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コース別雇用管理制度実施状況と指導状況について


 コース別雇用管理制度の内容について

(1) 制度導入の時期
 対象企業のコース別雇用管理制度の導入時期を、均等法及び改正均等法の施行年(それぞれ昭和61年、平成11年)により区分してみると昭和61年〜平成10年の間に導入した企業が54.7%で最も多く、次いで平成11年以降が31.4%、昭和60年以前が9.3%となっている(第1表)。

(2) コースの形態
 企業に設けられているコースを形態別にみると、いわゆる総合職(基幹的業務又は企画立案、対外折衝等総合的な判断を要する業務に従事し、転居を伴う転勤がある)は236社全てに設けられているが、一般職(主に定型的業務に従事し、転居を伴う転勤はない)を設けている企業が88.6%、専門職(特殊な分野の業務において専門的業務に従事する)を設けている企業が23.7%、現業職(技能分野の業務に従事する)を設けている企業が22.5%、中間職(総合職に準ずる業務に従事するが、転居を伴う転勤はない)を設けている企業が19.5%、準総合職(総合職に準ずる業務に従事し、一定地域エリア内のみの転勤がある)を設けている企業が7.2%となっている(第2表)。
 また、各企業のコース形態の組み合わせをみると(1)「総合職+一般職」の組み合わせが44.9%、(2)「総合職+一般職+準総合職、中間職」の組み合わせが8.9%、(3)「総合職+一般職+専門職、現業職」の組み合わせが26.3%、(4)「総合職+一般職+準総合職、中間職、専門職、現業職」の組み合わせが7.6%となっている。
 これを、企業別にみると、(1)「総合職+一般職」の組み合わせは企業規模が大きくなるほどその割合が低くなっており、逆に(2)「総合職+一般職+準総合職、中間職」や(4)「総合職+一般職+準総合職、中間職、専門職、現業職」の組み合わせは企業規模が大きくなるほどその割合が高くなっている(第3表)。
 このように、コース形態やコースの組み合わせは業種や企業規模によって多種、多様となっている。

(3) コースの決定と要件
 コース決定の時期は、「募集・採用時に決定する」企業が92.8%、「入社後に決定する」企業が7.2%であり、募集・採用時にコースの決定を行う企業が圧倒的に多い。「入社後に決定する」とした企業の例をみると、決定は入社後3年以内が過半数であるが、役付昇格時に決定する例もみられた。
 募集・採用時にコースを決定している企業では、「本人にコースを選択させている」ことによりコースを決定している企業が77.2%、「本人の意向を踏まえ会社がコースを決めている」とする企業が12.3%、「会社が第一義的にコースを決めている」とする企業が10.5%となっている。また、入社後にコースを決定する企業では、「本人の意向を踏まえ会社がコースを決めている」企業が58.8%、「本人にコースを選択させている」企業が23.5%、「会社が第一義的にコースを決めている」企業が17.6%となっている(第4表)。
 また、転勤の有無をコース区分の要件としている企業は82.2%で、規模が大きい企業ほど転勤の有無をコース区分の要件としている企業割合が高くなっている(第5表)。

(4) コースの転換
 コース転換制度を「導入している」企業は76.7%で、業種別にみると金融・保険業では92.9%の企業が転換制度を導入している。一方、転換制度を「導入していない」企業が23.3%あるが、このうち「運用で実施している」企業が23.6%、「導入予定がある」企業が16.4%となっている(第6表)。

(5) コース転換制度の導入時期
 コース転換制度を導入している企業のうち、転換制度の導入年が明らかな企業について見ると、「コース別雇用管理制度の導入と同時期」に転換制度を導入した企業が79.8%を占め、「コース別雇用管理制度導入より後」に転換制度を導入した企業が20.2%となっている(第7表)。
 また、転換制度の導入時期をコース別雇用管理の導入年度別に見ると、昭和60年までに制度を導入した企業の66.7%、昭和61〜平成10年に制度を導入した企業の77.5%、平成11年以降に制度を導入した企業の86.4%が制度導入と同時期に転換制度を導入しており、制度を最近時点に導入した企業ほど転換制度を同時期に導入している企業割合が高い(第8表)。

(6) コース間の転換制度
〔総合職と一般職間のコース転換制度〕
 総合職と一般職のコースがあり、かつ転換制度を導入している企業についてみると、「総合職、一般職の双方への転換制度がある」企業が54.4%、「一般職から総合職への転換のみ」企業が28.7%、「総合職から一般職への転換のみ」企業が2.3%となっている。また、転換制度を導入しているものの、他のコース間についてのものであり、「総合職、一般職間の転換制度がない」企業は、14.6%となっている(第9表)。
〔総合職と準総合職、中間職間の転換制度〕
 総合職と準総合職、中間職のコースがあり、かつ転換制度を導入している企業についてみると、「総合職と準総合職、中間職の双方向への転換制度がある」企業が70.2%、「準総合職、中間職から総合職への転換のみ」の企業が15.8%、「総合職から準総合職、中間職への転換のみ」の企業が1.8%となっている。また、転換制度を導入しているものの、他のコース間についてのものであり、「総合職と準総合職、中間職間の転換制度がない」企業は12.3%となっている(第9表−2)。

(7) コース転換時における必要要件
〔一般職から総合職への転換〕
 一般職から総合職への転換制度がある企業において、転換時に必要な要件がある企業は88.8%で、このうち「上司の推薦」が必要な企業が75.6%、「客観的条件」が必要な企業、及び「試験」が必要な企業がいずれも66.9%となっている。
 これら要件の組み合わせをみると、「客観的条件と上司の推薦と試験」を組み合わせた企業が37.8%と最も多く、「上司の推薦のみ」の企業が11.0%、「客観的条件のみ」、「試験のみ」がいずれも3.9%となっている(第10表)。
〔準総合職・中間職から総合職への転換〕
 準総合職・中間職から総合職への転換制度がある企業において、転換時に必要な要件がある企業は84.8%で、このうち「客観的条件」が必要な企業、及び「試験」が必要な企業がいずれも64.1%、「上司の推薦」が必要な企業が61.5%となっている。これら要件の組み合わせをみると、「客観的条件と上司の推薦と試験」を組み合わせた企業が30.8%と最も多く、次に「客観的条件のみ」、「上司の推薦と試験」が20.5%となっている(第10表−2)。

(8) コース転換前後の配慮
 コース転換制度を導入している企業のうち、労働者に対して「転換前に配慮を行っている」企業は35.1%、「転換後に配慮を行っている」企業は36.1%となっている。
 配慮の内容で特に多いのは教育訓練であり、配慮を行っている企業のうち教育訓練を実施している企業は転換前で39.7%、転換後で61.4%となっている(第11表)。
 また、転換前の具体的な配慮の例として「総合職の職務内容を6ヶ月にわたって経験してもらい適性の有無を確認する」、「転換後に配置が予定されている職種に近い業務に一年間従事させ経験を積ませる」、「直ちに転換を行えない場合は、転換保留者として登録する」等の例がみられ、転換後の配慮として「各職場において、コース転換者指導育成計画書を作成し、OJTを実施する」、「総合職から一般職に転換後3年間に限り調整金を支給する」等の例がみられた。

(9) コース別雇用管理制度の見直し
 「これまでに制度の見直しを行った」企業は26.3%、「制度見直しの予定がある」企業は32.6%あるが、「これまでも見直しがなく、今後も予定がない」企業は49.6%となっている(第12表)。
 見直しを行った企業について、コース別雇用管理制度の導入年別にみると、昭和60年までに制度を導入した企業の13.6%、昭和61〜平成10年に導入した企業の28.7%、平成11年以降に導入した企業の27.0%が見直しを行っている(第13表)。
 見直した内容は「職務内容、職務レベルの高低によりコースを分割、又はコースを統合」した企業が29.5%、「制度全体、又は特定コースの廃止」を行った企業が28.8%、「勤務地を限定したコースなど、転勤の有無、範囲によるコース区分の見直し」を行った企業が18.0%であった(第14表)。


 コース別雇用管理制度の運用について

(1) 総合職に占める女性割合
 調査時点において、総合職に占める女性割合は3.0%となっている。女性割合の分布でみると、女性割合が「0%より大きく10%未満」の企業が67.8%と最も多く、次いで「0%」の企業が21.6%となっており、10%未満の企業が89.4%を占めている(第15表)。

(2) 採用者に占める女性割合
〔総合職の状況〕
 平成14年4月、平成15年4月、平成16年4月に総合職をそれぞれ1人以上採用(内定)している企業における総合職採用者に占める女性割合を見ると、平成14年4月9.0%、平成15年4月11.4%、平成16年4月12.0%とわずかながら上昇しているが、なお値は小さい(第16表)。
 また、女性の採用者割合の分布でみると女性割合が0%であった企業割合は平成14年4月は46.7%、平成15年4月は44.5%、平成16年4月は43.9%と減少傾向にある一方、20%以上であったのは、平成14年4月は15.2%、平成15年4月は19.5%、平成16年4月は22.9%と増加傾向にある。
 なお、平成14年4月、平成15年4月、平成16年4月に総合職受験者数に占める採用者(内定者)の割合を男女別に見ると、平成14年4月は男性が6.6%、女性が3.1%、平成15年4月は男性が5.8%、女性が2.6%、平成16年4月は男性が3.1%、女性が0.9%となっており、男女とも採用率が低下しているが、格差は大きい(第18表)。
〔一般職の状況〕
 平成14年4月、平成15年4月、平成16年4月に一般職をそれぞれ1人以上採用(内定)している企業における一般職採用者に占める女性割合をみると、平成14年4月94.0%、平成15年4月95.4%、平成16年4月95.6%となっている。
 また、女性の採用者割合の分布でみると総合職とは逆に女性割合が100%であった企業割合は平成14年4月は81.6%、平成15年4月は77.7%、平成16年4月は83.1%と8割前後となっている(第17表)。

(3) コース転換の実績
 コース転換制度を導入している企業(運用により転換を実施している企業を含む)のうち、これまでに「転換実績がある」企業は75.8%、「転換実績がない」企業は23.2%となっている(第19表)。
 平成13年度から平成15年度の過去3年間をとおして毎年転換実績がある企業は、(1)(一般職→総合職)9.7%、(2)(総合職→一般職)5.8%、(3)(準総合職、中間職→総合職)13.6%、(4)(総合職→準総合職、中間職)19.0%となっている(第20表、第20表−2、第20表−3、第20−4)。
 また、平成15年度における転換実績をみると、平成15年度における転換実績は(1)(一般職→総合職)で26.5%、(2)(総合職→一般職)は17.9%、(3)(準総合職、中間職→総合職)は43.2%、(4)(総合職→準総合職、中間職)は57.1%であった。このうち「男女とも」及び「女性のみ」の転換実績があった企業は、(1)(一般職→総合職)では「男女とも」25.6%、「女性のみ」48.7%、(2)(総合職→一般職)では「男女とも」36.8%、「女性のみ」31.6%、(3)(準総合職、中間職→総合職)では「男女とも」21.1%、「女性のみ」31.6%、(4)(総合職→準総合職、中間職)では「男女とも」及び、「女性のみ」はいずれも25.0%であった(第21表、第21表−2、第21表−3、第21表−4)。

(4) 総合職の採用10年後の最高職位
 平成6年度に男女総合職をそれぞれ1人以上採用し、調査時点において男女とも在籍している企業について、採用者の10年後(調査時点)の最高役職を男女で比較してみると、「男女で同位職」である企業が57.1%で最も多く、次いで「男性の方が上位職」である企業が38.8%となっている。また、男性の方が上位職である企業のうち、職位が女性より「1段階上位」の企業は78.9%、「2段階上位」の企業は21.1%となっている(第22表)。

(5) 総合職の採用後10年間の転勤実績
 平成6年度に総合職の男女をそれぞれ1人以上採用し、調査時点において男女とも在籍している企業のうち、転勤を総合職の要件としている企業は81.6%、このうち採用後10年間に「転勤実績がある」企業は77.5%となっている。転勤実績がある企業のうち、「男性のみに転勤実績がある」企業は61.3%、「男女とも転勤実績がある」企業は38.7%となっている。男女とも転勤実績がある企業について男女の転勤回数を比べると、「男性の方が多い」企業は75.0%、「差がない」企業は16.7%、「女性の方が多い」企業は8.3%となっている。
 なお、転勤を総合職の要件としているのにもかかわらず、10年間「転勤実績がない」企業は10.0%となっている(第23表)。

(6) 総合職女性が在籍している企業割合
 平成6年度に総合職女性の採用があった企業のうち、調査時点でこれら総合職女性が在籍している企業は80.3%となっている。また、在籍している女性のうち、「子供がいる総合職女性がいる」企業は32.7%、「子供のいる総合職女性がいない」企業が59.2%となっている(第24表)。


 行政指導の実施状況について

 対象企業236社中、均等法違反企業は13社(5.5%)、指導件数は24件で、これらについては是正されている。法違反内容としては、コースを男女別に設定している(1.7%)、コースの振り分けを男女別に行っている(1.3%)、総合職は男性のみとする慣行がある(1.3%)、男女別に選考基準や採用基準に差を設けて運用している(0.8%)、等がみられた。
 また、法違反とはいえないものの、「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」に基づき人事制度の適正化や明確化、ポジティブ・アクションを行うように助言を行った企業は219社(92.8%)で、助言件数は848件となっている。
 特に、総合職について女性が事実上満たしにくい全国転勤を要件としているが、その必要性が十分検討されていない(36.9%)、コース等の区分間の転換制度が柔軟に設定されていない(35.6%)、一般職の勤続年数が長期化する中で、一般職の積極的な活用及び処遇の見直しがなされていない(28.4%)こと等に対し、留意事項に基づき人事制度の適正化、明確化について助言を行っている。


【参考】

 前回(平成12年度下半期)実施したコース別雇用管理制度の指導結果との比較について

 平成12年度下半期においてもコース別雇用管理制度導入企業215社を対象に同様の訪問指導を行っているところ、統計上の厳密な比較はできないが、以下の点が特徴として挙げられる。

(1)  コース別雇用管理制度そのものについて多様化が進展していることが伺えるが、転勤をコース区分の要件としている企業が減少し、かつ、転勤を要件としつつ10年間転勤の実績がないとした企業の割合が減少していること。

 前回把握した企業においては、典型的な総合職と一般職のみの形態で実施している企業は50.2%であったところ、今回は44.9%と低下している。その一方、総合職と一般職に加えて、専門職や現業職のある組み合わせや、その他の組み合わせの企業割合がそれぞれ22.8%から26.3%へ、5.6%から12.3%へと増加している。
 また、転勤の有無をコース区分の要件としている企業は前回は94.4%であったのが今回は82.2%と低下しており、その一方、転勤を総合職の要件としているのにかかわらず10年間「転勤実績がない」企業は前回は22.6%であったが今回は10.0%と低下している。

(2)  総合職に占める女性割合は前回に比べ若干上昇しているが、なお総合職の採用者に占める女性割合は上昇傾向にあるとはいえ小さい。その一方、一般職の採用者に占める女性割合はほぼ95%程度と変わらず、一般職採用者の100%が女性という企業の割合は減少傾向にあるものの、なお高い割合であること。

 前回時点においては総合職に占める女性の割合は2.2%であったが、今回は3.0%と若干上昇している。
 その背景としては、総合職の採用者に占める女性割合は、平成10年4月採用は7.9%、平成12年4月採用は10.8%であったところ、平成14年4月採用は9.0%、平成15年4月採用は11.4%、平成16年4月採用予定は12.0%と若干上昇の傾向にあることも考えられる。

 しかし、値としてはなお小さく、女性の採用者割合の分布でみると0%であった企業割合は平成10年4月採用は52.9%、平成12年4月採用は50.7%であったのが平成14年4月採用は46.7%、平成15年4月は44.5%、平成16年4月採用予定は43.9%と減少傾向にあるが、依然として4割の企業で女性の総合職の採用者がゼロとなっていた。
 ただし、その一方、女性の採用者割合が20%以上とする企業割合も増加傾向にはあり、平成10年4月採用は10.7%、平成12年4月採用は16.4%であったのが平成14年4月採用15.2%、平成15年4月採用19.5%、平成16年4月採用予定22.9%となっている。
 また、一般職についての女性の採用割合は総合職とは対照的に女性が多い傾向は続いているが、女性の採用割合が100%であった企業割合は平成10年4月は88.3%、平成12年4月は91.3%であったのが平成14年4月は81.6%、平成15年4月は77.7%、平成16年4月採用予定は83.1%とやや低下傾向にはある。

(3)  コース転換の実績については、コース転換制度を導入している企業のうちこれまで「転換実績がある」企業割合は増加していること。

 前回においては、これまで「転換実績がある」とした企業割合は67.0%であったが、今回は75.8%であった。特に平成15年度においては一般職から総合職への転換実績があったとする企業割合は26.5%、準総合職・中間職から総合職への転換実績があったとする企業割合は43.2%等であり、前回は平成11年度における様々なコース転換の実績としての値が41.9%であったことから見て、実際上の運用が積極化している可能性も伺える。


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