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2. 家庭用品等に係る小児の誤飲事故に関する報告

(1)原因家庭用品等種別の動向
 小児の誤飲事故の原因製品としては、「タバコ」が350件(40.7%)で最も多かった。次いで「医薬品・医薬部外品」が99件(11.5%)、「玩具」が91件(10.6%)、「金属製品」が57件(6.6%)、「プラスチック製品」が41件(4.8%)、「洗剤・洗浄剤」が39件(4.5%)、「化粧品」が26件(3.0%)、「硬貨」が25件(2.9%)、「電池」が21件(2.4%)、「食品類」が17件(2.0%)であった。
 報告件数上位10品目までの原因製品については、順位に若干の変動はあるものの、例年と概ね同じ品目により占められていた。また、上位2品目については、小児科のモニター報告が始まって以来変化がなく、本年も同様であった。

(2)各報告項目の動向
 障害の種類については、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等の「消化器症状」が認められたものが69件(8.0%)と最も多かった。次いで咳、喘鳴等の「呼吸器症状」が認められたものが33件(3.8%)となっていた。全体として症状の発現が見られたものは121件(14.1%)であったが、これらには複数の症状を認めた例も含んでいた。本年度は幸い命が失われるといった重篤な事例はなかったが、「入院」、「転科」及び「転院」となったものが21件あった。それ以外はほとんどが「帰宅」となっていた。
 誤飲事故発生時刻については、例年同様夕刻以降に発生件数が増加するという傾向が見られ、午後4時〜10時の時間帯の合計は445件(55.6%:発生時刻不明を除く報告件数に対する%)であった。
 誤飲事故発生曜日については、曜日間による差は特に見られなかった。

(3)原因製品別考察
 1)タバコ
 平成15年度におけるタバコの誤飲に関する報告件数は350件(40.7%)であり、依然全報告例の約4割を占めていた。その内訳を誤飲した種別で見ると、タバコ194件、タバコの吸い殻**145件、タバコの溶液***11件、となっていた。
 タバコを誤飲した年齢について見ると、例年と同様、ハイハイやつかまり立ちをはじめる6〜11か月の乳児に報告例が集中しており、211件(61.4%)にのぼった。これに12〜17か月の幼児(98件)と合わせると88.3%を占めた。乳幼児は1歳前後には独力で室内を移動できるようになり、1歳6か月以降には動きも早くなって、両手で容器を持ち飲水できるようにもなる。タバコの誤飲事故の大半は、この1歳前後の乳幼児に集中してみられ、この時期を過ぎればタバコの誤飲例は急激に減少する。期間にしてわずか1年に過ぎないこの期間に注意を払うことにより、タバコの誤飲事故は大幅に減らすことができるはずである。子供の保護者は、この年齢の時期に、タバコ、灰皿を子供の手の届く床の上やテーブルの上等に放置しないこと、飲料の空き缶等を灰皿代わりに使用しないこと等、その取扱いや置き場所に細心の注意を払うことが必要である。特に、タバコの水溶液の場合はニコチンが吸収され易い状態にあるので、タバコ水溶液の誤飲の原因となりかねないジュースの空き缶を灰皿代わりにするなどの行為は避けるべきである。
 タバコの誤飲による健康被害を症状別に見ると、症状を訴えた41件中、消化器症状の訴えがあった例が35件と最も多かった。今年度の報告では入院等の報告はなく、幸いなことに大事には至らず全例において受診後帰宅している。
 来院前に応急処置を行った事例は152件あった。行った処置としては何も飲ませずに「吐かせた」及び「吐かせようとした」事例が、あわせて72件と最も多かった。応急処置として、何らかの飲料を飲ませた例は22件あった。タバコの誤飲により問題となるのは、タバコに含まれるニコチン等を吸収してしまうことである。タバコを吐かせるのはニコチン等の吸収量を減らすことができるので有効な処置であるが、この際飲料を飲ませると逆にニコチンが吸収され易くなってしまう可能性がある。吐かせようとして飲料を飲ませても吐かなかった例も見られており、タバコを誤飲した場合には飲料は飲ませず直ちに受診することが望ましい。

  * :「タバコ」 :未服用のタバコ
  ** :「タバコの吸い殻」 :服用したタバコ
  *** :「タバコの溶液」 :タバコの吸い殻が入った空き缶、空瓶等にたまっている液

  ◎ 事例1【原因製品:タバコ
 患者   1歳4か月 男児
 症状 嘔吐
 誤飲時の状況 タバコ1本がバラバラになっていた。様子をみていたが1時間30分後嘔吐。2時間後、近医にて嘔吐2回。紹介受診。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 2時間〜3時間未満
 処置及び経過 胃洗浄のち帰宅

<担当医のコメント>
 基本的には誤飲後、30分以内に受診することが望ましい。

  ◎ 事例2【原因製品:タバコの吸い殻**
 患者   8か月 女児
 症状 悪心・嘔吐
 誤飲時の状況 3時間目を離していた間にタバコを食べた。どれだけ食べたか不明。タバコの葉を含んだ嘔吐2回。
 来院前の処置 手を口の中にいれ吐かせた。
 受診までの時間 2時間〜3時間未満
 処置及び経過 胃洗浄のち帰宅

  ◎ 事例3【原因製品:タバコの溶液***
 患者   1歳7か月 女児
 症状 チアノーゼ、悪心・嘔吐
 誤飲時の状況 居間でタバコの吸い殻の入った入れ物を口にくわえて液を飲んだ。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 30分〜1時間未満
 処置及び経過 胃洗浄、点滴のち帰宅

<担当医のコメント>
 ニコチンは溶液中には大量に溶出するので危険です。飲料の缶を灰皿の代わりにすることは、絶対に止めるべきです。万が一、タバコを浸した溶液を飲んでしまった場合は、なるべく早く(30分以内に)受診してください。

 2)医薬品・医薬部外品
 平成15年度における医薬品・医薬部外品に関する誤飲の報告件数は99件(11.5%)であった。前年度は101件(15.0%)であり、件数及び全体に対する割合はほぼ同じであった。症状の認められた19件中、傾眠などの神経症状が認められた例が8件と最も多く、次いで悪心、嘔吐、腹痛、下痢等の消化器症状が認められた例が7件あった。入院を必要とした事例も12件あった。入院例の多くの場合は保護者が注意をそらせている間に薬品を大量服用してしまっている例であった。
 誤飲事故を起こした年齢について見ると、タバコが6〜17か月児に多く見られているのに対し(313件、89%)、医薬品・医薬部外品は年齢層はより広いものの、特に1〜2歳児にかけて多く見られていた(74件,74.7%)。このころには、自らフタや包装を開けて薬を取り出せるようになり、また家人が口にしたものをまねて飲んだりもするため、誤飲が多くなっているものと思われた。また、誤飲の発生した時刻は、昼や夕刻の食事前後と思われる時間帯に高い傾向があった。本人や家人が使用した薬が放置されていたものを飲んだり、家人が口にしたのをまねて飲むこと等が考えられ、使用後の薬の保管には注意が必要である。
 原因となった医薬品・医薬部外品の内訳を見ると、中枢神経系の薬が19件で最も多いなど、一般の家庭に常備されている医薬品・医薬部外品だけではなく、保護者用の処方薬による事故も多く発生していた。
 医薬品・医薬部外品の誤飲事故は、薬がテーブルや棚の上に放置されていた等、医薬品の保管を適切に行っていなかった時や、保護者が目を離した隙等に発生している。また、シロップ等、子供が飲みやすいように味付けしてあるもの等は、子供がおいしいものとして認識し、冷蔵庫に入れておいても目につけば自ら取り出して飲んでしまうこともある。小児の医薬品の誤飲は、大量に誤飲したり、効力の強い薬を誤飲した場合には、時に重篤な障害をもたらす恐れがある。家庭内での医薬品類の保管・管理には十分な注意が必要である。

  ◎ 事例1【原因製品:錠剤】
 患者   1歳7か月 女児
 症状 ふらつき
 誤飲時の状況 父親の薬(精神安定剤)をかじった。その後、ふらつきあり。なんとなくボーッとしており来院。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 30分〜1時間未満
 処置及び経過 胃洗浄、点滴のち帰宅

<担当医のコメント>
 内服直前に水を取りに行った隙に誤飲することも多く、服用したら必ず片付けるようにこころがけてください。万が一、誤飲した場合は飲んだ薬や薬の説明書をもって必ず病院を受診してください。

  ◎ 事例2【原因製品:錠剤 】
 患者   1歳9か月 女児
 症状 意識障害
 誤飲時の状況 ボーッとしてフラフラしていることに気づく。周囲をみると睡眠導入剤の錠剤が散乱しており誤飲が心配となった。
 来院前の処置 お茶を飲ませた。
 受診までの時間 30分未満
 処置及び経過 胃洗浄、点滴、入院

 3)電池
 平成15年度の電池の誤飲に関する報告件数は21件(2.4%)であった。前年度14件(2.1%)と比較して件数、割合ともわずかであるが増加しており、単独製品による事故数としては依然軽視できない数である。
 誤飲事故を起こした年齢について見ると、本年は特に6〜17か月児(前年度は2歳児)に多く見受けられたが、依然幅広い時期に発生している。
 誤飲した電池の大半は、ボタン電池であった(16件)が、単4サイズの小さい乾電池を誤飲した事例の報告もあった。電卓やリモコン等ボタン電池を使用した製品が多数出回っているが、電池の誤飲事故は幼児がこれらの製品で遊んでいるうちに電池の出し入れ口のフタが何らかの理由で開き、中の電池が取り出されてしまったために起こっている場合が報告されている。製造業者は、これらの製品について幼児が容易に電池を取り外すことができないような設計を施すなどの配慮が必要であろう。また保護者は、電池の出し入れ口のフタが壊れていないか確認するとともに、電池を子供の手の届くところに置かないことが必要である。特に放電しきっていないボタン電池は、体内で消化管等に張り付き、せん孔の可能性があるので、子供の目につかない場所や手の届かない場所に保管するなどの配慮が必要である。

  ◎ 事例1【原因製品:ボタン電池】
 患者   6歳3か月 男児
 症状 なし
 誤飲時の状況 1人で遊んでいてボタン電池を飲み込んだとのことで来院。腹部X線写真をとったところ胃内にまだある。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 30分未満
 処置及び経過 X線検査で胃内に確認、摘出術を実施したが摘出できず転院

 4)食品
 本年度は、酒類の誤飲事故の報告が7件と前年度(2件)より増加している。放置されたものの誤飲や保護者が誤って飲ませてしまった例などであった。全般的にいえることであるが、誤飲の危険のあるものを放置しないようにすることが重要である。また、酒類の保管方法や子供に飲料を与える前には内容を確認する等の注意も必要である。
 また、本年度も飴による誤飲事故が5例報告された。飴等は、気道に入りやすい大きさ、形状及び硬さを有しているので、誤飲事故の原因となりやすい。しかもこのような食品は、気道に入ってしまうと摘出が困難であり、乳幼児にそのまま食べさせること自体禁忌である。これらによる死亡事故の報告もあり、保護者自身が十分に注意する必要がある。
 なお、食品の誤飲で重篤な症状に至るもののほとんどは気道に詰まって窒息を起こすものである。こんにゃくゼリーは、過去の事故を踏まえ硬さや形状の工夫等の対策はとられているが、こんにゃくのようなものは、噛み切りにくく、いったん気道へ詰まってしまうと、重篤な呼吸器障害につながる恐れがある。食品を乳幼児等に与える際には、保護者はこのような点にも十分に注意を払う必要がある。

  ◎ 事例1【原因製品:酒】
 患者   1歳7か月 女児
 症状 顔面紅潮、立位困難、元気がない。
 誤飲時の状況 前夜の飲み残しのビールをまな板の上に置いておいた。母親が外出から戻ると約1/3〜1/2程残っていたはずの缶ビールが空になっており、患児と3歳の兄が周りで遊んでいた。顔面紅潮、立位困難でふらつきを認めた。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 1時間30分〜2時間未満
 処置及び経過 採血検査、点滴のち帰宅

<担当医のコメント>
 飲みかけのアルコール類を机の上などに放置しないよう注意が必要である。
 特に、アルコール類の容器がジュース類の容器と類似している場合には、子供が誤って飲む場合もあるので注意が必要である。

  ◎ 事例2【原因製品:飴】
 患者   4歳3か月 女児
 症状 咳、チアノーゼ
 誤飲時の状況 あめ玉(1円玉大)を飲み込み、のどにひっかかった。咽頭痛があったため受診したが、診察時には痛みなし。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 30分未満
 処置及び経過 帰宅

 また、食品ではないが、食品の付属物や関連器具による誤飲例も下記のように見られている。同様な誤飲は昨年度も報告されており、誤飲の可能性のあるものとして注意が必要である。

  ◎ 事例1【原因製品:保存剤】
 患者   2歳7か月 女児
 症状 なし
 誤飲時の状況 ダイニングテーブルの上に置いてあったお菓子の保存剤を食べた。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 1時間〜1時間30分未満
 処置及び経過 帰宅

 5)その他
 代表的な事例だけではなく、家庭内・外にあるもののほとんどが子供の誤飲の対象物となる可能性があり、子供のいる家庭においては保護者の配慮が必要である。1歳前であっても指でものを摘めるようになれば、以下に紹介する事例のように様々な小さなものを無分別に口に入れてしまう。床など子供の手の届くところにものを置かないよう注意が必要である。
 また、今年度は玩具の誤飲が例年より多く報告されている。その種類は、おはじき、キーホルダー、ビー玉、ビーズなど多様である。玩具は、本来子供が使用するためのものであり管理が難しいが、小さな玩具で子供が遊んでいる場合には特に眼を離さないようにする、使用後は直ちに子供の手の届かないところに片づけをするなどの注意が必要である。
 固形物の誤飲の場合は、誤飲したものが体内のどこにどんな状態で存在するかは一見したところではわからないので、専門医を受診し、経過を観察するか、必要に応じて摘出するかなど適切な判断を受けることが望ましい。誤飲製品が胃内まで到達すれば、いずれ排泄されると考えられることから問題はないとする向きもあるが、硬貨が胃内から長時間排泄されなかったり、小型磁石や先に別途例示されたボタン電池等の場合に腸壁に張り付きせん孔してしまったりして、後日腹痛や障害を発生させる可能性もあるので、排泄の確認はするようにしたい。
 本年も防虫剤の誤飲事例があったが、衣類用の防虫剤は見かけ上は皆よく似ているが、よく使用されている成分には数種類あるので、医療機関等に相談する場合は何を誤飲したかを正確に伝えた方がよい。またこれらの防虫剤を誤飲した場合は、吸収を促進することになるので応急処置として牛乳を飲ませてはいけない。
新たに誤飲が増えてきているものとしては、携帯電話のストラップや蓋など携帯電話関連の製品があげられる(5件)。携帯電話の普及によるものと考えられるが、今後の推移を把握していく必要がある。

  ◎ 事例1【原因製品:玩具】
 患者   10か月 男児
 症状 喘鳴
 誤飲時の状況 はっきりせず。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 不明
 処置及び経過 X線検査で確認、摘出術を依頼(転院)

  ◎ 事例2【原因製品:玩具】
 患者   1歳5か月 男児
 症状 胸痛、不機嫌
 誤飲時の状況 500円玉より少々大きいコイン状(プラスチック性)のおもちゃで遊んでいたら「痛い」といい胸部を指さした。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 4時間〜6時間未満(他院受診のため)
 処置及び経過 X線検査で異常なし、帰宅

  ◎ 事例3【原因製品:金属製品(ヘアピン)】
 患者   1歳5か月 女児
 症状 少し不機嫌
 誤飲時の状況 ヘアピンがなくなっていた。本人はテレビを見ており、母は目を離していた。飲んだかもしれないと来院。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 1時間〜1時間30分未満
 処置及び経過 X線検査でヘアピン像を確認、帰宅

  ◎ 事例4【原因製品:ストラップ関連製品(付属品)】
 患者   1歳1か月 男児
 症状 なし
 誤飲時の状況 携帯電話ストラップの先についていたキーホルダーがとれて飲み込んでしまった。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 30分〜1時間未満
 処置及び経過 X線検査で胃内に確認、帰宅

<担当医のコメント>
 最近、携帯電話のストラップ関連製品を誤飲した報告が増えている。子供が噛んで引っ張ると容易に壊れ、飲み込む場合があるので注意が必要です。また、子供の遊び道具として携帯電話を手渡すことがないよう注意してください。

  ◎ 事例5【原因製品:携帯電話(プラスチック部品)】
 患者   10か月 男児
 症状 なし
 誤飲時の状況 本人が携帯電話を口に入れていた。充電接続部にかぶさっているプラスチック部品(20X4X5mm)を口に入れてしまった。母がとろうとしたが飲み込んでしまった。直後に嘔吐したがプラスチックはなかった。少し気持ち悪そうだったがすぐ元気になり、咳も少しでていたがおさまった。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 30分〜1時間未満
 処置及び経過 X線検査で異常なし、帰宅

  ◎ 事例6【原因製品:台所用漂白剤】
 患者   2歳8か月 男児
 症状 なし
 誤飲時の状況 漂白剤を薄めたもの(原液15〜20ml+200mlの水)を台所のコップにいれておいていたが、水だと思って1口から2口ぐらい飲んでしまった。母親が気づいた時は、背中を向けており、飲み込んだ現場はみていないがオエっというしぐさをしていた。
 来院前の処置 のどに指をつっこんで吐かせようとした。嘔吐はせず、少し血液の混じった痰様のものが咳と一緒に出た。
 受診までの時間 30分未満
 処置及び経過 胃洗浄のち帰宅

<担当医のコメント>
 水で薄めたものであっても、漂白剤、洗剤等を容器に入れて放置することは危険です。特にコップ等日常飲食に使用する容器に入れておくと、幼少児のみならず、年長児でも誤って飲み込んでしまうことがあります。

  ◎ 事例7【原因製品:台所用洗剤】
 患者   15歳9か月 女児
 症状 嘔吐、その他(のどひりひり)
 誤飲時の状況 台所用洗剤の入ったラーメンのスープを1口飲んだ。その後嘔吐。
 来院前の処置 不明。
 受診までの時間 1時間30分〜2時間未満
 処置及び経過 帰宅

  ◎ 事例8【原因製品:除光液】
 患者   1歳1か月 男児
 症状 不機嫌
 誤飲時の状況 父が児の様子を見に行ったところ、除光液の容器を口にもっていっていた。
 来院前の処置 水を飲ませた。
 受診までの時間 30分から1時間未満
 処置及び経過 血糖確認、点滴後、帰宅

  ◎ 事例9【原因製品:香水】
 患者   1歳2か月 男児
 症状 なし
 誤飲時の状況 母が目を離したすきに香水のびんをいじっていた。ふたがはずれており児の口内に香水のにおいがした。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 1時間〜1時間30分未満
 処置及び経過 帰宅

<担当医のコメント>
 香水や芳香剤はエチルアルコールが主成分で、子供の限界量は体重1kg当たり3mlといわれています。子供の手が届く鏡台はしっかり引き出しを閉めることと、子供の前では化粧をしないことを心がけることが必要です。

  ◎ 事例10【原因製品:硬貨】
 患者   3歳1か月 女児
 症状 なし
 誤飲時の状況 拾った100円玉を飲み込んだと本人が言った。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 30分から1時間未満
 処置及び経過 X線検査で胃内に100円玉と思われる陰影あり、帰宅

  ◎ 事例11【原因製品:買い物袋】
 患者   8か月 男児
 症状 チアノーゼ、悪心・嘔吐
 誤飲時の状況 母と一緒に外出中、買い物袋(レジ袋)をベビーカーにぶらさげていたところ、かじってしまい、嘔気出現し、顔色不良になった。
 来院前の処置 逆さにしてたたく。口の中をかきだす。
 受診までの時間 30分未満
 処置及び経過 X線検査で異常なし、帰宅

  ◎ 事例12【原因製品:芳香剤】
 患者   1歳5か月 女児
 症状 なし
 誤飲時の状況 スーパーマーケットのトイレでピンポン玉状の芳香剤を口へ含んだ。すぐはき出した。
 来院前の処置 口をゆすぐ。
 受診までの時間 1時間〜1時間30分未満
 処置及び経過 帰宅

  ◎ 事例13【原因製品:灯油】
 患者   2歳11か月 女児
 症状 なし
 誤飲時の状況 父が寝ている隙に、ベランダの灯油の吸引ポンプをなめていた。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 1時間〜1時間30分未満
 処置及び経過 X線検査及び血液検査で異常なし、点滴、帰宅

  ◎ 事例14【原因製品:ステイプル(ホチキスR)針】
 患者   8歳10か月 男児
 症状 なし
 誤飲時の状況 ふざけてステイプル(ホチキスR)針を伸ばして飲んだ。
 来院前の処置 なし
 受診までの時間 30分〜1時間未満
 処置及び経過 X線検査で胃内に確認、帰宅

  ◎ 事例15【原因製品:不明】
 患者   11か月 女児
 症状 咳、呼吸困難、不機嫌、異常な泣き方
 誤飲時の状況 親が目を離した隙に、床に落ちているものを口にいれたように見えた。突然泣いて咳込み、顔を真っ赤にしていた。逆さにして背中をたたいたが何もでず咳き込んで泣いているだけだった。
 来院前の処置 逆さにして背中をたたいて吐かせようとした。
 受診までの時間 30分〜1時間未満
 処置及び経過 X線検査で胃内に長さ1.5cm程の細い異物を確認、帰宅

(4)全体について
 小児による誤飲事故は相変わらずタバコによるものが多い。タバコの誤飲事故は生後6か月からの1年間に発生時期が集中しており、この1年間にタバコの管理に特段の注意を払うだけでも相当の被害の軽減がはかれるはずである。一方、医薬品の誤飲事故はむしろこれよりも高い年代での誤飲が多い。それ自体が薬理作用を有し、子供が誤飲すれば症状が発現する可能性が高いものなのでその管理には特別の注意を払う必要がある。今年度の入院事例はすべて医薬品によるものであった。食品であってもそのものが気道を詰まらせ、重篤な事故になるものもあるので、のどに入るような大きさ・形をした物品には注意を怠らないように努めることが重要である。また、酒類にも注意が必要である。発生時間帯は夕刻以降の家族の団らんの時間帯に半数近くが集中しているという傾向が続いている。保護者が近くにいても、乳幼児はちょっとした隙に、身の回りのものを分別なく口に入れてしまうので注意が必要である。
 一方、今年度は保育所や幼稚園等、多数の子供が生活している施設で起こった誤飲の報告事例は少数で、このことからも、誤飲は避けられない事故ではなく、誤飲をする可能性があるものを極力子供が手にする可能性のある場所に置かないことが最も有効な対策であることが窺い知れる。乳幼児のいる家庭では、乳幼児の手の届く範囲には極力、乳幼児の口に入るサイズのものは置かないようにしたい。特に、歩き始めた子供は行動範囲が広がることから注意を要する。口に入るサイズはおよそ直径3cmの円に入るものであるとされている。これは、玩具であっても同様である。
 誤飲時の応急処置は、症状の軽減や重篤な症状の発現の防止に役立つので重要な行為であり、応急処置に関して正しい知識を持つことが重要である。
 なお、(財)日本中毒情報センターにより、小児の誤飲事故に関する注意点や応急処置などを記した、啓発パンフレットが作成され、全国の保健センター等に送付されている。


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