厚生労働省発表
平成17年8月9日
職業能力開発局能力評価課
能力評価課長  井上 真
  課長補佐  桃井 竜介
  電話  03(5253)1111(内線5969)
  夜間直通  03(3502)6958

自動車製造業(「組立」職種)の能力評価基準が完成
〜採用や人事評価に活用できる「能力診断シート」を併せて作成〜

(ポイント)
 現在、厚生労働省では職業能力が適正に評価される社会基盤づくりを進めており、労働者の能力を客観的に評価する仕組みとして、能力評価基準の策定に取り組んでいる。これまで、経理・人事等の事務系職務や、電気機械器具製造業、ホテル業等14業種の能力評価基準が策定されたところである。

 自動車製造業(「組立」職種)の能力評価基準は、(社)日本自動車工業会及び全日本自動車産業労働組合総連合会との連携のもと、企業実務家や学識者からなる職業能力評価制度整備委員会において策定作業が進められ、今般報告書が取りまとめられた。
 同報告書においては、日本の自動車製造業の技能・技術が最も集約的にあらわれ、かつ能力評価基準の策定が最も必要とされている「組立」職種に絞って能力評価基準が定められた。

 能力評価基準は職務遂行に必要な職業能力や知識に関し、担当者に必要とされる能力水準から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定している。
 また、能力評価基準は、単に知識があるということにとどまらず、職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるよう、典型的な行動例を記述している。

 本委員会では、能力評価基準の企業における様々な活用事例の一つとして、能力評価基準のユニット内容を基にした「能力診断シート」の作成も行った。
 「能力診断シート」は、従業員の能力を診断・評価する際に各社の実態に即した評価手法を検討する素材であり、今後、人事評価や採用場面での活用が期待されるものである。

 また、現在、広告業、造園工事業等幅広い業種において能力評価基準の策定を進めているところである。

 なお、上記の報告書及び能力評価基準は、中央職業能力開発協会のホームページ から入手可能である。
[中央職業能力開発協会 http://www.hyouka.javada.or.jp


 能力評価基準の策定までの経緯
 (1)  自動車製造業(「組立」職種)については、(社)日本自動車工業会(会長・小枝 至)及び全日本自動車産業労働組合総連合会(会長・加藤 裕治)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・藤本 隆宏 東京大学COEものづくり経営研究センター センター長、東京大学大学院 経済学研究科 教授)を設置し、検討を行った。
 (2)  同委員会は、職種選定にあたり調査を実施し、
(1) 自動車製造業の工程の中で正規社員、非正規社員ともに就業者数が最も多い。
(2) 他の工程と比べ自動化の度合いが相対的に低く、人の技能に依存するところが大きい。
(3) 非正規社員数の多さから外部労働市場との関連性が高く能力評価基準の必要性が高い。
(4) 労働者のモチベーション向上及び社会的認知度向上のため業界標準の能力評価基準が必要である。
(5) 自動車製造の技能・技術を最も集約的に抽出しうる工程である。
等から、「組立」職種に焦点を絞って能力評価基準の策定を行った(図1、図5参照)。

図1 自動車製造業(「組立」職種)の能力評価基準の全体構成
図1 自動車製造業(「組立」職種)の能力評価基準の全体構成


 レベルの設定
 能力評価基準の策定に当たっては、これが職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針となるように、役職等とそれに必要とされる職業能力の関係の実態に照らし、担当者に必要とされる能力水準(レベル1)から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準(レベル4)まで4つのレベルを設定した(図2参照)。
図2.レベル区分の目安
レベル4
広範かつ統合的な判断及び意思決定を行い、企業利益を先導・創造し遂行するために必要な能力水準。
レベル3
方針を踏まえて管理運営・計画作成等を行い、企業利益を創出し遂行するために必要な能力水準。
レベル2
グループやチームの中心メンバーとして、創意工夫を凝らして自主的な判断、改善、提案を行い遂行するために必要な能力水準。
レベル1
担当者として、上司の指示・助言を踏まえて定例的業務を確実に遂行するために必要な能力水準。

 上記の能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、自動車会社各社へのアンケート及びヒアリング調査の結果も踏まえ、自動車製造業(「組立」職種)におけるレベル区分の目安を設定した(図3参照)。

図3 自動車製造業(「組立」職種)におけるレベル区分の目安と組織イメージ
図3 自動車製造業(「組立」職種)におけるレベル区分の目安と組織イメージ
 ※ 役職名称及び想定される組織の大きさは企業ごとに異なるため、参考例として示している。


 活用例:能力診断シート
 (1)  策定された能力評価基準が実際に有効的に活用されるためには、具体的な評価手法をどのように設計・実施するかが重要な課題である。
 従って、本委員会では能力評価基準の企業における様々な活用事例の一つとして、能力評価基準のユニット内容を基にした「能力診断シート」をとりまとめた(図4、図6参照)。

図4 能力評価基準を活用した「能力診断シート」
図4 能力評価基準を活用した「能力診断シート」
(診断方法)
 ・ 各診断項目の判定基準別に「できる」または「やっている」と思われるものに○を付ける方法(2段階評価)としている。
 ・ 従業員自らが行う自己評価部分は”判定基準”ごとに診断し、所属長が行う診断は利便性を考慮し、各判定基準のまとまりである”能力細目”ごとに判定する。

 (2)  想定される活用場面
 「能力診断シート」は、従業員の能力を診断・評価する際に各社の実態に即した評価手法を検討する素材であり、今後、人事評価や採用場面での活用が期待されるものである。
(1)  従業員のキャリアアップや適切な人員配置のための能力診断
 従業員本人に自己評価との乖離及び現在の能力水準や強みと弱み等の確認によるキャリアアップに向けた「気づき」を与えることにより、能力開発の目安と励みとなることが期待される。
 また、従業員の作業ごとの能力を把握することにより、適切な人員配置等も可能となる。
(2)  労働市場の流動化に対応した適切な採用のための能力診断
 将来的な次のステップの例として、非正規従業員が本シートによる評価結果を企業横断的な「多能工証明票」として携帯し、新たな採用面接の際に活用するなどの可能性も考えられる。
 また、採用する側がシート保持者の能力水準を概括的に把握し、採用決定の際の参考資料とすることも期待される。


 能力評価基準を活用するメリット
 能力評価基準が明らかになることによって、的確なキャリア形成を図ることができる環境が整備され、また、職業能力に関するミスマッチが縮小することが期待される。
 (1)  求職者・労働者にとっては、職業選択やキャリア形成の目標を立てる際に、(1)自らの能力の客観的な把握、(2)企業が必要とする能力の把握が可能となり、職業能力の向上に向けた取組みにつなげることができる。
 (2)  企業にとっては、人材に関する企業戦略を立てる際に、採用すべき人材の明確化、人材育成への効果的な投資、能力に基づいた人事評価・処遇等の導入・定着に関する新しいスタンダードとして活用できる。
 (3)  ハローワーク等の労働力需給調整機関にとっては、労働者、企業の双方が職業能力を明確に示すことにより、雇用のミスマッチ解消につなげることができる。
 (4)  教育訓練実施機関にとっては、職業訓練の対象者の能力レベル表示や修了時の能力評価を適切に行うことができる。


 今後の事業の取組み
 現在、広告業、造園工事業等について、能力評価基準の策定作業を進めているところである。今後も引き続き、幅広い分野について能力評価基準の整備を行うこととしている(図7参照)。


 「職業能力評価制度整備委員会活動報告書」及び「能力評価基準」の入手先
 ○ 中央職業能力開発協会 能力評価部
〒112-8503 東京都文京区小石川1-4-1 住友不動産後楽園ビル
 http://www.hyouka.javada.or.jp (こちらよりダウンロードできます)
 E-mail hyouka@javada.or.jp TEL 03-5800-3689

(図5)自動車製造業(「組立」職種)の能力評価基準の例
(図5)自動車製造業(「組立」職種)の能力評価基準の例

(図6)能力診断シート例:レベル1(内装)の例
(図6)能力診断シート例:レベル1(内装)の例

(図7)能力評価基準の策定取組み状況
(図7)能力評価基準の策定取組み状況

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