厚生労働省発表
平成17年6月30日
職業能力開発局能力評価課
能力評価課長 井上 真
課長補佐 桃井 竜介
電話 03(5253)1111(内線5936)
夜間直通 03(3502)6958

市場調査業、外食産業の能力評価基準が完成

(ポイント)
 現在、厚生労働省では職業能力が適正に評価される社会基盤づくりを進めており、労働者の能力を客観的に評価する仕組みとして、能力評価基準の策定に取り組んでいる。これまで、経理・人事等の事務系職務のほか、電気機械器具製造業、ホテル業等12業種の能力評価基準が策定されたところである。

 「市場調査業」、「外食産業」の能力評価基準は、それぞれ業界団体等との連携のもと、企業実務家や学識者からなる職業能力評価制度整備委員会において策定作業が進められ、今般報告書が取りまとめられた。
 同報告書においては、業界の職業能力や人材育成に関する状況が分析され、その結果を踏まえて能力評価基準が定められた。

 能力評価基準は業界内のニーズが高い職種について策定され、職務遂行に必要な職業能力や知識に関し、担当者に必要とされる能力水準から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定している。
 また、能力評価基準は、単に知識があるということにとどまらず、職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している。

 また、現在、自動車製造業、広告業等幅広い業種において能力評価基準の策定を進めているところである。

 なお、上記の報告書及び能力評価基準は、中央職業能力開発協会のホームページから入手可能である。

  [ 中央職業能力開発協会 http://www.hyouka.javada.or.jp ]


1 能力評価基準の策定までの経緯
 (1) 市場調査業
 市場調査業については、(社)日本マーケティング・リサーチ協会(会長・田下 憲雄)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・三木 康夫(株)リサーチ・インターナショナル・ジャパン 代表取締役会長)を設置し、検討を行った。
(1) 同委員会では、市場調査業に特有であり能力評価基準の策定ニーズの高い職種として、4つの職種を選定し、能力評価基準の策定を行った(図1参照)。
 具体的には、顧客にマーケティング・リサーチの企画提案を行い、受注したテーマに関して調査結果を報告する「クライアントサービス」、調査仕様に基づいてデータの収集を行い、収集したデータの集計と解析を実施する「調査実務」、新たな調査手法、解析モデル、マーケティングモデルについて研究開発を行う「調査研究開発」、顧客ニーズに基づき、市場調査に用いる情報システムを構築・安定的に稼働させる「調査ITシステム開発・オペレーション」について能力評価基準の策定を行った(図1参照)。
(2) 市場調査業では、個人情報保護法の施行などを契機として、情報の適切な利用と管理に関する社会の関心の高まりから、個人情報保護や機密情報管理など、法令や業界・社内ルールに基づいた活動が従来にも増して厳しく求められており、こうした現状も踏まえつつ能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図1.市場調査業の能力評価基準の全体構成
図1.市場調査業の能力評価基準の全体構成

 (2) 外食産業
 外食産業については、(社)日本フードサービス協会(会長・横川 竟)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・清水 均 (株)プロジェクト・ドゥ ホスピタリティマネージメント研究所 代表取締役(亜細亜大学経営学部講師))を設置し、検討を行った。
(1) 同委員会では、外食産業の対象範囲として、ファストフードやファミリーレストラン、居酒屋などの業態を対象として5つの職種を選定し、能力評価基準の策定を行った(図2参照)。
 具体的には、新規店舗の設計や既存店舗のリニューアル・メンテナンス、新規出店のための調査等の業務を行う「店舗開発」、外食の商品であるメニュー開発や既存メニューの継続・廃止の検討を行う「商品開発」、安定的な商品の生産・調達、日常の仕入れの効率化や商品のロスがないよう保管・在庫管理をする「食材・商品購買」、店舗の運営指導やフランチャイズ契約まで店舗に関する管理業務を行う「営業・店舗管理」、店舗の人材の採用・教育から設備管理や日常のオペレーション等を管理する「店舗運営」について能力評価基準の策定を行った(図2参照)。
(2) 外食産業では、特定分野について深い知識と経験を有するスペシャリスト人材を確保・育成するとともに、本社企画スタッフと店舗オペレーションスタッフという多様な人材を的確に育成することが課題とされており、こうした現状を踏まえて能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図2.外食産業の能力評価基準の全体構成
図2.外食産業の能力評価基準の全体構成


 レベルの設定
 能力評価基準の策定に当たっては、これが職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針となるように、役職等とそれに必要とされる職業能力の関係の実態に照らし、担当者に必要とされる能力水準(レベル1)から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準(レベル4)まで4つのレベルを設定した(図3参照)。

図3.レベル区分の目安


 能力評価の基準の記述内容
 能力評価基準の具体的な記述に当たっては、単に知識があるということにとどまらず、当該職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるように典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している(図4、5参照)。


 能力評価基準を活用するメリット
 能力評価基準が明らかになることによって、的確なキャリア形成を図ることができる環境が整備され、また、職業能力に関するミスマッチが縮小することが期待される。
(1) 求職者・労働者にとっては、職業選択やキャリア形成の目標を立てる際に、(1)自らの能力の客観的な把握、(2)企業が必要とする能力の把握が可能となり、職業能力の向上に向けた取組みにつなげることができる。
(2) 企業にとっては、人材に関する企業戦略を立てる際に、採用すべき人材の明確化、人材育成への効果的な投資、能力に基づいた人事評価・処遇等の導入・定着に関する新しいスタンダードとして活用できる。
(3) ハローワーク等の労働力需給調整機関にとっては、労働者、企業の双方が職業能力を明確に示すことにより、雇用のミスマッチ解消につなげることができる。
(4) 教育訓練実施機関にとっては、職業訓練の対象者の能力レベル表示や修了時の能力評価を適切に行うことができる。


 今後の事業の取組み
 現在、自動車製造業、広告業等について、能力評価基準の策定作業を進めているところである。今後も引き続き、幅広い分野について能力評価基準の整備を行うこととしている(図6参照)。
 なお、現在、ハローワーク等で活用できる能力評価ツールの開発を進めている。


 「職業能力評価制度整備委員会活動報告書」及び「能力評価基準」の入手先
中央職業能力開発協会能力評価部
〒112-8503 東京都文京区小石川1-4-1 住友不動産後楽園ビル
http://www.hyouka.javada.or.jp(こちらよりダウンロードできます)
E-mail hyouka@javada.or.jp  TEL 03-5800-3689


(図4)市場調査業の能力評価基準の例
(図4)市場調査業の能力評価基準の例


(図5)外食産業の能力評価基準の例
(図5)外食産業の能力評価基準の例


(図6)能力評価基準の策定取組み状況
(図6)能力評価基準の策定取組み状況


トップへ