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第4章 施策の推進に活用できる各種助成制度


 ワークシェアリングの推進にあたっては、雇用の維持・創出や教育訓練等を促進するために用意されている公的な助成金や給付金等を活用することができる。本章では、緊急対応型と多様就業型に分けて、ワークシェアリング等の導入に伴って実施される様々な施策を進める場合に、事業主が活用できる各種の助成制度と、関連して労働者本人が受給可能な給付金等について主なものを紹介する。

1.緊急対応型ワークシェアリング等に活用できる助成制度
 緊急対応型ワークシェアリング等に活用できる制度として4つの制度を取り上げる。雇用調整助成金、ワークシェアリングに係る緊急雇用創出特別奨励金、キャリア形成促進助成金、教育訓練給付である。緊急対応の方法と具体的な施策に着目して、これらの制度を整理したものが下の図表である。
 緊急対応の方法は、(1)所定労働時間を変更せず、操業短縮や一時休業で対応するか、(2)1日あたりの勤務時間短縮、休日の増加(勤務日の減少)、あるいは交替勤務の再編により所定労働時間を短縮するか、の2つに分けている。一方、具体的な施策として、(1)休業・出向、(2)新規雇入、(3)教育訓練関連の3つをあげている。
 緊急対応型ワークシェアリング等の導入に際し、この対応方法と施策の表から制度を特定し、具体的な個々の制度概要を参照する形で活用いただきたい。

緊急対応型ワークシェアリング等に活用できる助成金・給付金等

緊急対応型ワークシェアリング等に活用できる助成金・給付金等

雇用調整助成金
 雇用調整助成金は、失業の予防を目的として、景気の変動などに伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、労使間の協定に基づき、従業員の休業・教育訓練・出向を行った事業主に対して、休業手当、賃金、出向労働者に係る賃金負担額の一部を助成する制度である。(1)生産量などの事業活動を示す指標の最近6ヶ月間の月平均値が前年同期に比べ10%以上減少しており、かつ、(2)雇用保険被保険者数による雇用量を示す指標の最近6ヶ月間の月平均値が前年同期に比べ増加していないという要件を満たしていることが必要である。
 平成17年3月までの特例措置として「特例短時間休業」も新たに設置されている。従来は、事業所の全員が一斉に休業することが必要であったが、この措置では、製造ライン等の勤務シフトを変更し時間休業を行う場合や部署単位、グループ単位で短時間休業を行う場合などに雇用調整助成金を活用することができる。
 助成額は下記の通りである。

雇用調整助成金の助成額
休業 厚生労働大臣が定める式の算定額1×1/2(中小企業は2/3)
教育訓練 (1)厚生労働大臣が定める式の算定額×1/2(中小企業は2/3)
(2)(1)の額+1人1日あたり1,200円
出向 出向元事業主の負担額×1/2(中小企業は2/3)

ワークシェアリングに係る緊急雇用創出特別奨励金
 ワークシェアリングに係る緊急雇用創出特別奨励金は、労使の合意により、労働時間の短縮(所定外労働時間の短縮を含む)とそれに伴う賃金の減額を行ったうえで、ハローワーク等の紹介により求職者を雇い入れた場合、ワークシェアリング導入についての奨励金と新規雇用についての奨励金が支給される制度である。
 支給額は下記の通りである。

ワークシェアリングに係る緊急雇用創出特別奨励金の支給額
制度を導入し、最初の雇い入れに際し
300人以下の事業所 50万円
301人以上の事業所 120万円
雇い入れた労働者1人につき
一般被保険者(短時間労働者以外) 30万円
一般被保険者(短時間労働者) 15万円
6ヶ月以上の有期雇用の一般被保険者 15万円
(短時間労働者以外、中小企業に限る)

キャリア形成促進助成金
 キャリア形成促進助成金は、目標が明確化された職業訓練の実施、職業能力開発休暇の付与、長期教育訓練休暇制度の導入、職業能力評価の実施又はキャリア・コンサルティングの機会の確保を行う事業主に対して助成する制度である。訓練給付金、職業能力開発休暇給付金、長期教育訓練休暇制度導入奨励金、職業能力評価推進給付金、キャリア・コンサルティング推進給付金、地域人材高度化能力開発助成金、中小企業雇用創出等能力開発助成金の7種類がある。
 各制度の内容・助成額については下図の通りである。

キャリア形成促進助成金の内容と助成額
制度の名称 内容・助成額
訓練給付金 1コース10時間以上の職業訓練を受けさせる場合
職業訓練を受けさせる場合の経費の1/4(1/3) 〔1人1コース5万円を限度〕
150日を限度に、職業訓練期間中のその雇用する労働者の賃金の1/4(1/3)
職業能力開発休暇給付金 職業訓練、職業能力評価、キャリア・コンサルティングのための休暇を付与する場合
職業能力開発休暇期間中の教育訓練の受講及び職業能力評価の受検に要した費用の1/4(1/3)
原則として150日を限度に、職業能力開発休暇期間中のその雇用する労働者の賃金の1/4(1/3)
長期教育訓練休暇制度導入奨励金 就業規則等で、連続1ヶ月以上の長期教育訓練休暇制度または5年以下の期間に1回以上の休暇(連続2週間以上)を定めた場合
連続1ヶ月以上の休暇制度を導入した場合30万円(最初の1人のみ)
5年以下の期間に1回以上の休暇(連続2週間以上)を与える制度を導入した場合15万円(最初の1人のみ)
20人を限度として、休暇取得者1人につき5万円
職業能力評価推進給付金 一定の職業能力評価を受けさせる場合
職業能力評価の受検に要する経費(受検料等)の3/4
職業能力評価期間中のその雇用する労働者の賃金の3/4
キャリア・コンサルティング推進給付金 一定のキャリア・コンサルティングを受けさせる場合
25万円を限度として、専門機関等へのキャリア・コンサルティングに係る年間委託費用の2分の1に相当する額(1回のみ)
地域人材高度化能力開発助成金 次の(1)又は(2)のいずれかに該当する事業主であって、計画に基づき、その従業員に職業訓練を受けさせ又は職業能力開発休暇を付与する場合
職業訓練に要した費用及び職業能力開発休暇中の教育訓練について事業主が負担した費用の1/3(中小企業1/2)
150日を限度に職業訓練期間中及び職業能力開発休暇期間中に支払った賃金の1/3(中小企業1/2)
(1)地域雇用開発促進法に定める「能力開発就職促進地域(*注1)」内に所在する事業所の事業主であって、当該地域内の求職者を雇い入れた事業主。
(2)地域雇用開発促進法に定める「高度技能活用雇用安定地域(*注2)」内に所在し、人材高度化支援計画の認定を受けた事業主団体を構成する事業主。
中小企業雇用創出等能力開発助成金 中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律に基づく改善計画(*)の認定を受けた認定組合の構成中小企業者又は認定中小企業者であって、計画に基づき、その従業員に職業訓練を受けさせ又は職業能力開発休暇を付与する場合
職業訓練に要した費用及び職業能力開発休暇中の教育訓練について事業主が負担した費用の1/2
150日を限度に職業訓練期間中及び職業能力開発休暇期間中に支払った賃金の1/2
(*) 職業に必要な高度な技能及びこれに関する知識を有する者の確保を図るため必要となる職業訓練に関する事項又は新分野進出等に伴い必要となる職業訓練に関する事項を含む計画であって都道府県知事の認定を受けるもの。
*(注1)  賃金、労働時間、安全及び衛生その他の労働条件、就業環境に照らして適当である職業の求人が相当数であり、当該職業に就くことを希望する求職者も相当数いるのにもかかわらず、当該職業に適合する能力を有する者が少ないため求職者の就職が困難な地域として、都道府県知事が「地域能力開発就職促進計画」を作成した地域であって、当該計画が厚生労働大臣の同意を得ている地域
*(注2)  高度技能労働者を雇用する事業所が集積している地域であって、その地域内に所在する事業所に関し産業構造又は国際経済環境の変化その他の経済上の理由により製品又は役務の供給の減少を余儀なくされ、これに伴い雇用に関する状況が悪化しており、又は悪化するおそれがあると認められる地域として、都道府県知事が「地域高度技能活用雇用安定計画」を作成した地域であって、当該計画が厚生労働大臣の同意を得ている地域

教育訓練給付金
 教育訓練給付金は、働く人の主体的な能力開発の取組みを支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする給付制度である。一定の条件2を満たす雇用保険の一般被保険者(在職者)または一般被保険者であった人(離職者)が、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了した場合、本人が教育訓練施設に支払った教育訓練経費(入学料・受講料等)の一定割合に相当する額を本人に支給する制度である。
 支給額は下記の通りである。

教育訓練給付金の支給額
雇用保険の被保険者期間が5年以上教育訓練経費の40%(上限20万円)
雇用保険の被保険者期間が3年以上教育訓練経費の20%(上限10万円)


2.多様就業型ワークシェアリングに活用できる助成制度
 多様就業型ワークシェアリングに活用できる制度としては、助成金、給付金に加え在職老齢年金も含めた8種類の制度を取り上げる。このうち、キャリア形成促進助成金と教育訓練給付金については、前項で紹介している。
 ここでは、多様な働き方を在籍している従業員を対象に導入するのか、あるいは多様な働き方を用意して新たに従業員を雇入れるか、つまり、(1)雇用維持・確保と(2)新規雇入に分ける。多様な働き方の導入に関連する施策テーマとしては、(1)高齢者雇用、(2)子育て支援、(3)教育訓練関連、(4)トライアル雇用、(5)その他に整理している。こうして9の制度を分類したのが、次の図表である。

多様就業型ワークシェアリングに活用できる助成金・給付金等

多様就業型ワークシェアリングに活用できる助成金・給付金等

 多様就業型の施策展開にあたっては、施策の狙いや種類といったテーマから関連する制度を探し出し、後述の概要紹介を参照していただきたい。

継続雇用定着促進助成金
 継続雇用定着促進助成金は、継続雇用の推進・定着を図ることを目的として、就業規則等により61歳以上の定年年齢の引上げや継続雇用制度を設けた事業主、または新たに高齢者を雇用する高年齢者事業所を設置した事業主に対しての助成制度である。
 継続雇用制度の導入・改善を行った場合(以下「第I種第I号」)、高年齢者事業所を設立し継続雇用制度を設けた場合(以下「第I種第II号」)によって助成額が異なる。
 また、第I種受給事業主のうち高年齢者の雇用割合が15%を超える場合にも助成措置がある(以下「第II種」)。
 さらに、第I種受給事業主のうち、就業規則等により、被保険者が60歳に達した日の希望する日以降において、希望する日前の所定労働時間に比べ短い労働時間を希望することができる制度と65歳以上の定年の制度を同時に設け、対象となる被保険者に適用した場合(以下「第I種加算措置」)、第II種の対象となる高年齢者のうち第I種加算措置の対象となる者がいる場合(以下「第II種加算措置」に加算措置がある。

継続雇用定着促進助成金の助成額(第I種第I号)
(万円)
企業規模 61歳〜64歳
定年延長等
65歳以上
定年延長等
定年延長等以外の
継続雇用制度
1人〜9人 35×1〜4年 45×1〜5年 30×1〜5年
10人〜99人 75×1〜4年 90×1〜5年 60×1〜5年
100人〜299人 150×1〜4年 180×1〜5年 120×1〜5年
300人〜499人 185×1〜4年 220×1〜5年 150×1〜5年
500人以上 250×1〜4年 300×1〜5年 200×1〜5年


継続雇用定着促進助成金の助成額(第I種第II号)
(万円)
高齢者雇用人数 61歳〜64歳
定年延長等
65歳以上
定年延長等
定年延長等以外の
継続雇用制度
3人〜24人 75×1〜4年 90× 5年 60×1〜5年
25人〜74人 150×1〜4年 180× 5年 120×1〜5年
75人〜124人 185×1〜4年 220× 5年 150×1〜5年
125人以上 250×1〜4年 300× 5年 200×1〜5年


継続雇用定着促進助成金の助成額(第I種加算措置)
(万円)
第I種第I号 第I種第II号
企業規模 金額 高年齢者雇用人数 金額
1人〜9人 10    
10人〜99人 30 3人〜24人 30
100人〜299人 60 25人〜74人 60
300人〜499人 80 75人〜124人 80
500人以上 100 125人以上 100
 第I種加算措置については、1回に限り支給。


継続雇用定着促進助成金の助成額(第II種)
大企業 1人あたり月額1.5円(0.75万円)×1〜5年(第I種受給期間に応じて)
中小企業 1人あたり月額2万円(1万円)×1〜5年(第I種受給期間に応じて)
 ( )内は雇用保険の短時間労働被保険者
 第II種加算措置については、対象となる短時間労働被保険者1人あたり月額4千5百円(中小企業5千円)が最大5年間加算される。

特定求職者雇用開発助成金
 特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者、障害者などの就職が特に困難な人について、ハローワーク又は一定の要件を満たす有料・無料職業紹介事業者からの紹介により雇い入れた事業主に対して、就職困難者の賃金の一部を助成する制度である。
 助成額は、雇い入れ後6ヶ月間に支払った賃金に相当する額として厚生労働大臣が定める方法により算定した額について、原則としてその1/4(中小企業は1/3)を1年間受給できる。

高年齢雇用継続給付
 高年齢雇用継続給付は、65歳までの雇用継続を援助・促進することを目的にしている。給付金には、基本手当(失業したときに支払われる雇用保険の給付金)を受給しないで引き続き雇用されている人を対象とする「高年齢雇用継続基本給付金」と、基本手当を受給し、再就職した時点での支給残日数が100日以上の人を対象とする「高年齢再就職給付金」の2種類がある。高年齢再就職給付金は、基本手当の支給残日数が100日以上200日未満であれば1年間、200日以上であれば2年間支給される。
 支給額は下記の通りである。

高年齢雇用継続給付の支給額(平成15年5月1日以降60歳到達者に適用)
各月に支払われる賃金額と60歳時点での賃金額との割合 支給額
61%未満 各月の賃金額の15%相当額
61%以上75%未満 −183/280×各月の賃金額+137.25/280×60歳時点の賃金月額
各月に支払われた賃金額と高年齢雇用継続給付の合計額が348,177円を超える場合 348,177円を超えた額を減じて支給

高年齢雇用継続給付の支給額(平成15年5月1日以前に給付制度の対象者になっていた人に適用)
各月に支払われる賃金額と60歳時点での賃金額との割合 支給額
64%未満 各月の賃金額の25%相当額
64%以上85%未満 −16/21×各月の賃金額+13.6/21×60歳時点の賃金月額
各月に支払われた賃金額と高年齢雇用継続給付の合計額が385,635円を超える場合 385,635円を超えた額を減じて支給

在職老齢年金制度
 60歳以上70歳未満の人で、老齢厚生年金を受給している人が就労している場合(被保険者である場合)には、賃金に応じて厚生年金の全部または一部が支給停止される。
 60歳から64歳で給与収入がある人には、年金を一律2割支給停止し、支給停止後の年金額と賃金(月給+年間賞与÷12)の合計が28万円を超えると、賃金の増加2に対して年金額を1支給停止する。さらに、賃金が48万円を超える場合には賃金が増加した分だけ年金を停止する。
 65歳から69歳で給与収入がある人には、一律2割の支給停止はなく、年金と賃金の合計額が月額48万円に達するまでは満額の厚生年金を支給するが、これを超えると賃金の増加2に対して年金額を1支給停止する。

高年齢雇用継続給付と在職老齢年金の併給調整
60歳到達時の賃金月額 高年齢雇用継続給付 在職老齢年金の給付停止額
61%未満 賃金月額×15% 標準報酬月額×6%
61%以上75%未満 一部カット(−183/280×各月の賃金額+137.25/280×60歳時点の賃金月額) 標準報酬月額×厚生労働省の定める割合
75%以上 支給されない 高年齢雇用継続給付に関する給付停止はない

育児両立支援奨励金
 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が利用できる勤務時間短縮等の制度を、新たに労働契約・就業規則を規定し、3歳以上小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が利用した場合、事業主に対し30万円(中小企業は40万円)を支給する制度である。

試行雇用奨励金
 試行雇用奨励金は、早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的として、職業経験、技能、知識等から就職が困難な特定の求職者層の人を一定期間試行(トライアル)雇用することにより、その適性や業務遂行可能性を見極め、求職者及び求人者の相互理解を促進すること等を通じて、試行雇用後の常用雇用への移行を図る事業主に奨励金を支給する制度である。
 試行雇用した場合、対象者1人につき月額5万円を3ヶ月を上限に支給する。

各制度の参照先
制度名 参照先
教育訓練給付金 https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/anteikyoku/kyouiku/index.htm
在職老齢年金 http://www.sia.go.jp/outline/nenkin/qa/qa0202.htm#sanko1
育児両立支援奨励金 http://www.jiwe.or.jp/gyomu/support/assist1-4.html
本章は厚生労働省のウェブサイト等を参考に作成した


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1  前年度の確定保険料算定の基礎となった賃金総額から6ヶ月の平均額を算出し、基準賃金額にあてはめたもの
2  同一の事業主に引き続いて雇用保険の被保険者として雇用されている期間が3年以上の者等


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