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厚生労働省発表
平成16年5月19日
担当 大臣官房地方課
 労働紛争処理業務室長 代田 雅彦
 室長補佐 二階堂 善滋
 電話 03-5253-1111 (内線7737)
 夜間直通 03-3502-6679

《 平成15年度個別労働紛争解決制度施行状況 》


個別労働紛争解決制度の利用進む
・民事上の個別労働紛争相談件数  14万件
・あっせん申請受理件数  5千件


《 概要 》
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律施行状況 〜平成15年度〜

 1.総合労働相談件数 734,257件(17.4%増*)
 2.民事上の個別労働紛争相談件数 140,822件(36.5%増*)
 3.助言・指導申出受付件数 4,377件(87.7%増*)
 4.あっせん申請受理件数 5,352件(76.3%増*)
 【* 増加率は、平成14年度実績と比較したもの。】

 個別労働紛争解決制度は、平成13年10月の施行から2年半を経過したところであるが、人事労務管理の個別化等の雇用形態の変化、厳しい経済・雇用情勢等を反映し、全国約 300ヵ所の総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働紛争に係る相談件数は14万件を超えている(総合労働相談件数は73万件超)。また、助言・指導申出受付件数は4千件、あっせん申請受理件数は 5千件を超えるなど、制度の利用が進んでいる。

 【 参考 】
  平成15年労働関係民事通常訴訟事件の新受件数2,433件(全国地方裁判所)

『個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(別添56)』に基づく、個別労働紛争解決制度の平成15年度の施行状況は以下のとおりである(概要は別添3、都道府県労働局別一覧は別添4)。


◆相談受付状況
 各都道府県労働局、主要労働基準監督署内、駅近隣の建物などにおいて、労働に関す るあらゆる相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナー(約300ヵ所)を開設しているところであるが、平成15年度1年間に寄せられた相談は73万4,257件であった。
 このうち、労働関係法上の違反を伴わない、解雇、労働条件の引下げ等のいわゆる民事上の個別労働紛争に関するものが14万822件である。年度ごとの推移をみると、確実に件数が増えている。(第1図)

第1図 相談件数の推移

(注)平成13年度の件数は、下半期分(H13.10.1〜H14.3.31)である。

 また、民事上の個別労働紛争にかかる相談内容の内訳は、解雇に関するものが29.8%と最も多く、次いで労働条件の引下げが15.8%、いじめ・嫌がらせ7.4%と続いている(第2図)。

第2図 民事上の個別労働紛争相談の内訳


◇都道府県労働局長による助言・指導及び紛争調整委員会によるあっせん
 平成15年度の当該制度に係る助言・指導申出受付件数は4,377件で、平成14年度比87.7%の増加となっている。あっせん申請受理件数は5,352件で、同じく76.3%の増加となっている。(第3図)

第3図 助言・指導申出受付件数及びあっせん申請受理件数
(注)平成13年度の件数は、下半期分(H13.10.1〜H14.3.31)である。


◆紛争調整委員会によるあっせん
 あっせん申請の主な内容は、解雇に関するものが45.1%と最も多く、労働条件の引下げが10.3%、いじめ・嫌がらせが6.7%と続いている(第4図)。
 なお、あっせんの実施事例は、別添1のとおりである。

第4図 あっせん申請内容の内訳

 平成15年度1年間に申請を受理した事案の都道府県労働局における処理状況をみると、手続きを終了したものは5,100件であり、このうち、合意が成立したものは2,154件(42.2%)、自主的解決等により申請が取り下げられたものは467件(9.2%)、紛争当時者の一方が手続きに参加しない等の理由により、あっせんを打ち切ったものは2,439件(47.8%)となっている。処理に要した期間は、1ヶ月以内が64.2%、1ヶ月を超え2ヶ月以内が28.1%となっている。
 申請人は、労働者が5,234件(97.8%)と大半を占めるが、事業主からの申請も101件(1.9%)となっており、労使双方からの申請も17件(0.3%)あった。労働者の就労状況は、正社員が65.1%と最も多いが、パート・アルバイトが17.0%、派遣労働者・期間契約社員も12.3%を占めている。事業所の規模は、10〜49人が33.5%と最も多く、次いで10人未満が21.0%、50〜99人が10.1%となっている。また、労働組合のない事業所の労働者が66.0%である。

第5図 紛争調整委員会委員の内訳(平成16年4月1日現在 300人)

【 紛争調整委員会とは 】
 弁護士、大学教授等の労働問題の専門家である学識経験者により組織された委員会であり、都道府県労働局ごとに設置されている。この紛争調整委員会の委員のうちから指名されるあっせん委員が、紛争解決に向けてあっせんを実施するものである。


◇都道府県労働局長による助言・指導
 助言・指導の申出の主な内容は、解雇に関するものが35.8%と最も多く、労働条件の引下げが12.8%、いじめ・嫌がらせ6.5%と続いている(第6図)。

第6図 助言・指導申出内容の内訳

 平成15年度1年間に申出を受け付けた事案について都道府県労働局における処理状況をみると、平成16年3月までに手続きを終了したものは4,339件であり、このうち助言・指導を実施した件数は3,954件(91.1%)、申出が取り下げられたものは181件(4.2%)、処理を打ち切ったものは158件(3.6%)であった。処理に要した期間は、1ヶ月以内が90.1%となっている。
 申出人は、労働者が97.2%とほぼ大半を占めるが、事業主からの申出も122件(2.8%)あった。就労状況は、正社員が63.4%と最も多いが、パート・アルバイトが19.1%、派遣労働者・期間契約社員も11.4%を占めている。事業所の規模は、10〜49人が35.0%と最も多く、次いで10人未満23.2%、100〜299人が10.7%となっている。また、労働組合のない事業所の労働者が71.4%である。
 なお、助言・指導の実施事例は、別添2のとおりである。


別添1
あっせんの例

○整理解雇に係るあっせんの事例
事案の概要  申請人は、会社から、事業縮小を理由として整理解雇の通告を受けた。
 申請人は、事業縮小に伴う人員削減については仕方がないと思うが、突然の解雇で生活設計に大きな影響があり、整理解雇対象者の人選についても納得がいかず、賃金○ヶ月相当額の補償金の支払いを求めてあっせん申請を行った。

 あっせんの結果、○○万円の解決金を支払うことで合意が成立したもの。
あっせんのポイント  会社は、和解金による解決に理解を示し、一方、申請人も和解金額に譲歩を示し、双方の合意が成立した。

○いじめ・嫌がらせをめぐるあっせんの事例
事案の概要  申請人は、所長から「仕事が向いていないから辞めろ」と言われたり、他の社員の前で体重を測定され「デブ」と言われるなど侮辱されたほか、雑巾で顔をはたかれるなどの暴力を再三にわたって受けたことから、会社を休業するに至ったため、申請人が、会社に対し精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料等の支払いを求め、あっせん申請を行ったもの。

 あっせんの結果、○○万円の解決金を支払うことで合意が成立したもの。
あっせんのポイント  紛争当事者双方の主張が大きく隔たっていたが、あっせん委員の調整により、会社は、解決金の支払いによる解決に理解を示し、解決金の額についても合意が成立した。


別添2
助言・指導の例

○懲戒解雇に係る助言・指導の事例
事案の概要  申出人は、鋼鉄製品の製造工場の製造部門において勤務していたが、工場の規模縮小に伴い、従事していた生産ラインがなくなったため、配置転換により同工場の事務職に就くこととなったが、不慣れな業務にストレスを感じ、同僚とトラブルを起こし、これが原因で解雇処分を受けた。
 申出人は、自分にも非があるものの、解雇は重すぎると処分の撤回を求めて、労働局長の助言・指導を求めたもの。

 労働局長の助言・指導を踏まえ、申出人と会社側とで話し合った結果、トラブルのあった会社で勤務するよりは、同業他社で勤務したいとの申出人の意向もあったため、申出人は関連企業の生産部門で勤務することとなった。
助言・指導の内容  懲戒解雇処分について、処分の対象となった同僚とのトラブルが、就業規則の懲戒事由のどれに該当するのか、どの懲戒処分を適用するのか等について、十分に調査・検討を行ったうえで、慎重に判断すること。

○労働条件の不利益変更に係る助言・指導の事例
事案の概要  申出人は、ホテルにおいてパートタイムで客室清掃業務に勤務する者であるが、被申出人から一方的に勤務日数を週5日から週3日に減らされ、賃金が減少することとなったため、減少分の賃金の補償と、従来どおりの週5日の労働日数に戻してほしいとして、労働局長の助言・指導を求めたもの。

 労働局長の助言・指導を踏まえ、申出人と会社側とで話し合った結果、減少分の賃金○万円を補償した上で、週5日の労働日数の調理業務に勤務することで合意した。
助言・指導の内容  労働者にとって、不利益な変更内容と判断される労働条件の変更については、基本的には労使の合意が必要となることから、当事者間でよく話し合うこと。


別添3

個別労働紛争解決制度の運用状況について
(平成15年4月1日〜平成16年3月31日)

1総合労働相談コーナーに寄せられた相談  734,257件
   相談者の種類
 労働者 460,446件 事業主 205,631件 その他 68,180件
2民事上の個別労働紛争に係る相談の件数  140,822件
  (1)相談者の種類
 労働者 115,160件 事業主 16,645件 その他 9,017件
(2)紛争の内容(※内訳が複数にまたがる事案もあるため、計が158,378件となる。)
 普通解雇 34,910件  整理解雇 7,783件  懲戒解雇 4,484件
 労働条件の引下げ 25,070件  退職勧奨 10,744件 出向・配置転換 5,451件
 その他の労働条件 29,460件 セクシュアルハラスメント 2,948件 女性労働問題 1,722件
 募集・採用 2,296件  雇用管理等 1,958件 いじめ・嫌がらせ 11,697件
  その他 19,855件
3 都道府県労働局長による助言・指導の件数
(1) 助言・指導の申出の受付を行った件数   4,377件
   紛争の内容(※内訳が複数にまたがる事案もあるため、計が4,491件となる。)
  普通解雇 1,215件  整理解雇 273件   懲戒解雇 118件
  労働条件の引下げ 577件  退職勧奨 241件 出向・配置転換 182件
  その他の労働条件 850件 セクシュアルハラスメント 34件 女性労働問題 3件
  募集・採用 55件  雇用管理等 58件 いじめ・嫌がらせ 293件
  その他 592件
(2) 助言・指導の手続を終了した件数  4,339件
   終了の区分
  助言を実施 3,920件   指導を実施 34件
  取下げ 181件    打切り  158件  その他  46件
4 紛争調整委員会によるあっせんの件数
(1) あっせんの申請の受理を行った件数 5,352件
   紛争の内容(※内訳が複数にまたがる事案もあるため、計が5,480件となる。)
  普通解雇 1,867件  整理解雇 454件  懲戒解雇 150件
  労働条件の引下げ 566件  退職勧奨 317件  出向・配置転換 173件
  その他の労働条件 924件  セクシュアルハラスメント 153件 女性労働問題  5件
  雇用管理等 38件 いじめ・嫌がらせ 365件   その他  468件
(2) あっせんの手続を終了した件数    5,100件
   終了の区分
  当事者間の合意の成立  2,154件  申請の取下げ 467件
  打切り 2,439件   その他 40件


別添4

個別労働紛争解決制度の運用状況(平成15年4月〜平成16年3月分)

表図


別添5
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の概要

 趣旨
 企業組織の再編や人事労務管理の個別化等に伴い、労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(以下「個別労働関係紛争」という。)が増加していることにかんがみ、これらの紛争の実情に即した迅速かつ適正な解決を図るため、都道府県労働局長の助言・指導制度、紛争調整委員会のあっせん制度の創設等により総合的な個別労働紛争解決システムの整備を図る。

 概要
(1) 紛争の自主的解決
 個別労働関係紛争が生じたときは、紛争の当事者は、自主的な解決を図るように努めなければならないものとする。
(2) 都道府県労働局長による情報提供、相談等
 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争の未然防止及び自主的な解決の促進のため、労働者又は事業主に対し、情報の提供、相談その他の援助を行うものとする。
(3) 都道府県労働局長による助言及び指導
 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争に関し、当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当事者に対し、必要な助言又は指導をすることができるものとする。
(4) 紛争調整委員会によるあっせん
 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争について、当事者の双方又は一方からあっせんの申請があった場合において、当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとする。
 都道府県労働局に、紛争調整委員会を置くものとする。
 あっせん委員は、当事者間をあっせんし、双方の主張の要点を確かめ、実情に即して事件が解決されるように努めなければならないものとする。
 あっせん委員は、当事者等から意見を聴取し、事件の解決に必要なあっせん案を作成し、これを当事者に提示することができるものとする。
(5) 地方公共団体の施策等
 地方公共団体は、国の施策と相まって、地域の実情に応じ、労働者又は事業主に対し、情報提供、相談、あっせんその他の必要な施策を推進するように努めるものとし、国は、地方公共団体の施策を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。また、当該施策として地方労働委員会が行う場合には、中央労働委員会が、当該地方労働委員会に対し、必要な助言又は指導をすることができるものとする。


別添6

個別労働紛争解決システムのスキーム


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