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規制改革・民間開放推進会議「中間とりまとめ」
に対する厚生労働省の考え方

(PDF:28KB)



平成16年8月5日
厚生労働省



規制改革・民間開放推進会議「中間とりまとめ」に対する厚生労働省の考え方

平成16年8月5日
厚生労働省
 基本的考え方
 このたび、平成16年8月3日付けで規制改革・民間開放推進会議は、医療・福祉、雇用・労働などの規制改革・民間開放推進に関する「中間とりまとめ」を公表した。
 厚生労働省としては、昨年12月22日に旧総合規制改革会議が「第3次答申」を行った際にも示したとおり、経済社会システムの構造改革が進む中で、サービスの質の向上、利用者の選択の拡大や労働者が安心して持てる能力を十分に発揮できることにつながるような規制改革・民間開放についてはこれまでも積極的に対応してきているところであるが、その一方、厚生労働行政の分野は、サービスや規制の内容が国民の生命・生活や労働者の労働条件などと密接に関わるものであり、また、そのサービスの大半が保険財源や公費で賄われているなど、他の分野とは異なる性格を有していることから、規制改革・民間開放を進めるに当たっては、それぞれの分野ごとに慎重な検討を行うことが必要である、と考えている。
 今回の「中間とりまとめ」のうち、「IV 官業の民間開放の推進」においては、当面重点的に民間開放を進めるべきと考える官業の類型についての提案がなされるとともに、具体的な検討事項例が挙げられている。検討事項例として挙げられている厚生労働省の事務・事業は、国民の生命・生活や労働者の労働条件などと密接に関わり、基本的に他の分野とは異なる性格を有しているものであることから、同「中間とりまとめ」の別表において、それぞれの分野ごとに具体的理由を付して慎重な検討を行うことの必要性を示したところである。
 また、「中間とりまとめ」の「V 主要官製市場の改革の推進」においては、「医療分野」、「介護分野」について規制改革・民間開放推進会議から「現状認識」及び「具体的施策」が示されているが、それらについては、当省の考え方を整理し、別添のとおり、公表することとしたものである。
 厚生労働省としては、今後、これらの考え方を基本に、引き続き、規制改革・民間開放推進会議と幅広く議論を行い、サービスの利用者である国民にとって真に望ましい姿がどうあるべきかを考えてまいりたい。



 規制改革・民間開放推進会議の主張と厚生労働省の考え方
規制改革・民間開放推進会議の主張(要約) 厚生労働省の考え方
V.主要官製市場の改革の推進  
1 医療分野
(1 ) いわゆる「混合診療」(保険診療と保険外診療の併用)の解禁

 保険外診療の内容、料金等に関する適切な情報に基づいて、患者自らが保険診療に加えて当該保険外診療の提供を選択する場合には、「患者本位の医療」を実現する観点から、通常の保険内診療分の保険による費用負担を認める、いわゆる「混合診療」を全面解禁すべきである。
 我が国の医療保険制度においては、国民皆保険の下、「社会保障として必要十分な医療」は保険診療として確保することが原則であり、これまでも、科学的根拠に基づいて安全性、有効性が確立した治療法等について、随時保険導入してきたところである。
 他方、患者ニーズの多様化や医療技術の進歩に対応するため、適切なルールの下に保険診療と保険外診療の併用を可能とする特定療養費制度が設けられている(昭和59年に創設)。
 このような仕組みによらず無制限に保険外診療との組み合わせを認めることは、たとえ特定の医療機関に限ったとしても、不当な患者負担の増大を招くおそれや、有効性、安全性が確保できないおそれがあるため、今後とも特定療養費制度の下で対応を図っていくことが適切であると考える。
 この考え方に基づき、抗がん剤等の適応外使用について、特定療養費制度を活用し、承認前から保険診療と併用できるよう措置したほか、特定療養費制度における高度先進医療について、承認の簡素化及び新技術の導入の迅速化を行ったところであり、さらに、随時簡素化の対象技術を増加させるなど、対応を図っているところである。
(2 ) 「医療法人を通じた株式会社等の医療機関経営の参入
 
(1 ) 現在、株式会社については、医療法人に出資することはできるものの、社員にはなれないとされているが、これに社員としての地位を与え、社員総会における議決権を取得することを容認する。

 厚生労働省が反対の根拠として提示している「株式会社は、医療法人に出資は可能であるが、それに伴っての社員としての社員総会における議決権を取得することや役員として医療法人の経営に参画することはできない」旨の見解(平成3年1月17日指第1号 東京弁護士会会長宛 厚生省健康政策局指導課長回答)には、法的根拠はない。
 営利を目的とする者に対しては、開設許可を与えないことができる旨規定する医療法第7条第5項をはじめとする医療法に規定されている医療の非営利の原則から考えても、株式会社が出資に伴い医療法人の社員として議決権を取得することは認められない。
 御指摘の平成3年1月17日指第1号東京弁護士会会長宛厚生労働省指導課長回答については、医療法の非営利の原則に則って回答されたものであり、当該回答が法的根拠ないという指摘はあたらない。
(2 ) 現在、医療法人は医療法人に出資することはできないとされているが、これを可能とする。

 厚生労働省が反対の論拠として提示している「医療法人の現金は、郵便官署、銀行、信託銀行に預け入れ若しくは信託し、又は国公債若しくは確実な有価証券に換え保管するものとする」旨の見解(「病院又は老人保険施設等を開設する医療法人の運営管理指導要綱の制定について」(平成2年3月1日 各都道府県知事宛 厚生省健康政策局長通知の別添医療法人運営管理指導要綱)は、医療法人の資産管理方法を規定したものであって、出資禁止の根拠と解することは困難である。
 医療法人は医療法第7条第5項の規定により営利性が否定されており、また、医療法第54条において剰余金の配当が禁止されている。これは、医療法人が決算の結果、剰余金を生じたときは当該医療法人の基本財産に繰り入れるか積立金として積み立てることにより、当該医療法人が提供している医療をより充実させることを目的として定められているものであり、当該剰余金を他の医療法人に出資することは、医療法第54条に抵触するものと考えられることから認められない。
(3 ) 現在、医療法人の社員総会における議決権は出資額にかかわらず各社員1個とされているが、出資額に応じた個数とすることを容認する。

 医療法(昭和23年法律第205号)第68条で準用されている民法(明治29年法律第89号)第65条第3項に基づき、医療法人についても、定款により議決権に差を設けることが本来認められている。
 厚生労働省が反対の根拠として提示している「社員は、社員総会において1個の議決権及び選挙権を有する」(「医療法人制度の改正及び都道府県医療審議会について」(昭和61年6月26日 各都道府県知事宛 厚生省健康政策局長通知)には、法的根拠はない。
 医療法第68条が準用している民法第65条第3項は、同条第1項の公益法人における表決権平等の原則を、公益法人の定款において表決権に差を設けることを認めたものである。これについては民法の公益法人の実務として「表決権に差別をした場合には、多数表決権を持つ社員に法人の運営権が移り、法人の性格が公益的なものから有力社員の私益的なものになる危険性がある」(出典:『公益法人の理論と実務』財団法人公益法人協会)としているところであり、当該民法を準用している医療法においてもこれに準拠し、昭和61年6月26日各都道府県知事宛厚生省健康政策局長通知において社団医療法人の定款例として「社員は、社員総会において1個の議決権及び選挙権を有する。」と規定しているところである。
(3 ) 医療分野における価格決定メカニズムの見直し
 
 診療報酬、薬価、医療材料価格は、中央社会保険医療協議会(中医協)で決定されているが、決定の根拠や決定のプロセスなどについて、かねて不透明性が指摘されているところである。公正性、中立性、透明性を確保する観点から、見直しを講ずべきである。
 中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)の在り方については、中医協における議論も含め、今後幅広く本格的に議論が行われる必要があり、現時点において一定の方向性を取りまとめることはできない状況にあるが、当面速やかに取り組むべき改革と幅広く制度の在り方について議論を進めていくべき改革との整理を行いつつ、更に議論を積み重ねていき、合意が得られたものから対応を図っていくことが必要と考えている。
(4 ) 地域医療計画(病床規制)の見直し
 
 「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)では、(1)急性期、慢性期、特殊診療などの病床の機能について、地域の実情・ニーズを適切に踏まえた基準病床数の算定基準を公正かつ厳格に設定した上で、適正な病床数に収斂するように管理が徹底されるように措置する。(2)医療内容の標準化と平均在院日数の短縮化など医療の質の面での医療機関相互の競争を促進することを通じ、適正な医療提供体制の確保を図る観点から、診断群別定額報酬払い制度の導入に向けた検討と併せ、病床規制の在り方を含め医療計画について検討し、措置する(平成16年度検討、平成17年度早期に措置)とされている。
 これについて、情報開示の促進と患者の選択に基づく病院間の競争を促進する観点から、実施時期の前倒しを行うべきである。
 総合規制改革会議が平成14年12月に策定した「規制改革の推進に関する第2次答申」においては、地域医療計画(病床規制)の見直しに関し、「平成17年度中の早期に措置」することとされ、厚生労働省としては、これを受けて閣議決定された規制改革・民間開放推進3か年計画(平成16年3月19日閣議決定)に基づき、様々な関係者を集めた検討会を開催し、鋭意検討している。
2 介護
(1 ) 施設サービスと在宅サービスの一元化
 
 (2) 社会福祉法人への施設整備補助の廃止
 特養の主たる運営主体である社会福祉法人に対しては国・地方公共団体による施設整備補助(費用の4分の3)が行われていることから、上記のような措置を講じてもなお完全に対等とは言えない。そこで、ホテルコスト等を利用者負担とすることを前提に現行の施設整備補助についても廃止すべきである。そうすることにより、競争を通じた選択肢の拡大とサービスの充実が期待される。なお、その際、社会福祉法人の効率的な運営に寄与する規制緩和を併せて検討する必要がある。また、老人保健施設への補助金等についても、同様の観点から廃止すべきである。
 ホテルコストについては「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」等を踏まえて、介護保険制度改革の中で利用者負担の見直しを検討することとしている。

 施設サービス給付費は介護費用全体の53%を占めており、地域の施設整備率は、地域の介護費用、すなわち保険料水準に大きな影響を与える。これは、当該保険者の負担が増えるだけではなく、租税負担や第2号被保険者の保険料という形で他地域にも波及することとなる。

 施設整備費補助には、地域の整備水準を調整する機能があり、その結果、特別養護老人ホームについては、65歳以上人口10万人に対する定員数で最大と最小の都道府県との差異が約1.8倍と、一定の成果を挙げており、保険給付が必要以上に増大することを防いでいる。

 仮にこのような中で施設整備費補助を廃止したとすると、大規模広域型の施設が必要以上に建設され、本来在宅でも生活が可能な程度の要介護者への施設サービスの提供が促進されるおそれがある。これは介護サービスの質の向上、介護保険財政の両面から見て問題が大きい。

 なお、社会福祉施設等施設整備費補助や老人保健施設に対する施設整備補助等現行の補助金については、地方の自主性をより高めるという観点や小規模・多機能型の施設整備の推進や施設入所者の居住環境の向上などの観点から、改革に取り組んでいく必要があると考える。
(参考)
 介護1の図では、介護保険3施設に要する費用について、介護、食事、居住等に要する費用の割合をそれぞれ約67%、19%、14%としている。

 介護1の図では、特定施設の1人当たり給付額を、介護保険3施設の介護に係る給付額であると仮定して試算しているが、特定施設と介護保険3施設では、医師等の配置の有無など人員配置が異なるものであり、介護サービスの内容が違うことから、試算として適切でなく、今後の議論の参考とすべきではない。


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