厚生労働省発表
平成17年3月24日
職業能力開発局能力評価課
能力評価課長  井上 真
課長補佐  山本 浩司
電話  03(5253)1111(内線5936)
夜間直通  03(3502)6958

ファインセラミックス製品製造業、アパレル業の
能力評価基準が完成


(ポイント)
 現在、厚生労働省では職業能力が適正に評価される社会基盤づくりを進めており、労働者の能力を客観的に評価する仕組みとして、能力評価基準の策定に取り組んでいる。これまで、経理・人事等の事務系職務や、電気機械器具製造業、ホテル業等の能力評価基準が策定されたところである。

 「ファインセラミックス製品製造業」、「アパレル業」の能力評価基準は、それぞれ業界団体等との連携のもと、企業実務家や学識者からなる職業能力評価制度整備委員会において策定作業が進められ、今般報告書が取りまとめられた。
 同報告書においては、業界の職業能力や人材育成に関する状況が分析され、その結果を踏まえて能力評価基準が定められた。

 能力評価基準は業界内のニーズが高い職種について策定され、職務遂行に必要な職業能力や知識に関し、担当者に必要とされる能力水準から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定している。
 また、能力評価基準は、単に知識があるということにとどまらず、職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している。

 また、現在、自動車製造業、ロジスティクス業(運送・倉庫)等幅広い業種において能力評価基準の策定を進めているところである。

 なお、上記の報告書及び能力評価基準は、中央職業能力開発協会のホームページから入手可能である。

[ 中央職業能力開発協会 http://www.hyouka.javada.or.jp ]


 能力評価基準の策定までの経緯
(1)  ファインセラミックス製品製造業
(1)  セラミックス製品製造業については、(社)日本ファインセラミックス協会(会長・金川 重信)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・米屋 勝利 横浜国立大学 名誉教授 特任教授)を設置し、検討を行った。
(2)  同委員会は、ファインセラミックス製品製造業に特徴的であり、能力評価基準の策定ニーズの高い職種として、ファインセラミックス材料の開発・製造に係る業務に絞り、技術系と技能系で5つの職種を選定し、能力評価基準の策定を行った(図1参照)。
 具体的には、技術系として新技術・新材料の研究開発及び応用分野の開拓を行う「研究開発」、製品化に向けた具体的な設計を行う「設計」、生産ライン及び製造設備を企画・開発・設計する「生産技術」、技能系として、原料調製、成形、焼成、加工等を行い製品として仕上げる「セラミックス製造」、生産設備の点検等により故障を排除し、設備を正常・良好な状態に保つ「保全」について能力評価基準の策定を行った。
(3)  ファインセラミックス製造業では、内外との競争激化に伴い、新技術を開発し、これを迅速に製品化していくことが従来にも増して重要になっており、こうした現状を踏まえて能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図1.ファインセラミックス製品製造業の能力評価基準の全体構成
図1.ファインセラミックス製品製造業の能力評価基準の全体構成

 
(2)  アパレル業
(1)  アパレル業については、(社)日本アパレル産業協会(理事長・中瀬 雅通)及び日本アパレルソーイング工業組合連合会(会長・大栗 實)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・岡本 義行 法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科教授)を設置し、検討を行った。
(2)  同委員会は、アパレル業の基本は「考えて」「作って」「売る」であり、能力評価基準の策定ニーズの高い職種として、対象製品を「婦人服の布帛(ふはく)」に絞り、4つの職種を選定し、能力評価基準の策定を行った(図2参照)。
 具体的には、事業戦略を踏まえ具体的な商品イメージを作り上げる「アパレル企画」、デザイン画を基に商品化するためのパターン(型紙)を作成する「アパレル設計」、作成されたパターンを実際に製造・量産する「アパレル製造」、商品を店頭で販売し、あわせて顧客のニーズを把握し企画にフィードバックする「アパレル販売」について能力評価基準の策定を行った。
(3)  アパレル業では、ブランドの企画意図を製品に具体化するパターンメーカーの役割が重要であるとの認識から、企画・デザインの意図や素材の特性を理解し、縫製にも習熟したものづくりの高度な技術職としてのパターンメーカーの育成に取り組む動きも見られ、こうした現状を踏まえつつ今後の方向性も示した能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図2.アパレル業の能力評価基準の全体構成
図2.アパレル業の能力評価基準の全体構成

 レベルの設定
 能力評価基準の策定に当たっては、これが職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針となるように、役職等とそれに必要とされる職業能力の関係の実態に照らし、担当者に必要とされる能力水準(レベル1)から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準(レベル4)まで4つのレベルを設定した(図2参照)。

2 レベルの設定の図

 能力評価の基準の記述内容
 能力評価基準の具体的な記述に当たっては、単に知識があるということにとどまらず、当該職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるように典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している(図3、4、5参照)。

 能力評価基準を活用するメリット
 能力評価基準が明らかになることによって、的確なキャリア形成を図ることができる環境が整備され、また、職業能力に関するミスマッチが縮小することが期待される。
(1)  求職者・労働者にとっては、職業選択やキャリア形成の目標を立てる際に、(1)自らの能力の客観的な把握、(2)企業が必要とする能力の把握が可能となり、職業能力の向上に向けた取組みにつなげることができる。
(2)  企業にとっては、人材に関する企業戦略を立てる際に、採用すべき人材の明確化、人材育成への効果的な投資、能力に基づいた人事評価・処遇等の導入・定着に関する新しいスタンダードとして活用できる。
(3)  ハローワーク等の労働力需給調整機関にとっては、労働者、企業の双方が職業能力を明確に示すことにより、雇用のミスマッチ解消につなげることができる。
(4)  教育訓練実施機関にとっては、職業訓練の対象者の能力レベル表示や修了時の能力評価を適切に行うことができる。

 今後の事業の取組み
 現在、自動車製造業、外食産業等について、能力評価基準の策定作業を進めているところである。今後も引き続き、幅広い分野について能力評価基準の整備を行うこととしている(図6参照)。
 なお、現在、ハローワーク等で活用できる能力評価ツールの開発を進めている。

 「職業能力評価制度整備委員会活動報告書」及び「能力評価基準」の入手先
中央職業能力開発協会 能力評価部
〒112-8503 東京都文京区小石川1-4-1 住友不動産後楽園ビル
http://www.hyouka.javada.or.jp(こちらよりダウンロードできます)
E-mail hyouka@javada.or.jp  TEL 03-5800-3689



(図3)ファインセラミックス製品製造業の能力評価基準の例
(図3)ファインセラミックス製品製造業の能力評価基準の例

(図4)アパレル業(アパレル設計)の能力評価基準の例
(図4)アパレル業(アパレル設計)の能力評価基準の例

(図5)アパレル業(アパレル製造)の能力評価基準の例
(図5)アパレル業(アパレル製造)の能力評価基準の例

(図6)能力評価基準の策定取組み状況
(図6)能力評価基準の策定取組み状況

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