厚生労働省発表
平成17年5月30日
労働基準局安全衛生部
労働衛生課環境改善室
室長  中村 富也
副主任中央労働衛生専門官
  永田 和博
電話  03-5253-1111
  内線5501
夜間直通  03-3502-6755

職場における喫煙対策の取組み状況について
〜喫煙対策に取り組んでいる事業場は8割を超える
しかし、受動喫煙防止対策としては未だ不十分〜


 今般、職場における喫煙対策の取組み状況に関する調査(参考1)を行っていたところ、以下のとおり結果がまとまり、喫煙対策を行う上での下記(1)、(2)の課題等が明らかになった。
 (1)喫煙対策に何らかの取組みを行っている事業場は約8割にのぼるが、受動喫煙を確実に防止する対策としては、まだ不十分な対策がみられること
 (2)喫煙室設置のスペースがない、社内の合意が得られないといった理由で、対策の取組みが遅れている事業場が多いこと

 なお、職場における喫煙対策については、平成8年に「職場における喫煙対策のためのガイドライン」(「旧ガイドライン」という。)を示し、その推進に努めてきたところであるが、平成15年5月から施行された健康増進法(参考2)において、事務所その他多数の者が利用する施設を管理する者に対し、受動喫煙防止対策を講ずることが努力義務化されたこと等を受け、同年5月に新たな「職場における喫煙対策のためのガイドライン」(「新ガイドライン」という。(参考3))を公表している。
 新ガイドラインでは、
  (1)非喫煙場所にたばこの煙が漏れない喫煙室の設置を推奨
  (2)たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式の喫煙対策を推奨
  (3)喫煙室等に向かう風速を0.2m/s以上とするように必要な措置を講じること
 等、受動喫煙防止対策の一層の充実を図っているところである。


I.調査方法等
 調査は平成16年10月から11月にかけて、一般事業場5,000事業場(抽出率約200分の1)を無作為に抽出して調査票を送付する通信調査によって実施。
 事業場の規模の割合は「10〜49人」、「50〜299人」、「300人以上」を4:4:2、業種ごとの送付数は、労働基準法の適用事業場数の統計調査をもとに各業種の事業場数の割合を考慮。
 有効回答数1,805事業場(有効回答率36.1%)
 調査は中央労働災害防止協会に委託して行った。

II.調査結果の概要
 1.喫煙対策に取り組んでいる事業場は82.8%(1,495事業場)。
 上記の事業場では、
 (1)喫煙場所等について
@) 喫煙場所を設けそれ以外での場所での喫煙を禁止しているが92.2%。
また、喫煙場所のうち換気扇のある喫煙室等で喫煙することとしているのが62.6%。
A) 事業場全体を禁煙としているのが10.2%
B) 食堂や休憩室を設けている事業場のうち、当該場所を禁煙としているのがそれぞれ39.6%、34.8%。

 (2)喫煙のためのルールの設定等について
 喫煙のためのルールを設けているのが80.5%。
 このうち、管理者が喫煙のためのルールに従っていない者に対して適切な指導を行っているとしているのが85.6%。

 (3)空気清浄装置*)の使用方法について
 屋外に排気する方式とせず、空気清浄装置を単独で使用している事業場は40.9%。
    *) 空気清浄装置はガス状成分を除去できないため、新ガイドラインでは喫煙室等に設置する「有効な喫煙対策機器」として推奨されておらず、やむを得ない措置として設置する場合には、換気に特段の配慮をすることが必要とされている。

 (4)職場の空気環境の測定の実施について
 浮遊粉じん濃度、一酸化炭素濃度、非喫煙場所から喫煙場所に向かう風速について測定を行っていないのは71.4%、72.2%、87.0%。

 2.喫煙対策に取り組んでいない事業場は17.2%(310事業場)。
 取り組んでいない理由として、
   @) 喫煙場所を設けるスペースがない(38.7%)
   A) 社内の合意が得られない(27.7%)
   B) 喫煙者への配慮(20.6%)
   C) 取り組む必要を感じない(19.7%)
 等が上位を占めた。

 厚生労働省としては、引き続き都道府県労働局を通じ、企業に対し、受動喫煙防止対策の重要性を周知し、喫煙室の設置を促進すること、また、喫煙室が屋外排気型になっていない等、十分な対応を行うことが困難な場合には全面禁煙による対策を勧奨することなど、受動喫煙を防止するための対策を進めていくこととしている。



(参考1)

[喫煙対策の取組み状況についての調査項目の概要]

 1.事業場における喫煙対策の実情に関する事項
(1)喫煙対策と喫煙ガイドラインについて
(2)喫煙対策の推進計画等について
(3)具体的な喫煙対策について
(4)空気清浄装置の使用について
(5)空気環境測定について
(6)喫煙対策の評価について
 2.事業場に関する事項
(1)業種
(2)労働者数
(3)労働者の男女比
(4)労働者の平均年齢
(5)職場での喫煙者率



(参考2)

健康増進法[平成14年8月2日法律第103号](抜粋)


第5章 特定給食施設等
 第2節 受動喫煙の防止
第25条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。



(参考3)

新ガイドライン(平成15年5月9日基発0509001号)の概要


.設備対策について
 受動喫煙を確実に防止する観点から、非喫煙場所にたばこの煙が漏れない喫煙室の設置を推奨することとし、やむを得ない場合に開口面を可能な限り小さくした喫煙コーナーを設置することとしたこと。

.喫煙対策機器について
 喫煙室等に設置する「有効な喫煙対策機器」としては、たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式の喫煙対策を推奨することとしたこと。
 やむを得ない措置として、空気清浄装置を設置する場合には、空気清浄装置はガス状成分を除去できないという問題点があることから、換気に特段の配慮をすることが必要である旨を明記したこと。

.職場の空気環境の基準について
 職場の空気環境の測定を行い
  (1)浮遊粉じんの濃度を0.15mg/m3以下及び一酸化炭素の濃度を10ppm以下とするよう必要な措置を講じること
  (2)喫煙室等から非喫煙場所へのたばこの煙やにおいの流入を防止するため、喫煙室等と非喫煙場所との境界において、喫煙室等に向かう気流の風速を0.2m/s以上とするように必要な措置を講ずること
 としたこと。

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