した集団指導、個別指導等を計画的に実施する。

さらに、派遣労働者の災害を防止するため、職業安定行政と連携しつつ、集団指導等により、派遣元・派遣先双方に対して、労働安全衛生法上の義務の周知徹底を図る。

また、あらゆる機会を捉え、小規模事業場等団体安全衛生活動援助事業の周知を図る。

(エ) 建設業における労働災害防止対策の推進

新たな建設業総合対策に基づき、監督指導、集団指導、個別指導等を行う。また、危険性又は有害性等の調査等の普及促進を図るため、計画的に、周知、集団指導、個別指導等を行うとともに事業者の主体的能力に応じた労働安全衛生マネジメントシステムの導入について周知徹底を図る。また、建設業においては店社と現場が一体となった管理が必要であることを踏まえ、効果的な指導を行う。

さらに、関係業界団体と連携の上、中小総合工事業者、専門工事業者等に対する支援を行う。

また、建設業における死亡災害において依然として墜落災害の占める割合が高いこと等から、木造家屋等低層住宅建築工事について、あらゆる機会を捉え足場先行工法の徹底を図らせるとともに、ビル建築現場について、労働災害防止団体と連携するなどにより手すり先行工法の周知を行う。その他、上下水道等工事における土砂崩壊災害を防止するため、土止め先行工法について周知を行う。

さらに、発注者に対して、施工時の安全衛生の確保に配慮した発注についての指導及び請負事業者の自主的安全衛生管理の評価等について要請を行う。

(オ) 第三次産業における労働災害防止対策の推進等

第三次産業での災害が増加していること等を踏まえて、第三次産業の災害の中で高い割合を占めている各種商品小売業等、災害が増加している清掃業、通信業、社会福祉施設等を重点に、業界団体と連携し、作業別リスクアセスメントマニュアル等を活用した指導を行う。

(カ) 機械設備の安全化の促進

機械設備の使用事業場等に対して、改正する予定の「機械の包括的な安全基準に関する指針」の周知を行うとともに、機械設備に係る災害が発生した事業場等に対する個別指導等を行う。

また、プレス機械災害については、近年増加傾向にあること、構造規格の海外の基準との整合化等が必要であること等を踏まえて、対策の充実を図ることとしているので、別途指示するところにより、その周知徹底を図る。

(キ) 交通労働災害防止対策等の推進

交通労働災害防止のためのガイドライン等を見直すこととしているので、別途指示するところにより、その周知徹底を図るとともに、関係行政機関・団体等からなる協議会の活性化を図る。

また、高速道路の料金収受員のETCレーン横断中の災害を防止するため、関係通達に基づき、高速道路会社等に対し引き続き指導を行う。

さらに、荷役作業中の労働災害が増加していることを踏まえ、陸上貨物運送事業等に対し、荷役作業に関するリスクアセスメントマニュアル等を活用した指導を行う。

(ク) 爆発・火災災害防止対策の推進

爆発、火災災害を発生させた化学関連施設等を有する事業者に対しては、設備の定期自主検査や危険性又は有害性等の調査等、請負人への危険有害情報の提供等の実施について、労働安全衛生法第78条に基づく安全衛生改善計画の作成を指示するなど指導を行う。

(ケ) 技能講習等の適切な実施の確保

技能講習等の適切な実施を確保するため、登録教習機関等に対する監査指導を適正かつ迅速に実施し、不正事案を把握した場合には、登録の取消等の行政処分を行う等厳正に対処する。

イ 労働者の健康を確保するための施策の展開
(ア) 過重労働による健康障害防止のための対策の推進

過重労働による健康障害を防止するため、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」に基づき、労働時間管理、健康管理等に関する法令の遵守徹底のための監督指導等を実施し、過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場に対しては再発防止の徹底等の指導を行うとともに、過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場であって労働基準関係法令違反が認められるものについては、司法処分を含めて厳正に対処する。また、平成20年4月から小規模事業場における面接指導の実施が義務付けられることから、その施行に万全を期するため、小規模事業場に対して、あらゆる機会を捉えて面接指導制度の周知を図るとともに、地域産業保健センター事業の受託者に対して、医師等を対象とした面接指導に関する研修の活用を図るなど適切な支援を行う。

さらに、中小規模事業場の集団に対し、安全衛生管理の専門家による助言指導を行うことを内容とする、新たに設ける過重労働による健康障害防止のための自主的な改善対策の推進事業について周知を図る。

(イ) メンタルヘルス対策の推進

面接指導制度の周知や指導の際には、メンタルヘルス面の留意についても周知徹底を図る。また、あらゆる機会を捉えて「労働者の心の健康の保持増進のための指針」、事業場に対するメンタルヘルス対策支援事業、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」等の周知を図る。

また、産業保健推進センター、地域産業保健センター及び労災病院におけるメンタルヘルスに関する相談の利用について、あらゆる機会を捉えて周知を図るとともに、働き盛り層のメンタルヘルスケア支援事業について、都道府県等との連携を図り、適切な実施を促進する。

さらに、自殺対策基本法において事業主の責務が規定されたことを踏まえ、冊子「職場における自殺の予防と対応」等を活用し、あらゆる機会を捉えて労働者の自殺予防に必要な知識の普及・啓発を図る。

(ウ) 職場における着実な健康確保対策の推進

衛生委員会の設置及び運営、産業医や衛生管理者の適正な選任及び職務の励行、健康診断の実施及び事後措置等について、監督指導等の機会を捉え、その徹底を図るとともに、衛生委員会をはじめとした事業場における労働衛生管理活動の活性化について集団指導等により指導を行う。

小規模事業場に対しては、地域産業保健センター事業、産業医共同選任事業等の利用促進や衛生推進者の適正な選任や活動の活性化について、あらゆる機会を捉えて指導を図る。

(エ) 職業性疾病予防対策等の推進

粉じん障害防止対策については、第6次粉じん障害防止総合対策及び「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」に基づく対策の徹底を図るため監督指導等を実施するとともに、その際には、呼吸用保護具の適正な使用等についても指導を行う。

また、屋外作業のある事業場に対し、引き続き「屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドライン」の周知を図る。

介護事業等において腰痛が増加していることから、「職場における腰痛予防対策指針」について、介護事業場に対する集団指導等の機会を捉えて周知を図る。

電離放射線障害防止対策については、特に原子力施設に対し、下請事業場を含めた総合的な安全衛生管理体制の確立、被ばく低減化の徹底等を図るための監督指導等を実施する。

(オ) 化学物質による健康障害防止対策の推進

化学物質の表示・文書交付制度及び「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」について、管内の実態に応じ、化学物質を製造等している事業者を対象とした説明会を開催することなどにより周知・指導を図る。

また、有害物ばく露作業報告制度について、管内の実態に応じ、化学物質を製造等している事業者を対象として説明会を開催することなどにより周知・指導を図る。

さらに、一酸化炭素中毒災害防止対策等についても、管内の事故の発生状況等に応じ、関係団体等に対し集団指導等を実施する。

(カ) 職場環境の快適化の推進

喫煙対策ガイドライン等に基づく受動喫煙防止対策について、集団指導等あらゆる機会を捉えて指導を行い、特に、喫煙室の設置等が困難な場合などは、事業場を全面禁煙とするよう事業者に対して勧奨する。 また、労働者等から職場における受動喫煙に関し相談等あった場合には、必要に応じ個別指導等を行うなど積極的に対応する。

さらに、集団指導等あらゆる機会を捉えて、快適職場推進計画の認定制度の周知を図る。

ウ アスベストによる健康障害防止対策
(ア) 建築物等の解体時等のアスベストばく露防止対策

建築物の解体作業等におけるアスベストばく露防止対策については、計画届、作業届のほか、関係行政機関等から収集した情報を基に、監督指導等を行い、平成18年の改正により新たに義務付けられた措置を含め、石綿障害予防規則に基づく措置の徹底を図るとともに、併せて、ばく露防止対策等の実施内容の掲示についても、必要な指導を行う。

(イ) アスベストの全面禁止の徹底等

平成18年の改正によるアスベスト製品の製造等の禁止について監督指導等による徹底を図る。また、例外的に禁止が猶予されたアスベスト製品を製造・使用等している事業者に対しては、早期の代替化について指導を行う。

(ウ) 健康管理対策の推進

アスベストに係る労働者の健康管理の充実を図るため、アスベストばく露リスクが高いと考えられる業種を重点として、あらゆる機会を捉えて石綿障害予防規則に基づく健康診断の実施等の徹底を図る。

また、石綿に係る健康管理手帳の交付要件の見直しを予定していることから、広報の活用や関係機関への周知等を通じて広く周知を行う。

(4) 労災補償対策の推進
ア 労災保険給付の迅速・適正な処理

労災保険給付の請求については、的確な調査の実施等、基本的事務処理を徹底することにより、認定基準等に基づいた適正な認定に万全を期するとともに、標準処理期間内の迅速な事務処理に努める。このため、署長を始めとする署管理者による的確な進行管理、長期未決事案の多い署の管理者に対する局の個別指導の実施等、局署一体となった組織的な対応の一層の徹底を図る。

また、事業主を始めとする関係者から十分な協力が得られない場合等には、労災保険法に基づく権限を適切に行使する等迅速かつ適正な調査を実施する。

労災診療費については、会計検査院による指摘が多い項目及び高額レセプトについて重点的に審査を行うなど、適正な審査を実施するとともに、労災診療費算定基準の医療機関への周知・徹底、誤請求の多い医療機関への指導等、適正払いの一層の推進を図る。

イ 石綿関連疾患の給付請求事案に係る的確な対応

石綿関連疾患に係る労災保険給付及び特別遺族給付金の請求については、引き続き最重点事項として、効率的な事務処理体制の整備の下、被災労働者及びその遺族の迅速・適正な保護・救済を行う。

ウ 労災かくしの排除に係る対策の一層の推進

労災かくし対策については、これまで行ってきたポスターによる周知・啓発等に加え、新たな対策である関係行政機関との連携等の方策を内容とする通達を別途発出する予定であり、これに基づき対策の一層の推進を図る。

また、引き続き、労災担当部署と監督、安全衛生担当部署間で連携を図り、労災かくしの疑いのある事案の把握及び調査を行うとともに、的確な監督指導等を実施し、その存在が明らかとなった場合には、司法処分を含め厳正に対処する。

エ 行政争訟に当たっての的確な対応

審査請求の処理に当たっては、事実関係の把握、争点整理等を適切に行い、審理のための処分を計画的に行うなど迅速・適正な処理を図る。

訴訟追行に当たっては、事実関係を立証するため必要な調査・証拠収集等を迅速に行うとともに、法務当局との密接な連携の下、医学的経験則、認定した事実に基づいた論理的かつ分かりやすい主張・立証を行う等的確な対応に努める。

(5) 労働契約法制の整備等

就業形態の多様化、個別労働紛争の増加等に対応し、労働契約の内容が労使の合意に基づいて自主的に決定され、労働契約が円滑に継続するための基本的なルールを法制化する必要から、労働契約法案を第166回通常国会に提出したところであり、成立した際には、その内容についての周知に万全を期する。



3 職業安定行政の重点施策

若年層の高い失業率、雇用情勢の地域差の拡大等の問題に加え、団塊世代の引退や人口減少社会の到来が、今後の我が国経済社会に極めて大きな影響を与えることが見込まれる。このため、今後の雇用対策の基本的方向として、人口減少下において、働く希望を持つすべての若者、女性、高齢者、障害者等の就業参加の実現を図ることを明確化するとともに、若者の雇用機会の確保、募集採用に係る年齢制限禁止の義務化、外国人労働者の適正な雇用管理の推進、雇用情勢の地域差の是正を図ることを内容とする雇用対策法及び地域雇用開発促進法の改正法案を第166回通常国会に提出したところであり、成立した際には、その円滑かつ適切な施行を図る。

(1) 職業安定行政における数値目標の設定

職業安定行政における数値目標の設定については、平成16年度より実施してきたところであるが、平成18年度からは、PDCAサイクルによる目標管理を行うことにより、(1)公共職業安定所職員の参画に基づく、職員の自主性を発揮した業務運営を実現するとともに、(2)本省−都道府県労働局間、都道府県労働局−公共職業安定所間及び公共職業安定所内部の活発なコミュニケーションを通じた公共職業安定所の機能強化を図ることとした。

このため、目標を設定する項目の一部(「地方計画策定項目」)について、労働局及び公共職業安定所ごとの目標値を設定することとし、これを踏まえて厚生労働省としての目標設定を行うこととする。

なお、それ以外の項目(「目標設定項目」)については、平成18年度同様に、定期的な実績把握を行いつつ、適宜、必要な対応をとるものとする。

具体的な目標項目は以下のとおりである。

○ 地方計画策定項目…都道府県労働局・公共職業安定所ごとに計画を策定し、PDCAサイクルによる管理を行うもの

・ 就職率

公共職業安定所の紹介により就職した者の新規求職者に対する比率について、33%以上を目指す。

・ 雇用保険受給資格者の早期再就職割合

基本手当の支給残日数を所定給付日数の3分の2以上残して早期に再就職する者の割合を30%以上に引き上げることを目指す。

○ 目標設定項目…都道府県労働局・公共職業安定所ごとに計画を策定することは求めないが、本省としての目標値を示し、実績を把握したうえで必要に応じて指導するもの
1 障害者の就職件数

・ 障害者の就職件数について対前年度3,500件増を目指す。

2 フリーターの常用雇用者数

・ 13.5万人以上の常用雇用化を目指す。

3 再就職支援プログラム開始件数、就職率

・ 再就職支援プログラム開始件数8万件以上、就職率76%以上の確保を目指す。

4 就職実現プラン等作成件数、就職率

・ 就職実現プラン作成件数14万件以上、就職率62%以上の確保を目指す。

・ 総合的な支援計画作成件数1万5千件以上、就職率40%以上の確保を目指す。

・ チャレンジ計画作成支援件数4万件以上、就職率62%以上の確保を目指す。

5 新規高卒者内定率

・ 平成18年度以上の確保を目指す。

6 若年・中高年・障害・季節トライアル開始者数、常用移行率

・ 若年者等試行雇用(トライアル)事業について、開始者数64,000人以上、常用雇用移行率80%以上を目指す。

・ 中高年齢者試行雇用(トライアル)事業について、開始者数4,500人以上、常用雇用移行率75%以上を目指す。

・ 障害者試行雇用(トライアル)事業について、開始者数8,000人以上、常用雇用移行率80%以上を目指す。

・ 季節労働者試行雇用(トライアル)事業について、開始者数700人以上、支給対象者における常用雇用移行率80%以上を目指す。

7 年齢不問求人割合

・ 平成19年度に50%以上とすることを目指す。

8 未充足求人フォローアップ

・ 求人受理後3週間を経過しても応募者がいない求人すべてについてフォローアップ実施を目指す。

9 雇用形態が正規労働者(正社員)である求人の充足率

・ 前年度以上の割合の確保を目指す。

10 65歳以上定年企業等(※)の割合

・ 平成20年の高年齢者雇用状況報告において42%以上を目指す。

(※ 51人以上規模企業のうち65歳以上定年企業、65歳以上希望者全員継続雇用制度企業及び定年廃止企業)

11 障害者雇用率達成企業等の割合

・ 平成19年の障害者雇用状況報告においては、平成18年と比較して4%ポイントの上昇を目指す。

※ 平成20年の障害者雇用状況報告において、50%を超えることを目指す。

・ 都道府県教育委員会について、現在実施中の障害者採用計画の期間中(平成18年1月1日から平成20年12月31日まで)において少なくとも10委員会で法定雇用率を達成するとともに、その他の37委員会においても平成17年6月1日現在の実雇用率から0.4ポイント以上の上昇を目指す。

・ 都道府県の機関(都道府県教育委員会を除く。)について、法定雇用率達成機関の割合を90%以上とすることを目指す。

・ 市町村の機関(2.0%の法定雇用率が適用される市町村教育委員会を除く。)について、法定雇用率達成機関の割合を、80%以上とすることを目指す。

(2) 雇用情勢が特に厳しい地域と意欲のある地域に重点化した雇用対策の実施

全国的には雇用情勢が改善する一方で、依然として厳しい雇用情勢が続いている地域が存在し、地域差が生じている。このため、雇用情勢が特に厳しい地域と雇用創出に向けた意欲が高い地域に支援を重点化し、地域の自主性と関係者間の連携を重視しつつ、地域の雇用創出を効果的に促進する。(第166回通常国会に提出している雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律が成立し、施行されるときからの変更となる。)

ア 地域雇用開発助成金

地域雇用開発促進法に基づく雇用情勢の特に厳しい地域である雇用開発促進地域(仮称)その他の雇用開発が必要な地域において、雇用開発に取り組む事業主を支援する。

(ア)雇用開発奨励金

雇用開発促進地域、その他の雇用開発が必要な地域において事業所の設置・整備に伴い雇い入れた地域求職者の人数(3人(創業事業主は2人)以上)及び設置・整備費用(300万円以上)に応じて一定額を支給。

(イ)中核人材活用奨励金

雇用開発促進地域において雇用創出に結びつく新事業展開、経営の高度化、拡大等に資する中核的人材の受け入れ(地域求職者の雇い入れを伴うことが要件)に対して一定額を支給。

(ウ)沖縄若年者雇用奨励金

事業所の設置・整備に伴い雇い入れた沖縄に居住する30歳未満の者に支払った賃金に相当する額の一定割合を支給。

イ 地域雇用創造推進事業

地域再生計画や各府省の支援メニュー、地方自治体における産業振興施策との連携の下に、雇用創造に自発的に取り組む協議会が提案した雇用対策に係る事業構想の中から、コンテスト方式により雇用創造効果が高いものを選抜し、当該地域に対しその事業を委託する。

ウ 受給資格者創業支援助成金

雇用保険受給資格者の自立を促進する受給資格者創業支援助成金については、雇用情勢が厳しい地域(地域雇用開発促進法に基づく雇用開発促進地域(仮称))において、重点的に雇用の受け皿作りを推進する。

エ 創業支援コーナーによる相談援助の実施

能開機構が7道県センターに設置した創業支援コーナーにおいて実施する創業に関する相談援助業務と連携し、7道県に対する創業支援を積極的に行う。

(3) 地方公共団体との連携による就職支援
ア 労働分野における国と地方公共団体との連絡窓口について

都道府県労働局に設置している地方公共団体との連絡窓口について、職業安定部長は連絡責任者として、雇用対策を始めとする国の労働政策との連携・協力関係を強化するため、積極的に地方公共団体からの情報収集や意見交換などを行い、地方公共団体における要望や検討状況の的確な把握に努めるなど、地方公共団体との連携・協力に努める。また、雇用対策における労働局との連携・協力についての要望等を把握した場合には、その実現可能性について検討し、可能な範囲で実施するとともに、雇用対策以外の労働分野についての要望等についても、労働局内の関係課室において適切に検討が行われるよう関係課室に確実に伝達するなど、迅速かつ円滑に対応する。

イ 地域職業相談室等の設置による市町村と連携した職業紹介・相談
(ア) 地域職業相談室

市区町村の要望や公共職業安定所の設置状況を勘案し、公共職業安定所と市区町村が共同で運営する地域職業相談室を設置し、市区町村の相談・情報提供業務と連携した職業相談、紹介を実施する。

(イ) 高年齢者職業相談室

市区町村と共同で運営している高年齢者職業相談室について、その運営状況を踏まえて、配置の見直しを進める。

ウ 地方公共団体が行う職業紹介との連携・協力

地方公共団体の行う無料職業紹介事業について、地方公共団体の要請がある場合には、求人者が公開に同意している求人情報の提供等の連携、協力を行う。

また、地方公共団体が、官民共同窓口の設置を希望する場合には、公共職業安定所の体制等を勘案した上で、可能な範囲で対応を検討する。

エ 都道府県の企画・立案による求職活動の支援

求職活動援助地域において、都道府県の企画・立案による実施方式によって、求職活動を支援するための事業を事業主団体等に委託して実施する。

オ 雇用関連事業ワンストップサービスについて

雇用関連情報コーナーを活用し、地方公共団体、独立行政法人、公益法人等が実施している雇用関連事業について、引き続き利用者の立場に立ったワンストップサービスを推進する。さらに、ハローワークインターネット上での雇用関連情報検索について周知に努めるとともに、各機関より関連情報を積極的に収集し、雇用関連情報データの充実を図る。

カ 国・地方公共団体・民間職業紹介機関による官民交流会の実施

国・地方公共団体・民間職業紹介機関が一堂に会して、職業相談・職業紹介の技法等の向上、地域の労働力需給に関する情報交換等を行う官民交流会を適宜実施する。

(4) 雇用のミスマッチ縮小等のための雇用対策の推進
ア 公共職業安定所における的確な求人・求職のマッチング

公共職業安定所において、地域の労働市場の状況、求人者や求職者のニーズなどを踏まえつつ、的確に求人・求職のマッチングを図ることとし、公共職業安定所の求職者の就職率(公共職業安定所の紹介により就職した者の新規求職者に対する比率)について目標を設定し、その達成を目指す。

とりわけ、雇用保険受給資格者の早期再就職の促進に努め、受給資格者のうち早期に就職した者の比率(基本手当の支給残日数を所定給付日数の3分の2以上残して就職した者の受給資格決定件数に対する比率)に係る目標を設定し、その達成を目指す。

また、多くの求職者が正社員としての就職を希望していることを踏まえ、正社員として雇用することのメリット、正社員を雇用したことによって人事労務管理、経営管理が成功したケース等を集めた好事例集を含むパンフレットを作成し、これを求人開拓等あらゆる機会を捉えて周知することにより、正社員求人の提出を促す。また、求職者に対し、セミナーや企業説明会等を実施し、中小企業の実情に対する理解を促すことによりマッチングを促進するなど、正社員求人の充足率(公共職業安定所により充足した求人の新規求人数に対する比率)の向上に努める。

(ア) 公共職業安定所の特性、ノウハウを活かした職業相談・紹介の実施

求職者に対しては、職業相談を通じたニーズや状況の変化の的確かつ十分な把握、適時適切なサービスの提供、求人部門と紹介部門の連携等により就職促進を図る。また、求人者に対しては、求人内容を詳細かつ的確に把握し、早期充足に向けたコンサルティングや条件の緩和指導等により的確な求職者の紹介に努め、求人者サービスの向上を図る。さらに、公共職業安定所が主体となった能動的・計画的な職業紹介を推進し、きめ細かな就職支援を通じ、積極的に、的確な求人・求職のマッチングを図る。

(イ) 労働市場の的確な分析及び情報の提供

それぞれの労働市場における職種、能力、経験等のミスマッチの状況を的確に分析し、円滑なマッチングにつなげるよう、求人者及び求職者に対して、求人賃金の水準を始めとして、地域の実情に合った効果的な情報提供を徹底する。

(ウ) 効果的な求人開拓の実施

求職者のニーズに比べて相対的に不足している職種や正社員求人などの就職に資する求人に重点を置いた求人開拓や個別の求職者の希望に応じた個別求人開拓を効果的・効率的に実施するとともに、開拓した求人のフォローアップを徹底する。

(エ) 雇用保険受給者に対する就職支援セミナー等の実施

雇用保険受給者の早期再就職を促進するため、公共職業安定所等において、雇用保険受給者の就職意欲の喚起・維持を図るとともに、早期再就職のために必要な求職活動に当たっての心構えの確立や労働市場情報の理解の促進等を図るための就職支援セミナーを効果的に開催する。

また、同セミナーを民間委託している場合は、事業の実施状況を随時調査する等により事業を適正に実施し、雇用保険受給者の早期再就職のために効果的に活用する。

さらに、雇用保険受給者を対象とする初回講習においては、冒頭に当該講習の趣旨を必ず説明するとともに、求職活動の流れや労働市場の状況等の説明には、資料や映像を活用するなど効果的な実施を図る。

(オ) 労働市場圏を踏まえた関係局・所の連携の強化

労働市場圏の拡大、変化に対応し、労働局、公共職業安定所の管轄を超えた求人・求職の適切なマッチングを図るため、関係局・所間の連携を強化する。

イ 求職者の個々の状況に的確に対応した公共職業安定所の就職支援
(ア) 個々の求職者の状況に応じた個別総合的なサービスの提供

早期再就職の緊要度が高い求職者に対して、就職支援ナビゲーターによる体系的かつ計画的できめ細かな就職支援を行う再就職支援プログラムを実施する。

また、公共職業安定所に再チャレンジプランナーを配置し、自ら再就職の実現に向けた計画の策定が可能な者に対しては、計画策定の助言等を行い、それが困難な者に対しては、キャリアの自己点検、能力開発、求職活動のノウハウの付与等の総合的な支援計画を策定するとともに、必要な支援への誘導等を行うことにより、計画的な求職活動を支援する。

(イ) 子育てする女性等に対する再就職支援の充実

マザーズハローワーク及びマザーズサロンにおいて、求職活動の準備が整い、かつ具体的な就職希望を有する子育て女性等に対する就職支援サービスを提供する。

具体的には、キッズコーナーやベビーチェアの設置により子供連れで来所しやすい環境を整備するとともに、地方公共団体等との連携により、仕事と子育ての両立支援に取り組む企業の情報、保育所・子育て支援サービス等に関する情報提供等を行う。また、個々の求職者の置かれている状況に応じた就職実現プランを策定し、求職者のニーズを踏まえた担当者制によるきめ細かな職業相談・職業紹介を行うとともに、求職者の希望やニーズに適合する求人の開拓を実施する。

また、地方公共団体や雇用均等行政等子育て女性の就職支援に取り組む関係者による協議会を開催し、就職支援や子育て支援に関する各種情報の共有を図るとともに、就職支援に係る具体的な連携の在り方を協議し、地域の関係機関の連携の下で、子育てをしながら就職を希望する者に対する総合的な支援を実施する。

ウ 的確な公共職業訓練の活用
(ア) 公共職業訓練に関する情報提供

能力のミスマッチを解消するためには、能力開発が必要な求職者に対し、人材ニーズに基づいて職業訓練を活用するよう、公共職業訓練情報を積極的に提供する。

(イ) 的確かつ早期の受講あっせん

職業訓練の受講が有効な求職者に対して、求職活動期間のなるべく早期に受講のあっせんを行うよう努める。訓練コースの選定に当たっては、求職者の意思を尊重しつつも、十分な職業相談を行い、本人の適性・能力・職業経験等を的確に把握した上で、各訓練コースの内容・水準、地域の労働力需給動向等を総合的に勘案し、当該求職者が適職に就くために必要と判断される場合に、当該職業訓練の受講をあっせんする。

その際、必要に応じて独立行政法人雇用・能力開発機構都道府県センター(以下「能開機構都道府県センター」という。)等の能力開発支援アドバイザーと連携してキャリア・コンサルティングを実施する。

(ウ) 求人セット型訓練の活用

求人企業に委託する求人セット型訓練は、再就職促進効果が高いことを踏まえ、求人開拓や求人受理に当たって、積極的な活用を勧奨するほか、未充足求人のフォローアップの一環としてその利用を促進する。

委託先事業主の開拓に当たっては、能開機構都道府県センターのアドバイザー等との緊密な連携により、求人企業に対する周知や能開機構都道府県センターに対する未充足求人の情報提供等を行い、効果的な開拓体制の一層の整備に努める。

(エ) 複数回受講指示の活用

訓練受講修了者については、キャリア・コンサルティング等を踏まえ、更なる能力開発が必要な場合は複数回受講指示等を行う。

(オ) 求職から就職に至るまでの一貫した支援

求職者の早期再就職を促進するため、求職から、相談、訓練受講、職業紹介、就職に至るまでの一貫した支援を実施する。

このため、能開機構都道府県センター及び都道府県職業能力開発校に配置されている巡回就職支援指導員と連携し、委託訓練受講中の者に対する就職支援を実施するとともに、個別求人開拓の実施、合同就職面接会の開催等を行い訓練受講者や修了者の早期就職を図る。

エ 未充足求人のフォローアップの徹底等求人者サービスの充実

求人受理後3週間を経過しても応募者がいない求人を提出しているすべての事業主に対し、何らかの接触を行うとともに、必要に応じ、その求人が未充足となっている原因を分析の上、求人条件の緩和指導、求職者情報の提供、事業所見学会の実施等の積極的関与を行う。

その際、多くの求職者が正社員としての就職を希望していることを踏まえ、未充足の正社員求人については、原因を分析の上、積極的なマッチングに努めるとともに、未充足の主たる原因が非正社員求人であることと考えられる求人については、可能な限り正社員求人となるよう求人条件の変更を促す。

また、公共職業安定所のサービスメニュー、求人充足を促進するための労働市場情報、事業内容や会社の特徴、仕事の内容を分かりやすく記入してもらうための職種別チェックポイント等を内容とする求人者向けパンフレットを作成するとともに、必要に応じ労働市場の動向 や求職者ニーズを踏まえた、就職に結びつきやすい求人条件を提案するほか、分かりやすい求人票作成のためのセミナーや個別の相談援助を実施するなど求人充足の緊要度の高い求人事業主に対するコンサルティングサービスを充実する。

オ 募集・採用に係る年齢制限の禁止に関する取組の推進

公共職業安定所における年齢不問求人の割合を高めるため、個別企業への指導等に努めるとともに、労働者の募集及び採用の際、事業主が年齢制限をする場合には、その理由を提示するよう徹底を図る。

一方、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けて、募集・採用に係る年齢制限の禁止を義務化するため、雇用対策法の改正法案を今通常国会に提出しているところであり、改正法案が成立した際には、別途指示するところにより、その円滑かつ適切な施行を図る。

カ 失業者向けのサービスの提供
(ア) 生活関連情報の一元的な提供

失業に直面した際に生ずる社会保険、税制、住宅、教育、育児、心の悩み等の生活関連情報について、相談及び助言を行う生活関連情報相談コーナーを大都市圏の公共職業安定所に引き続き設置するとともに、ハローワークインターネットサービスを活用し、生活関連情報の提供を行う。

(イ) 就職支援アドバイザーによるコンサルティング

失業による心理的不安を解消するため、公共職業安定所のコンサルティングコーナーにおいて、就職支援アドバイザーによるコンサルティングを実施する。

キ 雇用調整に対する的確な対応
(ア) 成長分野を中心とした円滑な労働移動の支援

雇用調整を予定している企業の動向の把握に努め、大量雇用変動届又は再就職援助計画の作成及び労働移動支援助成金の活用を含め、離職を余儀なくされる労働者の再就職促進のための支援の実施が適切に行われるよう指導する。

また、人口減少社会の下で、今後の成長産業や発展分野に労働者が雇用されていくことが求められていることから、今後の国民経済の発展にとって望ましいと考えられる分野(新規・成長15分野)への円滑な労働移動の推進を図る。

(イ) 雇用再生集中支援事業の実施

不良債権処理については目途がつきつつあるが、不良債権処理の多くが民事再生等の「再建型」によって行われる中で、雇用調整が今後行われるおそれがあることから、平成19年度においても雇用面への影響について管内状況の的確な把握に努め、不良債権処理の影響により雇用調整を行う事業主に対しては雇用調整方針の作成・届出を積極的に働きかけるとともに、雇用調整方針対象者に対しては求職活動に対する個別のニーズを把握し、財団法人産業雇用安定センター等関係機関との連携の下、体系的な再就職支援策の円滑かつ適切な実施を図る。

なお、雇用調整方針の受理は、平成19年度末をもって終了とする。

(ウ) 雇用の維持確保に対する支援

雇用調整助成金の活用を通じ、景気の変動等、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされ一時的に休業等又は出向を行うことにより雇用の維持確保を図る事業主を支援する。

ク 育児休業取得者等に対する支援

育児休業取得者等に対して企業独自の給付を行った事業主に対する助成制度を創設し、育児休業の取得を積極的に促進して雇用の継続を図る。

ケ 福祉重点ハローワークにおける就職支援の実施

福祉重点ハローワークに配置されている介護労働専門官が中心となって、福祉分野への就職を希望する者や福祉分野の人材を必要とする事業主に対して、(1)潜在福祉労働力の発掘、(2)求人・求職のマッチングの促進、(3)求人の充足対策、(4)福祉人材センター等関係機関との連携等により、福祉人材の確保を積極的かつ効果的に行う。

(5) 良好な雇用機会の創出・確保
ア 地域における雇用創造の支援
(ア) 地域再生雇用支援ネットワーク事業の実施

自ら主体的に地域再生に取り組む市町村等を雇用面から総合的に支援する「地域再生雇用支援ネットワーク事業」を、関係機関と連携して推進する。特に、地域再生に取り組む市町村等に対するワンストップ窓口での対応、市町村等と公共職業安定所による情報・意見交換等を踏まえたニーズに対応した就職支援の実施などに積極的に取り組む。

(イ) 地域雇用創造推進事業(再掲)

地域再生計画や各府省の支援メニュー、地方自治体における産業振興施策と の連携の下に、雇用創造に自発的に取り組む協議会が提案した雇用対策に係る 事業構想の中から、コンテスト方式により雇用創造効果が高いものを選抜し、 当該地域に対しその事業を委託する。

(ウ) 地域創業助成金

サービス分野及び市町村が選択した重点分野において創業する者に対して、創業及び雇入れに係る助成を行う。

(エ) 地域雇用開発活性化事業の実施

地域における雇用の改善、2007年問題の対応等のため、中小事業主団体等による地域の実情を踏まえた高年齢者の活用、後継者の確保等を図る取 組を支援する。

イ 地域に密着した産業雇用の再生・強化
(ア) 総合的な建設労働対策の推進

建設投資額の減少等により厳しい状況が続いている建設業について、労働者の就業・就労機会の確保を図るため、建設業界、独立行政法人雇用・能力開発機構(以下「能開機構」という。)等と密接な連携を図る。

また、関係行政機関、能開機構都道府県センター及び建設事業主団体をメンバーとする「建設雇用改善推進対策会議」において、特定のテーマを中心にそれぞれの地域において建設業が抱える課題等を共有し、その解決策について検討を行うことにより建設雇用の改善の推進を図る。

労働力の需給調整機能の強化等を目的として平成17年10月から施行された改正建設労働者雇用改善法に基づく建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業については、その周知を積極的に図るとともに、事業主団体等からこれら事業の活用の相談等があった場合には、事業が活用できるよう情報提供、援助等を行う。

また、能開機構都道府県センターと定期的に会議や研修を行うことにより、都道府県労働局及び公共職業安定所において能開機構都道府県センターが支給する建設関係助成金業務等についても熟知し、各都道府県労働局及び公共職業安定所に対する建設事業主等からの相談に対応できる体制を整える。

(イ) 林業労働力の確保対策の強化

我が国林業を取り巻く環境の変化に対応するとともに、林業労働力の確保を図るため、林野庁等との連携の下、林業事業体の雇用管理の改善のための林業事業体に対する研修等を実施する。

また、林業を希望する求職者が林業作業の体験等により林業への就業意識の明確化を図り、積極的に林業就業を選択し、定着することを支援する「林業就業支援事業」を実施する。

さらに、林業振動障害軽快者の再就職促進対策を実施する。

(ウ) 「農林業をやってみよう」プログラムの推進

就農等支援コーナー等により、農林業等への多様な就業希望に応えるべく、地方農政局、都道府県農林水産業主管部課及び関係団体等との連携の下に求人情報の提供、職業相談・紹介、農林業等関連各種情報の提供等を行う。

(エ) 若者に対する農業就業の支援

フリーター等の若者に対して、農業に関する就業支援情報を提供し、就農等支援コーナーでの職業指導を通じて、職業選択の幅を広げ農業で働くことについての意識の明確化を図るとともに、地方農政局、都道府県農林水産業主管部局及び関係団体等との連携の下、多様な農業就業支援を実施する。

ウ 良好な雇用機会の創出

良好な雇用機会の創出を図るため、関係省庁、関係団体、都道府県、市町村、経済団体等と共同あるいは連携して、創業支援についての広報、相談、援助を行う。また、都道府県労働局が中心となって、関係団体との連携協力を図り、雇用関係助成金の一体的な周知、積極的な活用を図る。

(ア) 中小企業における雇用機会の積極的な創出

創業・異業種進出を行う中小企業が経営基盤の強化に資する人材を雇い入れる場合の助成等を行う能開機構と連携するなど、雇用機会の創出の担い手である中小企業の人材確保・育成、魅力ある職場づくりを推進する。

(イ) 受給資格者創業支援助成金(再掲)

雇用保険受給資格者の創業に係る助成を行うことを通じ、その自立を促進する。

また、当該助成の拡充については、雇用情勢が厳しい地域(地域雇用開発促進法に基づく雇用開発促進地域(仮称))において、重点的に雇用の受け皿作りを推進する。

(ウ) 高年齢者等の共同による創業に対する支援

高年齢者等共同就業機会創出助成金を活用し、45歳以上の高年齢者等が共同して事業を開始し、継続的な雇用就業機会を創出した場合、当該事業主を支援する。

(エ) 地域創業助成金(再掲)

サービス分野及び市町村が選択した重点分野において創業する者に対して、創業及び雇入れに係る助成を行うことにより創業する者を支援する。

(オ) 地域雇用開発助成金(再掲)

地域雇用開発促進法に基づく雇用情勢の特に厳しい地域である雇用開発促進地域(仮称)その他の雇用開発が必要な地域において、雇用開発に取り組む事業主を支援する。

(カ) 子育て女性起業支援助成金

末子が12歳以下の子育て期にあり、かつ、雇用情勢の厳しい地域(有効求人倍率が全国平均を下回る道府県)に住所を有している女性の起業に係る助成を行うことを通じ、子育て期にある女性の起業を促進する。

(6) 雇用保険制度の安定的運営
ア 雇用保険制度の見直し

行政改革推進法を踏まえ、また、直面する諸課題に対応するため、雇用保険制度について、失業等給付に係る国庫負担及び保険料率の見直し、雇用福祉事業の廃止、被保険者区分の一本化、育児休業給付及び教育訓練給付の拡充等の見直しを盛り込んだ「雇用保険法等の一部を改正する法律案」を今通常国会に提出しているところである。同法案が成立した際には、労働者向けの周知等の施行に向けた周知・広報及び施行後の説明・指導等の取組を推進し、引き続き、安定した制度運営を確保することに努める。

イ 適正な業務の運営

雇用のセーフティネットとしての雇用保険制度の安定的運営を確保しつつ、その十分な機能発揮を図るため、求職活動実績に基づく的確な失業の認定を行うとともに、効果的な認定時間の設定、給付制限中の者に対する積極的な支援等、職業紹介部門とも緊密に連携しつつ、受給資格者の早期再就職の一層の促進を図る。

ウ 電子申請の利用促進

利用者の利便性の向上及び行政の業務簡素化等に資するため、雇用保険関係手続のオンライン利用率を平成22年度までに50%以上とする目標の達成に向け、重点的取組手続を中心に積極的な電子申請の利用促進の取組を図る。

エ 不正受給の防止

不正受給防止を徹底するため、必要に応じ基本手当初回受給者のうち一定割合を抽出する等の方法により不正受給防止のための調査を行う。

オ 情報漏えいの防止

雇用保険業務に係る保有個人情報の管理徹底や職員の意識啓発、各局ごとに策定している保有個人情報規程の周知徹底を図ること等により、雇用保険業務に係る保有個人情報の漏えいを防止する。

(7) 民間等の労働力需給調整事業の適正な運営の促進

民間や地方公共団体による職業紹介事業や労働者派遣事業が、適正に運営され、その機能と役割が十分に発揮されるよう、労働局においては、法制度の周知、指導監督、許可申請・届出の処理等の需給調整事業関係業務の効果的かつ効率的な実施に努め、職業安定法及び労働者派遣法の円滑な施行を図る。

労働者派遣事業及び請負事業の指導監督に当たっては、派遣は派遣として、請負は請負として適正に実施されるよう、特に物の製造業務への労働者派遣と製造請負の区分の明確化について周知を図るとともに、労働基準行政との連携を図りつつ、的確かつ厳正な監督及び指導を実施する。

また、平成19年3月1日以降は物の製造業務に係る派遣受入期間の制限が最長3年となり、1年を超え3年以内の派遣受入期間の定めができることとなったことを踏まえ、労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間に係る派遣先の労働者の過半数代表からの意見聴取の適切かつ確実な実施等について周知を図るとともに、的確かつ厳正な指導監督を実施する。

さらに、公共職業安定所においては、引き続き派遣労働者や求職者等からの苦情、相談への適切な対応等に努める。

(8) 若年者雇用対策の推進

年長フリーター等の常用就職支援など、「フリーター25万人常用雇用化プラン」等を推進することにより、一人でも多くの若者が新たにチャレンジできる社会の実現を目指す。

ア 「フリーター25万人常用雇用化プラン」の推進
(ア) 「ジョブクラブ(就職クラブ)」方式による常用就職の支援の実施

ヤングワークプラザ(東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫)及び北海道、埼玉、千葉、福岡のハローワークにおいて、的確な求職活動を行えない年長フリーターに対し、民間のノウハウを活用し、これらの者が相互に交流する場を設け、適職の探索や就職活動方法の習得等を行い、主体的に就職活動が展開できるように支援する「ジョブクラブ(就職クラブ)」方式の取組を実施する。

(イ) 年長フリーター等の安定した雇用の促進

特に就職が困難な年長フリーターについて、トライアル雇用後に正社員として雇用する企業に対する支援措置により、その安定した雇用を促進する。

(ウ)フリーター常用就職支援事業の実施

常用雇用での就職を目指すフリーターに対して、公共職業安定所において、フリーター常用就職サポーターを活用しつつ、担当制により、利用者一人一人の課題等を踏まえた常用雇用就職プランを策定するとともに、利用者のニーズに応じた就職支援を積極的に実施する。

(エ) ヤングワークプラザにおける個別支援の実施

ヤングワークプラザにおいて、希望職種が明確になっていないフリーターを対象に、職業適性診断や職業カウンセリングの実施など、計画的できめ細かな個別の支援を実施する。

(オ) 地域との連携及び協力による若年者就職支援対策の展開

若年者のためのワンストップサービスセンター(ジョブカフェ)等において、企業説明会や各種セミナーの開催等に、新たに、職場定着を促進する支援を行うとともに、各地域のジョブカフェが相互に連携を図りつつ就職支援を行う取組を加えた若年者地域連携事業を実施する。また、併設する公共職業安定所においては、ジョブカフェを運営する団体等との密接な連携を図り、利用者の視点に立って、職業紹介の実施など地域との連携及び協力による効果的な若者の就職支援対策を推進する。

(カ) 若年者試行雇用事業の実施

フリーターや学卒未就職者等について、早期の常用雇用の実現を図るため、短期間の試行雇用事業を実施する。また、長期若年無業者等を対象に、働く自信と意欲を高めつつ、段階的に常用雇用への移行を促進するため、短時間勤務による試行雇用事業を実施する。

(キ) 若者に対する農業就業の支援(再掲)

フリーター等の若者に対して、農業に関する就業支援情報を提供し、就農等支援コーナーでの職業指導を通じて、職業選択の幅を広げ農業で働くことについての意識の明確化を図るとともに、地方農政局、都道府県農林水産業主管部局及び関係団体等との連携の下、多様な農業就業支援を実施する。

イ 職業意識形成支援の積極的推進

平成17年度より文部科学省で推進されている「キャリア教育実践プロジェクト」と有機的に連携を図りつつ、中高生を対象としてキャリア探索プログラムを積極的に実施する。これら事業については、各地域でより実効ある取組が推進されるよう、教育委員会、経済産業局、経済団体等の関係機関による協議の場を設けるなど、各地域内において密接な連携を図る。

また、高校生を対象として実施している「就職ガイダンス」について、常用就職者とフリーターとの賃金や生活面での格差の実態等の内容を盛り込んで実施するなど、フリーター・ニート化の防止に向けた取組をより一層強力に推進するための再編を行うとともに、「就職ガイダンス」の開催回数を拡充する。

さらに、大学等と連携し、学生に対する各種セミナーや適職相談を実施するとともに、各都道府県単位で事業主団体等に委託して実施するインターンシップ受入企業開拓事業の推進により、インターンシップの普及・効果的な実施を図る。

ウ 新規学卒者及び既卒者に対する就職支援策の推進
(ア) 新規高卒者に対する就職支援策の実施

新規高卒者の就職促進を図るため、地域の状況も勘案しつつ、求人開拓、就職面接会を実施するとともに、若年者ジョブサポーターを活用し、在学中の早い段階から就職後の職場定着までの各段階を通じてマンツーマンの就職支援を実施する。

(イ) 新規大卒者等に対する就職支援策の実施

大学等就職担当職員を対象とした講習の実施、就職支援マニュアルを活用した就職支援ノウハウの提供等により、大学等の就職支援機能の強化を図る。

また、大学等新卒者に対して、学生職業センター及び学生職業相談室(以下「学生職業支援センター等」という。)において、各地域の大学等と連携しつつ、未内定学生の把握、積極的な就職支援を行う。

(ウ)既卒者に対する就職支援策の実施

学生職業支援センター等において、学生職業相談員を活用し、既卒者の応募・採用機会の拡大を図るため、求人事業主に対して、既卒者に係る情報提供や応募・採用に関するアドバイスを行うとともに、既卒者を対象とした面接会を開催する。

(エ)技能承継者の確保に係る支援

中小企業における円滑な技能継承者の確保を支援するため、都道府県及び能開機構都道府県センター等との連携の下、技能継承トライアル雇用を推進する。

また、特にものづくり産業において技能継承者の確保が大きな課題となっているため、能開機構が支給する中小企業人材確保推進事業助成金を活用し、ものづくり産業における技能継承者の確保に取り組む事業協同組合等を優先的に支援する。

エ 若者の応募機会の拡大に向けた取組の推進

通年採用の導入や採用年齢の引き上げなど、新卒者以外にも門戸を拡げた若者の応募機会の拡大に向けて、各地域の経済団体や経営トップに対し、積極的な働きかけを行う。

また、雇用対策法を改正し、若者の能力・経験の正当な評価による雇用機会の確保等を、事業主の努力義務とするほか、事業主が適切に対処するために必要な指針を策定する。

オ 若年失業者等の就職支援、職場定着の推進
(ア) 再チャレンジプランナーによる就職支援(再掲)

公共職業安定所に再チャレンジプランナーを配置し、自ら再就職の実現に向けた計画の策定が可能な者に対しては、計画策定の助言等を行う。

(イ) 職場定着を推進する施策の推進

公共職業安定所における職場適応指導、雇用管理指導等とともに、民間委託によるインターネット等を通じ、働くことに関わる幅広い相談に身近に応ずる体制の整備に取り組む。

(ウ) 臨床心理士等専門的な人材を活用した就職支援

離職等による挫折感や対人関係に係る不安等を有する若年求職者を対象として、臨床心理士等専門的人材を活用し、個々人の課題に応じた心理面も含む相談サービスを提供し、その就職促進を図る。

カ 無償の労働体験等を通じての就職力強化事業(ジョブパスポート事業)の推進

職場体験やボランティア活動等の社会活動経験を振り返ることで、自己理解を深め、将来の就職や進路選択に役立てるツールとして、ジョブパスポートが活用されるよう、学校に対して積極的に働きかけるとともに、公共職業安定所、ジョブカフェ等の就職支援窓口においても、職歴の少ない若年求職者を対象にジョブパスポートの利用を勧奨すること等により、若者の就職活動を支援する。

また、労働体験等の活動実績が企業の採用選考に反映されるよう、リーフレット等を活用し、企業に働きかける。

キ 若者の人間力を高めるための国民運動の推進

「若者の人間力を高めるための国民運動」が展開される中で、経済界、労働界、教育界、マスメディア、地域社会等の各界が地域において国民運動の趣旨を踏まえた取組が行われるよう、シンボルマークやキャッチフレーズ、愛称(「若チャレ」(若者チャレンジ))も活用しながら、各種会議等を通じ促すとともに、それぞれの取組を相互に連携させ、協力体制が構築されるよう、地域の関係行政機関、学校、経済団体等の橋渡しを行う。

また、「若者の人間力を高めるための国民宣言」及び「国民運動推進の基本方針」を踏まえた、各地域での各界各層の取組状況について引き続き情報収集を行いつつ、各関係団体との連携を進める。

ク 職業能力開発施策との連携

公共職業安定所を利用する若者に対し、以下の職業能力開発施策について、職業意識・職業能力の段階に応じた施策の紹介や地域の学校、企業等に対する積極的な広報・周知を行うとともに、これらの事業の実施主体と連携した円滑な就職支援の実施など、若者の就職に向けた総合的な支援を実施する。

(ア)若者の職業能力開発を通じた就職支援

若者の職業能力を開発し就職を促進する施策として、「日本版デュアルシステム」や、「就職基礎能力速成講座」を実施するとともに、就職に当たって必要とされる基礎的な能力の習得を支援する「YES−プログラム」の実施や、「私のしごと館」において若者を中心としたキャリア形成を総合的に支援している。

また、就職氷河期の間に、不本意な就職をしたままの若者や、不本意ゆえ離転職を繰り返すいわゆる年長フリーター等の能力の向上を図るため、「年長フリーター自立能力開発システム」を整備することとしている。具体的には、職業能力を判断するために企業実習を先行させる職業訓練の実施及び業界の求める採用条件に適応するための職業訓練コースの開発・実施により、正規雇用への再チャレンジの支援を図ることとしている。

さらに、年長フリーターの職業経験を通じて蓄積された職務遂行能力を適切に抽出し、客観的に評価できるようにするための手法を開発し、年長フリーター等の就職を支援することとしている。

加えて、現場の中核となる実践的な能力を備えた人材を育成するため、新規学校卒業者を主たる対象とし、企業が主体となって、企業における雇用関係の下での実習(OJT)と教育訓練機関における学習とを組み合わせて行う「実践型人材養成システム」の周知・普及を図ることとしている。

(イ)ニートの状態にある若者の自立支援

ニート状態にある者をはじめとした若者の自立支援については、地域の若者支援機関のネットワークを活用し、その中核的な拠点として、包括的な支援を個別的・継続的に行う「地域若者サポートステーション」において、メンタル面でのサポートが必要な若者に対してきめ細かい相談を行えるよう、専門支援体制の強化を図ることとしているほか、合宿形式による生活訓練、労働体験等を通じて若者に働く意欲と自信を付与する「若者自立塾」等において、職業意識形成・就労意欲向上を図ることとしている。

(9) 高齢者雇用対策の推進
ア 定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の推進
(ア) 高年齢者雇用確保措置に関する事業主に対する指導・援助の推進

改正高齢法に基づき、63歳までの高年齢者雇用確保措置(以下「確保措置」という。)を講じていない事業主に対して的確に助言・指導を実施し、なお改善がみられない事業主については勧告を行う。

企業数が多い小規模企業については、求人受理時や労働基準行政との連携等、様々な機会を通じて確保措置の実施状況の把握に努めるとともに、地域の実情に応じて、リーフレット等の送付による周知徹底、集団指導、取組の促進に係る事業主団体等への協力要請等の方法を活用し、効果的かつ効率的に63歳までの確保措置の確実な実施を推進する。

また、平成25年度にかけて義務対象年齢が段階的に65歳まで引き上げられることや再チャレンジ支援総合プランの個別行動計画(以下「行動計画」という。)において「65歳以上定年企業等の割合を2010年度までに50%とする」との目標が定められていること等を踏まえ、事業主に対し、できるだけ早期に希望者全員が対象となる65歳までの確保措置を実施するよう、周知・啓発を図るとともに、高年齢者雇用アドバイザー等の活用により、必要な相談・援助等を行う。

(イ) 「70歳まで働ける企業」の普及促進

行動計画において「70歳まで働ける企業の割合を2010年度までに20%とする」という目標が定められていること等を踏まえ、改正高年齢者等職業安定対策基本方針を基に、本年度より開始する「70歳まで働ける企業」推進プロジェクトを着実に推進する。

具体的には、民間団体に委託してシンポジウムの開催等を行い、「70歳まで働ける企業」の普及促進を図るとともに、事業主団体等への委託により、70歳までの高齢者の一層の雇用に向けた取組等を推進する。

また、「70歳まで働ける企業奨励金(定年引上げ等奨励金)」(仮称)の周知及び有効な活用により中小企業における70歳以上への定年の引上げ等の促進を図る。

イ 高年齢者等の再就職の援助・促進
(ア) 募集・採用に係る年齢制限の禁止に関する取組の推進(再掲)

公共職業安定所における年齢不問求人の割合を高めるため、個別企業への指導等に努めるとともに、労働者の募集及び採用の際、事業主が年齢制限をする場合には、その理由を提示するよう徹底を図る。

一方、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けて、募集・採用に係る年齢制限の禁止を義務化するため、雇用対策法の改正法案を今通常国会に提出しているところであり、改正法案が成立した際には、別途指示するところにより、その円滑かつ適切な施行を図る。

さらに、高年齢者雇用アドバイザーの活用を図りつつ、募集・採用時の年齢制限に係る相談・援助等の支援を行う。

(イ) 高年齢者等の再就職の促進

行動計画において「ハローワークにおける60歳以上就職件数を2006年度から2010年度までで70万件」という目標が定められていること等を踏まえ、60歳以上の求職者に焦点を当てた支援等の推進を含め高年齢者の再就職の一層の促進を図る。

具体的には、公共職業安定所においてきめ細かな職業相談・職業紹介等を行うとともに、特に定年退職者等の多い地域において求人開拓や面接会等を実施する定年退職者等再就職支援事業や、民間団体に委託して技能講習及び合同面接会等を一体的に実施するシニアワークプログラム事業を推進する。

また、事業主に対し、再就職援助措置に係る努力義務や、求職活動支援書の作成・交付義務について周知・啓発等を行う。その際には、必要に応じて、都道府県雇用開発協会の高齢期雇用就業支援コーナー及び再就職支援コンサルタントを活用し、求職活動支援書の作成支援や再就職援助措置の内容等について相談・援助を実施する。

高齢期雇用就業支援コーナーでは、いわゆる「団塊の世代」が60歳代に達すること等を踏まえ、職業生活設計等に係る総合的な情報提供や相談・援助機能を強化することとしており、その効果的な展開のため、連絡を密にし積極的な連携を図る。

さらに、中年層を含め試行雇用が必要な求職者に対しては、適切に中高年齢者試行雇用事業を実施する。

ウ 高齢者の多様な就業・社会参加の促進
(ア) シルバー人材センター事業等の推進

行動計画において、「シルバー人材センターの会員数を2010年度までに100万人」という目標が定められていること等を踏まえ、「団塊の世代」にとって魅力ある事業展開に向けた取組の強化を図りつつ、シルバー人材センター事業を着実に推進する。

特に、「都道府県シルバー人材センター事業推進連絡会議」の設置を通じて、労働局、都道府県、シルバー人材センター連合等のシルバー人材センター事業関係者の連携を強化し、目標管理システムの導入、会員の拡大等、自立的・効率的な事業の推進に努める。

また、シルバー人材センター事業の趣旨を踏まえた適正な運営についての指導に努める。

(イ) 高年齢者等による創業の取組の推進(再掲)

独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構において支給を行っている高年齢者等共同就業機会創出助成金について、都道府県労働局、公共職業安定所においても、高年齢者等に対し、積極的に周知・情報提供を行う。

(10) 障害者雇用対策の推進
ア 雇用率達成指導の厳正な実施等
(ア) 指導基準に基づいた厳正な指導

民間企業の実雇用率は前年度より上昇したものの、中小企業の実雇用率が引き続き低い水準にあること、大企業の雇用率達成企業割合が低いことを踏まえ、平成18年度から適用している新指導基準に基づき、未達成企業に対して厳正な指導を行う。

公的機関については、率先垂範して障害者雇用を進めるべき立場であることから、平成18年10月に定めた指導の目標を踏まえ、障害者採用計画の着実な実施を確保するなど、未達成機関に対する指導を徹底する。

また、事業主に対して「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」を周知・徹底し、本人の意に反した雇用率制度の適用が行われないようにするなど、適正な雇用率制度の適用を図る。

(イ) 指導対象を重点化した効果的な指導

上記(ア)による指導と併せて、雇用率未達成企業のうち58.7%を占める1人不足企業の解消、64.1%を占める0人雇用企業における障害者雇用の推進等、都道府県労働局において重点指導対象を明確化し、「平成20年の障害者雇用状況報告において、雇用率達成企業の割合が5割を超えることを目指す」とする目標を踏まえ、効果的な指導を行う。その際、雇用率達成指導と一体となった職業紹介業務の推進にも留意する。

なお、1人不足企業、0人雇用企業の多くは中小企業であることから、中小企業の事業主団体に委託して実施するモデル事業の活用等、中小企業の事業主団体等と連携して、中小企業における障害者雇用の促進に向けた取組を推進する。

イ 職業相談・職業紹介の充実
(ア)障害の特性に応じた相談・支援の充実

専門的な知識・経験を有する者を障害者専門支援員等として公共職業安定所に配置すること等により、障害者に対する相談支援体制の充実・強化を図り、障害の種類・程度等、障害者一人一人の状況に応じた的確できめ細かな職業指導・職業紹介を実施する。

(イ) 障害者試行雇用事業の推進

障害者試行雇用事業については、障害者雇用のきっかけを与え、事業主・障害者双方の不安の解消・軽減を図るものとして有効であることから、引き続き積極的かつ適正な活用を図る。

(ウ) 職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援の推進

公共職業安定所は、ジョブコーチ支援のニーズの把握に努め、地域障害者職業センターに適切に支援をつなぐことにより、円滑な職場適応を促進する。

また、ジョブコーチを配置した福祉施設等による就労支援が効果的に推進されるよう、地域の雇用失業情勢や障害者の職業紹介状況に関する情報の提供等を行い、日常的な連携の確保に努める。

(エ)在宅就労に対する支援

在宅就業障害者支援制度の周知を図るとともに、在宅就業支援団体の登録関係業務の的確な実施、支援団体との連携等を通じて、在宅就業障害者を支援する。

また、在宅勤務コーディネーターに係る助成金等を活用しつつ、障害の態様に応じた在宅勤務・雇用の促進を図る。

ウ 雇用・福祉・教育の連携による就労支援の強化

障害者雇用施策を推進するに当たっては、雇用施策だけでなく障害者施策全般について理解を深め、その方向性を見据えて、行うものとする。

特に障害者自立支援法の全面施行や各都道府県において策定された障害福祉計画等を踏まえ、雇用・福祉・教育の一層の連携強化を図ることとし、福祉施設や特別支援学校に対し、一般雇用や雇用支援策に関する理解の促進と就労支援の取組の強化を働きかけるとともに、福祉的就労から一般雇用への移行促進、就業と生活の両面にわたる支援等を進める。

(ア) 福祉施設や特別支援学校における就労支援の促進

特別支援学校(盲・聾・擁護学校)と連携し、生徒及びその親を対象に、一般雇用や雇用支援策に関する理解の促進を図るセミナー、事業所見学会、職場実習のための面接会を実施し、特別支援学校の生徒の就職促進を図る。

福祉施設に対しては、平成18年度に引き続き、就労支援セミナーを実施する等により、企業ノウハウを活用して、福祉施設(特に就労移行支援事業者)における就労支援の強化を図るとともに、個々の障害者に対する支援を着実につなぐための緊密な連携を確保する。

(イ) 関係機関のチーム支援による、福祉的就労から一般雇用への移行の促進

平成17、18年度に実施した地域障害者就労支援事業におけるモデル的取組の成果や蓄積した支援ノウハウを活用して、そのスキームを全国的に展開することとし、福祉施設との連携を一層強めつつ、障害者就労支援チームによる支援計画の作成、同計画に基づいた就職準備から職場定着までの一連の支援を行うことにより、福祉的就労から一般雇用への移行の促進に努める。

また、障害者が就労支援に係るサービスについて一括して相談できるよう、地域の関係機関が連携したワンストップ機能の整備を図る。

(ウ) 就業面と生活面における一体的な支援の拡充

障害者就業・生活支援センター事業について、都道府県労働局においては、都道府県の労働部局及び福祉部局と連携・協力し、地域の就労支援の連携の拠点として機能するよう指導・育成を行う。

また、公共職業安定所においては、就業と生活の両面にわたる支援が必要な障害者について、同センターとの緊密な連携による効果的・継続的な支援を実施し、円滑な就職及び職場定着を図る。

エ 障害者の職業能力開発の推進

障害者職業能力開発校における訓練、一般校を活用した訓練及び障害者委託訓練などについて、障害者の雇用促進の支援策として積極的かつ効果的な受講あっせん等に努めるとともに、求職障害者や事業主に対するこれらの周知を図る。

特に、地域の企業、社会福祉法人等を活用した障害者委託訓練については、訓練を受託・実施した企業における障害者雇用促進の支援策でもあり、積極的に利用を促進する。

オ 精神障害者に対する雇用対策の強化
(ア) 公共職業安定所における雇用支援の強化

精神障害者の新規求職申込件数は、平成17年度には年間約1万4千件となり、平成18年度においても11月末現在で1万件を超え、ここ数年、連続して高い伸びを示していることから、引き続き、障害者雇用率制度や各種の雇用支援策の活用を通じて、その雇用の促進を図ることとする。

地域障害者職業センターが実施する「精神障害者総合雇用支援」については、公共職業安定所は、周知や支援ニーズの把握に努め、支援を必要とする精神障害者及び事業主を同センターに適切に案内し、効果的な支援が行われるよう配慮する。

(イ) 医療機関等と連携した精神障害者のジョブガイダンス事業の機動的実施

公共職業安定所は、地域の医療機関等へ積極的に働きかけ又はその求めに応じて、柔軟にガイダンスを実施し、当該機関との日常的な連携を深めつつ、精神障害者の就労への移行を促進する。

また、医療から雇用への移行を促す就労支援モデルを構築する事業を行う公共職業安定所においては、ガイダンス終了後の受講者の状況に応じて、医療機関等と連携した支援を継続して行う。

カ 発達障害者に対する適切な対応
(ア) 発達障害に対する理解の促進

発達障害者支援センターや地域障害者職業センター等との連携を図りながら、専門援助部門のみならず職業紹介部門全体において、発達障害に対する理解を深め、相談窓口における適切な対応を図るとともに、障害者試行雇用事業やジョブコーチ支援等の活用により、雇用促進を図る。

発達障害者に対する就労支援及び雇用管理ノウハウの普及等を目的とする「発達障害者の雇用促進のための就労支援者育成事業」について、委託先である発達障害者支援センターと連携・協力し、円滑な実施を図る。

(イ) 「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」の実施

標記プログラムを実施する労働局においては、若年者の就職支援を行う機関と障害者の就労支援機関の連携体制を構築し、発達障害等の要因によりコミュニケーション能力に困難を抱えている者について、その希望や特性に応じた専門支援機関に誘導するとともに、就職チューターが配置された公共職業安定所において、障害者向け専門支援を希望しない者に対するきめ細かな就職支援を実施する。また、一般求職者窓口や若年支援機関における誘導や困難事例等については、本プログラムにより配置された発達障害者専門指導監による助言・指導を実施する。

(11) 外国人雇用対策の推進
ア 専門的・技術的分野の外国人に対する支援
(ア) 適格紹介の推進

我が国経済社会の活性化のため、受入れを積極的に推進すべき専門的・技術的分野の外国人に対しては、各々の持つ専門性を最大限発揮することのできる職業への紹介、就職を進めることが必要である。そのため、外国人求職者の採用を希望し、かつ、外国人求職者を適切に受け入れることができると判断される事業所の求人を積極的に確保する。また、「外国人雇用サービスセンター」(以下「外国人センター」という。)を中心に、各公共職業安定所から連絡を受けた求人票等も活用して、適格な職業紹介に努める。

(イ) 留学生に対する効果的な支援の実施

留学生が卒業後、日本国内で、専門的・技術的分野に国内就職することを促進するための支援を効果的に行う。具体的には、大学等の場を活用した就職ガイダンス、職業相談等を在学年数の早い段階から積極的に実施するとともに、「外国人センター」において、留学生求人開拓推進員を活用し、外国人留学生が応募可能な求人を積極的に確保して、できる限り職業紹介にまで至るよう努める。また、「学生職業総合支援センター」、「学生職業センター」及び「学生職業相談室」(以下「学生職業センター等」という。)においても、必要に応じ「外国人センター」及び「外国人雇用サービスコーナー」(以下「外国人コーナー」という。)の支援を得つつ、外国人留学生に対する積極的な就職支援を実施する。さらに、都道府県労働局においては、外国人労働者問題担当者と学卒業務担当者が連携して、積極的に大学に出向き、日本で就職を希望しながら就職が内定していない外国人留学生を把握するとともに、「学生職業センター等」、「外国人センター」及び「外国人コーナー」における就職支援につなげるように努める。

イ 日系人に対する支援

我が国に在留する日系人の安定した雇用の確保は、政府全体として取り組むべき重要な課題であることを踏まえ、日系人の集住する地域や雇用される日系人が多い地域を管轄する公共職業安定所において重点的に、地方公共団体との緊密な連携を積極的に図りつつ、日系人の雇用や生活における問題を踏まえた対応を行う。具体的には、雇用対策法の改正法案が成立した際には、平成19年度中に施行が予定されている外国人雇用状況報告の義務化・内容拡充について周知を図るとともに、同報告制度により雇用状況を把握する。また、外国人労働者専門官を中心に、公共職業安定所に来所した求人者に加え、日系人を多く直接雇用する事業所へ計画的に訪問し、日系人の不安定な雇用、劣悪な就労環境等の就労実態の改善に向けて、「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」に基づく雇用管理指導を積極的に行う。さらに、日系人若年者等の就職を促進するため、外国人労働者専門官及び日系人キャリア形成専門員により、地元日系人コミュニティにおける日系人就職支援ガイダンスを実施するとともに、ガイダンス出席者を対象とした職業意識啓発指導、職業指導等、個別の就職支援を実施する。また、就職意欲が高い日系人等に対し、早期の就職を実現させるため、日系人就職促進ナビゲーターが中心となって、個々の求職者のニーズを踏まえた綿密な支援を行う。

ウ 外国人雇用対策に関する効率的・効果的な業務運営の実施

都道府県労働局管内の外国人の居住状況、外国人を雇用する事業所の状況、各地域の行政需要等を踏まえ、効率的・効果的な業務運営が可能となるよう、外国人雇用対策関係施設及び職員の配置を行う。

(12) 安心して働ける雇用環境の整備
ア 生活保護受給者及び児童扶養手当受給者に対する就労支援

生活保護受給者及び児童扶養手当受給者の就労による自立の促進を図るため、公共職業安定所と福祉事務所等との連携の強化を図りつつ、支援対象者に対して就労支援の事業の周知を徹底し、就労支援コーディネーターによる支援メニューの選定、就職支援ナビゲーターによる就職支援等きめ細かな就労支援を積極的に推進する。また、職業訓練が必要とされた者については、「準備講習付職業訓練」等を活用し、積極的かつ効果的な受講あっせん等に努める。

イ 刑務所出所者等に対する就労支援

釈放期の近づいた刑務所受刑者及び少年院在院者に対して、刑務所及び少年院と連携して、職業講話、求人・雇用情報の提供、職業相談・職業紹介等就労支援を行う。

また、保護観察対象者及び更生緊急保護対象者に対して、保護観察所等と連携して、公共職業安定所において、適切な就労支援メニューの選定、担当者制による職業相談、職業紹介等きめ細かな就労支援を行う。

さらに、職場体験講習の実施、試行雇用奨励金の支給、セミナー・事業所見学会の実施を社会的自立推進機関に委託し、当該機関を通じた就労支援策を講じる。

ウ ホームレスの雇用対策の推進
(ア) 自立支援事業職業相談員の配置

地方公共団体が行うホームレス自立支援事業との連携の下で、公共職業安定所の自立支援事業職業相談員によるきめ細かな職業相談を行うことにより、就業機会の確保を図るとともに、職場定着に向けての指導を行う。

(イ) ホームレス就業開拓推進員の配置

ホームレス就業開拓推進員を配置し、ホームレスの就業ニーズに応じた求人開拓や地方公共団体等と連携を図りながら求人情報等の収集・提供を行うほか、事業主に対する啓発活動を行うことにより、就業機会の確保を図る。

(ウ) 技能講習事業の促進

自立支援センター等に入所しているホームレスに対して、職場で必要とされる資格・免許の取得等を目的とした技能講習を実施することにより、就業機会の確保を図る。公共職業安定所においては、事業の委託団体に対する事業の実施に必要な助言、協力その他の業務を行う。

(エ) 試行雇用事業の促進

自立支援センターに入所しているホームレス等に対して、一定期間の試行雇用により、円滑な新たな職場への適応を進め、常用雇用への移行を図る。

(オ) ホームレス就業支援事業の推進

全国でもホームレスが多数存在する地域において、就業意欲のあるホームレスを対象に、個別相談、軽易な作業の開拓・提供による就業意欲・能力の見極めの実施、職場体験講習等の就職支援メニューを活用した個別の求職支援を、民間団体等で構成される協議会への委託により実施する。関係労働局においては、本事業が円滑かつ効果的に運営されるよう、協議会に対する助言その他事業に関し必要な協力を行う。

エ 母子家庭の母等の雇用対策の推進

児童等を扶養する母子家庭の母等について、家庭環境等に配慮した職業相談・紹介の実施、特定求職者雇用開発助成金や訓練手当、試行雇用事業の活用等により、早期就職の促進を図る。

また、職業訓練が必要とされた者に対しては、積極的かつ効果的な受講あっせん等に努める。

オ 駐留軍関係離職者対策の推進

駐留軍関係離職者について、駐留軍関係離職者等臨時措置法等に基づき、公共職業安定所において職業相談・紹介、職業訓練の推進と職業転換給付金の活用等により、生活の安定と早期再就職の促進を図る。

カ 漁業離職者対策の推進

国際協定の締結に伴う漁業離職者について、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法等に基づき、公共職業安定所において職業相談・紹介、職業訓練の推進と職業転換給付金の活用等により、生活の安定と早期再就職の促進を図る。

キ 多様な状況に応じた各種雇用対策の推進
(ア) 沖縄県における雇用対策の推進

沖縄県の雇用失業情勢は依然として厳しい状況にあり、沖縄県の雇用失業情勢の改善を図る観点から、「沖縄振興特別措置法」に基づく政府全体の沖縄振興等と連携しつつ、沖縄県内の特別の対策を実施する。

(イ) 日雇労働者対策の推進

求人の開拓を積極的に行うことにより、日雇労働者の就業機会の確保を図る。

さらに、東京、神奈川、愛知、大阪などの日雇労働者が集中する特別地区の日雇労働者に対して、技能講習事業を実施し、日雇労働者の就業機会の確保を図るとともに、試行雇用事業の実施を通じ、常用雇用への移行を図る。公共職業安定所においては、技能講習事業の委託団体に対し、事業の実施に必要な助言、協力その他の業務を行う。

(ウ) アイヌ地区住民の雇用対策の推進

アイヌ地区住民については、各種就職援護措置の活用を図るとともに、職業相談員経験交流会議を開催し、この成果を職業相談に役立て、きめ細やかな職業指導、職業相談を実施するとともに、事業主説明会を開催し、地域住民の雇用の安定を図る。

(エ) 中国残留邦人等永住帰国者の雇用対策の推進

中国残留邦人等永住帰国者について、公共職業安定所において、職業相談・紹介の実施及び職業転換給付金制度の活用等により、雇用の促進を図る。

また、職業相談等の一部の業務については、民間団体等に委託し、中国帰国者定着促進センター等において実施する。

(オ) 難民の雇用対策の推進

難民については、通所式の定住支援施設(RHQ支援センター)において、職業相談・紹介、職場適応訓練その他就職を促進するための各種援護措置の実施に係る業務を財団法人アジア福祉教育財団に委託して実施し、その雇用の促進を図る。

また、公共職業安定所においては、難民に係る求人の取次ぎ、求人開拓、職場定着指導等の業務について、同財団と綿密な連携をとりながら協力する。

(カ) 在日韓国・朝鮮人の就職の機会均等の確保対策の推進

在日韓国・朝鮮人について、就職の機会均等が確保されるよう、事業主等啓発説明会、ポスター等の広報活動、不適正事象への改善指導等により、事業主等に対し積極的な指導・啓発を行う。

(キ) 北朝鮮帰国被害者等に対する雇用対策の推進

帰国した被害者及び帰国し、又は入国した被害者の配偶者等の雇用の機会の確保を図るため、職業訓練の実施、就職のあっせん等により、早期就職の促進を図る。

(ク) 犯罪被害者等の雇用の安定の推進

犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族(犯罪被害者等)の雇用の安定を図るため、公共職業安定所等において犯罪被害者等が置かれている状況について事業主の理解を深める等必要な施策を講じるとともに、求職者に対するきめ細かな就職支援の適正な実施に努める。

ク 就職困難者に対する雇用対策の推進

就職が特に困難な者を継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して支給される特定求職者雇用開発助成金等を活用し、これら就職困難者の雇用の促進を図る。

就職困難者のために地域労使就職支援機構がトライアル雇用求人を確保し、対象となる就職困難者をトライアル雇用から常用雇用へと移行し、就労しやすいように雇用環境の改善を実施した事業主に対して支給する雇用支援制度導入奨励金を創設したので、公共職業安定所において、普及啓発に努める。それに伴い、事業主に対して、就職困難者が就労しやすい雇用環境を整備するよう、適宜指導する。なお、雇用支援制度導入奨励金の運用においては、各都道府県地域労使就職支援機構と適宜連携、協力する。

ケ 公正な採用選考の推進

公正な採用選考システムの確立を図るための雇用主に対する指導、啓発については、「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月閣議決定)の中で厚生労働省が行うこととして策定されているところである。これに基づき、就職の機会均等を保障することが同和問題などの人権問題の中心的課題であるとの認識に立って、公正採用選考人権啓発推進員未設置事業所に対する設置勧奨及び同推進員制度が効果的に機能するような制度・運営面での充実や、企業トップクラスに対する研修会の充実に努めるとともに、小規模事業所に対する啓発・指導を実施する。

また、全国高等学校統一応募用紙等の適正な応募書類の周知徹底と公正な採用選考についての各種啓発資料の作成・配付等により、雇用主に対する啓発・指導を実施する。

コ 職場における肝炎ウイルス感染に対する適切な対応の促進

「職場における肝炎ウイルス感染に関する留意事項」に基づき、事業主が応募者の適性・能力を判断する上で真に合理的かつ客観的必要性がある場合を除き肝炎ウイルス検査を行わないよう、各種啓発資料を活用するなどにより、あらゆる機会を捉え事業主等への周知徹底を図る。

サ 多様な雇用管理改善対策の推進
(ア) 介護分野における雇用管理改善の推進

財団法人介護労働安定センターにおいて、介護労働者のきめ細やかな実態調査、健康確保に関する相談も含めた雇用管理の改善等についての相談、雇用管理者講習等を実施するとともに、各労働局・公共職業安定所においては、事業主に対する助成金の周知や財団法人介護労働安定センター都道府県支部への相談の奨励、介護基盤人材確保助成金の支給等、介護労働者の雇用管理改善のための施策の推進に当たり、関係団体とも必要な連携を図りつつ、介護分野における雇用管理の改善等を促進する。

(イ) 製造業の請負事業における雇用管理の改善の推進

製造業の請負事業主及び発注者の双方に対し、平成19年度に策定するガイドライン及びそのチェックシートの積極的な周知・啓発を行い、請負事業の適正化を図るとともに、雇用管理の改善に向けた主体的な取組を促進する。

(ウ) 港湾労働対策の推進

港湾労働法及び港湾雇用安定等計画に基づき、港湾労働者派遣制度の有効活用の促進等による雇用秩序維持対策の一層の推進等港湾労働者の雇用の安定及び福祉の増進のための施策を推進する。

(エ) 季節労働者対策の推進

季節労働者の雇用の安定を図るために、通年雇用奨励金、通年雇用促進支援事業及び季節労働者試用雇用(トライアル)事業等の活用により通年雇用の促進に努める。

(オ) 出稼労働者対策の推進

出稼労働者安定就労対策については、出稼労働者手帳を交付し、市町村等の関係機関との連携の下、出稼就労の希望者等の把握に努める。また、送出地及び受入地に配置した出稼労働者就労支援員を活用しつつ、地元の就労機会の確保を推進するとともに、やむを得ず出稼就労する者に対しては、一層の適格紹介の実施、募集の適正化等受入事業所における雇用改善の促進を図ることにより、出稼労働者の安定就労等を推進する。

(13)民間を活用した雇用政策の推進
ア 民間事業者を活用した中高年不安定就労者の就職支援

リストラ等によるショック等から精神的な悩みや不安を抱えたまま不安定就労を繰り返す中高年齢者等に対し、メンタル面や生活面の支援、就職後の職場定着等の支援を民間事業者に委託して実施する。

イ 地域の労使による就職支援事業の推進

民間の労使が相協力して地域の雇用の改善のための事業を行う「地域労使就職支援機構」に、地域における失業者等の再就職の促進に資すると認められる事業などを委託する。

ウ 雇用関係情報の積極的提供

官民連携した雇用情報システムである「しごと情報ネット」については、引き続き利用者にとってよりみやすく、使いやすいサイトにするための改善を進めるとともに、民間の労働力需給調整機関や地方公共団体等に対し積極的に参加及び求人情報の提供の働きかけを行う。

エ 市場化テストの実施

競争の導入による公共サービスの改革に関する法律に基づく市場化テストとして、キャリア交流プラザ事業(8か所)、人材銀行事業(3か所)及び求人開拓事業(2地域)を民間事業者に委託する。

(14) サービス向上のための苦情等への適切な対応について

公共職業安定所のサービス向上のため、今まで以上に求人者及び求職者等の公共職業安定所利用者からの苦情、意見・要望等に対して親切・迅速・的確に対応するとともに、平成19年度から、サービス向上に有効な情報として最大限活用する体制を本格的に構築し、運営する。



4 雇用均等行政の重点施策
(1) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保対策の推進
ア 適切な指導等の実施及び紛争解決の援助
(ア) 均等取扱いのための指導等

改正男女雇用機会均等法が、男女双方に対する性による差別を禁止する法律となったことを踏まえ、労働者が性別により差別されることなく安心して働くことができるよう積極的な指導等により均等取扱いの徹底を図る。

このため、改正男女雇用機会均等法第29条に基づく報告徴収では、制度面のみならず非正規労働者も含めた実際の取扱いを具体的に聴取することとし、特に労働者等からの相談を端緒として行う報告徴収については、相談者の立場に留意しつつも、具体的な問題の有無の把握に努めることとする。この場合、必要に応じ労働者や事業場の労働組合の代表者等から事情を聴取することも検討することとする。

性による差別的な取扱いの事実が認められる企業に対しては、都道府県労働局長の助言、指導、勧告により、また状況に応じ企業名公表制度についても説明しつつ、迅速かつ厳正に法違反の是正を図る。

コース等で区分した雇用管理制度を導入している企業に対しては、「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」の周知徹底を図るとともに、法違反企業に対しては、裁判例等を示しつつ是正指導等を行う。

(イ) 均等取扱いに関する紛争解決の援助

均等取扱いに関し相談がなされた場合には、問題の把握を十分に行い、紛争解決援助制度の活用を図る。特に妊娠・出産を理由とする解雇等に関する紛争については、調停を積極的に運用するとともに、調停によらない場合も、改正男女雇用機会均等法第17条に基づき、 都道府県労働局長による助言、指導、勧告により円滑かつ迅速な解決を図る。

また、紛争解決援助の事例等を紹介し、機会均等調停会議の役割や機能、紛争解決援助に係る都道府県労働局長の援助について、男性労働者も含め、労働者等に積極的に周知する。

(ウ) 女子学生等の就職に関する均等な機会の確保

企業に対し改正男女雇用機会均等法に沿った選考ルールを周知するとともに、募集・採用に関し法違反が疑われる企業を把握した場合は、報告徴収を実施する。また、女子学生等が的確な職業選択を行うことができるよう意識啓発を図る。

(エ) 男女間賃金格差解消のために労使が自主的に取り組むためのガイドラインの普及

男女間の賃金格差解消のために労使が自主的に取り組むための賃金管理及び雇用管理の改善方策に係るガイドラインを、使用者団体を通じる等により企業に対し周知徹底を図るとともに、労働団体に対しても周知する。

イ 改正男女雇用機会均等法等の周知

改正男女雇用機会均等法等の周知については、労使を始め関係者に対し、「男女雇用機会均等月間」(6月)における広報を始めとして効果的な周知活動を実施する。特に、法の浸透がまだ十分とはいえない業種、地域等を中心に周知を図る。

ウ 女性の能力発揮のためのポジティブ・アクションの推進

法に沿った雇用管理が行われている場合であっても、男女労働者の間で採用、配置、昇進等において、事実上の格差が大きい企業に対しては、その理由を具体的に把握し、当該企業が自社の問題点を踏まえ、女性の採用拡大、職域拡大及び管理職への登用等に向け、積極的かつ具体的な取組を行うことができるよう問題解決に必要な助言、好事例を含めた各種啓発資料の積極的な提供を行う。

また、本省において経営者団体と連携し「女性の活躍推進協議会」を開催するとともに、シンポジウムを開催する。

さらに、女性労働者の能力発揮促進を図るため、ポジティブ・アクションを推進している企業を公募し、「均等・両立推進企業表彰」を実施する。

なお、厚生労働省の委託事業として実施するベンチマーク(自社の状況を測ることのできるものさしとなる値)を活用した中小企業女性の能力発揮診断事業等及び個別企業のポジティブ・アクションの取組状況を紹介するためのサイトに係る情報提供を必要に応じて適切に行う。

エ 職場におけるセクシュアルハラスメント対策の推進
(ア) 実効ある対策が行われるための指導等の徹底

企業における実効ある対策の徹底を図るとともに、セクシュアルハラスメント事案が生じた企業に対し、適切な事後の対応及び再発防止のための取組について指導を行う。併せて、必要に応じて各種資料に係る情報提供を行う。

また、改正男女雇用機会均等法により、職場におけるセクシュアルハラスメントについても、紛争解決援助制度の対象となったことから、紛争解決援助に係る都道府県労働局長の援助及び調停について、労働者等に積極的に周知し、迅速に紛争の解決を図る。

(イ) セクシュアルハラスメント相談員の活用

職場におけるセクシュアルハラスメントに関する労働者及び事業主等からの相談に対しては、セクシュアルハラスメント相談員を積極的に活用し、適切に対応する。

オ 母性健康管理対策の推進

女性労働者が妊娠中及び出産後も安心して健康に働くことができるよう、事業主等に対し母性保護及び母性健康管理の必要性について、一層の周知徹底を図るとともに、「母性健康管理指導事項連絡カード」の活用を促進する。 また、改正男女雇用機会均等法第12、13条に関し、措置を講じていない事業主に対しては的確に助言、指導等を実施するとともに、相談が寄せられた場合には、紛争解決援助制度も活用し、迅速にその解決を図る。

(2) 職業生活と家庭生活の両立支援対策の推進
ア 育児・介護休業法の施行

育児・介護休業法の周知徹底を図るとともに、企業において育児休業、介護休業、勤務時間短縮等の措置等の規定が適切に整備され、制度として定着するよう、個別指導及び集団指導を効果的に組み合わせた計画的な指導等を実施する。

また、育児休業及び介護休業の申出又は取得を理由とした不利益取扱いなど、育児・介護休業法に基づく労働者の権利が侵害されている事案について相談があった場合は、的確に対応し、法違反がある場合その他必要な場合には、事業主に対する適切な指導を行う。

さらに、事業主団体と連携して小規模事業所における育児休業制度等の規定整備を進めるとともに、育児休業の取得等が立ち後れている中小企業については、「中小企業子育て支援助成金」を活用しつつ、仕事と家庭を両立しやすい環境の整備を図り、育児休業等の取得を促進する。

イ 次世代法の施行

次世代法に基づく次世代育成支援対策の推進に当たっては、事業主による一般事業主行動計画の策定・実施を通じた、仕事と子育ての両立支援の推進が重要な柱となっており、今年度においては、301人以上企業に対する2回目の一般事業主行動計画の策定・届出義務の履行の確保、300人以下の事業主に対して、次世代育成支援対策推進センター及び地方公共団体との連携にも留意しつつ、できるだけ多くの一般事業主行動計画の策定・届出が行われるよう、効率的に啓発、指導を行う。

また、平成19年4月から始まる認定申請に対しては的確に認定審査を行うとともに、できるだけ多くの事業主が認定を目指して取組を行うよう周知、啓発を行う。

ウ 職業生活と家庭生活との両立の推進に関する周知啓発活動の実施

職業生活と家庭生活の両立を推進していくためには、企業内において、両立支援制度を整備することに加えて、職場風土の改革を進めていくことが必要である。

このため、あらゆる機会をとらえ、育児休業の取得促進、子育て期間中の勤務時間短縮等の措置の普及促進、男性が子育てできるような柔軟な働き方や短くて効率的な働き方によるワーク・ライフ・バランスの実現等、両立を図りやすくするための雇用環境の整備に関する周知啓発活動を効果的に推進する。

また、両立支援に積極的に取り組んでいる企業の取組を「両立支援のひろば」のサイトを活用し、広く周知する。

さらに、企業における仕事と家庭の両立のしやすさを示す「両立指標」について、インターネット上でその進展度を診断できるファミリー・フレンドリー・サイトの利用等による活用を進め、事業主の自主的な取組を促進するとともに、取組を積極的に行っており、かつ、その成果が上がっている企業を公募し、(1)ウによる表彰の実施等によりその一層の普及促進を図る。

(3) パートタイム労働対策の推進
ア 改正パートタイム労働法の周知

パートタイム労働法の改正法案を第166回通常国会に提出したところであるが、改正法案においては、(1)労働条件の文書交付・説明義務、(2)均衡のとれた待遇の確保の促進、(3)通常の労働者への転換の推進、(4)苦情処理・紛争解決援助制度の創設等の措置が盛り込まれているところである。

改正法案が成立した際には、事業主、労働者を始め関係者に対する改正法の周知徹底を重点的に実施する必要があるが、具体的内容については、改正法案が成立した際、別途指示する。

イ 均衡待遇に取り組む事業主の支援等

パートタイム労働法及びパートタイム労働指針について、説明会・相談会の開催や使用者団体・労働組合を含めた各種団体が主催する会合の活用等により、事業主、短時間雇用管理者及び労働組合に対して、浸透・定着を図るとともに、個別訪問によるパートタイム労働法第10条に基づく報告徴収を行うことにより、均衡待遇等への取組の実態把握に努め、必要に応じて助言等を行い、事業主の自主的取組を促す 。

また、短時間雇用管理者の選任等について、パートタイム労働法第10条に基づく事業主に対する助言等を行うとともに、使用者団体の会合の機会を活用すること等により選任の促進を図る。

均衡待遇に取り組む事業主を支援するため、短時間労働援助センターが支給業務を行う短時間労働者均衡処遇推進助成金等について、事業主に積極的に情報提供すること等によりその実施に協力する。

パートタイム労働者及びパートタイム労働を希望する求職者に対しては、パンフレット等各種資料の活用等により、働く上で必要となる知識が身に付くよう関係法令等関係諸制度に関する情報提供を行う。

(4) 家内労働及び在宅ワーク対策の推進
ア 家内労働対策の推進
(ア) 最低工賃の新設・改正の計画的推進及び周知の徹底

「第9次最低工賃新設・改正計画」に基づき計画的に最低工賃の改正等を行うとともに、決定した最低工賃については、委託者、家内労働者、関係団体等に対して周知徹底を図る。

(イ) 家内労働法の適正な施行

家内労働手帳の交付の徹底等必要な指導を行い、委託条件の明確化、工賃支払いの適正化を図る。

また、家内労働安全衛生指導員を効率的に活用しつつ、特殊健康診断の受診の勧奨及び家内労働者の労災保険特別加入制度の周知徹底等により家内労働者の安全及び衛生の確保を図る。

さらに、いわゆる「インチキ内職」についても被害防止に向けた意識啓発に努める。

イ 在宅ワーク対策の推進

在宅ワークの健全な発展に向けて、契約条件の文書明示やその適正化等を図るため、発注者、仲介業者及び在宅ワーカー等に対し「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」の周知啓発を図る。



5 労働保険適用徴収業務等の重点施策
(1) 労働保険の未手続事業一掃対策の推進

労働保険の未手続事業の一掃については、手続指導にとどまらず、職権を行使する

具体的には、引き続き都道府県労働局及び労働基準監督署と公共職業安定所が緊密に連携するなど、適用徴収担当部署以外の部署との連携による未手続事業の積極的かつ的確な把握・加入勧奨を行うとともに、把握した未手続事業に対しては適用徴収担当部署において強力な手続指導を行う。また、労働保険の加入促進に係る委託業務については、受託団体等との連携を一層緊密にし、確実に実施する。さらに、10月に実施する労働保険適用促進月間の広報活動については、未手続事業一掃対策の一環と位置付け、労働保険制度の一層の理解・周知を図る。

局、署、所及び上記受託団体等の加入促進活動(加入勧奨、手続指導)によっても、自主的に保険関係の成立手続を取らない事業主については、職権により成立手続を行い、保険料を認定決定する。

(2) 労働保険料の適正徴収

労働保険料の適正徴収のためには、事業主が労働保険制度を理解した上で、正しく申告し、適正に納付することが重要であり、そのため以下について適正に業務を実施する。

ア 年度更新の的確かつ円滑な実施

年度更新の実施に当たっては、「平成19年度の年度更新等業務について」を踏まえるほか、労働保険徴収主務課室と総務部各課室、労働基準部、職業安定部等との連携を密にし、都道府県労働局全体として、体制の整備を図る。

イ 効率的な算定基礎調査の実施

労働保険料算定基礎調査(以下「算調」という。)については、効率的な算調実施計画を策定し、適正かつ実効ある実施を図る。

ウ 実効ある滞納整理の実施

労働保険料の滞納整理については、効果的な滞納整理実施計画を策定して取り組むこととし、とりわけ多額の滞納事業主及び多年度にわたり滞納を繰り返している事業主に対し、重点的に滞納整理を実施する。

エ 社会保険及び労働保険に係る徴収事務の一元化への適切な取組

社会保険・労働保険徴収事務センターでの事務については、平成18年度より新たに実施している事務を含め、総務部(労働保険徴収部)と職業安定部門との連携を十分に図った上で、連絡協議会等の場で社会保険事務局と調整するなど適切に実施する。

(3) 事務組合の一層の活用、育成、指導等

労働保険事務組合制度の一層の活用を図る。また、労働保険事務組合が適正に業務運営を行えるよう、事務組合への定期的な監督・指導等に努める。

(4) 石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金の徴収

平成19年度から労働保険徴収システムを活用して行う石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金の徴収については、その円滑かつ適切な実施に努める。



6 個別労働紛争解決制度の積極的な運用
(1) 総合労働相談コーナーにおけるワンストップサービスの提供

総合労働相談コーナーにおいては、労働問題に関するあらゆる分野の相談に適切に対応することとし、内容に応じて、関連する法令・裁判例等の情報提供、適切なアドバイスによる当事者間の自主的な解決の促進、他の処理機関等についての情報提供等のワンストップサービスを提供する。

相談の過程において個別労働紛争を把握した場合には、個別労働紛争解決制度を教示し、必要な場合には、助言・指導の申出やあっせんの申請を受け付ける等相談者のニーズを踏まえた対応をする。

総合労働相談員(以下「相談員」という。)の資質向上に向けて、個別労働紛争解決制度のみならず、労働行政全般について幅広い知識を付与する等積極的かつ効果的な研修の実施に努め、相談員の的確な活用を図る。

また、総合労働相談コーナーの設置されていない労働基準監督署、公共職業安定所等においても、当該制度の積極的な説明を行うことによりその活用促進を図る。

(2) 助言・指導及びあっせん制度の的確な運用

助言・指導及びあっせんについては、それぞれ紛争の実情に即した迅速・適正な解決に向けた適切な事務処理を行う。その際、相談員等の積極的な活用に留意する。

(3) 個別労働紛争解決制度の周知・自主的な紛争解決の促進

管内の運用状況等を踏まえ、ホームページ、市町村広報紙(誌)を活用する等により個別労働紛争解決制度の効果的な周知・広報に取り組む。また、企業内での紛争の自主的解決の促進に向け、事業主等に対する紛争自主解決支援セミナーの効果的な実施に努める。

(4) 関係機関との連携

管内における個別労働紛争解決のための取組を効果的に機能させるため、個別労働紛争解決制度関係機関連絡協議会の開催等を通じ、都道府県労働主管部局、都道府県労働委員会をはじめ紛争解決に係る取組を行う関係機関・団体との緊密な連携を図る。なお、労働審判制度を運用している地方裁判所との連携にも留意する。


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