「安全で安心な献血の在り方に関する懇談会」報告書【概要】


はじめに

   安全で安心な献血の在り方に関する懇談会は、献血に伴う健康被害の予防対策の充実や献血後の健康被害の救済の在り方等について議論を重ねてきたところであるが、今般、懇談会のメンバー間で合意に至った内容を報告書として取りまとめた。

1 献血者の健康被害及びその対応の現状並びに課題

   平成16年度は約541万件の献血が行われ、何らかの健康被害が生じたものが56,571件となっている。そのうち、医療費等を要する程度であったものが802件であるが、多くは軽度の症状に止まっている。
 献血者の健康被害の発生に伴い要した費用(医療費、交通費等)については、採血事業者(日本赤十字社)が賠償責任保険の保険金や自社の内規に基づく見舞金を充当してきたが、見舞金の運用は血液センターごとの判断に委ねられる部分があり、その公平性及び透明性の向上を図る必要がある。

2 新たな救済制度の考え方

 (1)献血者の健康被害救済制度の方向性
 新たな救済制度は、公平性、透明性及び迅速性のバランスに配慮したものとすることが必要である。
 (2)国の関与
 軽症な事例については国の定める基準の下に事業者が適切に対応し、長期や重症の事例は救済措置の透明性・公平性を確保するため、必要に応じて国が意見を述べるなどの形が考えられる。

3 献血者の健康被害の救済に関する関係者の責務

 (1)採血事業者
 採血事業者は社会的責任を負っており、新たな救済制度は、採血事業者を中心として構築すべきである。
 (2)国
 国は、新たな救済制度が適切かつ円滑に運営されるよう、採血事業者が準拠する基準の作成、救済措置の実施状況の確認等の役割を果たす必要がある。

4 救済の対象者

   献血者の健康被害の救済制度の対象となる者は、採血事業者等の無過失あるいは過失が明らかでない場合における健康被害を受けた者とすべきである。

5 救済給付の仕組み

 (軽症者)
  ・ 救済の迅速性を最大限重視する観点から、採血事業者が、厚生労働大臣が策定する指針に従い定めることとされる基準により、医療費・交通費等を支給することとすることが適当である。
 (長期・重症者)
  ・ 採血事業者が医療費・交通費等のほか、別途、一定の給付を行うこととすることが必要である。
  ・ 救済の公平性及び透明性をより重視し、献血者の請求に基づいて、判定を経た上で給付を行うことが適当である。ただし、判定については、採血行為と生じた健康被害との因果関係や後遺症の程度の判断において医学的判断を必要とするものなど判断が困難な事案に限定することが適当である。

6 判定の在り方

 ○ 特に問題となる長期・重症者に係る因果関係、後遺障害の程度の判定については、医薬品等の副作用給付制度と同様に、厚生労働大臣が判定することとすべきである。

7 救済給付の内容

 ○ 採血事業者等の無過失あるいは過失が明らかでない場合の救済は、一定額を限度とした給付とすることが適当である。また、長期・重症者については、医薬品等の副作用救済制度の考え方を基本に対応することが適当である。

8 費用負担

 ○ 救済の給付に係る経費については、採血事業者の負担とすべきである。

9 苦情等への対応

 ○ 救済措置に関して不服がある者は、厚生労働大臣に対し、解決のため必要な対応を求めることができるようにすることが適当と考える。

おわりに

 ○ 必ずしも法律上の制度とはせず、国の適切な関与の下で、新たな制度を設けることにより、献血者の健康被害の救済を行うこととすることが適当である。
 ○ 実施は遅くとも平成18年度中を目途とし、今後、可及的速やかに準備を行うべきである。

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