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「2004〜2005年 海外情勢報告」について
〜特集「諸外国における若年者雇用・能力開発対策」〜



 本年の報告は、「諸外国における若年者雇用・能力開発対策」を特集し、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等主要先進諸国を中心に調査を行った。
 また、定例報告として、主要諸国の2004年から2005年にかけての労働及び社会保障情勢全般の情報を取りまとめた。



諸外国における若年者雇用・能力開発対策
−「2004〜2005年海外情勢報告」のポイント−


 早くから若年者雇用問題に直面してきた主要先進諸国(アメリカ、イギリス、ドイツ及びフランス)を中心に調査を行った。
 若年失業率(15-24歳)は、各国とも1970年代のオイルショック以降上昇しており、現在も10%を上回る水準にある。
 教育、雇用のいずれの活動にも従事していない若者(無業者)が少なからず存在している(20-24歳層で15%前後)。
 各国とも、若者の職業訓練を重視。かつ、ほとんどの国において、雇用や教育とリンクした形で訓練の場を提供(ドイツのデュアル・システム等)。
 各国とも、(学校教育課程の中での)職場体験又は(失業者等に対する)就業経験プログラムを導入。
 就業経験プログラムについては、(1)各種手当の給付資格と関連づけることで間接的に参加を強制したり、(2)職業訓練とセットで提供することで就業経験の付加価値を高めるといった工夫がなされている。
 若者に対する相談援助のためのパーソナル・アドバイザーを配置して相談に当たるなど、若者個々人のニーズに応じたきめ細かな対応を行っている。


 趣旨
 若年者雇用・能力開発対策を進める上で、我が国に先んじて若年者雇用問題に直面してきた国々の経験は参考になると思われる。
 そこで、早くから若年者失業問題等に取り組んできた主要先進諸国(アメリカ、イギリス、ドイツ及びフランス)を中心に、(1)若者のキャリア形成及び就職支援、(2)困難な状況にある若者に対する施策及び(3)就業機会を拡大するための施策について調査を行った。


2 若年者雇用・失業情勢
 (1)失業の動向
 若者(15〜24歳)の失業率は、1973年のオイルショック以降上昇し、近年では、ほとんどの国で10%を超えている。もっとも、水準は国によって異なり、例えば、ドイツでは高い時期でも10%程度にとどまっているのに対し、フランスでは20%超える水準に達している。
 また、25〜64歳の失業率と比較すると、ドイツを除き、その2倍前後又は2倍を超える水準にある。


若年失業率の推移


 (2)無業者の動向
 いずれの国においても、教育、雇用のいずれの活動にも従事していない若者が少なからず存在している1。各国とも、年齢階級が高いほうが無業者の割合も高く、20-24歳層で15%前後、25-29歳層で15%以上が無業者となっている。
  アメリカ イギリス オーストラリア カナダ ドイツ フランス
15-19歳 7.0 9.4 6.8 6.7 4.7 14.0
20-24歳 16.5 15.3 13.3 13.2 15.6 15.5
25-29歳 17.4 16.3 17.6 15.6 18.4 18.8
資料出所:OECD “Education at a Glance 2005”
注)アメリカは2002年。他は2003年。


3 若年者雇用・能力開発対策
 (1)若者のキャリア形成及び就職支援
 学校教育
 各国共通して、教育カリキュラムの中に職業教育及び職業体験を組み込む取組みがなされている(コーポラティブ(コオペラティブ)教育、仕事関連学習、普通教育における職業指導、交互教育等)。
 職業訓練
 ほとんどの国において、職業訓練に、教育、雇用を一体化させた訓練プログラム(養成訓練制度(apprenticeship)等)が導入されている(米英独仏(職業)養成訓練制度等)。
 情報提供をはじめとする就職支援
 教育段階から職場定着に至る若者のキャリア形成及び就職支援を効果的に行うため、さまざまな就職支援を行っている。特に不利な立場に置かれた若者に対する相談支援も提供されている((2)ウ参照)。

 (2)困難な状況にある若者に対する施策
 若者に対する義務付け
 失業給付を受給する若年失業者に対し、一定の就労等の義務を課すことで、勤労経験を積ませ、早期に労働市場に参入できるようにする施策を実施している国がある(若者向けニューディール、1ユーロジョブ、相互義務等)。
 教育・訓練の機会の提供
 失業等の状況にある若者は、多くの場合、企業が必要としている技能を身につけていないため、容易に就業できない。そこで、各国は、こうした若者に対して、教育・訓練の機会を提供している(ジョブ・コア、若者向けニューディール、職業準備年、熟練契約等。なお、就業機会の提供については(3)イ参照)。
 就職等に関する相談支援
 失業又は無業の状態にある若者は、就職をはじめ、さまざまな悩みを抱えている場合が多い。また、そもそも就業意欲が低い場合もある。こうした若者に対して、さまざまな形で相談支援が行われている(WIA若年プログラム、コネクションズ・サービス、TRACEプログラム等)

 (3)就業機会を拡大するための施策
 最低賃金、社会保険料等に関する施策
 各国では、若者向けの最低賃金を通常よりも低く設定したり、一定の要件の下に企業が負担する社会保険料を引き下げる等の措置により、企業の労働費用負担を軽減し、若者への労働需要を喚起する施策を展開している(米英仏若者に対する最低賃金の特例、雇用主の社会保険料の減免等)。
 直接的雇用創出策
 公的部門を中心に、多くは臨時雇用の形で若者を雇い入れることや、若者を新規に雇い入れた企業に対して助成金を支給することにより、雇用の場を提供している(若者向けニューディール、1ユーロジョブ、企業における若年者契約等)。


4 まとめ(各国の共通点)
 (1職業訓練を重視
 雇用や教育とリンクした形で訓練の場を提供
 (2職場体験又は就業経験プログラムを導入
 学校教育課程の中で、職場体験を積ませるという方法
 学校を卒業(場合によっては中退)した失業者や無業者に対して就業経験を促す方法
(ア)対象者に対し、就業等のプログラムに参加しなければ給付を削減・停止する等の措置により間接的に参加を強制する方法
(イ)職業訓練とセットで提供することにより、就業経験の付加価値を高め、失業者や無業者を誘導する方法
 (3)パーソナル・アドバイザーを配置して相談に当たるなど、若者個々人のニーズに応じたきめ細かな対応



1 類似した概念として、ニート(NEET)がある。1999年にイギリスの内閣府が作成したBridging the Gapという調査報告書がその言葉の由来となっており、いわゆる「学校に通っておらず、働いてもおらず、職業訓練を行っていない者」(Not in Education, Employment or Training)のことを通称している。



2004〜2005年海外情勢報告(要約版)

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