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3.家庭用品等が原因と考えられる吸入事故等に関する報告

 (財)日本中毒情報センターは、一般消費者もしくは一般消費者が受診した医療機関の医師からのあらゆる化学物質等による健康被害に関する問い合わせに応ずる機関である。毎年数万件の問い合わせがあるが、このうち最も多いのが幼少児のタバコの誤飲で、これのみで年間4,000件に達する。
 この報告は、これら問い合わせ事例の中から、家庭用品等による吸入事故及び眼の被害に限定して、症例を収集・整理したものである。なお、医薬品など、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」上の家庭用品ではないものも一部含まれている。

(1)原因製品種別の動向
 全事例数は742件で、昨年度より1割ほど増加した。原因と推定された家庭用品等を種別でみると、前年度と同様、殺虫剤類の報告件数が最も多く、195件(26.3%)であった。次いで洗浄剤(住宅用・家具用)127件(17.1%)、芳香・消臭・脱臭剤58件(7.8%)、漂白剤44件(5.9%)、消火剤36件(4.9%)、洗剤(洗濯用・台所用)32件(4.3%)、園芸用殺虫・殺菌剤類32件(4.3%)、防虫剤19件(2.6%)、除草剤14件(1.9%)、灯油14件(1.9%)の順であった。また、防水スプレーは平成13年度には3件の報告であったが、前年度に12件に増加し、今年度も11件の報告があった。これらの変化については今後も経時的に追う必要がある。
 製品の形態別の事例数では、「スプレー式」が298件(そのうちポンプ式が142件)、「液体」204件、「粉末状」88件、「固形」68件、「蒸散型」63件、その他13件、不明が8件であった。ここでいう蒸散型とは、閉鎖空間等において一回の動作で容器内の薬剤全量を強制的に蒸散させるタイプの薬剤で、くん煙剤(水による加熱蒸散タイプを含む)、全量噴射型エアゾール等が該当する。蒸散型は年々増加し、5年前の報告が18件であったのに対し、今年度は63件の報告があった。また、蒸散型は医療機関からの問い合わせが多いのも特徴である。

(2)各報告項目の動向
 年齢から見ると、0〜9歳の子供の被害報告事例が275件(37.1%)で、前年度と同様、最も多かった。次いで30代が多く、その他の年齢層は総件数、該当人口あたりの件数ともほぼ同じであった。年齢別事例数は製品によって偏りが見られるものがあり、殺虫剤、洗浄剤(住宅用・家具用)は0〜9歳以外に30代にピークが見られた。このピ−クは男性には見られておらず、女性によるものであることも特徴である。また、殺虫剤及び園芸用殺虫・殺菌剤類は60歳代、70歳代など高齢者における報告件数も多く、消火剤は0〜9歳とともに10代も報告件数が多かった。
 性別では、女性が402件(54.2%)、男性が299件(40.3%)、不明が41件(5.5%)で男女比は前年度とほぼ同等であり引き続き女性の報告が多かった。電話での問い合わせのため、記載漏れ等があり、被害者の性別不明例が多少存在する。

 健康被害の問い合わせ者は、一般消費者からの問い合わせ事例が483件、受診した医療機関等医療機関関係者からの問い合わせ事例が259件であった。
 症状別に見ると、症状の訴えがあったものは498件(67.1%)、なかったものは235件(31.7%)、不明のものが9件(1.2%)であり、症状の訴えがあったものの割合は前年度とほぼ同程度であった。症状の訴えがあった事例のうち、最も多かったのが、咳、喘鳴等の「呼吸器症状」を訴えたもの200件(27.0%)で、次いで、悪心、嘔吐、腹痛等の「消化器症状」を訴えたもの187件(25.2%)、頭痛、めまい等の「神経症状」を訴えたものが138件(18.6%)、眼の違和感、痛み、充血等の「眼の症状」を訴えたものが128件(17.3%)、であった。前年度と比べて上位に占める症状はほとんど変動していない。
 発生の時期を見ると、品目別では、殺虫剤類による被害が4月から10月に多い。洗浄剤(住宅用・家具用)について、昨年度は年末に被害が増加したが、今年度は、季節による目立った傾向はみられなかった。曜日別にも解析を行ったが、際だった特徴はなかった。時間別では午前8時から午後9時の間にほぼ均等に発生しており、午前0時から午前7時頃までが少なくなっていた。これらの発生頻度は前年度と比較して際だった変化はなく、生活活動時間に比例している。

(3)原因製品別考察

 1)殺虫剤・防虫剤
 殺虫剤・防虫剤に関する事例は214件(有症率74.3%)で、そのうち、殺虫剤が195件(前年比1.1倍)、防虫剤19件(前年比1.4倍)といずれも増加していた。
 被害事例の状況として
  1. 乳幼児・痴呆症患者など、危険認識能力が十分にないものによる事例
  2. 用法どおり使用したと思われるが、健康被害が発生した事例、若しくはそれが懸念された事例
  3. 蒸散型の薬剤を使用中、入室してしまった事例
  4. 適用量を明らかに超えて使用した事例
  5. 換気を十分せずに使用した事例
  6. ヒトの近辺で使用し、影響が出た事例
  7. マスク・メガネ等の保護具を着用せずに使用した事例
  8. 薬剤が飛散し、吸入したあるいは眼に入った事例
  9. 使用時に風下にいたため、吸入した事例
  10. 使用方法を十分確認せずに使用した事例
等があり、使用の際には細心の注意が必要である。

  ◎ 事例1 【原因製品:殺虫剤(エアゾールタイプ)】
 患者   3歳 男児
 状況 兄とエアゾール式のピレスロイド系殺虫剤をいたずらし、吸入した。噴射した殺虫液を含む水も少量飲んだ。
 症状 気分不良
 処置・転帰 点滴、入院(3日)

  ◎ 事例2 【原因製品:殺虫剤(蒸散タイプ)】
 患者   成人 計3名
 状況 くん煙剤を使用中、別の部屋で煙を吸入した可能性がある。
 症状 1名は呼吸困難、他の2名は喉の痛み
 処置・転帰 不明

  ◎ 事例3 【原因製品:殺虫剤(蒸散タイプ)】
 患者   44歳 女性
 状況 くん煙剤を使用後、充分な換気を行わずにその室内で2時間作業した。
 症状 腹部不快感、下痢、腹痛、手足のしびれ感、感覚異常、皮膚のかゆみ
 処置・転帰 経過観察

  ◎ 事例4 【原因製品:殺虫剤(粉末タイプ)】
 患者   24歳 女性
 状況 マスクを着用せずに粉末のカーバメート系殺虫剤を散布した際、吸入した。
 症状 頭痛、嘔気、しびれ
 処置・転帰 外来にて制吐剤と鎮痛剤の内服薬を処方及び点滴。

  ◎ 事例5 【原因製品:殺虫剤(液体タイプ)】
 患者   50歳 女性
 状況 液体殺虫剤の原液が飛散して眼に入った。
 症状 角膜上皮損傷
 処置・転帰 外来にて洗眼および点眼剤による処置。

 2)洗浄剤(住宅用・家具用)、洗剤(洗濯用・台所用)
 洗浄剤(住宅用・家具用)・洗剤(洗濯用・台所用)に関する事例は159件(有症率63.5%)で、前年度(113件)と比較し増加した。そのうち、洗浄剤(住宅用・家具用)に関する事例は127件(前年比1.3倍)、洗剤(洗濯用・台所用)に関する事例は32件(前年比1.8倍)であった。最も多いのは、次亜塩素酸系の製品によるもの(74件)であり、製品形態で多いのはポンプ式スプレー製品(89件)であった。
 被害事例の状況として
  1. 乳幼児・痴呆症患者など、危険認識能力が十分にないものによる事例
  2. 複数の薬剤が作用し、有毒ガスが発生した事例
  3. 用法どおり使用したと思われるが、健康被害が発生した事例、若しくは懸念された事例
  4. 液体や粉末の薬剤が飛散し、吸入したあるいは眼に入った事例
  5. 適用量を明らかに超えて過量使用した事例

等があり、被害を防ぐには、換気を十分に行う、長時間使用しない、適量を使用すること等に気をつける必要がある。また、塩素系の洗浄剤と酸性物質(事故例の多いものとしては塩酸や有機酸含有の洗浄剤、食酢等がある)との混合は有毒な塩素ガスが発生して危険である。これらの製品には「まぜるな危険」との表示をすることが徹底されているが、いまだに発生例がみられ、一層の啓発が必要である。また、今年度、微粒子化された洗濯用洗剤(粉末)による入院事例が複数報告されているように、洗剤を吸入した場合重篤化することがある。洗剤はどの家庭にもあり、幼児でも容易に蓋があけられたり、また、棚等から落下する事故等もおこりうることから、保護者が十分注意をする必要がある。なお、乳幼児の事故事例は、保管場所を配慮することによって防止できるものが多い。

  ◎ 事例1 【原因製品:洗濯用洗剤(粉末)】
 患者   1歳 男児
 状況 粉末の洗濯用洗剤を頭からかぶり、激しく咳き込んだ。
 症状 上気道浮腫による呼吸困難
 処置・転帰 加湿テントにて酸素吸入、ステロイドの吸入等の処置。重症管理目的にて転院。転院先にて入院(7日)。

  ◎ 事例2 【原因製品:カビとり用洗浄剤(ポンプ式スプレー)/トイレ用洗浄剤(アルカリ)/塩酸】
 患者   43歳 男性
 状況 トイレにて、塩素系カビとり用洗浄剤、次亜塩素酸含有のトイレ用洗浄剤及び塩酸を使用したところ、発生したガスを吸入した。
 症状 呼吸障害、脱力感
 処置・転帰 不明

  ◎ 事例3 【原因製品:住宅・家具用洗浄剤(液体)】
 患者   47歳 女性
 状況 電子レンジで加熱して使用する電子レンジ内壁清掃シートを使用した後、シートを取り出す際に薬液が飛散して眼に入った。
 症状 眼の痛み
 処置・転帰 受診せず

  ◎ 事例4 【原因製品:カビとり用洗浄剤(ポンプ式スプレー)】
 患者   6ヶ月 女児
 状況 浴室にて、子供を背負った状態で、カビとり用洗浄剤を使用した。浴室の窓は開けていた。
 症状 子供に嘔吐、顔色不良
 処置・転帰 不明

  ◎ 事例5 【原因製品:カビとり用洗浄剤(ポンプ式スプレー)】
 患者   38歳 女性
 状況 浴室にて、壁の上方に向けてカビとり剤を使用したため、ミスト状になった薬剤を吸入した。
 症状 喉の痛みと違和感、息苦しさ
 処置・転帰 受診せず

  3)芳香・消臭・脱臭剤
 芳香・消臭・脱臭剤に関する事例は58件(有症率60.3%)で、前年度(70件)より減少した。被害状況としては、
  1. 乳幼児・痴呆症患者など、危険認識能力が十分にないものによる事例
  2. エアゾールで噴射方向を誤ったことによる事例
  3. 用法どおり使用したと思われるが、健康被害が発生した事例、若しくはそれが懸念された事例
  4. 適用量を明らかに超えて過量使用した事例

等が見られた。多種多様な製品が販売されており、事故の発生状況も製品の形態や使用法により様々である。増加し続けてきた件数は今年度減少したものの、今後も注意が必要である。

  ◎ 事例1 【原因製品:脱臭・消臭・芳香剤(エアゾールタイプ)】
 患者   70歳 女性
 状況 エアゾール式芳香剤の側面にボタンがあるため、持った拍子に薬液が噴射され、吸入した。
 症状 胸苦しさ、咳、発熱
 処置・転帰 含嗽薬、内服薬を処方

  ◎ 事例2 【原因製品:脱臭・消臭・芳香剤(蒸散タイプ)】
 患者   29歳 男性
 状況 車内で蒸散タイプの消臭剤を使用中、忘れ物をしたため乗車し、薬剤を吸入した。
 症状 喉の違和感
 処置・転帰 受診せず

  ◎ 事例3 【原因製品:脱臭・消臭・芳香剤(液体タイプ)】
 患者   45歳 女性
 状況 滴下タイプの液体消臭剤を点眼薬と誤認して点眼した。
 症状 眼の痛み、充血
 処置・転帰 経過観察

 4)園芸用殺虫・殺菌剤類等
 園芸用殺虫・殺菌剤類等に関する事例は51件(有症率74.5%)、そのうち、園芸用殺虫・殺菌剤類に関する事例は32件、除草剤は14件、肥料4件であり、いずれも前年度とほぼ同程度の報告件数である。成分別では有機リン剤12件、グリホサート剤8件、ピレスロイド剤8件、石灰硫黄合剤4件、尿素系除草剤3件であった。
被害状況としては
  1. 乳幼児・痴呆症患者など、危険認識能力が十分にない者による事例
  2. マスク等の保護具を装着していなかったことによる事例
  3. ヒトの近辺で使用し、影響が出た事例
  4. 用法どおり使用したと思われるが、健康被害が発生したと思われる事例若しくはそれが懸念された事例

等が見られた。屋外で使用することが多く、使用者以外にも健康被害が発生しているのが特徴である。家庭園芸用であっても十分な注意喚起を図る必要がある。

  ◎ 事例1 【原因製品:園芸用殺虫・殺菌剤(粉末)】
 患者   60歳 男性
 状況 家庭菜園にて、マスクを着用せずにジチオカーバメート系殺菌剤と有機リン系殺虫剤を散布中、吸入した。腕にも付着した。
 症状 呼吸困難、過呼吸、気分不良、嘔吐、顔面蒼白
 処置・転帰 水洗、酸素投与、点滴、入院(4日)

  ◎ 事例2 【原因製品:園芸用殺虫・殺菌剤(エアゾール)】
 患者   2歳 女児
 状況 エアゾール式の有機リン系殺虫剤を噴射した際、近くにいた子供が吸入した。
 症状 むせる
 処置・転帰 経過観察

  ◎ 事例3 【原因製品:園芸用殺虫・殺菌剤(ポンプ式スプレー)】
 患者   72歳 女性
 状況 ポンプ式スプレータイプのピレスロイド系殺虫剤を使用したところ眼に入った。
 症状 右眼の疼痛、流涙、角膜びらん、結膜の充血
 処置・転帰 洗眼処置、外来通院(8日)

 5)漂白剤
 漂白剤に関する事例は44件(有症率84.1%)で、このうち次亜塩素酸系(塩素系)が43件と最も多く、ほとんどを占めた。
 被害事例の状況として
  1. 複数の薬剤が作用し、有毒ガスが発生した事例
  2. 乳幼児・痴呆症患者などのうち、危険認識能力が十分にないものによる事例

等があり、注意が必要である。また、塩素系の漂白剤と酸性物質とを混合し発生した塩素ガスを吸入した事例も相変わらず見られ、前述の洗浄剤と合わせると混合による塩素ガス発生事例は8件(うち症状有8件)であった。塩素ガスを発生させる恐れのあるものには「まぜるな危険」の表示、そうでなくとも「他剤と混合しない」という注意書きはなされているところではあるが、これら混合の危険性についてさらに一層の啓発をはかる必要がある。

  ◎ 事例1 【原因製品:塩素系漂白剤(液体)/酸性トイレ用洗浄剤(液体)】
 患者   34歳 女性
 状況 自宅にて塩素系漂白剤と酸性トイレ用洗浄剤を使用し、発生したガスを吸入した。
 症状 咽頭痛、胸苦しさ、動悸、頭痛
 処置・転帰 心電図検査(異常なし)、その後不明

  ◎ 事例2 【原因製品:塩素系漂白剤(液体)/酸素系漂白剤(液体)】
 患者   32歳 女性
 状況 塩素系漂白剤の空容器に酸素系漂白剤を入れて保管し、ふたを開けた際に発生したガスを吸入した。
 症状 咳、喘鳴
 処置・転帰 不明

  ◎ 事例3 【原因製品:塩素系漂白剤(液体)】
 患者   57歳 女性
 状況 洗濯中に使用した塩素系漂白剤が跳ねて眼に入った。
 症状 眼の違和感、結膜と眼瞼の発赤
 処置・転帰 外来にて洗眼処置、点眼薬の処方

 6)消火剤
 消火剤に関する事例は36件(有症率63.9%)であり、前年度(46件)より減少した。被害状況としては、消火器が倒れて消火剤が噴出した事例、誤って噴射し吸入した事例等、使用時以外の被害が目立った。使用中はもちろんのこと、保管場所、取扱いには十分な注意が必要である。

  ◎ 事例1 【原因製品:粉末消火剤】
 患者   44歳 男性
 状況 転倒して噴出した粉末消化剤を片付け中、粉末を吸入した。
 症状 喉の痛み
 処置・転帰 経過観察

  ◎ 事例2 【原因製品:粉末消火剤】
 患者   19歳 男性
 状況 自宅にて、消火のために粉末消火器を使用し、消火剤を吸入した。
 症状 咽の違和感
 処置・転帰 経過観察

 7)その他
 防水スプレーに関しては、過量使用、換気不良等による事故が相変わらず発生しており、使用にあたっては十分な注意をはらうよう、あらためて注意喚起したい。また、昨今色々な商品が発売されているが、それに伴って家庭の中でもさまざまな目新しい商品による事故の発生例が報告されている。

  ◎ 事例1 【原因製品:防水剤・撥水剤(エアゾール)】
 患者   21歳 女性
 状況 室内にて換気の悪い状態でエアゾール式の防水剤を5分間使用し、吸入した。
 症状 息苦しさ、発熱
 処置・転帰 X線検査の結果淡い影がみられた。その後不明。

  ◎ 事例2 【原因製品:昆虫忌避剤(ポンプ式スプレー)】
 患者   58歳 女性
 状況 ベランダにて、スプレー式の天然ハーブを含有する忌避剤を用法どおり使用した。
 症状 気分不良
 処置・転帰 受診せず

  ◎ 事例3 【原因製品:害虫捕獲剤(エアゾール)】
 患者   49歳 女性
 状況 アクリル樹脂を主成分とするゴキブリ捕獲剤のノズル部分がうまく作動しなかったため、容器を触っているうち、誤って眼に噴射した。
 症状 眼の痛み
 処置・転帰 洗浄処置

(4)全体について
 この報告は、医療機関や一般消費者から(財)日本中毒情報センターに問い合わせがあった際、その発生状況から健康被害の原因とされる製品とその健康被害について聴取したものをまとめたものである。医療機関に対してはアンケート用紙の郵送により、また一般消費者に対しては電話によって追跡調査を行い、問い合わせ時以降の健康状態等を確認しているが、一部把握し得ない事例も存在する。しかしながら、一般消費者等から直接寄せられるこのような情報は、新しく開発された製品を含めた各製品の安全性の確認に欠かせない重要な情報である。
 情報収集の対象は、吸入事故及び眼の被害に限定しているが、製品については医薬品、一部の殺虫剤など「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」上の家庭用品ではないものも集計に加えている。
 今年度も前年度同様、子供の健康被害に関する問い合わせが多くあった。例えば、洗剤については乳幼児が頭からかぶり入院をしたという事例も複数報告されている。保護者は家庭用品等の使用時やその保管方法に十分注意するとともに、製造者も子供のいたずらや誤使用等による健康被害が生じないような対策を施した製品開発に努めることが重要である。
 製品形態別では、スプレー式の製品による事故が多く報告された。スプレー式の製品は内容物が霧状となって空気中に拡散するため、製品の種類や成分にかかわらず吸入や眼に入る健康被害が発生しやすい。使用にあたっては換気状況を確認すること、一度にたくさんの量を使用しないこと等の注意が必要である。
 主成分別では、次亜塩素酸系の洗浄剤等による健康被害例が相変わらず多くみられた。次亜塩素酸系の成分は、臭いなどが特徴的で刺激性が強いことからも報告例が多いものと思われるが、使用方法を誤ると重篤な事故が発生する可能性が高い製品でもある。製造者においても、より安全性の高い製品の開発に努めるとともに、消費者に製品の特性等について表示等による継続的な注意喚起と適正な使用方法の推進をはかる必要がある。
 また、事故の発生状況をみると、使用方法や製品の特性について正確に把握していれば事故の発生を防ぐことができた事例や、わずかな注意で防ぐことができた事例も多数あったことから、消費者にあっては、日頃から使用前には注意書きをよく読み、正しい使用方法を守ることが大切である。万一事故が発生した場合には、症状の有無にかかわらず、(財)日本中毒情報センターに問い合わせをし、必要に応じて専門医の診療を受けることを推奨したい。


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