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厚生労働省発表
平成16年7月2日
労働基準局安全衛生部
化学物質対策課
課長  飛鳥 滋
化学物質情報管理官
  永野 和則
電話 03-3502-6756
 03-5253-1111
  内線5510, 5515


左官用モルタル混和材中の石綿の含有について


 労働安全衛生法においては、石綿のうちアモサイト及びクロシドライト若しくはこれらを1%を超えて含有する製剤等については、製造、使用等を禁止しており、他の石綿のうち、建材等の10品目の石綿含有製品については、本年10月1日より製造等を禁止することとしている。
 製造等が禁止されていない石綿及び石綿を1%を超えて含有する製剤等を譲渡し、又は提供する者は、その容器又は包装に石綿である旨、人体に及ぼす作用等についての表示を行うとともに、譲渡し、又は提供する相手方に化学物質等安全データシート(MSDS)の交付を行わなければならない。
 また、労働者にそれらを取り扱わせる等の場合には、事業者は、関係労働者に防じんマスクを使用させる等の特定化学物質等障害予防規則に基づく措置が必要となる。(参考)

 現在、左官工事等において作業性の向上を図るために、蛇紋岩を粉砕したモルタル混和材が用いられることがあるが、(独)産業医学総合研究所等において、市販されているいくつかの蛇紋岩系モルタル混和材について、鉱物の結晶水の脱水温度の違いを利用した微分熱重量法(DTG法)により分析を行ったところ、「無石綿」、「ノンアスベスト」等と表示された商品の中に、相当量の石綿を含有するものがあるとの結果が出た。

 厚生労働省では、これを踏まえ、蛇紋岩系モルタル混和材中の石綿の分析におけるDTG法の妥当性の評価も含め、蛇紋岩系モルタル混和材における石綿成分の分析方法について、直ちに「左官用モルタル混和材中の石綿含有率の測定方法等に関する検討会」(座長:高田 勗(つとむ) 中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター技術顧問)を設置し、専門家による検討を行った。

 検討会の報告書(別添1)の概要は、以下のとおりであった。
(1) 無石綿製品等として販売されているものが、クリソタイル(石綿)を含有していたことについては、現在、石綿の分析等として最も広く行われているX線回折を用いた分析法では、蛇紋石を構成するクリソタイル(石綿)とアンチゴライト及びリザルダイト(いずれも非石綿)がほぼ同じ位置にそれぞれ当該成分の含有を示すピークを持つため、クリソタイルが入っているにもかかわらず、そのピークが十分に強くない場合には、アンチゴライト等のピークに隠れて、その結果、クリソタイルを含まないものと結論づけられる可能性があること。
(2) 一方、DTG法によれば、蛇紋岩中のクリソタイル、アンチゴライト及びリザルダイトを区別して定量分析することが可能であり、したがって、左官用モルタル混和材中の石綿含有率を測定するためには、DTG法によることが有効であること。

 このため、厚生労働省においては、今般、(独)産業医学総合研究所等における分析によりクリソタイルの含有が明らかとなった混和材(別紙)を製造している事業者に対し、
(1) 現に使用されているものも含め、速やかに労働安全衛生法に基づく適切な表示及びMSDSの交付を行うこと、
(2) 当該混和材の製造等に関し、特定化学物質等障害予防規則に基づく措置を徹底すること、
(3) 当該混和材の使用者等に対して必要な説明を行うこと
等について指導を行うこととしている。

 また、石綿が含まれているにもかかわらず、無石綿であるとして取り扱われているものがこのほかにも存在する可能性があることをふまえて、
(1) 都道府県労働局等を通じた「同様な製品の把握及び石綿含有の有無等の特定」「石綿含有の場合における表示等の指導」等、
(2) 関係団体等に対する「把握した製品の通知及び使用時の注意喚起」、
(3) 分析機関に対する「DTG法の周知」等を図っていくこととしている。(別添2
   ○結晶水とは、結晶内の一定の位置に固定されていて、結晶構造の安定化に必要な水。加熱すれば特定の温度で段階的に脱水が起こり、それに伴って結晶構造の変化等を起こす。
   ○微分熱重量法(DTG:Derivative Thermogravimetry)とは、試料を一定の速度で加熱したときの試料重量の変化から、試料の結晶構造の変化等を分析する方法。


別紙

石綿を含有することが明らかになった左官用モルタル混和材一覧
(平成16年6月現在までに把握したもの)


 「モルスター」  モルタル及び補修材用混和材

 「ノンアスエース」  補修用混和材

 「NSハイパウダーII」  非石綿系作業性改良材

 「サンモール」  セメント混和材

 「ハイワーク」  しごき・補修用混和材

 「ニューコテエース」  左官用作業改良材

 「ビルエース」  補修用混和材


参考

●石綿に関する規制の概要

 製造等の禁止(労働安全衛生法第55条関係)
 アモサイト又はクロシドライト及びそれらをその重量の1%を超えて含有する物は、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。ただし、試験研究のため製造し、輸入し、又は使用する場合で、政令で定める要件に該当するときは、この限りでない。

 なお、アモサイト及びクロシドライト以外の石綿を1%を超えて含有する以下の製品については、平成16年10月1日より、製造等が禁止となる。
(1)石綿セメント円筒  (2)押出成形セメント板
(3)住宅屋根用化粧スレート  (4)繊維強化セメント板
(5)窯業系サイディング  (6)クラッチフェーシング
(7)クラッチライニング  (8)ブレーキパッド
(9)ブレーキライニング  (10)接着剤

 表示等(労働安全衛生法第57条関係)
 石綿及び石綿を1%を超えて含有する物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、その容器又は包装に名称、成分及びその含有量、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意並びに表示者の名称及び住所を表示しなければならない。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。

 文書の交付等(労働安全衛生法第57条の2関係)
 石綿及び石綿を1%を超えて含有する物を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付により名称、成分及びその含有量、物理的及び化学的性質、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意、流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置並びに通知者の名称及び住所を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。



●石綿の取扱いに関する規制の概要

 石綿等の湿潤化(特定化学物質等障害予防規則第38条の8関係)
 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる作業に労働者を従事させるときは、石綿及び石綿を1%を超えて含有する製剤等を湿潤な状態のものとしなければならない。ただし、石綿等を湿潤な状態のものとすることが著しく困難なときは、この限りでない。
 石綿等の切断、穿孔、研ま等の作業
 石綿等を塗布し、注入し、又は張り付けた物の破砕、解体等の作業
 粉状の石綿等を容器に入れ、又は容器から取り出す作業
 粉状の石綿等を混合する作業

 保護具の使用(特定化学物質等障害予防規則第38条の9関係)
(1) 事業者は、上記1のいずれかの作業に労働者を従事させるときは、当該労働者に呼吸用保護具を使用させなければならない。
(2) 事業者は、(1)の作業に労働者を従事させるときは、当該労働者に作業衣を使用させなければならない。ただし、当該労働者に保護衣を使用させるときは、この限りでない。
(3) 労働者は、事業者から保護具等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。


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