厚生労働省発表
平成17年12月9日
職業能力開発局能力評価課
 課長 小林 洋司
 課長補佐 桃井 竜介
 電話 03(5253)1111(内線5969)
 夜間直通 03(3502)6958
中央職業能力開発協会
 能力評価部次長 内藤 眞紀子
 評価制度開発課長 山浦   晃
 電話 03(5800)3689(直通)


「エンジニアリング業」、「左官工事業」、「造園工事業」の
能力評価基準が完成


(ポイント)
 現在、厚生労働省では職業能力が適正に評価される社会基盤づくりを進めており、能力評価のいわば”ものさし”、”共通言語”となる能力評価基準の策定に取り組んでいる。
 これまで、経理・人事等の事務系職務や、電気機械器具製造業、ホテル業、自動車製造業等17業種の能力評価基準が策定されたところである。

 「エンジニアリング業」、「左官工事業」、「造園工事業」の能力評価基準は、それぞれ業界団体との連携のもと、企業実務家や学識者からなる職業能力評価制度整備委員会において策定作業が進められ、今般報告書が取りまとめられた。
 同報告書においては、業界の職業能力や人材育成に関する状況が分析され、その結果を踏まえて能力評価基準が定められた。

 能力評価基準は職務遂行に必要な職業能力や知識に関し、担当者に必要とされる能力水準から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定している。また、単に知識があるということにとどまらず、職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している。
 このため、職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針としての活用も期待される。

 また、現在、フィットネス産業、総合工事業等幅広い業種において能力評価基準の策定を進めているところである。

 なお、上記の報告書及び能力評価基準は、中央職業能力開発協会のホームページから入手可能である。
[ 中央職業能力開発協会 http://www.hyouka.javada.or.jp  ]


I エンジニアリング業
  能力評価基準の策定までの経緯
(1) エンジニアリング業については、(財)エンジニアリング振興協会(会長・増田 信行)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・都築 豊久 東洋エンジニアリング(株)人事部 労働・旅費チームリーダー)を設置し、検討を行った。
(2) 同委員会は、プロジェクト・マネジメントを中心とする設計・調達等のエンジニアリング業特有の職種である5職種を選定し、能力評価基準の策定を行った(図1参照)。
 具体的には、(1)プラント建設等の個々のプロジェクトを指揮・統括する「プロジェクトマネジメント」、(2)プロジェクト全体の基礎計画を踏まえ、プラントの具現化に向けて基本設計・詳細設計(仕様決定)を行い、工事施工図面を作り上げる「設計」、(3)調達計画の策定、見積り等を踏まえた機器資材の購入・契約、発注品工程の品質管理、検査などの一連の仕事である「調達」、(4)プラント建設に必要な機器・資材を製造・保管拠点から建設現場まで運送する「輸送」、(5)各種プラント・施設などのプロジェクトの目標物を具現化するために、建設工事・工事現場及び安全衛生に関する計画・管理を行う「建設」の5職種について能力評価基準の策定を行った。
(3) エンジニアリング業では、キャリアの初期段階における活発なジョブローテーションが行われているほか、グローバルな提携・協働案件の増加に伴う異文化間コミュニケーション・対人関係力などが求められており、こうした現状も踏まえつつ能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図1 エンジニアリング業の能力評価基準の全体構成
図

  レベルの設定
 能力評価基準の策定に当たっては、これが職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針となるように、役職等とそれに必要とされる職業能力の関係の実態に照らし、担当者に必要とされる能力水準(レベル1)から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準(レベル4)まで4つのレベルを設定している。
 また、能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、エンジニアリング業におけるレベル区分の目安を設定した(図2参照)。

図2 エンジニアリング業のレベル区分の目安
図


II 左官工事業
  能力評価基準の策定までの経緯
(1) 左官工事業については、(社)日本左官業組合連合会(会長・肥後 留太郎)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・長田 友秋 有限会社 長秋実業 代表取締役)を設置し、検討を行った。
(2) 同委員会は、左官工事業における専門性の高い職種として2職種について能力評価基準の策定を行った(図3参照)。
 具体的には、(1)見積、折衝、契約等の営業活動を行い、施工打合せに基づいて施工計画を立案し、作業班、材料、入場時の書類等の手配を行う「施工管理」、(2)左官工事について、施工過程の段取りや作業管理、材料調合、下地施工、左官施工、伝統左官施工などを計画に従って作業する「施工技能」の2職種について能力評価基準の策定を行った。
(3) 左官工事業では、環境の変化に合わせた高度な技能や技術力はもちろん、顧客ニーズに応える適切な材料・工法の提案力、安全作業の管理力、施工状況に応じた問題解決力などの施工上の信頼性につながる能力が求められており、こうした現状も踏まえつつ能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図3 左官工事業の能力評価基準の全体構成
図

  レベルの設定
 能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、左官工事業におけるレベル区分の目安を設定した(図4参照)。

図4 左官工事業のレベル区分の目安
図


III 造園工事業
  能力評価基準の策定までの経緯
(1) 造園工事業については、(社)日本造園組合連合会(理事長・取 忠彦)・(社)日本造園建設業協会(会長・成家 次男)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・井上 花子(社)日本造園組合連合会 理事(事務局長))を設置し、検討を行った。
(2) 同委員会は、造園工事業の職種の区分を4職種とし、能力評価基準の策定を行った(図5参照)。
 具体的には、(1)顧客に対して営業活動を実施し、業務を受注し、庭園や公園など、顧客の要望や地域や場所の特徴に応じて計画し、設計図書を作成、積算を行う「造園企画」、(2)工事の諸官庁への届出、施工関連書類作成、購買管理、品質管理、原価管理、工程管理など、工事が円滑かつ確実に進むための管理業務を行う「施工管理」、(3)計画された造園計画に基づき、建設現場において施工する「施工技能」、(4)既に施工された庭園、公園、緑地等の苑地や道路、建築物の屋上において、樹木、塀・垣根、石、園路・広場、添景物、水景などを良好な状態に保つよう技能を発揮する「維持管理」の4職種について能力評価基準の策定を行った。
(3) 造園工事業では、植物の微妙な配置、石の配置などが造園の要であることから、デザイン感覚に優れた人材が特に必要とされ、また、維持管理についても植物の成長が土地、気候、樹齢等によって均一ではないことから、長年の経験を反映し適切に判断処理できる能力が求められており、こうした現状も踏まえつつ能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

(図5)造園工事業の能力評価基準の全体構成
図

  レベルの設定
 能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、造園工事業におけるレベル区分の目安を設定した(図6参照)。

図6 造園工事業のレベル区分の目安
図


IV 能力評価基準の記述内容
   能力評価基準の具体的な記述に当たっては、単に知識があるということにとどまらず、当該職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるように典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している(図7,8,9参照)。


V 能力評価基準を活用するメリット
   能力評価基準が明らかになることによって、的確なキャリア形成を図ることができる環境が整備され、また、職業能力に関するミスマッチが縮小することが期待される。
 求職者・労働者にとっては、職業選択やキャリア形成の目標を立てる際に、(1)自らの能力の客観的な把握、(2)企業が必要とする能力の把握が可能となり、職業能力の向上に向けた取組みにつなげることができる。
 企業にとっては、人材に関する企業戦略を立てる際に、採用すべき人材の明確化、人材育成への効果的な投資、能力に基づいた人事評価・処遇等の導入・定着に関する新しいスタンダードとして活用できる。
 ハローワーク等の労働力需給調整機関にとっては、労働者、企業の双方が職業能力を明確に示すことにより、雇用のミスマッチ解消につなげることができる。
 教育訓練実施機関にとっては、職業訓練の対象者の能力レベル表示や修了時の能力評価を適切に行うことができる。


VI 今後の事業の取組み
   現在、フィットネス産業、総合工事業等について、能力評価基準の策定作業を進めているところである。今後も引き続き、幅広い分野について能力評価基準の整備を行うこととしている(図10参照)。
 また、今までに策定されてきた能力評価基準がどのように使われてきたのか、活用手法の具体的な好事例を活用事例集としてとりまとめ、更なる活用・普及促進を図ることとしている。


VII 「職業能力評価制度整備委員会活動報告書」及び「能力評価基準」の入手先
   広く活用を図るため能力評価基準データを自由に閲覧・ダウンロードできるよう中央職業能力開発協会のHPで公開を行っている。
 今年度は、より使いやすいHPとするために改修を行うこととしている。
 また、HP上において、今後の策定の参考となるようアンケート調査を実施している。


中央職業能力開発協会 能力評価部
〒112-8503 東京都文京区小石川1-4-1 住友不動産後楽園ビル
 http://www.hyouka.javada.or.jp (こちらよりダウンロードできます)
 E-mail hyouka@javada.or.jp   TEL 03-5800-3689



(図7)エンジニアリング業の能力評価基準の例
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(図8)左官工事業の能力評価基準の例
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(図9)造園工事業の能力評価基準の例
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(図10)能力評価基準の策定状況
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