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平成16年9月24日発表

担当 厚生労働省大臣官房国際課
海外情報室
 海外情報室長  野地 祐二
 室長補佐  山田 敏充
 電話 5253-1111 内線7315
 夜間直通 3595-3083


「2003〜2004年 海外情勢報告」について


 厚生労働省大臣官房国際課海外情報室は、「2003〜2004年 海外情勢報告」を公表した。
 本年の報告は、「諸外国における少子化の動向と次世代育成支援策」を特集し、ヨーロッパ諸国における育児に対する経済的支援(児童手当等)、子育てと仕事の両立を支援する制度(育児休業、保育サービス等)など、次世代の育成と密接に関係する施策について取りまとめた。
 また、定例報告として、主要諸国の2003年から2004年初頭にかけての労働及び社会保障情勢全般の情報を取りまとめた。


諸外国における少子化の動向と次世代育成支援策
−「2003〜2004年海外情勢報告」のポイント−


 早くから少子化に直面してきた5カ国(フランス、ドイツ、イタリア、オランダ及びノルウェー)について調査を行った。
 合計特殊出生率は、ノルウェーとオランダでは1980年代に入りゆるやかに上昇。フランスは比較的高い水準を維持している。ドイツとイタリアは1.5を割り込む。
 いずれの国も女性の就業意欲が高まってきているが、ドイツとイタリアでは、母親の就業について理想と現実の差が大きい。これらの国では、保育所の整備が遅れており、子育てとの両立を困難にする一因と考えられる。
 フランスでは保育ママが保育サービスの主流となっている。
 ノルウェーでは、パパ・クオータ制による休暇の取得により父親の育児参加が進んでいる。また、乳幼児の保育施設利用が一般的になっている。
 オランダではワークシェアリングの推進もあり、女性のパートタイム労働が積極的に受け入れられ、育児をしながら働くことが容易になっている。
 フランス、ノルウェー及びオランダにおいて仕事と子育ての両立のための環境整備が進んでいる。


1 趣旨
   少子化対策を進める上で、我が国に先んじて少子化に直面してきた国々の経験は参考になると思われる。
 そこで、早くから少子化が進行しているフランス、ドイツ、イタリア、オランダ及びノルウェーを取り上げ、育児に対する経済的支援(児童手当等)、子育てと仕事の両立を支援する制度(育児休業、看護休暇制度、保育サービス等)等、次世代育成に効果的と思われる施策について各国の制度や利用状況等を紹介する。


2 少子化の動向
 (1)出生率の動向
 すべての調査対象国において、合計特殊出生率(女性が一生の間に出産する子どもの数)が1970年代以降減少し始めた。1980年代に入ると、ノルウェーとオランダではゆるやかな増加に転じた一方、ドイツ、イタリアでは緩やかに低下し続け、1.5を割り込んだ。フランスは依然比較的高い水準を維持している。

合計特殊出生率の推移


 (2)少子化の背景
(1) 結婚、出産
 各国共通の特徴として、結婚数の減少や晩婚化、晩産化が見られる。
(2) 女性の就業意欲の向上
 女性の社会進出を示す労働力率(人口に対する就業者及び失業者の割合)の推移を見ると、いずれの国においても増加しており、女性の就業意欲の高まりが見て取れる。
 しかし、実際の就業形態は理想と大きく異なっている。経済協力開発機構の調査結果によれば、出生率の低下傾向が著しいドイツとイタリアでは、6歳以下の子どもを持つカップルの7〜8割程度が母親の就労を理想としているにもかかわらず、現実に就業しているのは4割前後となっており、理想と現実が大きく乖離している。


3 次世代育成支援策
 (1)育児に対する経済的支援
 支給要件等の違いがあることから、単純な比較はできないが、3歳未満の子ども1人に対する1カ月当たりの支給額をみると、ドイツ、フランス及びノルウェーが比較的高い水準にあるといえる。

 (2)子育てと仕事の両立支援
(1) 休暇制度
 いずれの調査対象国も出産休暇を制度化している。出産休暇の最長期間は、ドイツの14週間からイタリアの5カ月までとなっている。ドイツ以外では育児休暇とは別に父親が出産時に休暇を取得する制度も法制化されている。
 育児休暇制度については、フランス、ドイツ、ノルウェーでは子どもが3歳になるまでの取得が可能である上、長期間休暇を取得することができる。一方、イタリアとオランダは子どもが8歳になるまでの間に取得することができるが、休暇の合計期間はそれぞれ合計10カ月、6カ月と短い。また、ノルウェーでは、母親の出産休暇明けに父親だけが取得できるパパ・クオータ制が設けられており、取得率は9割に達している。
(2) 保育サービス
 少子化の進行しているドイツ、イタリアでは集団託児施設の整備が遅れている。
 フランスでは、1990年代以降託児施設の整備に取り組む一方、認定保育ママ制度の拡充に取り組んだ結果、認定保育ママが保育サービスの主流となっている。
 ノルウェーでは集団託児施設の整備が比較的進んでいる。対象乳幼児の66%が保育施設を利用しており、乳幼児の施設利用が一般的になっている。
(3) 多様な働き方を実現するための取り組み
 オランダではワークシェアリングの推進もあり、女性のパートタイム労働が積極的に受け入れられ、結婚、出産後も働く女性が大幅に増加している。全世帯に占める共働き世帯の割合は36%(1990年)から51%(2002年)まで増加している。


4 まとめ
   ドイツでは、経済的支援は比較的手厚く、育児休暇制度も整備されているものの、イタリア同様保育所の整備が遅れている。前述したとおり、両国では母親の就労に関する理想と現実が乖離し、子育てと仕事の両立が困難な状況にあることがうかがわれるが、保育所整備の遅れもその要因の一つと考えられる。こうした国では乳幼児向けの集団託児施設の整備が急務となっている。
 フランスでは、経済的支援制度や休暇制度は整備されている一方、保育所の整備は十分に進んでいるとはいえないが、認定保育ママ制度の拡充に取り組んだ結果、現在は認定保育ママが保育サービスの主流となっている。また、近年は保育所の受入能力の拡充にも努めている。
 ノルウェーでは、次世代育成支援策が全般的に充実している。手当を伴う各種休暇制度が整備され、仕事を持つ母親の育児が容易になっているばかりでなく、父親の育児参加も進んでおり、パパ・クオータ制による休暇の取得率は9割程度に達している。また、集団託児施設の整備も進んでおり、乳幼児の施設利用が一般的になっている。
 オランダでは、育児休暇の取得可能な期間は比較的短いものの、ワークシェアリングの推進もあり、女性のパートタイム労働が積極的に受け入れられ、育児をしながら働くことが容易になっていると考えられる。
 このように、フランス、オランダ及びノルウェーにおいては、仕事と子育ての両立が可能となるような環境整備が進んでいると評価できる。これら3カ国の合計特殊出生率が比較的高い水準にあることは、子どもを出産しても女性が働き続ける環境を整備することの重要性を示唆するものといえよう。


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