厚生労働省発表
平成18年6月9日(金)
担当
職業能力開発局総務課基盤整備室
 室長   亀島  哲
 室長補佐   小泉 潤一
電話 03(5253)1111(内線5601)
03(3595)3377(夜間直通)


「平成17年度 能力開発基本調査 結果概要」


 高まりがみられる2007年問題に対する危機意識
 正社員を大幅に下回る非正社員に対する教育訓練の実施率
 人材育成投資額が増えた企業に多い、売上高の増加企業
 自己啓発支援企業は約8割
 職業能力評価の実施企業は約6割半ば
 「忙しくて自己啓発の時間がない」とする従業員は約5割


 「能力開発基本調査」は、我が国の企業、労働者の能力開発の実態を明らかにすることを目的として、平成13年度より実施しており、平成17年度は、平成16年度(平成16年4月1日〜平成17年3月31日)の1年間の教育訓練の実施状況、能力開発の方針、自己啓発の実施状況等について、平成17年12月から平成18年1月にかけて実施したものである。


1 高まりがみられる2007年問題に対する危機意識
 ・ 2007年問題に対する危機意識を持つ企業は33.7%であり、前年度の22.4%に比べ危機感に高まりがみられる。業種別にみると、「製造業」、「建設業」においては約4割と、業種全体に比べ危機感がさらに高い。
 ・ 2007年問題に対して特段何の取組も行なっていないとする企業は21.9%であり、多くは何らかの取組を行っている。しかし、その取組内容をみると、「希望者全員を雇用延長、嘱託として再雇用予定」は27.3%、「中途採用を増やす」は28.0%であり、前年度より増加する一方、「若年・中堅層に対する技能・ノウハウ等の伝承」は9.0%、「退職予定者の伝承すべき技能・ノウハウ等の文書化など」は8.5%となっており、具体的に技能の継承につながる取組は低調である。

2 正社員を大幅に下回る非正社員に対する教育訓練の実施率
 ・ 非正社員に対する「OFF-JT」実施企業は17.4%、「計画的なOJT」実施企業は18.3%であり、正社員に対する「OFF-JT」実施企業の60.1%、「計画的なOJT」実施企業の48.9%比べ、大幅に下回っている。

3 人材育成投資額が増えた企業に多い、売上高の増加企業
 ・ 過去数年の間に人材育成投資額を増加した企業のうち、売上高が増加している企業の割合は51.2%であり、売上高が減少したする企業の割合の26.3%を上回っている。

4 自己啓発支援企業は約8割
 ・ 自己啓発に対する支援実施企業は80.5%である。その支援方法としては、「受講料などの金銭的な援助」は62.0%、「情報提供」は30.0%、「就業時間の配慮」は28.3%の企業で行なわれている。

5 職業能力評価の実施企業は約6割半ば
 ・ 職業能力評価の実施企業は65.0%である。その処遇への反映状況は、「給与」とする企業は77.3%、「賞与」とする企業は64.3%であるが、「異動・配置転換」とする企業は25.7%である。

6 「忙しくて自己啓発の時間がない」とする従業員は約5割
 ・ 従業員が受講したOFF-JTについて、教育訓練の主催者を見ると、正社員では「能力開発協会、労働基準協会、公益法人、その他の業界団体」が最も多いが、非正社員では「勤務している会社」が最も多い。
 ・ 自己啓発の問題点については、「忙しくて自己啓発の余裕がない」とする者が約5割であり、「費用がかかりすぎる」とする者が約3割である。
 ・ これからの職業生活の設計については、正社員では、約8割が自分でキャリアパスを考えていくべきだとしているが、非正社員では、自分でキャリアパスを考えていくべきとしている者は約半数であり、わからないとする者が約3割いる。



I 調査の概要
 「能力開発基本調査」は、我が国の企業、労働者の能力開発の実態を明らかにすることを目的として、平成13年度より実施しており、平成17年度は、教育訓練の実施状況、能力開発の方針、自己啓発の実施状況等について、平成17年12月から平成18年1月にかけて実施した。
 調査は「企業調査」「従業員調査」からなり、前者は「教育訓練の実施状況」、「能力開発の実施方針」、「2007年問題」等、後者は「OFF-JTの受講状況」、「自己啓発の実施状況」等について調査した。
 調査の対象は、全国・全業種の従業員規模30人以上の企業から無作為に抽出した企業1万社とその従業員3万人であり、回答を得たのは企業1,545社(有効回収率15.5%)及び従業員3,711人(有効回収率12.4%)である。



II 調査結果の概要(骨子)

1 企業調査

(1)2007年問題
  (1) 2007年問題に対する危機意識(図1)
 2007年問題に対して、「危機意識を持つ」企業は33.7%でり、前年度の22.4%に比べ危機感に高まりがみられる。
 業種別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」で60.2%、「製造業」で41.1%、「建設業」41.0%と、業種全体に比べ危機感がさらに高い一方、「医療・福祉」で13.0%、「情報通信業」で13.5%と低くなっている。
 企業規模別にみると、300人以上の規模で大きく変化し、危機意識は高くなっている。
図

  (2) 2007年問題に対する取り組み状況(図2)
 2007年問題に対して特段何の取組も行なっていないとする企業は21.9%であり、多くは何らかの取組を行っている。しかし、その取組内容をみると、「希望者全員を雇用延長、嘱託として再雇用予定」は27.3%、「中途採用を増やす」は28.0%であり、前年度より増加する一方、「若年・中堅層に対する技能・ノウハウ等の伝承」は9.0%、「退職予定者の伝承すべき技能・ノウハウ等の文書化など」は8.5%となっており、具体的に技能の継承につながる取組は低調である(複数回答)。
図

(2)教育訓練の実施状況
  (1) OFF-JTの実施状況(図3)
 平成16年度に、正社員に対して、OFF-JT(通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練・研修)を「実施した」企業は60.1%であった。
 業種別にみると、「医療・福祉」で89.1%、「金融・保険業」で86.9%と高い一方、「飲食業・宿泊業」で27.3%と低くなっている。企業規模別にみると、規模が大きくなるにつれて実施率は概ね高くなっている。
図

  (2) 計画的なOJTの実施状況(図4)
 平成16年度に、正社員に対して、計画的なOJT(日常の業務につきながら行われる教育訓練のことをいい、教育訓練に関する計画書を作成する等して教育担当者、対象者、期間、内容等を具体的に定めて段階的・継続的に実施する教育訓練・研修)を「実施した」企業は48.9%であった。
 業種別にみると、「金融・保険業」で74.0%と高い一方、「飲食店・宿泊業」で18.2%と低くなっている。企業規模別にみると、規模が大きくなるにつれて実施率は概ね高くなっている。
図

  (3) 正社員・非正社員別のOFF-JT及びOJTの実施状況(図5)
 平成16年度に、非正社員に対する「OFF-JT」実施企業は17.4%、「計画的なOJT」実施企業は18.3%であり、正社員に対する「OFF-JT」実施企業の60.1%、「計画的なOJT」実施企業の48.9%比べ、大幅に下回っている。
図

(3)能力関連の支出
  (1) 人材育成投資の増減と売上高(図6)
 過去数年の間に人材育成投資額を増加した企業のうち、売上高が増加している企業の割合は51.2%であり、売上高が減少したする企業の割合の26.3%を上回っている。
図

(4)キャリア形成のための支援
  (1) 自己啓発に対する支援方法(図7)
 従業員の自己啓発(職業に関する能力を自発的に開発し、向上させるための活動(職業に関係ない趣味、娯楽、スポーツ健康増進等のためのものを除く。))を支援している企業は80.5%であった。「受講料などの金銭的な援助」は62.0%の企業で実施しており、次いで、「社外の研修コース、通信教育コース、図書館等に関する情報提供」は30.0%、「就業時間の配慮」は28.3%の企業で実施している(複数回答)。
図

(5)職業能力評価の実施状況
  (1) 職業能力評価の実施状況(図8)
 平成16年度に、職業能力評価を「実施している」企業は、65.0%であった。
 業種別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」で86.4%と高い一方、「医療、福祉」で49.9%、「運輸業」で54.0%と低くなっている。企業規模別にみると、規模に関わらず実施率は概ね60%〜70%程度となっている。
図

  (2) 職業能力評価の処遇への反映状況(図9)
 職業能力評価を処遇へ反映させていない企業はほとんどなかった。「給与」で77.3%、「賞与」で64.3%、「昇格・降格」で63.0%、「異動・配置転換」で25.7%の企業で処遇へ何らかの形式で反映させている(複数回答)。
図

(6)従業員に対する能力開発の方針
  (1) 「選抜教育」か「底上げ教育」か(図10)
 これまでの教育方針については、「全体的な底上げ教育」を重視する又は重視するに近いとする企業は61.8%であり、「選抜教育」を重視する又は重視するに近いとする企業の36.2%を上回っている。
 今後の教育方針をみると、「全体的な底上げ教育」を重視する又は重視するに近いとする企業は66.4%に対し、「選抜教育」を重視する又は重視するに近いとする企業は31.7%であり、「全体的な底上げ教育」を重視する企業がさらに増えている。
図

  (2) 「本社主導」か「ライン部門主導」か(図11)
 これまでの教育訓練の主導主体については、「本社主導」を重視する又は重視するに近いとする企業は56.2%であり、「ライン部門主導」を重視する又は重視するに近い企業の41.1%を上回っている。
 今後の教育訓練の主導主体をみると、「本社主導」を重視する又は重視するに近い企業は49.5%に対し、「ライン部門主導」を重視する企業は47.9%であり、「ライン部門」を重視する企業が増えており、「本社主導」と「ライン部門主導」がほぼ同じ割合になっている。
図

  (3) 「OJT」か「OFF-JT」か(図12)
 これまでの教育訓練の方法については、「OFF-JT」を重視する又は重視するに近い企業は21.9%であり「OJT」を重視する又は重視するに近い企業の76.5%を下回っている。
 今後の教育訓練の方法をみると、「OFF-JT」を重視する又は重視するに近い企業は26.1%であり、「OJT」を重視する又は重視するに近い企業の72.0%を下回っているものの、「OFF-JT」を重視する又は重視するに近い企業が増えている。
図

  (4) 「企業責任」か「従業員個人責任」か(図13)
 これまでの能力開発責任主体については、能力開発を「企業の責任」又は「企業の責任に近い」とする企業は66.8%であり、「従業員個人の責任」又は「従業員個人の責任に近い」とする企業の30.7%を上回っている。
 今後の能力開発責任主体については、「企業の責任」又は「企業の責任に近い」とする企業は65.9%、「従業員個人の責任」又は「従業員個人の責任に近い」とする企業は31.0%であり、能力開発を「企業の責任」又は「企業の責任に近い」とする企業が引き続き多く、その考え方に変化はあまり見られない。
図

  (5) 「満遍なく投資」か「重点的に投資」か(図14)
 これまでの能力開発投資の対象については、「重点的に投資」又は「重点的に投資に近い」とする企業は54.1%であり、「満遍なく投資」又は「満遍なく投資に近い」とする企業の44.7%を上回っている。
 今後の能力開発投資の対象については、「重点的に投資」又は「重点的に投資に近い」とする企業は53.7%、「満遍なく投資」又は「満遍なく投資に近い」とする企業は45.2%であり、「重点的に投資」又は「重点的に投資に近い」とする企業が引き続き多く、その考え方に変化はあまり見られない。
図

2 従業員調査

(1)OFF-JTの受講状況
  (1) 正社員のOFF-JTの受講内容(図15)
 平成16年の1年間に、正社員が「OFF-JT」を受講した内容は、「階層別教育研修」では43.8%であり、「職能別教育研修」では、技術系で34.2%、事務系で32.0%であり、ほぼ同じ割合であった。
図

  (2) OFF-JTの受講形態(図16)
 OFF-JTを受講した者について、受講した教育訓練の主催者をみると(複数回答)、正社員においては、「能力開発協会、労働基準協会、公益法人、その他の業界団体」が36.4%と最も高く、次いで「民間企業」の28.0%であった。
 一方、非正社員においては、「勤務している会社(雇用契約を結んでいる会社)」が56.1%と最も多く、次いで「民間企業」の21.4%であり、受講形態は正社員と異なっている。
図

(2)自己啓発の実施状況
  (1) 自己啓発の目的(図17)
 過去1年間に自己啓発を行った者について自己啓発の目的をみると(複数回答)、正社員においては、「現在の仕事に必要な知識・能力を身につけるため」をあげた者の割合が79.3%と最も高く、次いで「将来の仕事やキャリアアップに備えて」の53.4%、「資格取得のため」の29.0%となっている。
 一方、非正社員においては、「現在の仕事に必要な知識・能力を身につけるため」をあげた者の割合が72.5%と最も高く、次いで「将来の仕事やキャリアアップに備えて」の37.1%、「資格取得のため」の25.2%となっており、正社員と同じ傾向を示しているが、「将来の仕事やキャリアアップに備えて」は正社員と比べ低く、この点で異なりが見られる。
図

  (2) 自己啓発の実施形態(図18)
 過去1年間に自己啓発を行った者について、どのような自己啓発を行ったかについてみると(複数回答)、正社員においては、「ラジオ・テレビ・専門書・パソコン通信等による自学自習」を行った者の割合が42.5%と最も高く、次いで「通信教育の受講」の36.5%、「民間教育訓練機関の講習会等の受講」の35.3%と続いている。
 一方、非正社員においては、正社員同様、「ラジオ・テレビ・専門書・パソコン通信等による自学自習」の32.7%、「通信教育の受講」の32.8%と割合が高かったが、「民間教育訓練機関の講習会等の受講」は19.8%と正社員に比べ低く、また、「専門学校・各種学校の講座の受講」は14.4%と正社員に比べ高く、この点で異なりが見られる。
図

  (3) 自己啓発の問題(図19)
 どのような自己啓発の問題を感じたかについてみると(複数回答)、正社員・非正社員とも同じ傾向を示し、「忙しくて自己啓発の余裕がない」割合が約47%と最も高く、次いで「費用がかかりすぎる」の約32%と続いている。
図

(3)これからの職業生活の設計(図20)
 これからの職業生活の設計についての考え方をみると、正社員においては、「自分でキャリアパスを考えていくべきである」または「どちらかというと自分でキャリアパスを考えていくべきである」と考える者の割合が77.4%であった。
 一方、非正社員においては、「自分でキャリアパスを考えていくべきである」または「どちらかといえば自分でキャリアパスを考えていくべきである」と考える者の割合は53.6%であり、また、「わからない」とするものが29.9%おり、これからの職業生活設計についての考え方は、正社員と非正社員で異なっている。
図

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