厚生労働省発表 平成19年3月27日(火) |
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不妊に悩む夫婦への支援について
I 特定不妊治療費助成事業について
1 特定不妊治療費助成事業とは
特定不妊治療(体外受精、顕微授精)の経済的負担を軽減するため、平成16年度より「特定不妊治療費助成事業」を実施し、費用の一部を助成しています。
平成18年度現在、すべての都道府県・指定都市・中核市(99自治体)において当助成事業を実施しており、厚生労働省では助成額の半額と事業費用の一部を補助しています。 (このほか、自治体独自に助成を行っている都道府県・市町村もあります。)
2 平成19年度からの変更点
(1)平成19年度より、助成額の増額と所得制限の緩和を行うこととなりました。概要は次のとおりです。
【概 要】
対 象
体外受精及び顕微授精以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、または極めて少ないと医師に診断された、法律上の婚姻をしている夫婦
給付額
1年度あたり 現在上限額10万円
→ 平成19年度より1回上限10万円、年2回まで
→ 平成19年度より1回上限10万円、年2回まで
支給期間
通算5年
所得制限
夫婦合算 現在650万円 → 平成19年度より730万円(いずれも税控除後)
実施主体
都道府県・指定都市・中核市
(指定都市・中核市にお住まいの方は、お住まいの市から助成が受けられます。指定都市・中核市以外の市町村にお住まいの方は、お住まいの都道府県から助成が受けられます。)
(指定都市・中核市にお住まいの方は、お住まいの市から助成が受けられます。指定都市・中核市以外の市町村にお住まいの方は、お住まいの都道府県から助成が受けられます。)
医療機関
事業実施主体が指定した医療機関です
(2)平成19年度より、一定の途中段階で治療を中止した場合(採卵に至らないケース)について、助成対象から除外することになりました。
- 体外受精・顕微授精を行うには、まず女性に対し、卵胞を育てるための薬品の投与(点鼻薬および注射)を行います。この段階で治療を中止した場合、従来は助成対象としていましたが、今後は、助成対象となりません。
- 医師は、事前の診察・検査により、薬品の投与を行っても卵胞が育つ可能性が低いと思われる場合は無理な治療をお勧めすることはありません。無理な治療は健康を損ねます。主治医の説明をよく聞きましょう。
- 薬品の投与までに要する平均費用は数万円です。
- 卵胞が育ち、採卵を行った後については、何らかの事情で治療を中断した場合でも助成の対象となります。
(3)平成19年度より、治療の内容・結果および妊娠の経過などについて把握・集計し、今後の行政運営に役立てることになりました。
〔集計・把握の目的〕
- 特定不妊治療を行う医療機関は、行った治療の内容・結果および妊娠の経過について、日本産科婦人科学会に報告を行っています。
- 厚生労働省は、日本産科婦人科学会の協力を得て、本事業による助成を受けた患者の状況について集計・分析することにより、助成事業の成果を把握し、今後の助成事業の制度を一層充実していく上で検討の参考とすることとします。また、行われた治療の効果を把握することにより、わが国の不妊治療の発展のために参考となる学術データを得ることができます。
- 助成事業を実施する都道府県・指定都市・中核市に対しては、厚生労働省から集計・分析の結果を提供することとし、都道府県・指定都市・中核市においても事業の成果を把握し、助成事業の充実に役立てることができます。
〔報告の内容・方法〕
- 各医療機関が、日本産科婦人科学会のデータベース上で次の項目を報告します。
(1) 治療から妊娠まで
患者(女性)の年齢、不妊の原因、治療の内容、妊娠の有無
(2) 妊娠から出産まで
妊娠・出産の状況、生まれた子の状況 - 報告結果は、日本産科婦人科学会において集計された後、統計情報として行政に提供されます。個人が特定されることはなく、プライバシーは厳守されます。
II 不妊専門相談センターにおける相談対応について
1 不妊専門相談センターとは
不妊に悩む夫婦のために、医学的・専門的な相談や不妊による心の悩み等についての相談に対応する「不妊専門相談センター」の整備については、「子ども・子育て応援プラン」において、平成21年度までにすべての都道府県・指定都市・中核市(99自治体)に整備することが目標とされています。
現在、全国の58自治体(全都道府県と11市/平成19年1月現在)の不妊専門相談センターや保健所などにおいて、専門的な相談に対応しています。
(厚生労働省は、都道府県・指定都市・中核市に対し、センターの事業費用の一部を補助しています。)
各センターでは、産婦人科医師・助産師・カウンセラー等の専門家を相談員として配置し、不妊治療の内容といった医学的・技術的な説明から家族との関係といった心理的な相談まで、相談者の意志とプライバシーを尊重しながらきめ細かく対応しています。
相談はすべて無料です。
2 相談受付状況
全国の不妊専門相談センターに寄せられる相談は年々増加しています。
平成17年度に全国の不妊専門相談センターに寄せられた相談は17,756件。このうち、不妊の検査方法や治療方法の内容についての問い合わせが36.9%と最も多く、ついで、不妊治療を実施している治療機関の情報を求めるものが18.1%となっています。「その他」に分類される相談としては、助成金に関する情報を求めるものが寄せられました。
具体的には、例えば次のような内容の相談に対応しています。
(相談体制により対応できないセンターもあります)
(相談体制により対応できないセンターもあります)
○ 治療を始めて1年になるが妊娠しない。治療方法を高度なものに変えるべきか→検査結果を持参。結果を踏まえたアドバイスと今後受けるべき検査と治療の内容について説明
○ 主治医に高度不妊治療を勧められたが、できれば自然妊娠を希望する。自分の身体の状態では自然妊娠はほんとうに無理か。→体調と検査結果にかかる問診をもとにアドバイス
○ 自分は不妊なのか。医療機関で検査を受ける勇気がない
○ テレビ、新聞、インターネット等で見た不妊治療の方法は、本当に効果があるのか
○ 体調やホルモンバランスを整えるための食習慣や運動についての指導
○ 治療や投薬の副作用(めまい、吐き気、発疹等)への対処のしかた
○ 持病等(子宮筋腫、糖尿、アトピー性皮膚炎、開腹手術の既往歴等)と不妊との関係
○ 服用している薬と不妊との関係、薬の服用についてのアドバイス(ぜんそく、うつ病等)
○ 高度不妊治療を行う近隣の医療機関への転院に関するアドバイス
○ 近所に不妊治療を行う医療機関がないがどうしたらよいか→近隣の医療施設で受けられる基本的な検査の内容紹介と受診方法、その結果を踏まえたアドバイス
○ 検査結果についての見解、主治医の見解との相違について
○ 主治医に言われたことで気になっていること
○ 夫が治療に非協力的、夫と心が離れてきた
○ 夫が子どもをほしがっているが高度不妊治療をいやがる。→夫婦一緒に説明とアドバイス
○ 夫の両親から不妊治療を続けるよう勧められるが、苦痛でもうやめたい
○ 治療を続ける気力がなくなってきた。毎日泣いている
○ 以前に経験した不妊治療の痛みの恐怖感が忘れられない。痛みの少ない治療法はないか→カウンセリング、医師への相談方法・夫への妻に対する配慮についてアドバイス。
○ 主治医から子どもを持つことを諦めるよう勧められたが、納得いかない
○ 養子を迎えることも検討しているが、不妊治療を続けることにも未練がある
○ 治療の成功率、おおよその費用を知りたい
また、ひとりで悩まず気軽に安心して相談できるよう、地域への出張相談、電子メールでの相談受付、不妊の当事者・経験者による相談対応や交流会など、工夫した取組を行うセンターが増加しています。
3 今後の課題
- 不妊専門相談センターの一層の周知が求められています。
- フルタイムで働く女性の増加を踏まえ、夜間・休日にも相談に対応するニーズが高まっていますが、相談に十分対応できるだけの人員体制(産婦人科医師・助産師等の専門家の確保)が課題です。例えば育児等の事情で臨床を休業中の産婦人科医師・助産師等の協力などが期待されます。
- 近隣の自治体が設置する不妊専門相談センター同士の役割分担など有機的な連携が期待されます。