厚生労働省発表
平成17年5月23日
担当 大臣官房地方課
 労働紛争処理業務室長 増田 嗣郎
 室長補佐 宮野 修
 電話 03-5253-1111 (内線7736)
 夜間直通 03-3502-6679

《平成16年度個別労働紛争解決制度施行状況》

個別労働紛争処理制度の利用が着実に増加

 ・民事上の個別労働紛争相談件数 16万件
 ・あっせん申請受理件数6千件

  《 概要 》

 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律施行状況 〜平成16年度〜

  1.総合労働相談件数 : 823,864件(12.2%増*)
  2.民事上の個別労働紛争相談件数 :160,166件(13.7%増*)
  3.助言・指導申出受付件数 :5,287件(20.8%増*)
  4.あっせん申請受理件数 :6,014件(12.4%増*)
  【* 増加率は、平成15年度実績と比較したもの。】

 個別労働紛争解決制度は、平成13年10月の施行から3年半を経過したところであるが、人事労務管理の個別化等の雇用形態の変化、厳しい経済・雇用情勢等を反映し、全国約300ヵ所の総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働紛争に係る相談件数は16万件を超えている(総合労働相談件数は82万件超)。
 また、助言・指導申出受付件数は5千件、あっせん申請受理件数は 6千件を超えるなど、制度の利用が進んでいる。

 【参考】
  平成16年労働関係民事通常訴訟事件の新受件数2,519件(全国地方裁判所)

 『個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(別添4、5)』に基づく、個別労働紛争解決制度の平成16年度の施行状況は以下のとおりである(概要は別添2、都道府県労働局別一覧は別添3)。

1.相談受付状況
  各都道府県労働局、主要労働基準監督署内、駅近隣の建物などにおいて、労働に関するあらゆる相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナー(約300ヵ所)を開設しているところであるが、平成16年度1年間に寄せられた相談は82万3,864件であった。
 このうち、労働関係法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げ等のいわゆる民事上の個別労働紛争に関するものが16万166件である。
 年度ごとの推移をみると、確実に件数が増えている。(第1図)

第1図
(注)平成13年度の件数は、下半期分(H13.10.1〜H14.3.31)である。

  また、民事上の個別労働紛争にかかる相談内容の内訳は、解雇に関するものが最も多く27.1%、労働条件の引下げが16.0%、いじめ・嫌がらせ8.1%と続いている(第2図)。

第2図

2.都道府県労働局長による助言・指導及び紛争調整委員会によるあっせん
  平成16年度の当該制度に係る助言・指導申出受付件数は5,287件で、平成15年度比20.8%の増加となっている。
 あっせん申請受理件数は6,014件、同じく12.4%の増加となっている。(第3図)

第3図
(注)平成13年度の件数は、下半期分(H13.10.1〜H14.3.31)である。

3.紛争調整委員会によるあっせん
  あっせん申請の主な内容は、解雇に関するものが40.5%と最も多く、労働条件の引下げが13.0%、いじめ・嫌がらせが8.1%と続いている(第4図)。
 なお、あっせんの実施事例は、別添1のとおりである。

第4図

  平成16年度1年間に申請を受理した事案の都道府県労働局における処理状況をみると、手続きを終了したものは5,878件であり、このうち、合意が成立したものは2,638件(44.9%)、申請者の都合により申請が取り下げられたものは480件(8.2%)、紛争当時者の一方が手続きに参加しない等の理由により、あっせんを打ち切ったものは2,700件(45.9%)となっている。
 処理に要した期間は、1ヶ月以内が66.4%、1ヶ月を超え2ヶ月以内が26.5%となっている。
 申請人は、労働者が5,898件(98.1%)と大半を占めるが、事業主からの申請も113件(1.9%)となっており、労使双方からの申請も3件(0.1%)あった。
 労働者の就労状況は、正社員が62.8%と最も多いが、パート・アルバイトが19.1%、派遣労働者・期間契約社員も13.0%を占めている。
 事業所の規模は、10〜49人が34.4%と最も多く、次いで10人未満が21.8%、50〜99人が10.7%となっている。
 また、労働組合のない事業所の労働者が71.1%である。
 【 紛争調整委員会とは 】
弁護士、大学教授等の労働問題の専門家である学識経験者により組織された委員会であり、都道府県労働局ごとに設置されている。この紛争調整委員会の委員のうちから指名されるあっせん委員が、紛争解決に向けてあっせんを実施するものである。

4.都道府県労働局長による助言・指導
  助言・指導の申出の主な内容は、解雇に関するものが31.3%と最も多く、労働条件の引下げが14.7%、いじめ・嫌がらせ7.4%と続いている(第5図)。

第5図

  平成16年度1年間に申出を受け付けた事案について都道府県労働局における処理状況をみると、平成17年3月までに手続きを終了したものは5,279件であり、このうち助言・指導を実施した件数は4,997件(94.7%)、申出が取り下げられたものは162件(3.1%)、処理を打ち切ったものは94件(1.8%)であった。
 処理に要した期間は、1ヶ月以内が93.9%となっている。
 申出人は、労働者が95.1%と大半を占めるが、事業主からの申出も259件(4.9%)あった。
 就労状況は、正社員が61.3%と最も多いが、パート・アルバイトが19.9%、派遣労働者・期間契約社員も12.5%を占めている。
 事業所の規模は、10〜49人が31.9%と最も多く、次いで10人未満24.0%、100〜299人が13.1%となっている。
 また、労働組合のない事業所の労働者が71.1%である。
 なお、助言・指導の実施事例は、別添1のとおりである。



別添1
【あっせんの例】
事例1:労働条件引下げに係るあっせん
事案の概要  申請人は、事業不振を理由に一方的に正社員からパートへの変更を打診され納得できずに退社したところ、退職とみなされ退職届の提出を迫られていることから、正社員としての復職又は職を失うことについての補償金の支払いを求め、あっせん申請を行ったもの。
 あっせんの結果、○○万円の解決金を支払うことで合意が成立した。
あっせんの
ポイント
 会社は、和解金による解決に理解を示し、申請人も和解金の金額に譲歩を示し、双方の合意が成立した。
事例2:セクハラに係るあっせん
事案の概要  申請人は、懇親会の席で上司に体を触られるなどのセクハラを度々受けており、加えて、当該上司から日常的に激しい口調で叱責されており恐怖心から抗議もできない状況であったことから、セクハラについての謝罪と慰謝料の支払いを求め、あっせん申請を行ったもの。
 あっせんの結果、謝罪が行われ、○○万円の解決金を支払うことで合意が成立した。
あっせんの
ポイント
 あっせん委員を交えた話し合いの結果、会社側がセクハラについて事実を認め謝罪するとともに、和解金についても、あっせん委員の調整の結果、双方の合意が成立した。


【助言・指導の例】
事例1:労働条件引下げに係る助言・指導
事案の概要  申出人は、35年間勤めていた会社を定年退職したが、退職の直前に会社より、経営状況が厳しいため退職金を2割減額して支給する旨の説明があり、退職後減額した退職金が支給された。
 申出人は、退職金の減額に同意しておらず、減額分の支給を求め、労働局長の助言・指導を求めたもの。
 労働局長の助言・指導を踏まえ、申出人と会社側とで話し合った結果、減額分についても支給されることとなった。
助言・指導の
内容
 労働者にとって、不利益な変更内容と判断される労働条件の変更については、基本的には労使の合意が必要となることから、当事者間でよく話し合うこと。
事例2:整理解雇に係る助言・指導
事案の概要  申出人は、食品会社の営業部門に勤務する者であるが、営業部門が廃止されることに伴い他工場への配置転換を内示され、通勤困難であるため別の事業所への変更を申し入れたところ解雇予告をされたため、解雇の撤回と通勤可能な事業所へ配属を求め、労働局長の助言・指導を求めたもの。
 労働局長の助言・指導を踏まえ、申出人と会社側とで話し合った結果、解雇が撤回され、通勤可能な別の工場で勤務することとなった。
助言・指導の
内容
 判例上、整理解雇については使用者による十分な解雇回避努力など四つの要件が求められること、また、配置転換については労働契約等における勤務地・職種の限定や労働者の不利益の程度等により制限を受けることから、当事者間でよく話し合うこと。



別添2
個別労働紛争解決制度の運用状況について
(平成16年4月1日〜平成17年3月31日)

1 総合労働相談コーナーに寄せられた相談  823,864件
   相談者の種類
 労働者 499,175件 事業主 243,623件 その他 81,066件
2 民事上の個別労働紛争に係る相談の件数  160,166件
 
(1) 相談者の種類
労働者 130,625件 事業主 18,309件 その他 11,232件
(2) 紛争の内容(※内訳が複数にまたがる事案もあるため、計が180,907件となる。)
普通解雇 36,973件  整理解雇 7,347件  懲戒解雇 4,711件
労働条件の引下げ 28,887件  退職勧奨 12,614件  出向・配置転換 5,997件
その他の労働条件 34,273件  セクシュアルハラスメント 3,818件  女性労働問題 2,006件
募集・採用 3,045件  雇用管理等 2,736件  いじめ・嫌がらせ 14,665件
 その他 23,835件
3 都道府県労働局長による助言・指導の件数
 (1) 助言・指導の申出の受付を行った件数  5,287件
   紛争の内容(※内訳が複数にまたがる事案もあるため、計が5,540件となる。)
 普通解雇 1,379件  整理解雇 243件  懲戒解雇 114件
労働条件の引下げ 817件  退職勧奨 294件  出向・配置転換 210件
その他の労働条件 1,086件  セクシュアルハラスメント 50件  女性労働問題 10件
募集・採用 57件  雇用管理等 72件  いじめ・嫌がらせ 410件
その他 798件
 (2) 助言・指導の手続を終了した件数  5,279件
   終了の区分
 助言を実施 4,980件  指導を実施 17件
取下げ 162件  打切り 94件  その他 26件
4 紛争調整委員会によるあっせんの件数
 (1) あっせんの申請の受理を行った件数 6,014件
   紛争の内容(※内訳が複数にまたがる事案もあるため、計が6,223件となる。)
 普通解雇 2,050件  整理解雇 340件  懲戒解雇 129件
労働条件の引下げ 807件  退職勧奨 387件  出向・配置転換 202件
その他の労働条件 1,012件  セクシュアルハラスメント 233件  女性労働問題 4件
雇用管理等 47件  いじめ・嫌がらせ 505件  その他 507件
 (2) あっせんの手続を終了した件数  5,878件
   終了の区分
 当事者間の合意の成立 2,638件  申請の取下げ 480件
打切り 2,700件  その他 60件



別添3

個別労働紛争解決制度の運用状況(平成16年4月〜平成17年3月)

局名 総合労働
相談件数
民事上の
個別労働紛争
相談件数
労働局長の
助言・指導制度
申出受付件数
紛争調整委員会の
あっせん制度
申請受理件数
1 北海道 28,842 5,972 303 144
2 青森 8,237 2,507 177 36
3 岩手 8,369 1,360 43 57
4 宮城 14,910 1,925 44 84
5 秋田 5,611 1,853 33 37
6 山形 7,602 1,348 50 90
7 福島 9,956 2,861 77 69
8 茨城 19,175 3,450 138 173
9 栃木 10,972 2,441 135 62
10 群馬 9,717 2,257 62 68
11 埼玉 48,546 10,127 146 187
12 千葉 27,621 7,050 116 157
13 東京 116,231 14,070 342 891
14 神奈川 43,639 11,370 137 221
15 新潟 15,227 2,328 51 127
16 富山 6,666 1,107 92 63
17 石川 7,125 1,621 18 47
18 福井 4,598 1,494 82 77
19 山梨 3,612 850 37 55
20 長野 8,585 1,534 74 91
21 岐阜 14,369 1,430 59 67
22 静岡 21,073 4,394 88 77
23 愛知 41,163 6,290 120 306
24 三重 6,738 2,401 50 112
25 滋賀 4,648 1,418 76 102
26 京都 25,476 4,289 154 173
27 大阪 86,840 16,510 277 406
28 兵庫 56,372 9,441 208 156
29 奈良 6,725 1,210 43 115
30 和歌山 4,988 840 29 26
31 鳥取 5,584 1,218 24 37
32 島根 2,341 1,059 62 35
33 岡山 11,370 1,949 87 150
34 広島 22,617 4,472 110 180
35 山口 4,488 1,275 188 56
36 徳島 4,143 1,675 58 66
37 香川 7,441 1,696 53 35
38 愛媛 6,726 1,301 56 71
39 高知 3,835 799 29 45
40 福岡 30,092 5,569 245 229
41 佐賀 5,611 2,222 243 159
42 長崎 5,576 1,496 89 38
43 熊本 7,434 3,322 250 180
44 大分 9,948 1,374 66 80
45 宮崎 5,450 1,550 192 180
46 鹿児島 10,797 2,351 170 112
47 沖縄 6,778 1,090 104 85
823,864 160,166 5,287 6,014



別添4
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の概要


 趣旨
 企業組織の再編や人事労務管理の個別化等に伴い、労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(以下「個別労働関係紛争」という。)が増加していることにかんがみ、これらの紛争の実情に即した迅速かつ適正な解決を図るため、都道府県労働局長の助言・指導制度、紛争調整委員会のあっせん制度の創設等により総合的な個別労働紛争解決システムの整備を図る。

 概要
(1) 紛争の自主的解決
 個別労働関係紛争が生じたときは、紛争の当事者は、自主的な解決を図るように努めなければならないものとする。
(2) 都道府県労働局長による情報提供、相談等
 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争の未然防止及び自主的な解決の促進のため、労働者又は事業主に対し、情報の提供、相談その他の援助を行うものとする。
(3) 都道府県労働局長による助言及び指導
 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争に関し、当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当事者に対し、必要な助言又は指導をすることができるものとする。
(4) 紛争調整委員会によるあっせん
 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争について、当事者の双方又は一方からあっせんの申請があった場合において、当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとする。
 都道府県労働局に、紛争調整委員会を置くものとする。
 あっせん委員は、当事者間をあっせんし、双方の主張の要点を確かめ、実情に即して事件が解決されるように努めなければならないものとする。
 あっせん委員は、当事者等から意見を聴取し、事件の解決に必要なあっせん案を作成し、これを当事者に提示することができるものとする。
(5) 地方公共団体の施策等
 地方公共団体は、国の施策と相まって、地域の実情に応じ、労働者又は事業主に対し、情報提供、相談、あっせんその他の必要な施策を推進するように努めるものとし、国は、地方公共団体の施策を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。
 また、当該施策として都道府県労働委員会が行う場合には、中央労働委員会が、当該都道府県労働委員会に対し、必要な助言又は指導をすることができるものとする。



別添5

個別労働紛争解決システムのスキーム

個別労働紛争解決システムのスキーム図


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