戻る

第1章  世代間の働き方の不均衡の是正とライフステージに応じた多様な働き方の実現を目指すワークシェアリングの推進について


 働き方の現状と課題について
 最近の労働市場の状況をみると、完全失業率については、若年層と高齢層で高く、30歳代から40歳代は、相対的に低い。また、労働時間については、企業間競争が激化する中で、30歳代を中心とする世代で長時間労働者の割合が多く、逆に、若年層と高齢層では相対的に少ない。このように、労働市場における働き方を見ると、世代間の相違が目立っている。
 このような状況は、30歳代から40歳代の世代について、長時間労働やストレスによる心身の健康上の問題に加え、自己投資の機会や創造力を養うゆとりを奪うだけでなく、若年層の仕事を通じた実践能力の蓄積を図る機会や、豊富な経験と能力の蓄積のある中高年層の能力発揮の機会を奪う等、中長期的にみると、各世代の働く者の能力開発やキャリア形成にとって、大きな問題が生じている。
 また、企業や産業界にとっても、グローバル化や技術革新が進み、企業間競争が激化する中で、事業の高度化・高付加価値化、事業転換、新分野進出等を図っていくためには、各世代の従業員がそれぞれ、能力を高め、その能力を積極的に発揮することが不可欠であり、上記のような労働市場における働き方の現状は、企業や産業界の発展にとっても大きな支障となりかねない。

 世代間の働き方の不均衡の是正とライフステージに応じた多様な働き方の実現について
 平均寿命及び健康寿命が伸長し、職業生涯が長くなる一方で、グローバル化や技術革新の急激な進展により、今後とも、企業のあり方や職場環境は大きく変容し、働く者に求められる能力も変化し続けることが予想される。
 このような状況の中で、長い職業生涯にわたり、雇用の安定と職業生活の充実を図っていくためには、職業生涯を通じて、円滑なキャリア形成が図られるよう、働き方を選択できる仕組みを整備していくことが、一層重要となると考えられる。
 しかるに、このような働き方の現状は、現在の各世代について、能力の開発やその発揮が十分にできないだけではなく、一人一人の長い職業生涯を通じた持続可能な働き方という意味において大きな問題を抱えており、今後、ライフステージに応じた働き方の選択を通じ、円滑なキャリア形成ができる仕組みを早急に実現していくことが求められる。
 具体的には、各々のライフステージに応じた働き方として、例えば次のように考えられることに留意する必要がある。
 第一に、若年期は、試行錯誤を経つつも、職業に必要な基本的実践能力を、習得すべき時期であり、基礎的な訓練のほか、実践的能力を習得するための職務に従事する機会やOJT、日本版デュアルシステム等を通じた能力開発と実践の機会等を設けていくことが重要である。
 第二に、壮年期は、能力の充実とその発揮を通じて組織や社会に貢献する時期であるが、同時に、急激な技術革新への対応や創造性を養うゆとりも不可欠であり、能力開発や自己啓発の時間を設けることが持続可能な働き方という点で重要である。
 また、壮年期は、子供の養育や、親の介護の時期でもあり、仕事と出産、育児、介護との両立を図る短時間の働き方や、休業取得後の円滑な復職や中途からの就業を容易にする働き方を整備すること等により、円滑なキャリア形成を図れるよう配慮する必要がある。
 第三に、高齢期は、個々の労働者の意欲、体力等個人差が拡大し、その雇用・就業ニーズも雇用・就業形態、労働時間等において多様化していく時期であり、このような多様なニーズに対応した働き方を可能とする仕組みが重要である。特に、継続雇用を図る中で、意欲、体力等に応じた働き方や地域の社会貢献活動との折り合いをつけた働き方等の様々な工夫が求められる。

 世代間の働き方の不均衡の是正とライフステージに応じた多様な働き方の実現という観点に立ったワークシェアリングの推進について
 ワークシェアリングについては、現在、「多様就業型ワークシェアリング」の推進を中心に取り組んでいるところであるが、今後、その推進に当たっては、世代間の働き方の不均衡の是正と働く者一人一人のライフステージに応じた働き方の選択を可能とすることを重点として取組んでいく必要がある。
 具体的には、(1)恒常的長時間労働の是正等の労働時間短縮、(2)若年者の雇用の促進、(3)高年齢者の継続雇用等の促進などの対策を中心に進めていくことが基本であり、こうした対策を着実に実施することが世代間の働き方の不均衡を是正し、社会全体としてのワークシェアリングを進めることにつながるものである。
 特に、今後、(1)から(3)までの対策については、次のような点に留意する必要がある。 第一に、労働者の健康確保や仕事と生活の調和を図る観点から、恒常的長時間労働の是正や更なる労働時間の短縮を進めることが重要である。
 さらに、こうした観点に加え、(1)教育訓練や自己啓発等の時間を確保し、労働者の能力を高めることにより、市場の変化への適応や新たな事業展開を進めることや、(2)育児・介護中の短時間勤務制度の導入等の仕事と育児・介護との両立しやすい雇用環境の整備を図ることが、人材の育成・確保に資すること等の重要性について、理解を求めつつ進めることが有効である。
 第二に、若年者の雇用の促進に当たっては、(1)適性、能力等に応じて、試行雇用から始めて常用雇用への移行及び職場定着を目指す「若年者トライアル雇用」を積極的に活用するほか、(2)職業に必要な基本的実践能力を取得させるため、企業で就労しながら教育訓練を行うことにより、一人前の職業人を育成する「日本版デュアルシステム」を活用する等、即本格雇用でなくとも、育成しながら戦力にしていくこと等について理解を得ながら進めることが求められる。
 第三に、高年齢者の継続雇用等の促進等に当たっては、短時間勤務や隔日勤務等の導入等、個人の意欲や体力・能力等に応じた多様な働き方を可能とする仕組みを整備することが重要であることから、事業主の意向や関心に応じ、これらに係る相談・援助等の支援を行うことが必要である。
 また、これらの取組に際しては、各種助成金制度を活用するほか、労働時間短縮支援センター((社)全国労働基準関係団体連合会)都道府県支部を通じ診断・指導アドバイザー(労働時間制度改善支援事業)、都道府県高年齢者雇用開発協会を通じて高年齢者雇用アドバイザー、21世紀職業財団を通じてパートタイム雇用管理アドバイザー等の派遣又は相談援助対応等を活用することが効果的である。


トップへ
戻る