厚生労働省発表
平成17年9月9日
職業能力開発局能力評価課
 課長 小林 洋司
 課長補佐 桃井 竜介
 電話 03(5253)1111(内線5969)
 夜間直通 03(3502)6958
中央職業能力開発協会
 能力評価部次長 内藤 眞紀子
 評価制度開発課長 山浦   晃
 電話 03(5800)3689(直通)

「広告業」、「光学機器製造業」の能力評価基準が完成

〜労働者のキャリア形成、企業の能力評価・人材育成などの指針としての活用を期待〜


(ポイント)
 現在、厚生労働省では職業能力が適正に評価される社会基盤づくりを進めており、能力評価のいわば”ものさし”、”共通言語”となる能力評価基準の策定に取り組んでいる。
 これまで、経理・人事等の事務系職務や、電気機械器具製造業、ホテル業、自動車製造業等15業種の能力評価基準が策定されたところである。

 「広告業」、「光学機器製造業」の能力評価基準は、それぞれ業界団体との連携のもと、企業実務家や学識者からなる職業能力評価制度整備委員会において策定作業が進められ、今般報告書が取りまとめられた。
 同報告書においては、業界の職業能力や人材育成に関する状況が分析され、その結果を踏まえて能力評価基準が定められた。

 能力評価基準は職務遂行に必要な職業能力や知識に関し、担当者に必要とされる能力水準から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定している。また、単に知識があるということにとどまらず、職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している。
 このため、職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針としての活用も期待される。

 また、現在、造園工事業、フィットネス産業等幅広い業種において能力評価基準の策定を進めているところである。

 なお、上記の報告書及び能力評価基準は、中央職業能力開発協会のホームページから入手可能である。
[ 中央職業能力開発協会 http://www.hyouka.javada.or.jp  ]


I 広告業
  能力評価基準の策定までの経緯
(1) 広告業については、(社)日本広告業協会(会長・成田 豊)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・嶋村 和恵 早稲田大学 商学学術院 教授)を設置し、検討を行った。
(2) 同委員会は、多様化する広告業の職種のうち主要な6職種を選定し、能力評価基準の策定を行った(図1参照)。
 具体的には、(1)社内外の関係者の調整を行いコミュニケーション戦略を実施する「営業」、(2)広告戦略に沿ったスペースなどを確保・購入し、また、広告主のニーズに最適のメディアミックスを立案する「媒体」、(3)広告主からの依頼を受け、訴求ポイントに沿った広告表現を企画する「広告制作(クリエイティブ)」、(4)商品・市場・消費者の調査分析とマーケティング戦略・コミュニケーション戦略の立案、新商品・サービスの提案などを行う「マーケティング」、(5)コミュニケーション戦略に資するセールスプロモーションを社内関係者と調整し、取引業者の管理を通して企画・実施する「セールスプロモーション(SP)」、(6)クライアントのパブリックリレーションズ(PR)の立案、課題解決、業務の実施・管理などを行う「パブリックリレーションズ(PR)」の6職種について能力評価基準の策定を行った。
(3) 近年の広告業界では、広告業が対象とする領域が拡大しており、営業からマーケティング、広告制作まで分野融合的な知識が必要とされていることから、どの職種においても、求められる知識・スキルレベル、人材ニーズが高度化しており、こうした現状も踏まえつつ能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図1 広告業の能力評価基準の全体構成

図


  レベルの設定
 能力評価基準の策定に当たっては、これが職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針となるように、役職等とそれに必要とされる職業能力の関係の実態に照らし、担当者に必要とされる能力水準(レベル1)から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準(レベル4)まで4つのレベルを設定している。(図2参照)。

図2 レベル区分の目安

図



II 光学機器製造業
  能力評価基準の策定までの経緯
(1) 光学機器製造業については、日本光学工業協会(会長・吉田 庄一郎)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・松本 和雄 千葉大学 名誉教授)を設置し、検討を行った。
(2) 同委員会は、光学機器製造業においてニーズが高く、固有の性質を持つ職種として技術系3職種、技能系6職種について能力評価基準の策定を行った(図3参照)。
 具体的には、技術系では、(1)新技術・新製品に関する研究を行う「研究開発」、(2)基本コンセプト等を踏まえ、製品化に向けた具体的な設計を行う「設計」、(3)生産ライン及び製造設備を企画・開発・設計する「生産技術」の3職種、技能系では、(1)光学材料の研削、研磨、成形、表面処理等の加工を行う「光学部品加工」、(2)原材料や部品等の形状・性質を変えることで要求機能を与える「機器加工」、(3)工具・機械等を用いて部品を組み立てる「組立」、(4)測定、試験、検査を行い、規定・規格に適合しているか否かを判定する「検査」、(5)故障した光学機器の修理・修繕を行う「修理」、(6)設備を正常・良好な状態に保つようにする「保全」の6職種について能力評価基準の策定を行った。
(3) 光学機器製造業では、技術の専門化・細分化が進む一方で開発プロジェクトは大規模化する傾向にあることから、全体を統括する技術系マネジャーにはこれまで以上の広範囲の知識やマネジメント・スキルが求められており、こうした現状も踏まえつつ能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図3 光学機器製造業の能力評価基準の全体構成

図


  レベルの設定
 能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、光学機器製造業におけるレベル区分の目安を設定した(図4参照)。

図4 光学機器製造業のレベル区分の目安

図



III 能力評価基準の記述内容
   能力評価基準の具体的な記述に当たっては、単に知識があるということにとどまらず、当該職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるように典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している(図5、6参照)。


IV 能力評価基準を活用するメリット
   能力評価基準が明らかになることによって、的確なキャリア形成を図ることができる環境が整備され、また、職業能力に関するミスマッチが縮小することが期待される。
 1 求職者・労働者にとっては、職業選択やキャリア形成の目標を立てる際に、(1)自らの能力の客観的な把握、(2)企業が必要とする能力の把握が可能となり、職業能力の向上に向けた取組みにつなげることができる。
 2 企業にとっては、人材に関する企業戦略を立てる際に、採用すべき人材の明確化、人材育成への効果的な投資、能力に基づいた人事評価・処遇等の導入・定着に関する新しいスタンダードとして活用できる。
 3 ハローワーク等の労働力需給調整機関にとっては、労働者、企業の双方が職業能力を明確に示すことにより、雇用のミスマッチ解消につなげることができる。
 4 教育訓練実施機関にとっては、職業訓練の対象者の能力レベル表示や修了時の能力評価を適切に行うことができる。


V 今後の事業の取組み
   現在、造園工事業、フィットネス産業等について、能力評価基準の策定作業を進めているところである。今後も引き続き、幅広い分野について能力評価基準の整備を行うこととしている(図7参照)。


VI 「職業能力評価制度整備委員会活動報告書」及び「能力評価基準」の入手先

 
中央職業能力開発協会 能力評価部
〒112-8503 東京都文京区小石川1-4-1 住友不動産後楽園ビル
http://www.hyouka.javada.or.jp (こちらよりダウンロードできます)
E-mail hyouka@javada.or.jp   TEL 03-5800-3689



(図5)広告業の能力評価基準の例





(図6)光学機器製造業の能力評価基準の例





(図7)能力評価基準の策定取組み状況


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