平成18年9月8日(金)
医薬食品局総務課医薬品副作用被害対策室
 室長: (内線2716)
 補佐:小林 (内線2717)


フィブリノゲン製剤訴訟・福岡地裁判決について


 本日、国といたしましては、平成18年8月30日に言い渡されました福岡地方裁判所の判決について、控訴いたしました。
 フィブリノゲン製剤は、出産時の大量出血による死亡から産婦を救命するための医薬品であり、その使用により肝炎に罹患する可能性があるというリスクを考慮しても有用な薬であって、多くの産婦の命を救った薬と産科学会等から評価され、現在でもドイツ等では継続して承認されているものです。
 医薬品は両刃の剣であり、患者の救命や健康回復のためには、副作用等のリスクがあっても有用な医薬品は承認していく必要があります。たとえ、重篤なリスクが予想されても、その時々の医学的薬学的知見の下で、リスクを上回る有効性が認められる場合、患者の救命や健康回復のため医薬品を承認することは、国民の健康を守るために必要なことであり、この点は医薬行政の根幹に関わる問題であると認識しております。現在から振り返って、状況の異なる過去の事実を検証することは困難な面を伴いますが、裁判所の御判断は、当時第一線で診療、研究に従事されてきた多くの産科医の方々の御認識とかけ離れたものではないかと考えております。
 さらに、福岡地方裁判所におかれては、フィブリノゲン製剤は米国と同様クリオ製剤等で代替可能であったと判示されました。突発的に生じる出産時の大量出血の際には、救命のために速やかな止血が必要でありますが、それが可能なフィブリノゲン製剤について、常備困難なクリオ製剤等で代替することは、関係学会等の見解同様、当時の我が国の医療事情の下では可能であったとは考えられません。このような状況の下で、一般の産科医療施設で常備できたフィブリノゲン製剤の投与が大量出血した産婦の救命のため必要であったと考えております。(なお、大阪地方裁判所の判決においても、米国の承認取消し等を踏まえても、我が国でのフィブリノゲン製剤の有用性は、当時の時点において否定されないと判示されております。)

 医薬品は、治療上の効能、効果とともに副作用等のリスクが生じることは避け難いものでありますが、今後とも安全性の確保に努力を重ねてまいりたいと考えております。

 なお、C型肝炎施策の推進は、司法判断に関わりなく国民の健康の向上の観点から行われるものであり、今回の控訴は肝炎施策を一層進める上で何ら差し障りになるものではありません。C型肝炎施策の推進は、感染経路の如何を問わず、様々な原因によりC型肝炎に罹り苦しんでおられる方々にとって重要であり、今後とも一層の推進を図ってまいります。

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