照会先:
政策統括官付社会保障担当参事官室
担当 佐藤(7774)、津曲(7702)

社会保障の給付と負担の見通し
ー平成18年5月ー


厚生労働省



見通しの前提等(1)

 この「社会保障の給付と負担の見通し」は、この間の社会保障制度改革を踏まえ、将来の社会保障給付の規模とこれを賄う社会保険料及び公費の規模について、見通しを作成したものである。

 前提
 見通しの前提は、概略以下のとおりである。なお、結果については、前提の設定方法等により変わり得るものであり、また、見通しの対象期間が中長期にわたることから幅をもって見るべきものである。
(1)  経済前提は、見通しの対象期間が中長期にわたることを考慮し、2011年度までは「構造改革と経済財政の中期展望−2005年度改定 参考試算」(2006.1.18)を、2012年度以降は2004年の年金財政再計算の前提を用いて、A(並の経済成長)及びB(低目の経済成長)の2ケースを置いている(詳細はp5「経済前提」)。
(2)  人口前提は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2002.1)の中位推計を用いている。
(3)  社会保障制度は直近のものを前提としている。ただし、医療制度については、健康保険法等の一部を改正する法律案(国会提出中)などによる医療制度改革(案)によるものを前提としており、仮定のものである。このため、見通しにおいては、医療制度改革(案)が行われない場合であって、これに併せて2004年の年金制度改革及び2005年の介護保険制度改革が行われなかったこととしたケースも置いている(詳細はp3「この間の社会保障制度改革等」)。

 各制度の計算方法
(1)  年金  …   2004年財政再計算にp5の経済前提を織り込んで算定している。
(2)  医療  … 2006年度予算を足元とし、改革実施前では、1人当たり医療費の伸び(一般医療費2.1%、高齢者医療費3.2%(1995年度〜1999年度実績平均、ただし、加入者の年齢構成の変化による増減分(高齢化分)と制度改正による一時的な伸びの増減分を除いたもの))を基準に、高齢化、人口増減の影響等を織り込んで算定している。
(3)  介護  … 2006年度予算を足元とし、今後のサービス利用状況、高齢化、人口増減の影響等を織り込んで算定している。
(4)  その他  …  2006年度予算を足元とし、受給者1人当たり給付費が名目賃金で伸びると仮定し、人口増減の影響等を織り込んで算定している。


見通しの前提等(2)

 その他
(1)  「給付」は、これまでの見通しと同様、以下のものは含まれていない。
 ・  医療、福祉サービス等の自己負担(利用時一部負担)
 ・  医療、福祉等の施設整備のために直接支出された国庫や地方公共団体の補助金等
 ・  医療、年金等の保険者又は地方公共団体等の事務処理に要する人件費等の費用、地方公共団体の単独事業の費用等
(2)  「負担」は、これまでの見通しと同様、「公費」は所要額であり、「保険料」は法定の料率(厚生年金等)又は給付等に要する料率(医療等)である。
(3)  2006年度の数値は、予算ベースである。


この間の社会保障制度改革等(1)

年金制度改革
 2004年の年金制度改革は、
(1)  マクロ経済スライドの導入;
   給付について、将来の被保険者数の減少や平均余命の伸びを踏まえ、給付水準の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」を導入
(2)  将来の保険料の固定;
   負担について、改革前は25.9%までの引上げが必要であった厚生年金保険料率について、保険料の水準を2017年度まで段階的に18.3%まで引き上げた後は将来にわたり固定[国民年金は2017年度以降、2004年度価 格16,900円で固定]
(3)  基礎年金の国庫負担割合の引上げ;
   2009年度までに1/2へ引上げ(2006年度予算では約35.8%)
等である。
 これらにより、2015年度の年金の総給付費は、改革前に比べ対国民所得で1.0ポイント低下し、12.8%となる。

介護保険制度改革
 2005年の介護保険制度改革は、
(1)  介護予防への重点化等;
   介護予防への重点化、地域ケアの推進のための新たなサービス体系の確立及びサービスの質の向上
(2)  利用者負担の見直し;
   在宅と施設の給付範囲の不均衡の是正及び年金との重複給付の調整を図る観点から、食費・居住費の利用者負担の見直し
等により、給付費の急増の回避と保険料負担の上昇の抑制を図るものであり、2005年10月と2006年4月には計△2.4%の介護報酬改定を行っている。また、医療制度改革(案)においては、介護保険適用の療養病床の廃止が盛り込まれている。
 これらにより、2015年度の介護の総給付額は、改革前に比べ対国民所得で0.4ポイント低下し、対国民所得2.3%となる。


この間の社会保障制度改革等(2)

医療制度改革(案)
 医療制度改革関連法案(国会提出中)に基づく措置は、
(1)  安心・信頼の医療の確保と予防の重視;
   質の高い医療サービスが適切に提供される医療提供体制を確立するとともに、疾病の予防を重視した保健医療体系に転換
(2)  医療費適正化の総合的な推進;
   医療費の伸びが過大とならないよう、糖尿病等の生活習慣病の患者・予備群の減少、平均在院日数の短縮を図るなどの計画的な医療費の適正化対策を推進
 現役並みの所得がある高齢者の患者負担の3割への引上げ、療養病床に入院する高齢者の食費・居住費の負担の見直し等の公的保険給付の内容・範囲の見直し
(3)  新たな医療保険制度体系の実現;
   高齢世代と現役世代の負担を明確化し、公平で分かりやすい制度とするため、新たな高齢者医療制度を創設するとともに、保険財政の基盤の安定を図るために都道府県単位を軸とする保険者の再編・統合を推進
(4)  療養病床の再編成;
   療養病床は医療の必要度の高い患者を受け入れるものに限定して医療保険で対応し、医療の必要度の低い高齢者は、老健施設又は在宅、居住系サービス等で対応
等である。
 また、2006年4月には△3.16%の診療報酬改定を行っている。
 これらにより、2015年度の医療の総給付額は、改革前に比べ対国民所得で0.7ポイント低下し、対国民所得8.0%となる。

効果数値はAケース


経済前提

 この見通しの経済前提は、以下のとおり、Aケース(並の経済成長)、Bケース(低めの経済成長)の2ケースを置いている。

*いずれも名目   2006年度
(平成18)
2007年度
(平成19)
2008年度
(平成20)
2009年度
(平成21)
2010年度
(平成22)
2011年度
(平成23)
2012年度
以降
(平成24〜)
物価上昇率 並(Aケース) 0.5% 1.1% 1.6% 1.9% 2.1% 2.2% 1.0%
低目(Bケース) 0.5% 1.1% 1.5% 1.8% 1.9% 1.8% 1.0%
賃金上昇率 並(Aケース) 2.0% 2.7% 3.1% 3.4% 3.2% 3.2% 2.1%
低目(Bケース) 2.0% 2.1% 2.3% 2.5% 2.2% 2.2% 1.8%
運用利回り 並(Aケース) 1.9% 2.6% 3.1% 3.5% 3.9% 4.1% 3.2%
低目(Bケース) 1.9% 2.5% 3.0% 3.5% 3.8% 3.9% 3.1%
国民所得の伸び率 並(Aケース) 2.0% 2.5% 2.9% 3.1% 3.1% 3.2% 1.6%
低目(Bケース) 2.0% 1.9% 2.1% 2.2% 2.1% 2.2% 1.3%

 2011年度まで
 Aケースは「改革と展望−2005年度改定 参考試算」の基本ケース、Bケースは同試算のリスクケースに基づく。なお、同試算においては、全要素生産性(TFP)上昇率が、基本ケースでは2004年度の1.0%から5年間で1.2%程度に高まり、リスクケースでは0.7%程度とされている。
 2012年度以降
 物価上昇率は、消費者物価上昇率の過去20年(1983年〜2002年)の平均が1.0%であることから、1.0%と設定。
 賃金上昇率と運用利回りは、社会保障審議会年金資金運用分科会報告(2003.8.27)を基に設定(構造改革の実行を前提とした日本経済の生産性上昇の見込み(年次経済財政報告(内閣府))に基づき、中長期的な実質賃金上昇率、実質運用利回りを推計)。なお、同分科会報告における全要素生産性(TFP)上昇率は、1.0%、0.7%及び0.4%の3ケースであり、0.7%がAケース、0.4%がBケースに対応。
 国民所得の伸び率は、賃金上昇率に労働力人口の変化率を加えて設定(労働力人口の変化率:2012年以降は△0.5%)。


社会保障の給付の見通し
社会保障の給付の見通しのグラフ
注1)  前面のグラフは、2004年年金制度改革、2005年介護保険制度改革及び2006年医療制度改革案の効果を織り込んでいる(改革反映)。
背面のグラフはこれらの改革が行われなかった場合(改革前)。
注2)  経済前提はAケース。


社会保障の負担の見通し
社会保障の負担の見通しのグラフ
注1)  前面のグラフは、2004年年金制度改革、2005年介護保険制度改革及び2006年医療制度改革案の効果を織り込んでいる(改革反映)。
背面のグラフはこれらの改革が行われなかった場合(改革前)。
注2)  公費は、2009年度に基礎年金国庫負担割合が1/2に引き上げられたものとしている。
注3)  経済前提はAケース。


社会保障の給付と負担の見通し

社会保障の給付と負担の見通しの表
注1) %は対国民所得。額は、各年度の名目額(将来の額は現在価格ではない)。
注2) 公費は、2009年度に基礎年金国庫負担割合が1/2に引き上げられたものとしている。
注3) カッコ外の数値は改革反映、カッコ内の数値は改革前のもの。
注4) 経済前提はAケース。


(社会保障に係る負担の内訳)

(社会保障に係る負担の内訳)の表
注1) %は対国民所得。額は、各年度の名目額(将来の額は現在価格ではない)。
注2) 公費は、2009年度に基礎年金国庫負担割合が1/2に引き上げられたものとしている。
注3) カッコ外の数値は改革反映、カッコ内の数値は改革前のもの。
注4) 経済前提はAケース。


厚生年金及び国民年金の財政見通し

厚生年金及び国民年金の財政見通しの表
注1) 額は、各年度の名目額(将来の額は現在価格ではない)。経済前提はAケース、社会保障制度は改革反映。
注2) 2009年度に基礎年金国庫負担割合が1/2に引き上げられたものとして算定している。


【参考】 社会保障の給付と負担の見通し・・・Bケース(低目の経済成長)

【参考】社会保障の給付と負担の見通し・・・Bケース(低目の経済成長)の表
注1) %は対国民所得。額は、各年度の名目額(将来の額は現在価格ではない)。
注2) 公費は、2009年度に基礎年金国庫負担割合が1/2に引き上げられたものとしている。
注3) カッコ外の数値は改革反映、カッコ内の数値は改革前のもの。


【参考】 (社会保障に係る負担の内訳)・・・Bケース(低目の経済成長)

【参考】(社会保障に係る負担の内訳)・・・Bケース(低目の経済成長)の表
注1) %は対国民所得。額は、各年度の名目額(将来の額は現在価格ではない)。
注2) 公費は、2009年度に基礎年金国庫負担割合が1/2に引き上げられたものとしている。
注3) カッコ外の数値は改革反映、カッコ内の数値は改革前のもの。


(参考) 社会保障給付費の国際比較

対国民所得と対GDP
(参考)社会保障給付費の国際比較のグラフ


  日本

(2006年度)
日本
(Aケース)
日本

(2001年)
アメリカ

(2001年)
イギリス

(2001年)
ドイツ

(2001年)
フランス

(2001年)
スウェーデン

(2001年)
(2015年度) (2025年度)
(対国民所得)                  
社会保障給付費 23.9 25.3 26.1 23.7 17.1 28.9 38.8 38.9 41.5
  年金 12.6 12.8 12.0 11.6 7.5 12.3 16.3 17.1 13.5
  医療 7.3 8.0 8.8 8.3 7.2 7.9 10.8 9.8 10.4
 福祉等 4.0 4.5 5.3 3.8 2.4 8.6 11.7 12.0 17.6
 うち介護 1.8 2.3 3.1 1.2 0.0 0.5 0.3 0.1 3.2
(対GDP)                  
社会保障給付費 17.5 18.4 19.0 17.4 15.2 22.4 28.8 28.5 29.5
  年金 9.2 9.3 8.7 8.5 6.7 9.5 12.1 12.5 9.6
  医療 5.4 5.8 6.4 6.1 6.4 6.1 8.0 7.2 7.4
 福祉等 2.9 3.2 3.8 2.8 2.1 6.7 8.6 8.8 12.5
 うち介護 1.3 1.6 2.3 0.9 0.0 0.4 0.2 0.1 2.3


【参考】 (潜在的)国民負担率の国際比較
参考】(潜在的)国民負担率の国際比較のグラフ

【上部資料】
 2006年度以降の日本:
  厚生労働省「社会保障の給付と負担の見通し」(平成18年5月推計)
 日本(2001年)及び諸外国:
  OECD「Social Expenditure Database 2004」(OECDの政策分野別社会支出の分類をもとに、「年金」、「医療」、「福祉等」の分類に厚生労働省で再集計した。)
 注) OECD基準は施設設備整備費などが含まれており、「社会保障の給付と負担の見通し」で用いているILO基準に比べて、範囲が広くなっている。
【下部資料】
   財務省公表資料より作成。対国民所得比。

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