厚生労働省発表
平成17年5月31日
職業能力開発局能力評価課
能力評価課長 井上 真
課長補佐 桃井 竜介
電話 03(5253)1111(内線5936)
夜間直通 03(3502)6958


防水工事業、ロジスティクス分野(運送業部門・倉庫業部門)の能力評価基準が完成


(ポイント)
 現在、厚生労働省では職業能力が適正に評価される社会基盤づくりを進めており、労働者の能力を客観的に評価する仕組みとして、能力評価基準の策定に取り組んでいる。これまで、経理・人事等の事務系職務のほか、電気機械器具製造業、ホテル業等10業種の能力評価基準が策定されたところである。

 「防水工事業」、「ロジスティクス分野(運送業部門・倉庫業部門)」の能力評価基準は、それぞれ業界団体等との連携のもと、企業実務家や学識者からなる職業能力評価制度整備委員会において策定作業が進められ、今般報告書が取りまとめられた。
 同報告書においては、業界の職業能力や人材育成に関する状況が分析され、その結果を踏まえて能力評価基準が定められた。

 能力評価基準は業界内のニーズが高い職種について策定され、職務遂行に必要な職業能力や知識に関し、担当者に必要とされる能力水準から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定している。
 また、能力評価基準は、単に知識があるということにとどまらず、職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している。

 また、現在、自動車製造業、外食産業等幅広い業種において能力評価基準の策定を進めているところである。

 なお、上記の報告書及び能力評価基準は、中央職業能力開発協会のホームページから入手可能である。

  [ 中央職業能力開発協会 http://www.hyouka.javada.or.jp ]


1 能力評価基準の策定までの経緯
 (1) 防水工事業
(1) 防水工事業については、(社)全国防水工事業協会(会長・山 宏)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・近藤 照夫 ものつくり大学 技能工芸学部 建設技能工芸学科 教授)を設置し、検討を行った。
(2) 同委員会では、事務系職種を除く防水工事業の職種の区分けとして、ゼネコンやマンション等の管理組合・管理会社に対し営業活動等を行い防水工事を受注する「営業」、施工における品質(防水性能、出来映え等)や工程、原価等、防水工事全般を計画し管理する「施工管理」、施工過程の段取りや作業管理、防水下地の調整、防水施工などと計画に従って作業する「施工技能」の3つの職種について能力評価基準の策定を行った(図1参照)。
(3) 防水工事業では、リニューアルや補修工事、屋上緑化などの新しいニーズが多くなるものと思われることから、知識を含めた防水工法等の技術を取得し、関係者の安全や環境影響に対する配慮ができるなど視野の広い人材が求められており、こうした現状を踏まえて能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図1.防水工事業の能力評価基準の全体構成

図1.防水工事業の能力評価基準の全体構成


 (2) ロジスティクス分野(運送業部門・倉庫業部門)
 ロジスティクス分野については、(社)日本ロジスティクスシステム協会(会長・張 富士夫)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・増井 忠幸武蔵工業大学 環境情報学部環境情報学科 主任教授)を設置し、ロジスティクス分野のうち運送業部門と倉庫業部門について検討を行った。

〈運送業部門〉
(1) 運送業部門では、事業者数の多さから「一般貨物自動車運送事業」を主たる対象とし、これに係る「こん包業」を含め、能力評価基準の策定ニーズの高い職種として、4つの職種を選定し、能力評価基準の策定を行った(図2参照)。
 具体的には、運送業部門・倉庫業部門に共通であり、顧客のロジスティクスの分析や問題・課題の抽出を行い、運送システム、倉庫システム、物流情報システムを統合したロジスティクスシステムのソリューションを立案、提案する「ロジスティクスシステムデザイン」の他、運送サービスや業務改善に関する企画、提案営業、運用方法・作業内容等の設計を行う「運送サービス企画」、運送の計画・調達・配車や運送車両の運転、貨物の積み卸しのための荷役を行う「運送業務」、日常及び定期の点検整備の計画の策定や点検・整備作業を行う「車両整備」について能力評価基準の策定を行った(図2参照)。
(2) 運送業部門では、運送事業者のロジスティクスサービスプロバイダー志向の強まりから、荷主のロジスティクス高度化に対する企画・設計力や提案力、さらに、情報化や環境、コンプライアンスに対する専門知識を持つ人材が求められており、こうした現状を踏まえつつ能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図2.ロジスティクス分野(運送業部門)の能力評価基準の全体構成

図2.ロジスティクス分野(運送業部門)の能力評価基準の全体構成


  〈倉庫業部門〉
  (1) 倉庫業部門では、事業者数の多さから「普通倉庫」、「冷蔵倉庫」を対象範囲とし、能力評価基準の策定ニーズの高い職種として、4つの職種を選定し、能力評価基準の策定を行った(図3参照)。
 具体的には、運送業部門と共通の職種である「ロジスティクスシステムデザイン」の他、提案営業に資する企画や業務改善に関する企画、運用方法・作業内容等の検討を行う「倉庫サービス企画」、倉庫業務の管理、保管貨物の管理及び入荷・保管・出荷業務に関する事務処理を行う「倉庫運営」、作業指示に基づき定められた作業手順・方法により荷役、運搬、流通加工を行う「倉庫内作業」について能力評価基準の策定を行った(図3参照)。
  (2) 倉庫業部門では、保管に関するノウハウに加え、トータル物流サービス産業に変革していかなければならず、荷主企業の求めるロジスティクスに対応した幅広い知識や企画・設計・提案力を有した人材の確保・育成が求められており、こうした現状を踏まえつつ能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図3.ロジスティクス分野(倉庫業部門)の能力評価基準の全体構成

図3.ロジスティクス分野(倉庫業部門)の能力評価基準の全体構成

   ※ロジスティクスとは:物流の諸機能を高度化し、調達、生産、販売、回収などの分野を統合して、需要と供給の適正化を図るとともに顧客満足度を向上させ、あわせて環境保全及び安全対策をはじめ社会的課題への対応をめざす戦略的な経営管理。


 レベルの設定
 能力評価基準の策定に当たっては、これが職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針となるように、役職等とそれに必要とされる職業能力の関係の実態に照らし、担当者に必要とされる能力水準(レベル1)から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準(レベル4)まで4つのレベルを設定した(図4参照)。

図4.レベル区分の目安

図4.レベル区分の目安


 能力評価の基準の記述内容
 能力評価基準の具体的な記述に当たっては、単に知識があるということにとどまらず、当該職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるように典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している(図5、6、7参照)。

 能力評価基準を活用するメリット
 能力評価基準が明らかになることによって、的確なキャリア形成を図ることができる環境が整備され、また、職業能力に関するミスマッチが縮小することが期待される。
(1) 求職者・労働者にとっては、職業選択やキャリア形成の目標を立てる際に、(1)自らの能力の客観的な把握、(2)企業が必要とする能力の把握が可能となり、職業能力の向上に向けた取組みにつなげることができる。
(2) 企業にとっては、人材に関する企業戦略を立てる際に、採用すべき人材の明確化、人材育成への効果的な投資、能力に基づいた人事評価・処遇等の導入・定着に関する新しいスタンダードとして活用できる。
(3) ハローワーク等の労働力需給調整機関にとっては、労働者、企業の双方が職業能力を明確に示すことにより、雇用のミスマッチ解消につなげることができる。
(4) 教育訓練実施機関にとっては、職業訓練の対象者の能力レベル表示や修了時の能力評価を適切に行うことができる。

 今後の事業の取組み
 現在、自動車製造業、外食産業等について、能力評価基準の策定作業を進めているところである。今後も引き続き、幅広い分野について能力評価基準の整備を行うこととしている(図8参照)。
 なお、現在、ハローワーク等で活用できる能力評価ツールの開発を進めている。

 「職業能力評価制度整備委員会活動報告書」及び「能力評価基準」の入手先
中央職業能力開発協会能力評価部
〒112-8503 東京都文京区小石川1-4-1 住友不動産後楽園ビル
http://www.hyouka.javada.or.jp(こちらよりダウンロードできます)
E-mail hyouka@javada.or.jp  TEL 03-5800-3689


(図5)防水工事業の能力評価基準の例

(図5)防水工事業の能力評価基準の例


(図6)ロジスティクス分野(運送業部門)の能力評価基準の例

(図6)ロジスティクス分野(運送業部門)の能力評価基準の例


(図7)ロジスティクス分野(倉庫業部門)の能力評価基準の例

(図7)ロジスティクス分野(倉庫業部門)の能力評価基準の例


(図8)能力評価基準の策定取組み状況

(図8)能力評価基準の策定取組み状況


トップへ