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厚生労働省発表
平成16年12月27日
職業能力開発局海外協力課
 課長  松野   裕
 課長補佐  縄田 英樹
 電話 03-5253-1111(内線5956)
 直通 03-3502-6959


海外就業体験を通じて国際感覚・積極性・コミュニケーション能力を増進
一方で専門知識・技能の修得は十分でなく、帰国後の再就職は厳しい一面も

〜海外就業体験と若年者のキャリア形成に関する調査研究〜


 職業能力開発局海外協力課は、ワーキング・ホリデー(注1)や国際インターンシップ(注2)等の海外就業体験が若年者のキャリア形成にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的として、本年4月に吉本圭一九州大学大学院助教授を座長とする調査研究委員会を設置した。(委員名簿は別紙のとおり)
 今般、調査研究活動の一環として、海外就業体験を行ってきた35歳以下の若年者約6,400人を対象にアンケート調査を実施したところ、下記に示すようなことが明らかになった。詳細な分析は今後調査研究委員会で行うことになるが、アンケート調査の結果からは、海外就業体験と若年者のキャリア形成について概括的に次の3点を指摘することができる。
1. 海外就業体験を通じて外国語能力を向上させ、国際感覚を身につけるとともに、積極性や忍耐力など精神的な面でも自信をつけている。他方、専門的な知識・技能を修得したとする人の割合は相対的に小さくなっている。
2. 帰国後の就職に当たって海外就業体験が有利な条件となったとする人の割合は4割を越えているが、一方で帰国後にさまざまな一時的な仕事をしている人や、求職活動の期間が長い人も少なくない。海外就業体験をキャリア形成に活かせるかどうかは、体験の内容やその取り組みへの意欲等に依拠することを伺わせる結果となっている。
3. 海外就業体験者の満足感はいろいろな面で総じて高いが、一方で帰国後の再就職等で公的な支援を求めるなど海外就業体験に関する改善要望も多く出されている。
 調査研究委員会では、今後、アンケート調査結果の詳細な分析や海外就業体験者に対するインタビュー調査の結果などを踏まえ、年度末をめどに調査研究結果の報告書を取りまとめることとしている。


アンケート調査結果のポイント

1. 海外就業体験者の81.0%は女性であり、海外就業体験の平均期間は4.95ヶ月となっている。渡航先としては、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、米国の順で多い。

2. 海外就業体験の動機としては、(1)語学力の強化(57.3%)、(2)日本で得られない知識・技能の修得(36.7%)、といったキャリア志向的な回答がある一方、(1)海外で生活したいと思っていた(80.4%)、(2)現在の仕事から抜け出したかった(26.4%)、(3)将来を考える時間が欲しかった(21.5%)、といったモラトリアム的な傾向を含む回答をする人も多い。(複数回答)(P4図1)

3. 海外就業体験を通じて得たものとして、(1)国際感覚・異文化適応能力(「大いに修得できた」「修得できた」の合計で82.8%。以下同じ。)、(2)積極性(82.1%)、(3)コミュニケーション能力(80.5%)等で高い自己評価を行う一方、専門的な知識・技能を得たとする人は24.2%にとどまっている。(P8図8)

4. 海外就業体験を通じて外国語学能力は大きく向上している。TOEIC(注3)受検者の平均点で見ると、渡航前の557.5点から帰国後の666.9点となり、109.4点の向上を見ている。(P16図25)

5. 帰国後の主な過ごし方を見ると、「正社員や自営業として働いていた」とする人は37.8%にとどまっており、(1)さまざまな一時的な仕事をしていた(18.5%)、(2)求職中の期間が長かった(6.3%)、とする人が少なくない。(P17図27)

6. 調査時点での平均月収(学校等に在籍し、又は家事等に従事している人を除く税込み月収平均)は18.7万円であり、渡航前の21.7万円から減少している。(P23図35)

7. 帰国後の就職に当たって、海外就業体験が「かなり有利になった」、「少し有利になった」とする人は、それぞれ12.9%、28.0%となっており、「少し不利になった」とする人の3.7%を大きく上回っている。(P24図37)

8. 海外就業体験者は、政府や公的機関に対して、(1)帰国後の就職あっせん、(2)渡航前の事前準備に係る情報提供の充実、(3)経費的支援、(4)ワーキング・ホリデー対象国の追加・年齢制限の緩和、等の面での支援策を要望している。(P27)


(注1)ワーキング・ホリデー
 ワーキング・ホリデーとは、二国間の協定に基づいて、18歳から30歳以下(一部の国は25歳まで)の若年者が最長一年間、異なった文化の中で休暇を楽しみながら、その間の滞在資金を補うために付随的な就労が認められている制度。日本はオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、韓国、フランス、ドイツ及びイギリスの7カ国との間で本協定を結んでおり、現在、年間約20,000人の日本人がワーキング・ホリデー制度を使って海外に渡航している。
(注2)国際インターンシップ
 国際インターンシップとは、海外の企業や団体での一定期間の就業体験を通じ、実務能力や語学力の向上を目指す渡航形態を言う。海外インターンシップと呼ばれることもある。ワーキング・ホリデーと違って公的な枠組みは存在せず、渡航先は限定されないが、取得する在留資格によって滞在期間の上限、報酬受取りの可否等が異なってくる。海外就職に向けたキャリア・アップのための実践的な内容のものや、日本文化紹介のような国際交流的活動を主体とするものなど、参加者の経験や目的に沿った様々な内容のプログラムが海外就業体験をあっせん・支援する民間企業・団体を通じて実施されている。
(注3)TOEIC
 TOEICとは、Test of English for International Communicationの略称で、英語によるコミュニケーション能力を評価するテストのひとつ。世界約60カ国で実施されており、テスト結果は合否ではなく、10点から990点までのスコアで表示される。



【調査の概要】【結果の概要I・II】 (PDF:49KB)
【結果の概要III】 (PDF:44KB)
【結果の概要IV】 (PDF:72KB)


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